ニーハム花子さんのレビュー一覧
レビュアー
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微分積分の背景にある思想史
「ライプニッツから高木貞治」までとはまあ大きくでたタイトルだなあという感想がタイトルと見て思った。かなり大冊なのですべてはまだ読めていない。対象は学生ではないのかもしれないが、高校生が読むよりはむしろ「微分とか積分のようなちょっと高度な数学の知識が欲しい」中学生が読むといいような気もした。数学が良くできる中学生だとともすれば計算テクニックとその速さのワザで満足しそうで、中学ではまだ教えない微分や積分の知識を知ってしまうと、中学生の身分でも高校生以上のことができ、オレはテンサイだ、となってしまう。それでは足し算やかけ算を記号で拡張した計算技術の粋を超えない。本物の天才がどうやって微分積分学をつくりあげていったのかを知ることの方が重要である。それは公式の記憶ではなく概念形成過程を知ることによっても体験できる。
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高木貞治先生の人柄を知る
今年(2024)の7月に日本の新札が発行される。千円札は北里柴三郎が肖像画になった。北里が生まれた頃に日本人科学者として名前が知られた人物として野口英世、寺田寅彦らがすぐ浮ぶ。しかし高木貞治の名前は、数学科卒業生や、せいぜい理学部卒業生しか思いつかない。数学者は世界的な業績を残してもなかなか名前が残らないものだ。高木先生は本巣市に生まれた。そこには先生を称える記念室がある。私的経験だが、その記念室ができた頃だったろうか本巣市の役場に連絡をし、訪ねたことがあった。そこで墓参りをしたいと職員にお願いすると、たしかこのあたりで……と案内されたのだが結局墓所がわからずじまいでそのまま帰ってしまった。心残りとなった。ぜひ明治期に日本人として世界的レベルの数学分野の成果を上げ、日本の数学教育にも熱意をそそがれた高木貞治先生の偉業を知ってほしい。そのきっかけとなる『数の概念』である。
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臨界前に訳した日本昔話
この「特別試し読み版」は、中世前期に鎌倉時代が成立した頃にできた『宇治拾遺物語』のなかから「瘤取り爺さん」を抜粋し、現代作家によるその翻訳を読めるようになっている。これは誰でも子供のときから知って記憶してるお伽話の一つだ。ただ、現代の日本人で中世当時鎌倉時代の世相がわかる者はほとんどいない。そこで現代の風俗を入れたようにして翻訳する意味は大きい。ここでは登場する鬼どもは、赤や青のほかに黒い皮膚のがいてそいつはゴールドのふんどしを締めていたりする。カラフルである。今、都会の繁華街の外国人らの路上飲みが問題になっている。派手な衣装で髪の色も肌の色もさまざまで酔っ払った彼ら彼女らに囲まれたりするとちょっとビビッてしまう。しかし、中世の鬼は異界に属しスーパーナチュラルな存在である。これは鎌倉時代にこの説話に何を込めて伝え残したかったのだろうかと千年前の時空を覗くきっかけとなるであろう。この説話のしめくくりは「物うらやみはすまじき事なりとぞ。」
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江戸の情緒と仕掛暮らしの三話
池波正太郎による仕掛人シリーズの原作『殺しの掟』から三話を選び,それを描く山田芳裕の漫画「仕掛暮らし」では絵の中にどんな工夫がされているのだろうかと頁をめくった.原作を読めばわかるが,仕掛人イコール,単純な「殺し屋」というわけでもない.それは表の仕事では手に入らないような高収入を得るため裏で殺しを請け負う稼業である.表の顏は妻帯もしていたり子供もいたりだが,過去にあった秘密を抱えながら生きている男が登場する.さて山田芳裕は原作中に登場する篆刻や絵画を仕掛人とともに,どのように描いたのだろうか.そこがひとつの見所かもしれないと思った.
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この宮本武蔵シリーズの読み方
バロン吉本の『宮本武蔵』は巻の一から五まで通して読み、しばらく置いてから巻六から最終巻の九までをまとめて読み終えました。なんだか一気に読んでしまうのがもったいないような気になる絵とセリフの連続でした。これが、このような読み方をした理由と言えばよいのでしょうか。料理屋でそれほど高価ではないコース料理を注文したところ、期待を上回る見た目と味の料理が次々とでてきて、あれれ、これは一気に食べるのはもったいない、少し余裕をもって味わいたい、といったところでしょうか。
さらに今回は、すこし大き目のディスプレイでページを見開きにし、絵を味わいながらゆっくりと楽しみました。このやり方で読んだのが、このバロン吉本描く『宮本武蔵』を心に残すことになったと思っています。 -
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祭礼の主役エンリルとの戦いから
主人公の太郎が冬眠から目覚めると明りはすべて消えており管理室は無人だった。起き上がったベッドのカレンダーをふと見れば日付けが「2525 0611」を表示している。「馬鹿らしい…故障だろう」。妻と息子と一緒に滞在していたイラク支社長の太郎は、大寒波に襲われたイラクのバカラで脱出手段が無くなり、ひと月ほど研究機関で新造したばかりのシェルターで家族3人で過したはずなのに、なんと自分が500年も眠っていたことがわかって大ショックを受ける。さらに妻と息子の冬眠ベッドでは、それぞれ300年、200年前に装置が停止し、ふたりはミイラになっていた。あとは東京の親父のところに残した娘に会うためにイラクのバカラから東京への旅を決意する。
物語の設定は現代の地球環境から経済までを氷河期でリセットされた人類の生き方を通じて問い直すことからはじまっているようだ。第1巻は、旅のはじめに出会った500年後の2人の現地人と祭礼の儀式を通じた「人」と「死」をテーマにしている。
現地人との行動・対話、さらにこの巻の最後にある祭礼の主役エンリル対、太郎+現地人の戦いとその結末を見ていると、ヘロドトス『歴史』にでてくるギリシア賢人ソロンが富み栄える異邦人の王に下した言葉の流れが浮んだ。これから先、太郎がただひとり500年の冬眠から無事に目覚め、現地の儀礼を幸運にも通過できたようなラッキーはどこまで続くのか、今後が楽しみです。 -
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公理系から初等幾何を展開する
この教科書は、「点」からはじまる7つの無定義用語をさだめ、これらから公理系をつくるのだが、その公理系の対象は座標平面とすることから出発する。この公理系を選ぶところで大切なのは、その公理系から初等幾何がたやすく展開できることであるが、この展開が大変わかりやすく丁寧に説明されている。
練習問題は「証明を完結せよ」というような形式で、学習者が自分で公理系からユークリッド幾何学の定理を考えるようにできている。具体例では定理「相異なるどのような2点に対しても、それらを通る直線がただ1つ存在する。」の証明のあとに出題された問。
この問を考えることで、直線の定義と定理とのつながりを自分でたしかめることができる。
コロナ禍でなかなか会えない知人と数学書を読みながらオンラインでやりとりしたのだが、これを教科書にしてもよかったかなと思った。 -
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一人前のヒューミントになれるか
清家とクロコーチがそれぞれ別の方角から共通の目標を特定し、それの確保へと向かって行く巻。ここで清家は、キミの役目はヒューミントだ、と組織のボスから命じられた。ヒューミント??
清家だけでなく読者は???かもしれないが、そこは組織の先輩が親切に説明してくれる。「Human Intelligenceのことよ!」と。ここでさすが高学歴の清家はわかったのかそれ以上は聞かない。しかし、読者はどうなのかなあ。まあ今の時代はなんでも検索だからとナンチャラペディアを引くとでてくるのでしょうか?それは読者それぞれの楽しみで置いときましょう。
ともかく黒河内はクロコーチという本来の姿を忘れないで出さないとアブナイし、清家には Human Intelligence のさらなるエボリューションが課せられますね。
興味津々の要素がある! -
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カウンターに着くなり注文する女
ここで少し前の巻でラベルをチラ見せしたボトルの名前がはっきり出てきた。イギリスはアイラ島産のこのウィスキーの名前を女が言う場面がある。ドアを開け、バーテンダーに、それをショットでチェイサーも、と注文を口に出す。あれっ、この女って、このクロコーチの店に前に来たことあったかな。
それはともかくわたしらの世代からみるとこのマンガの舞台背景を通して見え隠れする部分がそこここにあってなかなか途中で止められない。
しかしクロコーチの店の名前は彼自身が付けたという設定なのだろうか。読者なりにその様子を想像すると面白い。
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クロコーチの名前にかかわる巻
出所した元組員の男を地下のバーに誘うクロコーチ。お店の名前が「黒馬車(BLACK COACH)」だった。さらに、あの独特の風合いのアイラモルトのウィスキーが出てきた。ちゃんとボトルのラベルで LAPHLOIG の10年ものとわかるように描かれている。誘われた元組員は、クロコーチにあることをささやかれて、ラフロイグが注がれたグラスを掴み一気に飲み干す。。。
色々と面白い巻だ。
そう言えばわたしもアイルランド人をとある老舗のバーに誘ったとき、わたしがあるスコッチを彼にすすめたことがきっかけで彼が告白をはじめたことを思い出してしまった。
いろいろ想像させる巻だった。 -
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小島の生態系は流木がつくる
太平洋ではないが、そこにある島の地元民に教えてもらったことを思い出した。たしかイブキ島とかいう意味の名前で呼ばれていた。イボク島とも言うんですよとその島の異名を教えてもらったりもした。小説の舞台となった太平洋の小島のように周辺の海流の流れは少し海岸線から離れるとすごく早い。また季節と月の位置による潮の流れの変化は想像を超えて自然界に宿る力のようなものも感じた。この小説を読み終えて、生命の息吹というのはやはり人知を超越したところで発生し、異形の流木がながれ着く地形では不思議なことがことがあるものだということを再認識させられた。小説の中に登場する人間と文明の進化論学者フェルドマン教授などは、その後この島の生態系のことをどういう風に作品に仕上げるのか。米国軍人を父に日本人を母に持つ混血のかわいらしい外見の主人公男性はその後どうなったのか。天に向かってタバコの煙を吹きあげてた女医さんがタバコをやめて主人公男性の影響を受け、その後どうなったか。いろいろ気になるが、本当に気になるのは、主人公ウァブが今後島でどう変化するのかだ。しかし、それは次世紀のダーウィンを待つしかないかもしれない。
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ロズウェルその後を知りませんか
連載時にはまってしまい翌月号が待ち遠しかった。もうあの頃とずいぶん日本はかわったような気分で読んだ。しかし地方は都会のように巨大な建築物ができることもない。ただ廃村寸前の村という存在そのものがもうアキラレてしまったような気がするし、・・・と一軒家というようなフレーズが日常会話にでるくらいだから、田舎の村や集落の価値がもう失くなってしまったのかなとテレビを見ながら思う。UFOやアルミ箔の宇宙人を仕掛けた主人公グループのひとりが午前4時に目覚めて帳場のパソコンでメールを読むと、批判や中傷のメッセージに混じって著名人から応援のメールがあったりという場面は、地方にいてちょっと目立った活動をした経験のある者なら、そうそう似たようなことがあったな…と妙にリアルな心理描写に作者の気持が写されているのではと思ってしまった。作品では、カルトや宗教、そしてアイドルの存在などのことなども取り上げられるがこれも今また話題になっていることで、ああこれから先どうなるんだろうかと読者を啓発するところを含んでいるのも篠田節子の小説らしい。
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東南アジアからウクライナを想起
架空の国の多民族が割拠する南方の島での物語.作者の篠田節子は昔からすごい!と思っている.何十年か前のことだが東京に住む知人と喫茶店で翌日の打ち合わせというか雑談をしているときに篠田節子はスゴイと盛り上がったことを思いだした.その当時もコンタクト・ゾーンは出版されていたような気がするが,最近ロシアによるウクライナ侵攻がはじまってから電子書籍で上下巻を読み切った.舞台となるのは島の中でも豊かな農作物地域がある古くからの農村である.政府軍と民族解放戦線と称する世界の紛争地帯で養成された兵士たちが幹部となり村でかき集められた雑兵達を使って巻き起す権力闘争の真っ只中で,その古い農村の長老や村長らが老獪な知恵でどこまで村のシステムと村人らを守ることができるかのあたりが大変に興味深い.足首と膝を打ち抜かれた村の長が息子に言う.「いいか,我々の前に,最良の選択などない.できるのはよりましな方を選ぶことだけだ.……」.この多少ともコッチの方がましという感覚は,最良のものなど我々のところにはありはしない.見切りをつけなければならないときの大事な心得でしょうか.この紛争のど真ん中に観光客として入ってしまった日本人OL三人が主人公ではあるが,この小説を読んでいると今の世界の紛争地域の政治地勢的な背景をあれこれと考えさせられた.小説の舞台となる豊かな農作物の環境に恵まれた農村との比較としてか,ウクライナの国名が豊かな世界の穀倉地帯の代表として登場している.あと作品レビューとは違うが,誤植と思われる箇所が電子書籍に二箇所くらいあった.「村の雑貨屋は品薄になっているのて,」と「もかしてスンニ派と」が気になりました.
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童話長ぐつをはいた猫の主人公?
ともかく主人公の亜久里四郎がカッコいい!のだが、
その登場シーンは、猫のぬいぐるみをかぶって電車内の悪を退治することからはじまる。
作者は『長ぐつをはいた猫』の話を、主人公と謎のジィさん根古長吉にかけているような気がした。
ちなみにペロー原作の童話「長ぐつをはいた猫」は、またの名「猫吉親方」として翻訳されてもいる。
この童話は青空文庫でも読めるので、それを読んでからだとなおさら36ページからのセリフとストーリーが生きてくるように思った。