【感想・ネタバレ】竜と流木のレビュー

あらすじ

人間は、自然を管理できているはずだった――。
細菌を媒介する黒い悪魔の暴走
複層的な問いを投げかけるバイオミステリー


水の守り神とも称される愛くるしい両生類ウアブに魅せられ、太平洋の小島ミクロ・タタに通う若き研究者ジョージ。だが、インフラ開発で高級リゾートの人工池に棲息の場を移されたウアブに、大量死が起こる。それは悪夢の幕開けだった――。禁忌に触れた人類を生態系の暴走が襲う!

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Posted by ブクログ

 軍人の父と日本人の母を持つジョージは幼い頃から、父の休暇シーズンになると、太平洋上の小島で過ごし、その近隣の島「ミクロ・タタ」で出会った愛らしい両生類「ウアブ」に魅了されたことがきっかけで、二十代後半になった今では、「ウアブ」の研究者としてその世界では知られた存在になっていた。「ミクロ・タタ」の経済の発展のために、絶滅の危機に追い込まれたウアブの生育環境を守るために、外国人富裕層向けリゾートを建設し、他の島々より一足早く発展を遂げた「メガロ・タタ」にウアブを移動することになった。生態系の変化への懸念はあったにも関わらず――。

 というのが、本作の導入です。『仮想儀礼』や『弥勒』で分かっていたはずなのですが、覚悟して読んではいても、容赦のない強烈な描写には心に重たい石が沈み込んでくるような感覚があります。環境の変化から生じる混乱、善意からはじめた行動に対する悔恨、愛らしかったはずの生き物が変貌していく恐怖、父子の間にある葛藤……様々な要素が絡み合う、先の読めないパニックホラー(パニックSF)になっています。大作も多い篠田作品の中では比較的短めですが、内容は濃密で、分かりやすい『正しさ』のようなものに流れないラストがとても好きでした。

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2025年01月30日

Posted by ブクログ

美しい島の描写から始まり、あとは怒涛の展開。希少生物ウアブの秘密と身勝手な人間の策略。人間のエゴがまるごと曝け出された象徴的な一冊。スピード感があり最後まで読み切ってしまう。人間と共生していた幼生から凄まじい出来事が起きて尚、最後まで生き残ったウアブの末路に生命の力強さを感じた。

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2023年05月08日

Posted by ブクログ

美しい島に突如現れた凶暴な捕食者。真っ黒で俊敏、どう猛でトカゲのようなその生き物は、口中にさらに恐るべき武器を隠し持っていた…! 生物パニックミステリー。

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2023年04月20日

ネタバレ 購入済み

小島の生態系は流木がつくる

太平洋ではないが、そこにある島の地元民に教えてもらったことを思い出した。たしかイブキ島とかいう意味の名前で呼ばれていた。イボク島とも言うんですよとその島の異名を教えてもらったりもした。小説の舞台となった太平洋の小島のように周辺の海流の流れは少し海岸線から離れるとすごく早い。また季節と月の位置による潮の流れの変化は想像を超えて自然界に宿る力のようなものも感じた。この小説を読み終えて、生命の息吹というのはやはり人知を超越したところで発生し、異形の流木がながれ着く地形では不思議なことがことがあるものだということを再認識させられた。小説の中に登場する人間と文明の進化論学者フェルドマン教授などは、その後この島の生態系のことをどういう風に作品に仕上げるのか。米国軍人を父に日本人を母に持つ混血のかわいらしい外見の主人公男性はその後どうなったのか。天に向かってタバコの煙を吹きあげてた女医さんがタバコをやめて主人公男性の影響を受け、その後どうなったか。いろいろ気になるが、本当に気になるのは、主人公ウァブが今後島でどう変化するのかだ。しかし、それは次世紀のダーウィンを待つしかないかもしれない。

#ドキドキハラハラ #怖い #ダーク

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2022年09月20日

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ネタバレ

ミクロ・タタに生息するイモリもしくはオタマジャクシのような容貌を持つウアブの可愛らしさにハマり、ウアブの研究者呼ばれるまでになったジョージは、島のインフラ開発計画でウアブ存続の危機に直面する。そこでウアブ保護クラブを立ち上げ、メンバーらとどうやってウアブを守るか議論を重ねていく。そして、メガロ・タタの複合リゾート施設ココスタウン付近の池へ移動させることを決意する。移動後しばらくは特に問題なく、順応しているかように見えたウアブだが、突然の大量死をきっかけにして人が次々咬まれる事態が相次いで起こりーー。

ジョージと父の関係&やりとりの変化、現地住民との考えの相違、本来の住処から良かれと思って移動させたことが環境の自然破壊・ウアブの変態を引き起こし、どうにかして収束させようと奮闘するシーンは読み応えがある。また、ゴミに乗ってあちこち生息地を広げていくくだりはゾッとしたし、封じ込め作戦が如何にこの現代では難しいかが伝わってくる。バイオミステリーものは読んだことがなかったが、勉強になった。かわいいからと言って安易に保護するのもよくないんだなと感じた。

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2022年04月29日

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篠田節子『竜と流木』講談社文庫。

南方の架空の島を舞台にした生物パニック小説。平和な島を突如襲った黒い悪魔の正体は……

帯にはバイオミステリーと紹介されているが、生物パニック小説の方が相応しいのではなかろうか。人間が平和な島に存在しないはずの生物を持ち込んだために生態系を破壊し、とんでもない化け物を産み出してしまうという物語である。化け物の正体にも早い段階で気付いてしまうのも残念だし、化け物にももう少し暴れてもらった方が面白かったと思う。

太平洋の小島ミクロ・タタの綺麗な淡水に棲息する両生類ウアブに魅せられた素人研究家のジョージはウアブの絶滅を危惧し、ウアブを近くの小島メガロ・タタへ持ち込み、繁殖させることにした。高級リゾートの人工池に暮らし始めたウアブは、ある日突然大量死してしまう。そして、その日を境に島で黒いトカゲのような悪魔に襲われる事件が相次ぎ……

日本でも国外から持ち込まれた外来種生物が大きな問題になっている。ブラックバスやブルーギル、カミツキガメ、ミドリガメ、アライグマなどなどはよく耳にする外来種である。人間のエゴが生態系を破壊し、いずれしっぺ返しを受けることになるのだ。

本体価格740円
★★★★

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2020年07月25日

Posted by ブクログ

太平洋の小島に住む愛くるしい両生類、ウアブ。その生態に人間の手が入る時、悪夢が始まる。小動物を主役にしたバイオミステリー。篠田さん、よくこんなこと考えついたなー。

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2023年03月04日

Posted by ブクログ

生態系の破壊や進化、それに伴う天敵、そして共生、そんなエッセンスいっぱいのお話。
現実には起きてもおかしくない、もしかしたら起こっているかもしれないということが、また面白さを増す。(面白がってはいけないが…)

こういう題材の作品はいいね。好き。

ただ、本当に個人的な感覚なんだけど、文章が少し読みにくかった。
特に、細かく表現するために1文が長くなり過ぎたり、句点の位置に違和感があったりして、1回で理解できない部分があった。
これがなければ、もっと情景がすんなりイメージできて、ワールドにどっぷり浸かれたと思う。

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2021年08月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

あまり両生類をかわいいと思ったことがなかったので、愛くるしい外見を持つウアブに魅せられ保護クラブまで立ち上げた主人公の気持ちに添えずじまい…。
でも、ウアブの凄まじく凶暴な黒い変態形の謎や新事実、題名になった島の昔話を絡め、南のリゾート地が陥ったパニックにぐいぐい引き摺り込む著者の手腕はさすが。
地の住民と外部の人間である主人公のラストの対比が痛烈で秀逸。保護と駆除の両極端を右往左往する外部からの滞在者たちに比べて、ウアブの利便性と危険性のバランスを取りながら共生を選ぶ現地の定住者のたくましさに恐れ入る。

この作品のMVPは、自身の火傷も顧みず凶暴な黒いウアブに熱々の油をかけ続けたアメリカ人のお姉さんだな。

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2021年03月01日

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