桜木紫乃のレビュー一覧

  • 無垢の領域

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    結末は終わりではなく、始まりである。

    思えば、この作品においてはすべてがそうかもしれない。
    何かが終わること、それは取りも直さず、何かの始まりとまったくの同義なのだ。

    全体の作りとしては、上質な、けれどももどかしい、大人の恋愛である。
    大人の恋愛と本来は相反するプラトニックな愛と交流が(途中までは)描かれている。それを浮き彫りにしているのが不倫という道ならぬ恋と、母親の介護、日の目を見ない才能という生々しいものだ。
    終盤に入って、物語は急展開を迎えるが、それはそれまでにたくさんあったわだかまりの、一つの出口の塊なのかもしれない。
    心理戦(といってよいのか、わからないが、幾人ものモノローグが

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    2020年06月30日
  • 硝子の葦(新潮文庫)

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    怖くて、悲しくて、やるせなかった。主人公節子は、母親の愛人と結婚し、元カレとも浮気を続けていても何も感じない。他の登場人物も皆、ぶっ壊れていて罪の意識が欠けている。ある日、節子の夫が事故で植物状態に。その後、節子自身の焼死体が発見される。その謎を遡っていくストーリー。謎が紐解かれても、スッキリ感ゼロ。節子の逞しさは凄いと思っても、謎行動が多すぎて共感できなかった。舞台があの『ホテルローヤル』なので関連作品かと思ったが、特にそういうわけでもなさそうだ。作品好き度は中くらいだが、ドンヨリ気分にどっぷり浸れた。

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    2020年06月14日
  • それを愛とは呼ばず

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    自分よりも悲しみが深そうな人間のそばに行けば、わずかでも明日に日が差すような気がした。このかんじがよくわかる。そして、自分よりも嘆きたい人間を思いつく限りの前向きな言葉で励ましていると、吐いた言葉によって気持ちが「浄化」してゆく、とも。心理描写がするどくて気持ちがはまった。
    不遇な目にあい、行き場を無くした、亮介と紗季は偶然出会う。幾度と会い、気持ちが通いその後の展開の恋愛ものかと思えば。。春奈が出てきた一気にゾクッとした空気になった。これはホラー・・?
    四人?でバーベキューをしている場は異空間で。
    小木田は確かに狂ってはいるが、悲しい方向に話は進む。春奈をすんなり受け入れたところは紗季も空虚

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    2020年06月09日
  • 硝子の葦(新潮文庫)

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    ネタバレ

    一気に読めた。最後までミステリーやった。北海道の風景と人の感情が合っとった。頭の中は色々な思いがあっても言葉に出さん主人公が好き。"なにひとつ繋がり合えないことを確信する"って表現もなんとも言えない感じ。

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    2020年06月06日
  • それを愛とは呼ばず

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    桜木紫乃さんの小説は結構読んでいるけれど、メインの土地が北海道ではない作品を読んだのは初めてような気がする。
    とは言え北海道も多く出てくるのだけど、札幌のような都会ではなく山深いリゾート地が舞台で、メインで出てくる土地は新潟なので栄えている感じはあるものの大都会ほどではなく、やはり桜木さんの小説特有の地方の少しうらぶれた雰囲気が漂っている。
    そして私は桜木作品のそういうところが好き。

    新潟で手広く事業を展開していた10歳上の妻・章子が突然の事故で植物状態になってしまった夫の亮介。
    会社を追われて故郷を離れた54歳の彼は、東京でたまたま入ったキャバレーで、そこで働く美しい女・紗希と出逢う。

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    2020年04月05日
  • それを愛とは呼ばず

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    ホテルローヤルを読んでみたいけど、少し気後れしてしまいなかなか手に取ることの出来ない本の作家さん。
    この本からなら入りやすいかなぁなんて思って手に取りました。

    この感じ、やっぱり好き。
    一般的にはぜったいにいけない事なのに、そこになんとかして善を見つけ出したくなる内容。
    紗希のこころ持ちは愛なのかもしれないけど、それが
    あのような形になってしまった時点で愛とは呼べないのでは…と感じました。
    しばらくモヤモヤが続きそうだ…

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    2020年01月29日
  • 氷平線

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    桜木さんが生れ住む北海道を舞台に、男女の愛を描いた短編集。
    「雪虫」「霧繭」「夏の稜線」「海に帰る」「氷の棺」「氷平線」の6編。

    それにしても独特の雰囲気を持った上手い作家さんだと思う。
    この人の描く北海道はいつもどんよりと重く、性愛を通して描く男女の愛はひたすらやるせない。
    一度嵌り込むとなかなか抜け出せない様な魅力が有ります。

    ”関係”とか”結末”に”血”や”業(ごう)”をかき混ぜて発酵させると”因縁”とか”宿命”が出来る。
    物語をじっくり深く発酵させるのが桜木さん。酸味が強くなった古漬け。味わい深い。歌で言えばPopsでは無く艶歌・怨歌の世界。
    しかし、私の好みは浅漬けなのです。

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    2019年11月29日
  • 氷平線

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    「ホテルローヤル」以来、桜木紫乃の作品を読んだのは2作目だったが、こちらも短編で土地のしがらみや人間関係の窮屈さが描かれている。読後感はあまり良くないが、そこがかえってリアリティがあり、物事のケジメや再出発を感じた。

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    2019年11月23日
  • 裸の華

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    桜木紫乃の作品を読むと、毎回「この人はこんな作品を書けるのか」と、驚嘆してしまう。
    ストリッパーという特殊な(申し訳ないが、私がこれまで触れたことのない世界なので、特殊な、という表現を許していただきたい)世界で生きる女。
    踊ることを一身に愛し、その世界を離れられない女。
    妖美で、可憐で、悲しい。でも、潔い。

    アスリートとか、芸術家とか、そういう題材と同じように、ストリッパーを捉えている。
    狂おしいほど全身全霊をかけて愛し、そしてそれに一生を捧げる人の美しさと強さ、儚さをきっちり書いている。

    決して、キレイな話、美談一辺倒としてはおわらせないところが桜木さんの冷静な目であり、でもその目はあた

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    2019年09月23日
  • 硝子の葦(新潮文庫)

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    なんだこの小説は。素晴らしすぎる。
    桜木紫乃は砂上だけ読んだが、こちらはそれとは違って本格ミステリの感もある。
    骨太で厚みのある人物描写はそのままに、第一級のエンターテイメントに仕上げている。おもしろい。
    後半の幾度ものどんでん返しの波に読みながらさらわれる心地がした。
    行ったこともない北の大地の海に、冷たいグレーの空に、古いけれども客入りのいいホテルに、頭のなかを占領された。そのくらいの立体感。
    このひとの作品はほんとうに丁寧で、慎ましやかだ。美しいと思う。

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    2019年09月08日
  • 裸の華

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    厚さにしては要素が多く感じられた。
    描き尽くされてない部分が多いような。
    JIN周辺と瑞穂の扱いがちょっと雑?

    でもすきな作品。読みやすい。
    自分は文章から匂いがしてくる作品がすきな傾向にあるが、たらこバターもチーズわかめも、「ダンスシアターNORIKA」の酒やタバコや香水の匂いも、小屋の黴の匂いも自然な生々しさで描かれていて好ましい。

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    2019年08月26日
  • 裸の華

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    舞台上の骨折で引退を決意したストリッパーのノリカ。心機一転、故郷札幌で開く店で雇う、訳ありバーテンダーと二人の女性ダンサーとの出会いにより、再び彼女の表現者としての気持ちが昂る。踊り子たちの鮮烈な生きざまを描く長編小説。
    解説で紹介された桜木さんのコメントがいい。ストリップという文化に深い畏敬の念を抱き、舞台と小説の世界の共通性を語る内容に共感を覚える。何事でも突き詰める者だけで分かち合える空気が心地好い。

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    2019年08月17日
  • 氷平線

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    この人の小説は大分読んだので、パターンが読めるようになってきたけど、この感じ、好きな世界観なんだなぁ。

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    2019年05月29日
  • 裸の華

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    素直に書かれいてる人間臭さが好きだ。
    いつまでもこの状況が続けば良いと思いながら、バラバラになってしまう登場人物に最後はエールを送る気持ちになる。
    「誰にも約束された明日なんかなかった。だからこそ信じられる未来があった。」(p238)などの味のある文が散りばめられているところも魅力だ。

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    2019年05月28日
  • 硝子の葦(新潮文庫)

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    ひきこもりGWの読書その1
    この人の作品を初めて読んだけど、すごく面白かった。ミステリーとしてだけでなく、北海道の空気感や登場する人物(とくに女)がどんどんイメージできて、ページをめくる手が止まらなかった。
    同じ作者の直木賞受賞作「無垢の領域」をさっそく予約してみた。GW後半に読みたい。

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    2019年04月29日
  • 裸の華

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    桜木紫乃『裸の華』集英社文庫。

    桜木紫乃の描く女性の多くは逞しい。この物語の主人公であるノリカもまた強く、逞しい。しかし、若さと老い、栄光と挫折、何故か残酷さばかりが際立つ作品だった。

    舞台で足を骨折し、引退を決めたストリッパーのノリカは故郷の札幌でダンスショーを売りにした店を開き、店も軌道に乗り始めたのだが……

    僅かに光を感じる結末ではあるが、ハッピーエンドでは終わらないところが、正に人生そのものか。解ってはいるが、出来ればノリカには平穏な人生を歩んでもらいたかった。

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    2023年09月22日
  • 硝子の葦(新潮文庫)

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    再読。、結末を知ってるから、この部分は主人公はこういう気持ちだったんだなと思いつつ読む事が出来た。主人公の一見ひょうひょうとしながら内面にくすぶっている激しさが色々な行動に結びついてるのかなと思う。

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    2019年02月24日
  • ブルース

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    霧がたちこめる釧路で生まれた六本指の男・影山博人。貧しく苛烈な少年時代を経て夜の支配者にのしあがった男は、女たちに何を残したのか。謎の男をめぐる八人の女たちの物語。
    とにかく影山の存在感が圧倒的。冷酷で感情がないように見えて、何故か一部の女たちの心を救っていく。そのルーツは母に対する憎しみから生まれたコンプレックスなのか。それとも、一種の罪滅ぼしなのか。

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    2019年02月11日
  • 無垢の領域

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    本のタイトルにピッタリの話。無垢の領域がひたひたと広がり周りを侵食していく。桜木紫乃さんの人の心の動きを丁寧に書いてるところが好き。しかし呆けてる事を装いながら生活するほどの念、欲望って末恐ろしいわ。。

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    2018年11月29日
  • エロスの記憶 文藝春秋「オール讀物」官能的コレクション2014

    購入済み

    粒揃いの作品集です。小池真理子さんの作品を目当てに買いましたが、各先生の作品それぞれ格調の高いエロスで楽しめました。このお値段でこの内容はお得です。

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    2020年05月05日