桜木紫乃のレビュー一覧
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開拓小屋で育った百合江の生涯 妹と自分達の娘の人生 父の卯一はいつも酒ばかりを飲み、母は何も言わない人になり、中学を出て牛舎の仕事ばかりさせられる弟たち、家族は貧乏から脱出する事はできなかった。昔は皆こんな時代だったかも。ただ最後まで百合江を思う人がいた。石黒だ。男はその場を過ぎると逃げる。だが、石黒だけは最後までゆりえを大切に思っていた、人は育った環境に大きく左右されるのかこの本を読んでそう感じた。ただ昨日を捨てる事はできないダブレスとは「愛がない 愛情を感じない。愛されない。冷たいと言った意味」百合江はラブレスのような人だったのかな、桜木紫乃の本は本当に飽きが来ない。
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高校の同級生だった二人の女医を軸に、不器用な男女の関係を描いた連作短編集。
「十六夜」
過去のトラブルを背負い、離島の診療所に勤める女性医師。
彼女は社会を恨むことも、自分を省みることもなく、ただ淡々と生活している。贖罪も再生もなく、あるのは日々をやり過ごす身体。
島の男との恋が海の飛沫のように。
「ワンダフル・ライフ」
母親に請われ、個人医院を開業した女性医師。
自分にも他人にも厳しかった父を亡くしたあとも、彼女は毅然とした母の「良い娘」であり続ける。人生の最期に、彼女は恋した人を求める。
「おでん」
前作で描かれた、個人医院の家。
その建物が売りに出され、次の人生へと受け渡されていく。
その「家」を媒介にした連作の一編でもある。
女子の何割かは、
自分の幸福の選択肢の中から、
どうしても不幸へと続く道を選んでしまう。
「ラッキーカラー」
医院に勤めるベテラン看護師。
その看護姿勢は鉄壁。仕事として人に向き合い、私生活は極力語らない。
あまりに不器用な中年の男女に冷や汗
「感傷主義」
高校時代からの友人三人。
女医となった二人と、検査技師として働く男。
同じ時間を過ごしながら、選んだ道はそれぞれ違っていた。
大病を患った彼女に、二人は寄り添う。
医師としての冷静さ、友人としての情、
その境界は次第に曖昧になっていく。
そこに入り込むのは、感傷。
「ワン・モア」
一度は別れた夫婦。
元妻の大病を知った男は、その支えとなるため、
かつての居場所へと戻ってくる。
過去への回帰ではなく、
壊れた関係を引き受け直す選択。
離島の診療所、個人医院、売りに出される家。
場所と人生をゆるやかに繋げて
やり直せない選択をしながら もう一度
やり直してみる
桜木さん落ち着くわ
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子どものいない夫婦の日常が、淡々と描かれています。仕事を選び働かない夫が出てきますが、家事はしますし、妻も生活優先で給与の安い勤務先に転職した過去があります。
経済的には厳しいけれども、相手を批判せず、互いに認めながらも、どこか言い出せない秘密がある。そんな夫婦の話。
結婚は当人同士の話ではあるけれども、互いには育ててくれた親があって、それがどんな親であれ、関係ないとは割り切れない当人たちの気持ちが丁寧に描かれています。
家族を想う言葉が、ストレートすぎれば反発を招き、気遣いが過ぎれば重くなる。縁の切れない家族との付き合いは他人よりも難しい。
切なく優しい大人向けの話でした。 -
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ネタバレ桜木紫乃ならでは、という筋立て。釧路の高校で図書部だった女子高生4人がそれぞれたどる人生を描く。
国語教師に恋し、官舎に押しかけ愛を告白した女子高生時代。時は流れ同じ国語教師と結婚したのは別の図書部員だった。
就職した和菓子店の職人と駆け落ちした順子。職人は店主である妻の前から、身ごもった順子とともに北海道から東京へ逃げる。時は流れ失踪宣言がなされ、順子はこの世に存在しなくなった夫と、その間にできた子と暮らし…苦労の末、これから、というところでまだ40代なのに不治の病にかかった順子。
再会した別の部員に順子が言う。「子どもの目が見えなくなる。私の角膜を移植して、息子が、その目でいろいろな建物を見て、望みの建築の道に進み続ける」
「あんた、(それでも)幸せだったんだね…」 -
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子供のない30代の夫婦の話
夫は映画の脚本家になることを諦めきれず定職はない。実家では母親が一人で暮らしている。
妻は看護師として働き生活を支えながら実母との確執に悩む日々。
夫がいつもの桜木さんの作品に出てくるクズ男だと思ってたら違うのよ笑
妻もわたしのイメージの看護師とは違うし…
お互いが相手に気遣いながら波風を立てないように
暮らしている日常が、夫と妻の視点から交互に語られていきます。
自分の至らなさに悩みながらも相手に対して不満を持つことはない。
劇的に変化が起きることもないし。
この空気感にイライラする人には向かない作品だな
わたしには良作でした:.゚٩(๑˘ω˘๑)۶:.。♡︎
作品中心に残ったフレーズ
「自分はひとり娘だ。親のことでは責任ばかりが重たい、一人っ子という点では信好も自分も、換えのきかない指定席に座っているようなものだった。」
このくだり…
「おびさ〜ん」と叫びたくなった。゚(゚´Д`゚)゚。
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自己啓発本を読み漁っていた時期に度々出会した考えに「今を生きる」というものがありました。
過去を後悔するでも未来を心配するでもなく、今この一瞬に集中して全力で生きること。
順子ってこの典型なんだと思う。
今更変えられない過去を嘆くでもなく、心配したところでやって来てしまう未来に過剰に怯えることもない。ただ、今を全力で生きている。
そしてないものを数えるのではなく、あるものに目を向け感謝する。
だから彼女は死を前にしても「幸せだ」と言いきってしまう。
高校の同級生や順子の親はどうしても幸せをステータスや世間体で測ってしまうので、順子の“幸せ”が理解できない。仕事、パートナー、収入…ないものを数え上げては嘆いている。そんな人たちにとって順子の幸せはやせ我慢にしか見えない。
作者的には「人はみな紆余曲折を経ながら幸せに向かっていく」みたいなテーマなのかもしれないけど、個人的には蛇行した先で見つけた物に感謝をすることが幸せなのだと思いたい。 -
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ネタバレ猛夫とサトミは80代の夫婦。
毎日母に電話をする次女の乃理が、母の異変に気付いた。
父に問いただし、母が認知症になったことを知った乃理は、実家とほとんど連絡を取ろうとしない姉の智代にそれを伝えた。
猛夫は腕のいい理容師で、中学を卒業した智代を進学させずに自分の跡取りとして修業をさせた。
しかし山っ気の強い彼は、うまい話に手を出して、結果自分の店を手放す羽目になる。
はしごを外された形になった智代は、それを気に実家と距離を置く。
母が認知症になったからといって、今更当てにされても…と思う。
もう、智代の逡巡が刺さりまくり。
私が中卒ではないし、後を継ぐ親の財産もないけれど、長女としての責任を背負わされて育てられたので、この息苦しさは痛いほどわかる。
で、父親が自分勝手で、自分の都合で家族を振り回した挙げ句に、言うことを聞かないと暴力をふるうという、昔はありがちの頑固おやじ。
最初猛夫がサトミの面倒をみている部分で感心したのだ。
ダメなことは断固ダメといい、興味を逸らしながら言うことを聞かせるやり方は、うちの父にも見習ってほしいと思ったくらい。
うちの父は結局「手に負えん」と私に丸投げしましたからな。
でも、人に同情を買えるところは頑張るけれど、どうにもならなくなるとサトミを殴っていたことがわかってから、私のなかで彼の存在は地に落ちました。
わかるんだけどね、頑張っても頑張ってもリセットされる空しさ。
それが家族だからこそ、余計に腹立たしいのも。
でも、暴力はいかん。
サトミの姉は阿寒の温泉街で、一人暮らしている。
離婚をし、長女には縁を切られ、次女は音信不通。
家族の縁が薄いのは、彼女の情が薄いせいだと長女になじられる。
でも、家族といえども過度の期待をしない、もたれ合わずにそれぞれで立つという姿勢は私は好きなのだが。
私もそのうち縁を切られるのだろうか。
釧路に暮らす猛夫とサトミ。
江別に暮らす智代と、函館の乃理。
同じ北海道といえど、その距離感のはるかなことが、地理的によくわかる。
智代の気持ちはわかるんだけどさ、乃理の気持ちはちょっとわからん。
誰からも評価されない妻や母としての目に見えない頑張りがしんどくなってきたのはわかるけど、アルコール依存、大丈夫なの?
そして智代の夫の実家もちょっと気持ち悪い。
商売に失敗して実家に戻った次男の借金を払って、生活の面倒をみて…まではわかるけど、結婚相手を探す?
農協の窓口にいた若い娘に、家を買ってやる、生活費のほかにつき10万円のお小遣いを上げる等々の条件を、毎日その職場の窓口で訴え続ける母なんて、それだけで嫌だよ。
でも田舎だから、農協なんてみんな顔見知りのようなものだから、断るなんてできなくて。
智代の夫が実家と疎遠になったのは、智代が第一子を妊娠した時に「あと取りを生むのが長男の嫁の仕事」と毎日のように電話をよこす母親に「なら長男を辞める」と夫が言ったことから。
夫えらい!
で、次男55歳未婚のままでは自分たちの墓を守ってくれる人がいない、と躍起になって嫁探しに奔走したのだ。
絶対親戚になりたくない。
でまあ、サトミの姉のおかげで読後感はさほど悪くない。
みんな年を取るし、少しずつできないことが増えていくけど、できることはできるだけ、できないことは人の手を借りたっていいんじゃないかくらいの気持ちで、お迎えが来るまで過ごしていけたらいいと思っている。 -
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ネタバレ正直、最初の3分の2は、よくわからなかった。
端的に言うと、読み進めるのが辛かった。
ちっとも話が見えないから。
でもその後、そう狂言誘拐のあたりから、面白くなってきた。
序章で主人公が自殺する場面から始まるから、どんな展開かとハラハラしてたけど。
一応ハッピーエンドと言えなくもないラストに、少しだけ胸を撫で下ろした。
2件の殺人。宜なるかな。必然とも言える成り行き。
自分が彼女の立場でも、同じことをしてしまうかも?と思えるほど、真に迫ってた。
最初でグッとつかんで、中盤もたせる作りとは思ったが、もう少し何か捻りが欲しかった。
なので星1つ減らします。 -
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小心なのに虚勢を張る。欲しいとなれば後先見ずに突っ走る昭和の男。『人生劇場』の主人公、猛夫(タケオ)の名を見て「ホテルローヤル」や「家族じまい」を思い出した。
昭和13年の室蘭で、新川彦太郎とタミの間に生まれた次男の猛夫。「馬鹿タケ」と呼ばれ居場所のない猛夫を伯母カツが引き取り育てる。
戦争で皆が貧しかった時代。
鉄の町を襲った砲弾の雨。
敗戦後の町で生きる人々。
桜木紫乃さんがご自身の父親をモデルにしたフィクションで、巧みな人物描写が光る。
理容師を目指した猛夫の挫折。やっと叶えた夢の城で妻の頬を叩くしようもない男と、そんな男の人生に巻き込まれていく女たち。生きる希望を託し春生と名づけた長女を叩く場面は流石にきついが、終盤には穏やかな光が射す。
本作は、世代や置かれた環境によって読後感が全く違うのではないかと思う。
「こんな男の人生もあるよな」と受け止められるあなたは昭和を生きた男なのかもしれない。
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廃墟になったラブホテルを舞台に、そこに積み重なった人間ドラマを少しずつ遡っていく構成が印象的でした。
短編ごとに時代が逆流するように進んでいくので、読みながら「この場所にはどんな人生があったのだろう」と覗き見している感覚になります。
地方を旅するときに、車でラブホテルの廃墟を通り過ぎることありますが、これまではただ通り過ぎるだけの建物にも、実は多くの人の孤独や愛情が刻まれているのかもしれないと思うと胸に迫るものがありました。
物語の中でホテルが廃業するきっかけとなる出来事に触れたとき、断片がつながって「そういうことか」と腑に落ちる瞬間があり、胸がキュッと締め付けられました。
毎日、うまくいかないこと・納得いかないこと沢山ありますが、前を向いて頑張ろうと思いました。 -
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綿矢りささんの「深夜のスパチュラ」は、現代っぽくて入ってきやすい。でも文章が続いていて読みにくい。主人公がかわいい。
一穂ミチさんの「カーマンライン」は、表現できないけれど良さがあって好きだと思った。双子って素敵だなあ。
遠田潤子さんの「道具屋筋の旅立ち」は、いかにも昭和的な男と、女の話で最初は嫌だなあって読んでた。でも、八角魔盤空裏走(はっかくのまばん、くうりにはしる)という言葉を聞いてからの優美の自分自身と向き合っていく姿が清々しかった。最後の誠とのシーンがなんかいいなあって。
窪美澄さんの「海鳴り遠くに」は、紡がれている物語の雰囲気がなんだか好きだなあ。最後ちゃんと結ばれてよかった。