桜木紫乃のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
桜木紫乃『光まで5分』光文社文庫。
珍しく沖縄が舞台。夏の太陽に温められた秋の海に浸かっている感じの小説である。時折、冷たい水に驚きながら浮かんでいる温かい秋口の海という感じだ。
那覇市の非合法店で身体を売る主人公のツキヨに女で失敗し、東京から沖縄に流れて来た元歯科医の万次郎、万次郎に思いを寄せるヒロキとまともな人間は登場しない。
主人公のツキヨに何か大きな変化がある訳でもなく、ただ海の中をクラゲのように漂うばかりの不思議な味わいの小説であった。
北海道の東部の街から沖縄に流れ着いた28歳のツキヨは那覇市の路地裏の竜宮城という非合法店で身体を売っていた。ある日、ツキヨは奥歯が痛みから彫 -
Posted by ブクログ
1人の男性を女性からみた視点で次々と繋がっていくストーリー。
北海道での話し。
たばこ、酒、欲望、女、男、雪、夜
桜木さんの本を読むといつもこんなキーワードが出てくる。
頭の中に私の知らない夜の街が次々と浮かんできて読み進めていくのが楽しい。
最後は身体の関係ではなく、心で繋がっていたような関係だったけれど、何も刺されなくても〜!と思ってしまった。ハッピーエンド好きな私は。
でもそれもまた良い終わり方でした。
自分とはあまりにもかけ離れた話のようであるけれど、心がの根底は繋がっている話しであるようでいつも桜木さんの本はすいすいと読めてしまいます。 -
Posted by ブクログ
桜木紫乃節と言いたい、きらりと光る文が、りばめられた連続短編集。
言葉のあや(とり)に心地よくくすぐられるような、あやされるような、うまいんですね。
主人公たちの「ふたり」夫婦も、その親たちの「ふたり」夫婦も、ご近所の、職場の夫婦の「ふたり」も日常はいろいろ事情が様々なんですよ。そこから教訓を得ようが、等身大と思おうが、何気なく安心してしまおうがいいんです。
どちら様もおなじ、夫婦は所詮他人と思えば、大概のことは過ぎていく。突き放しているわけではなく、「ひとりぐらし」も「自立心をもって、頑張って、大丈夫!」と自信満々大きな声で言えないときがあるでしょう。 -
Posted by ブクログ
主人公を変えつつ、それぞれの恋愛模様描く連作短編。
訳アリで島に流れて来た女医と挫折した五輪候補選手の漁師の「業」を感じさせるような出だし。いつもの桜木さんです。
ところがこの作品は少しづつ柔らかくなって行きます。いやDVの話もあるから、いつもと比較すればというレベルで、他の人に比べたらやはり全体に暗調で閉塞感は有りますが。しかし1話1話が少し明かりが見えたような終わり方です。
そして大団円。
本当に桜木さん?と聞きたくなるようなAll Happy。特に不穏な終わり方だった短編「おでん」のさとうしおさんを登場させたのは良かったなぁ。
対比的な二人の女医と放射線技師の男と言う同級生トリオが粋です -
Posted by ブクログ
生まれてから一度も、欲したことなどなかった母。母への怨恨。最後、生家へ行き自分のアルバムを探す節子。その心理の中には、この母娘にしかわかりえない親子の情が見えた気がした。
お金目的、母への復讐か親子ほど年の離れた母の元愛人との結婚。幸田をお父さんと呼ぶ節子の姿に、徐々に愛情が見え、よけいにやるせなかった。節子が求めていたのは父親の愛でもあったのか。
どうして澤木ではいけなかったのか。全力で節子をサポートしているのに繋がらない澤木の祈り。身体は繋がっても、なにひとつ繋がり合えないことを確信する行為、という表現が悲しい。
幸田が瀕死状態になった所から引き込まれ、読まさせられる勢いを感じた。クールで -
ネタバレ 購入済み
個性豊かなキャラクター達
舞踊の経験がある方には共感するところが多い作品だと感じました。題名からは想像し難いかと思いますが、北海道を舞台に人生をやり直していく様な内容です。主人公よりも周囲の人物に惹かれました。
様々な見方ができる作品だと思います。
-
Posted by ブクログ
女性の人生における人間模様を上手に描く最近の人気作家といえば、辻村深月さんを思い浮かべるのだが、桜木紫乃さんの本作(そして「ホテルローヤル」も)は、その域において新しく強烈な印象を残してくれた。きっと(特に女性)読者はそれぞれの女性の全て、あるいは何人かのある場面の心情に、自分を重ね、心揺さぶられると思う。関東の都市部出身である自分には、なかなか実感がわかない北海道の(郊外)事情も新鮮だった。主人公だけではなく、それぞれの女性を描く年代も変わるのだが、当時の社会的な雰囲気も伝わる。
さて、私に刺さった一文(というか二文)はここでした。
「子供が大人になるように、ずるさが包容力になり恋が勘違い -
Posted by ブクログ
凍てつく北海道を舞台にした6話の短編。
どれも陰鬱としてラブストーリーなんてお気楽には言えないけれど、これは間違いなく愛の物語。
雲一つない空であっても、そこには黒く立ち込める雪雲しか見えない。そんな中で必死に生きて行こうとする主人公たちの諦めや足掻き、再出発が決して美しくはない人間くさいドラマで描かれている。
男性作家の場合…どうしても男性にとって理想の女性、こうあって欲しいという視点が否めない…男性作家さんごめんない。反して女性ならではの傷付く言葉や扱い、惨めさが現実味を帯びて胸を付く。
風土や環境はどうしたって変えられない。郷に入れば郷に従えと言うように従えないものは生きづらい。都会では -
Posted by ブクログ
エッセイを読んでから、まずはデビュー作へ。
男と女の関係を描いた文学を、これまであまり読んでこなかった。それよりも物語の題材の面白さが優っていた。
桜木さんの小説を読んで、小説に男女の関係を盛り込むことは、人が生きている部分の、全部を描いていただけなのでは・・・と思った。その描写はリアルであるが、ときには幻想的だ。それぞれの人が生きていく哀しみが透けて見えた。
北海道に暮らすようになったからだろうか、気候も、時間に移ろう景色の様子も、海霧や流氷のことも、ここに出てくる人たちも、リアルに迫ってくる。その分、入り込んでしまう。他の土地に暮らしていたら、また違う印象を持つのだろうか。私が読んだ北海道