桜木紫乃のレビュー一覧
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結末は終わりではなく、始まりである。
思えば、この作品においてはすべてがそうかもしれない。
何かが終わること、それは取りも直さず、何かの始まりとまったくの同義なのだ。
全体の作りとしては、上質な、けれどももどかしい、大人の恋愛である。
大人の恋愛と本来は相反するプラトニックな愛と交流が(途中までは)描かれている。それを浮き彫りにしているのが不倫という道ならぬ恋と、母親の介護、日の目を見ない才能という生々しいものだ。
終盤に入って、物語は急展開を迎えるが、それはそれまでにたくさんあったわだかまりの、一つの出口の塊なのかもしれない。
心理戦(といってよいのか、わからないが、幾人ものモノローグが -
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自分よりも悲しみが深そうな人間のそばに行けば、わずかでも明日に日が差すような気がした。このかんじがよくわかる。そして、自分よりも嘆きたい人間を思いつく限りの前向きな言葉で励ましていると、吐いた言葉によって気持ちが「浄化」してゆく、とも。心理描写がするどくて気持ちがはまった。
不遇な目にあい、行き場を無くした、亮介と紗季は偶然出会う。幾度と会い、気持ちが通いその後の展開の恋愛ものかと思えば。。春奈が出てきた一気にゾクッとした空気になった。これはホラー・・?
四人?でバーベキューをしている場は異空間で。
小木田は確かに狂ってはいるが、悲しい方向に話は進む。春奈をすんなり受け入れたところは紗季も空虚 -
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桜木紫乃さんの小説は結構読んでいるけれど、メインの土地が北海道ではない作品を読んだのは初めてような気がする。
とは言え北海道も多く出てくるのだけど、札幌のような都会ではなく山深いリゾート地が舞台で、メインで出てくる土地は新潟なので栄えている感じはあるものの大都会ほどではなく、やはり桜木さんの小説特有の地方の少しうらぶれた雰囲気が漂っている。
そして私は桜木作品のそういうところが好き。
新潟で手広く事業を展開していた10歳上の妻・章子が突然の事故で植物状態になってしまった夫の亮介。
会社を追われて故郷を離れた54歳の彼は、東京でたまたま入ったキャバレーで、そこで働く美しい女・紗希と出逢う。
紗 -
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桜木さんが生れ住む北海道を舞台に、男女の愛を描いた短編集。
「雪虫」「霧繭」「夏の稜線」「海に帰る」「氷の棺」「氷平線」の6編。
それにしても独特の雰囲気を持った上手い作家さんだと思う。
この人の描く北海道はいつもどんよりと重く、性愛を通して描く男女の愛はひたすらやるせない。
一度嵌り込むとなかなか抜け出せない様な魅力が有ります。
”関係”とか”結末”に”血”や”業(ごう)”をかき混ぜて発酵させると”因縁”とか”宿命”が出来る。
物語をじっくり深く発酵させるのが桜木さん。酸味が強くなった古漬け。味わい深い。歌で言えばPopsでは無く艶歌・怨歌の世界。
しかし、私の好みは浅漬けなのです。
そ -
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桜木紫乃の作品を読むと、毎回「この人はこんな作品を書けるのか」と、驚嘆してしまう。
ストリッパーという特殊な(申し訳ないが、私がこれまで触れたことのない世界なので、特殊な、という表現を許していただきたい)世界で生きる女。
踊ることを一身に愛し、その世界を離れられない女。
妖美で、可憐で、悲しい。でも、潔い。
アスリートとか、芸術家とか、そういう題材と同じように、ストリッパーを捉えている。
狂おしいほど全身全霊をかけて愛し、そしてそれに一生を捧げる人の美しさと強さ、儚さをきっちり書いている。
決して、キレイな話、美談一辺倒としてはおわらせないところが桜木さんの冷静な目であり、でもその目はあた -