桜木紫乃のレビュー一覧
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ネタバレ生活能力には欠けるけれど書道の天才である林原純香が、民間に運営を委託されその館長となっている兄の元にやってきて起こす、周りへの人々の心のさざ波をえぐり出した問題作。書道家の秋津龍生はなかなか書道界で力を認められず、妻であり養護教員の怜子に経済的に支えられていたが、純香の件で林原館長に相談を受けてから男女の関係を持つ。秋津は純香の天才さに衝撃を受けつつ、そばに置くことを望んで自分の書道教室の教師として迎え入れる。林原館長には純香も馴染んでいる里奈という彼女がいるが結婚までは考えていない。秋津の母は、もうろくしているのか正気なのか定かではない状況。こうした人たちが抱える静かな嫉妬と羨望を、林原純香
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『ラブレス』(新潮文庫、2013)が面白かったので立て続けに同じ著者の小説を読んだ。こちらもなかなか。
影山博人という両手両足の指が6本ある男の人生が、人生のそこここでかかわりのあった数人の女たちの視点を当てながら描かれる。顔がよくてセックスもうまかったみたいだけど、悲しい生い立ちを背負ってダークな仕事に身を染めてという人生は決して魅力的には思えない。北海道内でほぼ話がまとまっているのでスケール感もそんなに大きくない。でも、北海道が舞台というのが効いていると思う。自分にとっては現実離れした奇譚があたかもあり得そうで、ちょっと幻想的な気分を伴いながら読んだ。 -
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北海道・釧路、妻を持つ20歳も年上の和菓子職人と駆け落ちした順子。彼女の4人の道立高校時代の同級生、そして和菓子職人の妻、順子の母。6人の女性を主人公にした6つの連作短編集です。
ブラック企業、不倫、マリッジブルー、彼女たちが持つ悩みや挫折が、重苦しいのだけど沈む事もなく、ただ粘性の高い夜の海を漂うかのように描かれます。その中で、極貧だけど「幸せ」と言い切る順子の存在が、決して解決策にはならないけれど、彼女たちが静々と一歩前に進むための力になっているようです。
一切弾むことは無いけれど、どこかに希望の光が見えるかもしれない。そんな感じが桜木さんらしい見事な表現力と構成で伝わってくるな短編集でし -
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桜木紫乃『光まで5分』光文社文庫。
珍しく沖縄が舞台。夏の太陽に温められた秋の海に浸かっている感じの小説である。時折、冷たい水に驚きながら浮かんでいる温かい秋口の海という感じだ。
那覇市の非合法店で身体を売る主人公のツキヨに女で失敗し、東京から沖縄に流れて来た元歯科医の万次郎、万次郎に思いを寄せるヒロキとまともな人間は登場しない。
主人公のツキヨに何か大きな変化がある訳でもなく、ただ海の中をクラゲのように漂うばかりの不思議な味わいの小説であった。
北海道の東部の街から沖縄に流れ着いた28歳のツキヨは那覇市の路地裏の竜宮城という非合法店で身体を売っていた。ある日、ツキヨは奥歯が痛みから彫 -
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1人の男性を女性からみた視点で次々と繋がっていくストーリー。
北海道での話し。
たばこ、酒、欲望、女、男、雪、夜
桜木さんの本を読むといつもこんなキーワードが出てくる。
頭の中に私の知らない夜の街が次々と浮かんできて読み進めていくのが楽しい。
最後は身体の関係ではなく、心で繋がっていたような関係だったけれど、何も刺されなくても〜!と思ってしまった。ハッピーエンド好きな私は。
でもそれもまた良い終わり方でした。
自分とはあまりにもかけ離れた話のようであるけれど、心がの根底は繋がっている話しであるようでいつも桜木さんの本はすいすいと読めてしまいます。 -
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桜木紫乃節と言いたい、きらりと光る文が、りばめられた連続短編集。
言葉のあや(とり)に心地よくくすぐられるような、あやされるような、うまいんですね。
主人公たちの「ふたり」夫婦も、その親たちの「ふたり」夫婦も、ご近所の、職場の夫婦の「ふたり」も日常はいろいろ事情が様々なんですよ。そこから教訓を得ようが、等身大と思おうが、何気なく安心してしまおうがいいんです。
どちら様もおなじ、夫婦は所詮他人と思えば、大概のことは過ぎていく。突き放しているわけではなく、「ひとりぐらし」も「自立心をもって、頑張って、大丈夫!」と自信満々大きな声で言えないときがあるでしょう。