あらすじ
親から継いだ牧場で黙々と牛の世話をする秀一は、三十歳になるまで女を抱いたことがない。そんな彼が、嫁来い運動で中国から迎え入れた花海とかよわす、言葉にならない想いとは――。(「波に咲く」)寄せては返す波のような欲望にいっとき身を任せ、どうしようもない淋しさを封じ込めようとする男と女。安らぎを切望しながら寄るべなくさまよう孤独な魂のありようを、北海道の風景に託して叙情豊かに謳いあげる。
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北の大地に生きる強く逞しい女達の浮き沈みある人生模様を描く桜木紫乃さんの傑作短編集。桜木さんの描くヒロイン達はみんな迷いがなくきっぱりとしていますよね。自らの下した決断に責任を取り後悔せずに今を懸命に生きている男以上の力強さを感じます。みんな十分に聡明で賢いのにどうして自堕落な甲斐性の無い男達に惚れるのかは謎ですが、まあ生まれついての性分なのでしょうね。本書を読んで心に思い浮かんだ2つの歌詞を書きますね。前川清「そして神戸」誰かうまい嘘のつける相手捜すのよ、さだまさし「向い風」倖せの形くらい私に決めさせて
『波に咲く』我愛爾、愛してる、国だけで性格を一括りにすべきではないと思います。『海へ』健次郎は自由への手切れ金と考えよう。加藤さんは少し気の毒ですね。『プリズム』やがて記憶が戻り現実が重く圧し掛かってくるでしょう。『フィナーレ』勇気を出せば二人の復縁も有り得るかも知れませんね。『風の女』自らの運命を悟った姉は妹の幸せを願って全てを仕組んだのかも知れませんね。『絹日和』最低の男と死の一歩手前で別れられてよかった。彼の潔さだけは褒めてあげるべきでしょう。『根無草』嘘も方便。古賀の遺した金で母娘二人お幸せにね。
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桜木紫乃シリーズもこれで一旦休憩にしようと思う。『ホテルローヤル』よりはこちらが好みかも。
「誰に何を言われても構わないと思ったら、怖いことなんかなくなる。人は逃げてもいいんだって、」風の女より
「石のような頑固さが敵を作り、あくの強さは根強い支持者を生んだ」絹日和より
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壮絶なのに醒めている。不思議な印象が残る作品群。
全て北海道の街が舞台の短編集。
雄大で美しい風景…ではなくて、過疎が進んだ雪深い田舎や、寂れた漁師町、うらぶれた夜の街、などが主な舞台で、だからこそ寒々しくてリアル。
桜木紫乃さんて直木賞をとった時に実家がラブホテルだったって言ってて気になってたけれど、その環境が、男女の肉欲をこんな風に醒めた感じで描くきっかけになったのだろうかと考えたりした。
言ってしまえばどうしようもないダメ男とずるずる付き合ってしまう女が何人か出てくるのだけど、そのわりに溺れてるような雰囲気はなくて、醒めた諦めみたいなものに包まれてるから。
それぞれ印象に残ったからひとつを選びにくい。挙げるとすれば「海へ」と「根無草」かな。
切ない。胸が痛い。そして女は強い。
北海道、男女の肉欲、貧しさ、というワードから、佐藤泰志の小説と雰囲気が共通するような気がする。
暗部がひとつもない人生を歩んでる人はほとんどいない。
ふわっとしててどこか現実離れしている物語も好きだけど、同じくらいこういう胸が軋むような生々しい物語も好き。
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寄せては返す波のような欲望に身を任せ、どうしようもない淋しさを封じ込めようとする男と女。
安らぎを切望しながら寄るべなくさまよう孤独な魂。
とても素敵な角川の紹介文、引用させていただきます。
そんな人々の“どうしようもなさ”と“それでも生きていく姿”を、北海道の風景に託して叙情豊かに描き出す七つの短編。
「波に咲く」
中国人妻との静かな生活を守ろうとする畜産業の青年。寂しさを封じ込めているのは日本の女だけではない。青年にも言葉にならない悲しさがあるのが見えてくる。
「海へ」
クズ男に貢ぎ、身体を差し出す女。
やがて 彼女は彼らを捨てて離れていく。
“ん、それが良い”と思える、ささやかなカタルシスがある。
「プリズム」
この短編が最も印象的。
クズ男に美人局を仕向けられる女。その気持ちの受け口になったのが、新しいクズ男。
光を屈折させるプリズムのように、彼女の人生も斜めに歪んでいく。という意味にとったんですが。
「フィナーレ」
ストリッパーと地域記者の淡く静かな恋。
すすきのを離れ、別々の道を歩むことで、ようやく得られる穏やかな生活。
“終幕”とは、必ずしも悲しいものではないのだと感じさせる。
「風の女」
12歳で家を出た姉が、遺骨となって戻ってくる。
書家として将来を期待されていた姉が、その才能を隠し生きた道。その理由に想いを馳せる妹の静かな揺れも少し哀しげ。
「絹日和」
着付師になる夢を諦め、廃坑のクズ夫について行った女。生き方どころか意志までも手放していたが、人生の再生へと小さな賭けに出る。
「根無草」
生活力のない父と共に転々としてきた少女は、やがて記者となる。
子どもの頃の記憶に残る男との再会をきっかけに、自分の生き方をようやく選び取る。
“根無し草”であることの痛みは、最期まで。
どの短編の人物も、夜にひっそりと咲く花のように、誰にも気づかれない場所で自分の人生を生き抜こうとしている。
作者は彼らに過度な救いは与えない。
それでも読み終えたあと、女性たちの強さが印象的。それがこの短編集の魅力。
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7つの短編集
どの話も女が強かに生き抜いている
男に騙され流されているようで、実は自分の足で踏ん張って生きている女達
行ったことのない北海道の情景が目に浮かぶような文章はさすがです
これぞ桜木紫乃って感じ♪
北海道を描き続けている桜木作品はどれも似ていて飽きちゃう?って方もいるけど
わたしはこのまま北海道にこだわって描き続けて欲しいと思ってます_φ(・_・
Posted by ブクログ
寒い土地、
荒波、
雪の白に覆い尽くされる大地。
人の噂が広がる界隈
そして、寂れゆく街
そんな土地でのさまざまな女。となぜかパッとしない男の繋がりと生業。
どの短編も女が強い。寒さに耐え、性に耐え強くなる女
だからこそ男が情けなくなるんじゃないかなどと思うけど、だからこそその辺りが桜木さんの描く小説の素敵なところだ
毎日が天候のようにグレーでいると一時の温もり、凪ぐ煌めく海、雪の白が美しい大地が狭いからこそある人情が宝物に思える
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桜木紫乃の作品は、どれを読んでも心の中に静かな波紋を広げてくる。
本作もどの短編においても、どんよりとした暑い雲が日光を遮っているような空気が漂っていて、どの短編にもどうしようもない社会の落語者が登場する。
彼らがその流れに身を委ねて生きているのが幸せなのか、それとも不幸なのかは他人には分からない。
そして理解する必要もない。
それが人間の儚い一生なのだから。
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でじゃぶ
ってな事で、桜木紫乃の『誰もいない夜に咲く』
波に咲く
海へ
プリズム
フィナーレ
風の女
絹日和
根無草
の短編集。
読み始めから、あれ?何か見た事ある風景が頭を過ぎる…
あっ、これ読んだ事ある…。じゃが、本のタイトルが違う
ここで自分が読んだ本がすぐ調べられる様に # を付けとるんよね。
わしの場合は#やっさん~で、~を作家さんの名前にしてるから #やっさん桜木紫乃 で調べたら自分が読んだ桜木紫乃リストが出るから調べると『恋肌』が単行本で、更に調べると恋肌に加筆・修正、未発表の風の女が入って『誰もいない夜に咲く』が文庫版になってるとの事…。
紛らわしい…
まあ、再読したけど半分はほぼ忘れてて初読みした感じじゃった
桜木紫乃さんらしく、北海道、女、生き様、苦悩、諦め、不甲斐ない男、儚い未来、女は強し、って感じでした
2022年6冊目
Posted by ブクログ
桜木紫乃さんの小説は、これまであまり読んでこなかった部類の小説なので、こういう世界もあるかと夢中になった。
でも何冊か読んでいくと、決まったシチュエーションが繰り返され、物語の小道具となって語られることに気づいた。
物語の背景には既視感が否めないが、それでも、最後の「根無草」では思いがけぬ結末が待っていて、物語の面白さは変わらなかった。
人はここまで落ちてしまうのかという「プリズム」はいたたまれなかったが、酪農家に嫁いだ中国人の娘、「海に咲く」の海花や、「絹日和」の奈々子が、静かに自立していく姿は鮮やかだった。
Posted by ブクログ
初めて読む桜木紫乃。7編を収録した短編集。収録作にない書題がついている短編集は珍しい。
7編の舞台はいずれも北海道。主人公は女性、ちょっと不幸だったり迷ってたり人生がうまくいってなかったり。最後にはちょっとそんな日常がいい方向に変わるような予感を誘う。でもそれはささやかなもの。きっと彼女たちはこの後も、何ども不幸に見舞われたり迷ったりすることだろう。でも、普通の人の人生もそういうことの繰り返しだ。そんな当たり前だけど、あまり小説読んでは思わなかったことを感じた。
自分が住んでいないせいか、北海道はこういう物語の舞台になるなあ。
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それぞれが独立した短編集。
北海道の風土と物悲しさしくもあるけど強い女性が一貫したテーマで描かれる。
一時はこの裏悲しさや暗さが苦手で気持ちが滅入ってしまうこともあったが
今回はまた違った目線で読めた。ひとりで生きる女性のやるせなさとある意味の諦めにフォーカスをあてると男たちが悲しい生き物にみえてくる(笑)
やはり女性は強い。
ただ、それぞれの物語の設定が良すぎてここでお話がおわってしまうことがすごく残念。それぞれの続編もあればいいのにと。
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またお話しの数だけ、哀しいがたくましく強い女性たちが居た。自分は北海道ではないが、生まれ育った土地が厳しい季節を乗り越えなくてはならない所だから?私はこんなにも彼女たちに惹かれるのだろうか。力をもらっているのだと思う。だから読みたくなるのだ。
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私は寒い土地を描いた物語が物凄く好きです。
母が北海道出身で、小さい頃に冬の北海道の幻想的な話を良くしてくれていました。
そのイメージが頭にこびり付いていて、冬は母を思い浮かべる季節。
本書は北海道を舞台にした短編集。
北海道の情景が頭に浮かび、懐かしい気持ちになりました。
淡々と男女のアレコレを描いているのに
何だか生々しくて、実にウマいなぁと。
一番初めの、波に咲くがお気に入り。
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北海道を舞台にした7編の短編を集めた作品。デビュー作を含む単行本『氷平線』と通じる設定のものが多く、いい意味でトーンも似ていた。
静かに運命を受け入れる諦めと、ひっそりと生きながらも芯の強さをもつ女性。対する男性は、女性に寄生しすることしかできない意気地なしがしばしば登場する。
タイトルは演歌のようで、これにはちょっと苦笑い。桜木紫乃じゃなかったら買わないな。でも、不幸を乗り越えてさらりと進んでいく女性の底力に支えられて、中身には演歌ほどの湿り気はない。
耐え忍ぶ姿を、涙ながらにじくじく描いていたら、自分とは考え方も生き方も異なる人たちの登場する作品に、こんなにも強くひきつけられることはないだろう。
一歩退くことによって生まれる距離感が絶妙で、重い内容を引き立てているのだと改めて感じた。
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桜木さんの作品には
いつも北海道の荒涼とした景色があります。
そしてその景色の一部となる
登場人物たちは
あまりにリアルでウェットで
物悲しいです。
人の深淵さ、なんて私には
到底分からないし語れない。
でもこの短編集には
潮風をまとったような
人たちの孤独が見えます。
中国人の妻を迎えた
牧場の男の話が一番好みでした。
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桜木紫乃作品2冊目。
「ホテルローヤル」を読み、桜木紫乃作品を毒破してみようかなっと思い、夏カドフェスにも取り上げらた、この本をチョイス。
ホテルローヤルより、湿気を帯びた暗さがある作品。
特に最後の話は、主人公の父親と母親との夫婦の愛情が理解できない。
父親が友人(というか、仕事関係の人)に、妻を抱くことをお願いするのは、いくらお金が絡んだとはいえ、わからない。
私の思考がまだまだ、餓鬼なのかな?
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著者作品も順不同にて数冊目。悲しみを心の奥底に秘めながらも、強い意思の女性力を描ききる各短編。行き詰まりとさまよいの、、このゾクゾク感が堪らない!。解説がこりゃまた絶品♪。
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どれも暗いお話。
短編集は、どれかひとつは気に入り、のめり込んで読み込むことがあるのですが、今回は珍しくどれもピンと来ず…。ザンネン…。
また桜木さん作品を探しに行きます。
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良かった。短編集だからさくっと読める。なのに1つ1つしっかり内容が厚い。内容のせいで引き込まれるからさくっと読めるのかも。
特に「フィナーレ」が良かった気がする。ストリップの踊り子さんの話。
Posted by ブクログ
自分が住む田舎町の身近な日常のすぐ隣に
男と女の様々なドラマがひっそりと存在する
田舎の狭いコミュニティで噂されながらも
その土地を生きる「近所の人たち」が脳裏に浮かぶ
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この人の作品は何冊か読んだがいずれも物哀しさと寒々しさを感じさせる短編集。
その寒々しさが東北ではなく北海道をイメージさせるのは先入観のなせる業か。
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北海道のイメージはこんな感じなのだろうか。
いや、いいかえるなら、こんなに貧しくて暗いのだろうか。
周りをみてもそこまでお金に困っているイメージはないけれど、実際には違うのかもしれない。パチンコに通っているひとも多そうだし、知らない世界が身近にははやっぱりあるのかもしれない。
自分の知らない薄闇を覗いた感じになりました。
寂しいです。そして悲しくて寒い。
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北海道を舞台に描かれる男女の短篇集。
桜木紫乃の作品には性に関する描写が多いように感じる。
ただ、登場する女性たちは強い心を持っている。
好きだったのは、「フィナーレ」と「根無草」。
2016.10.28
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等身大の、生活に追われる庶民が未来も見えないような暗澹たる生活の中、一筋の光明を見つけるといった感じの短編集。「一緒にいればいるだけ、いい記憶も悪い記憶も増えて行くというのは思い違いだった。いい思い出は今を過ごすための貯金でしかなく、ふたりは記憶を引き出しては食いつぶす、夢みる貘だった。」(p53 海へ)、「後悔でも傷でも、いいんです。色鮮やかな記憶がないと、自分が死んだことにも気づかない一生になってしまう」(p164 風の女)
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北海道の、しかも地方部に住む希望がない人たちを描いた短編集。
本人がいくら頑張っても仕方がない状況に追い込まれたら、女より男の方が遥かに弱いということか。
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初めて読んだ桜木作品。どちらかといえば、社会的にはあまり恵まれていない男女の愛を描いた短編集。
閉塞感を覚えるような陰鬱な話が多く、人間のダメな部分を書くのが上手な作家さんなのだなと感じた。
「プリズム」なんて救いようがないし、「絹日和」の若い嫁なんて読んでてイライラして、ノブちゃんそいつとの結婚なんてやめちゃえと思った。
「フィナーレ」と「風の女」がまだ希望が持てて好きかな。