篠田節子のレビュー一覧

  • レクイエム
    孤独な死者たちへ奏でる短編集。

    どの物語も短さを感じさせない確立された世界観で、読者を巧みに誘い込む。
    死の物語の中に不思議と癒しを感じる。語られる哀しみ、願い、記憶、そういったものが穏やかに鎮めていく。
    『コヨーテは月に落ちる』が特に好み。マンションに閉じ込められるのも、役人として働き続けるのも...続きを読む
  • 家鳴り
    やどかり、の中学生、智恵のずる賢いところ、用意周到なところ、吐き気がする。

    青らむ空のうつろのなかに
    これが1番よかった。400万円で厄介払いされた子どもの行方。

    真梨幸子のイヤミスとは違う、深い見えない底のあるイヤミス。
    篠田節子って、こういうものも書くのね。
  • インドクリスタル 上
    インドが舞台のビジネス冒険小説。冒頭の地図にある都市のプリーまでは行ったことがあるし、日本の水晶機器メーカーにも何回か訪問したことがあるので、インドや水晶デバイスのことを少しは知っているつもりでいたが、なんとも奥が深く勉強になることばかりだ。多様な価値観がぶつかる場面では、自分の常識が普遍的ではない...続きを読む
  • 女たちのジハード
    登場する女性たちがみんな個性的でキャラが立っている。それぞれの意志があり、長所と短所があり、人生は上手いこといかなくて、それでもなんとか足掻いて前に前に進んでいこうとする。
    人生設計が急展開すぎて、えっ?と思ってしまう場面もあったけれど、とにかく全員の前向きなパワーに魅了された。
  • 長女たち(新潮文庫)
    短編3つのうちの「ファーストレディー」に関して。
    私は母は子供のころは世界で一番好きな人であり、大切な人だった。
    しかし成長するにつれその思いは老いて理性を失い奔放になっていく母を疎ましく思うように変わってくるのだが根底にはやはり母を好きという気持ちがあることには変わりない。
    だから主人公の気持ちの...続きを読む
  • 夏の災厄

    リアルすぎて鳥肌がたった

    まるで現在の状況を予言したかのような小説、と聞いて読んでみましたが、あまりにも現実とリンクしていて驚きました。だいぶ前に書かれたお話なのに古さはあまり感じられず、一気読みでした。少し専門用語が難しいところもありましたが、今こそ読むべき一冊だと思います。
  • インドクリスタル 下
    地方の水晶振動子メーカーの社長が、インドで高品質の水晶を買い付けようとする話だが、主人公はインドでのビジネスに四苦八苦するだけではなく、そこで知り合った不思議な力を持った先住民部族の少女に翻弄されていく。
    カースト制、男女差別、部族差別などの外国人には理解し難いインド社会の構造まで深く掘り下げており...続きを読む
  • インドクリスタル 上
    地方の水晶振動子メーカーの社長が、インドで高品質の水晶を買い付けようとする話だが、主人公はインドでのビジネスに四苦八苦するだけではなく、そこで知り合った不思議な力を持った先住民部族の少女に翻弄されていく。
    カースト制、男女差別、部族差別などの外国人には理解し難いインド社会の構造まで深く掘り下げており...続きを読む
  • 夏の災厄
    感染が広がる様子、人々の反応、それらの生々しい記述に背筋が凍った。いま自分は医療の進歩の恩恵を受けて安全地帯にいると思っていたが、今日の平穏が明日も続くとは誰も保証できないのだと気付かされた。
  • 家鳴り
    家鳴り
    若く結婚して男性不妊により子供は諦めた夫とレスを気に病んでいる妻。夫は無職になり妻の趣味の成功からの報酬で養われ、ゲーム三昧で妻は完璧に家事もこなし収入も妻のみ。現実だったらこの辺りでポイされそうな夫。。なんだけど。妻が太っていく様がゾッとする。
    高卒証券マン、というより株屋がバブル崩壊で...続きを読む
  • 女たちのジハード

    篠田節子の最高傑作

    篠田節子は当たり外れが大きい(と思ってる)のですが、これは文句なしに大当たりです。
    20年前の小説なのでもちろん色々と古いところはあるのですが、出てくるキャラクターが皆生き生きとしていて、古臭さを感じさせません。
    何より読後感が素晴らしいです。
  • 長女たち(新潮文庫)
    介護問題は現在の日本の一番のホラーであると思う。
    三作からなる本作の二話目の村に酷く共感した。
    一、三話は我が家の状態(祖母(セコンド妹)vs母,私)に似ていて腹が立ち冷静には読めなかった。
    年長者が若年者の重石になっているこの国は歪んでいる。
    それをさも当然でそのために子供を作った、というようなこ...続きを読む
  • 沈黙の画布(新潮文庫)
    素晴らしい作品。話はこう展開するだろうという予想を何度も覆され、話は2転3転。最後の展開は素晴らしかったが、4分の3ぐらい読んだところで、再読だったことに気付いた。どうやら一度目は、ななめ読みしていたようだ。
  • 長女たち(新潮文庫)
    身につまされる話
    家守娘の母娘の会話はリアル
    いつの時代も、いや 今の時代だからこそ核家族になり突きつけられる現実。
    他人ではないから甘えがあり、思い出があり、切なさとの葛藤を抱えながら行き着く思い。親子でなければ行き着かない結果だと思う。
  • 神の座 ゴサインタン
    篠田節子ブームの中で読んだ、たぶん初の長編。

    長いけど、一気に読めます。
    読んでから、だいぶ時間経ってるので、登場人物名とか
    キレイさっぱり忘れちゃってますが。

    地方の農村の旧家の跡取りが、発展途上国(ネパール?)から
    嫁さんを「買って」くるところから始まる、
    なんだろう、破壊と再生...続きを読む
  • インドクリスタル 下
    いやー面白かった! 故・船戸与一を彷彿とさせる、女性作家とは思えない骨太なストーリー展開。 ロサの幸せを願わずにはいられない。
  • 銀婚式(新潮文庫)
    50代の元エリートサラリーマンの半生。

    エリート証券マンが、ニューヨーク在住中に離婚、その後会社は破綻し、損保会社に再就職するも、鬱を患い退職。仙台の無名私立大学の非常勤講師として再々就職。
    何とも波乱万丈な主人公高澤。
    それでも、誠実で仕事に対しても熱意があり、品行方正なため、周りからの評価は常...続きを読む
  • 長女たち(新潮文庫)
    恐ろしい本だと思った。3編の短編小説はいずれも長女が主人公だが、現代の深い問題をえぐりだすような内容となっている。解説者の言葉を借りれば、「老人が尊厳をもって天寿をまっとうすることと、数が少なくなった若者が幸福で充実した人生を送ることと、両立が困難だということ」がテーマになっているように思われる。第...続きを読む
  • ハルモニア
    ハルモニア。
    それはまるで世界をすべる黄金率にも似た調べ。
    神聖で崇高な侵しがたい神の旋律。
    凡庸なチェリスト東野は音楽療法のスタッフとして通った高原の精神医療施設で、凄まじい才能を数奇な運命を秘めた一人の浅羽由希と出会う。
    東野は彼女の秘めたる才能を引き出そうと悪戦苦闘の個人レッスンを開始するが…...続きを読む
  • 銀婚式(新潮文庫)
    読み終えたとき、高澤と共に長い人生を歩んだ気がした。
    …いやいや、それでは私が主人公と銀婚式(笑)

    確かに、NY赴任時に仕事を理由に妻の不調に寄り添わず、離婚に至ってしまったところまでは、彼を「仕事は有能だが、家庭人としては失格」というような眼で見ていた。

    しかし、会社が倒産し、次々に同僚が新し...続きを読む