桜木紫乃のレビュー一覧
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中年過ぎの人たちが主人公の、小編集。
緊張感と真面目さがいい。面白かった。
第1話 牧村は現場で20年ぶりに二葉と会う。ランチを一緒にとることにした。その後二葉から撮影の依頼を受けるようになった。
第2話 老作曲家と老ディレクターの河合は、新しいディレクターの前で1ヶ月かけた新曲を披露する。
第3話 朗人と江里子は老人ホストクラブで出会った。江里子のボケたら関係解消と言われているので気が抜けない。
第4話 トニー漆原の葬儀会場。紀和とマスターだけが仕事仲間だった。
第5話 芙美は札幌から釧路への転勤を打診されている。といっても断れるものではないので、実質命令だ。
第6話 作家の島村は博多に来ている。 -
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実際にあった事件(大竹市強盗殺人事件・三菱銀行人質事件)をもとに描かれたフィクション。銀行立てこもり犯の男と、彼を取り巻く母と女を追う。戦争の傷跡がまだ生々しく残り、人権意識も希薄だった昭和の時代に、男と女の業が連鎖していく様はどうしようもなくかなしい。逃れたくても逃れられないやるせなさのなかで、其処此処にじっとりした生活感のようなもの、人間臭さにじみ出る様子はエンタメとして正に一級品だった。男を中心とした人間関係ではあるが、男だけが悪者でその生涯を負うという構図ではなく、どちらかといえばその隣にいた女(母・恋人)の側から真相に迫る様子が面白かった。
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いやぁ、すごい読み応えだったなぁ。
誰かの半生を描いた物語っていつもなら長くて途中で飽きてしまうんだけど、これは一気読みだった。
主人公を含め女性の登場人物が多く、みんな強くてかっこいい。読んでいて気持ちが良かった。
最初の教団での生活から逃亡劇へ。プロローグで17年間逃亡するのはわかってるのに、もう捕まってしまうんじゃないかというハラハラと、何もやってないのになんで、という理不尽さでどんどん読めてしまう。
最後まで読んで改めてプロローグを読むとなんとも切ない。
巻末の梶原阿貴さんの解説を読んでさらに驚き。
何、本当に逃亡していた人!?
しかもラストまで一気読みして初めのページに戻って読んでるし、その時私が感じたのと同じ事が書かれているし。
解説でこんなに心持ってかれることなかなかない。なんてこの本に相応しい人なの。
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力作だった。17年間、逃亡していた女性の逃亡生活。しかも産むんかい!!と思った。どうか、無罪でありますように。
岡本啓美は光の心教団に入信して5年間体操部を任されている。教団立ち上げから10年。本部施設に出家という形で住み込むのが信者のステータスだ。創始者光野現師の子を宿すと最上階で暮らせるが、手狭になってきている。
その現師の子供がほとんどを占める幼年部の子達が体操部に来なくなった。本来立ち入ってはいけない5階に様子を見に行ってみるともぬけの空だった。側近の貴島がいて、俗服に着替えてきてくれと言われる。ジーンズとTシャツに着替えた。ジーンズは入らなくなっていて諦めて白ジャージのままとした。20キロは太った。教団が鏡など見なくていいと言ったのだ。車に乗せられる。私語は禁じられる。車から降りて歩き回り、ラーメンを食べ、トイレに行き、ペットボトルから飲む。暗くなってきて一軒家に着く。携帯電話が鳴り、貴島が電話に向かってさまざまな疑問を畳み掛けるが何も得られなかったようだ。日下部と呼ばれる家主が戻り、新聞を差し出した。捕まったら死刑だと言われて追い出される。新聞には渋谷駅で大量殺戮とあった。現師は無人島にいるという。貴島がトイレに立った隙にお金を2束掴み取る。
現師はリゾート施設跡で逮捕された。新潟の父のところへいく。啓美の顔写真が出回っていたので、髪を切り黒眼鏡をかけた。一晩泊めてもらう。母は大阪だが行く気はない。再婚相手がもう少しここにいてくれというので甘えた。父は再婚相手みどりと異母妹すみれに暴力を振るっていた。みどりとすみれの協力があり、ほぼ父と顔を合わせず生活できている。啓美はダイエットしてだいぶ減る。
啓美は鈴木真琴になった。5年過ぎた。鈴木真琴本人はフリーライターで、自分のフリをして祖母梅乃と住んで欲しいという。中国人のワンウェイと関係を持つが、一回につき一万円とられる。梅乃が入院する。余命は半年。梅乃が亡くなる。
2年半経った。教祖が死ぬ。貴島は手記を書き終えたが、出頭が嫌だったのか、教祖のいない世界がダメだったのか自死する。 -
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人それぞれいろんな事情ってのがある。離婚したことにも、財産を失ったことにも、借金をしたことにも、教え子とともに命を絶ったことにも。後になってから 表層的な結果だけを見て 批判を加えることは誰にでもできる簡単なこと、だけれど、それは同時に一種の暴力だ。たとえ他者から見て 理性を欠いた、不可思議な、あるいは異常な成り行きを選んでいても、その当事者からすれば その時、その場所で、その状況においては他に選択の余地がなかった、最良の選択だったということもあり得るのだ。人生の成功以上に 失脚・零落にもその背後には 芳醇な人生のドラマがある。「人生はチョコレートの箱、開けて食べてみなくちゃ味は分からない」(映画 フォレスト・ガンプ) 他者の人生を安易に批判せず、決めつけず、そこにどんな深い味わいがあるのかと想像する人になりたい。
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ネタバレ【あらすじ】
恋という言葉では到底つつみきれない、たくさんの感情と人生のシーン。
第一線の現代人気作家たちの手で紡がれる、繊細で豪華なアンソロジー!
島本理生 『最悪よりは平凡』特別な名を持つ平凡な容姿の私。唯一無二の存在になるにはどうすれば。
綿矢りさ 『深夜のスパチュラ』バレンタインに手作りチョコを!壮絶な一夜の奮闘の結果は?
波木銅 『フェイクファー』大学の手芸サークルで知った着ぐるみの魅力。数年後……
一穂ミチ 『カーマンライン』日米で分かれて育った双子のケントとアサミが19歳で再会した。
遠田潤子 『道具屋筋の旅立ち』容姿に関して隠したい過去を持つ優美は、初めての彼氏の言いなり。
桜木志乃 『無事に、行きなさい』アイヌの人気デザイナー・ミワと、シェフの男。レストラン改装を境に二人は。
窪美澄 『海鳴り遠くに』夫を亡くし海辺の別荘地ですごす私は、彼女に出会ってしまった。
【個人的な感想】
島本理生 『最悪よりは平凡』
綿矢りさ 『深夜のスパチュラ』
窪美澄 『海鳴り遠くに』
の3作が好きだった。
それ以外の話はよく分からなかった。 -
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直木賞受賞作「ホテルローヤル」を読んで、文章は上手いが文体と湿った行間は肌にあわない感じがして敬遠していたが、梅川昭美の三菱銀行人質事件が題材なら話は別。絶対に面白そうだと思ったので拝読し、やはり期待を裏切らない傑作だった。梅川本人を描くために、悲惨な家庭環境と、母と元カノの関係性と梅川との関わり方を、如何にもな桜木ウェット感で見事に描写している。また大阪で1強の読売新聞社会部に一矢報いるかたちでの毎日新聞社会部の奮闘を、梅川と同い年の北海道出身記者の全く違う生い立ちでありながら、団塊世代特有の閉塞感の体感を通しての視点で、デスクに鍛えれながら読み解いていくことで梅川の人生に迫る。事件そのものではなく、事件背景を時代と生育環境と女性関係性から深く考察している。桜木氏に一番あった題材だと思った。できれば読書前に、こちらもノンフィクションの傑作「破滅::梅川昭美の三十年」を読んでおくと理解が深まる。
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桜木紫乃作品を10年ほど前にかなり読みましたが、この本は読んでなかった。
今回は、期間限定の営業担当イチオシのカバーに、「しあわせって誰かと張り合うものじゃない」という言葉に惹かれて購入。
主人公は6人の女性だけど、みんな順子という女性につながる。
昔、生活にいろいろ大変だったときに、ある方に
「今あるものを数えて、無いものは数えるな。今の幸せに感謝を」
と言われたことを思い出した。
順子のいう女性はまさに、今ある存在する幸せに感謝している女性。
周りの女性たちから見たら、綺麗にお化粧し着飾ってもせず、何が幸せかわからない順子の生活だけど、順子自身は小さな小さな幸せを毎日感謝して噛み締めて生きているんだよね。
まさに、限定カバーに書かれている「しあわせって誰かと張り合うものじゃない」
解説は、蔦屋書店の代官山店の文学担当の間室道子さんという方が書いていらっしゃいますが、それもとてもいいです。
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久しぶりの桜木作品。
発売日のサイン会で桜木紫乃先生にお会いできた。
少しだけお話できる時間をとってくださった。
わたしは緊張しすぎて上手く話せず、大好きな作品「ブルース」の影山博人に惚れました。といきなり言った。それでも先生は優しく、「いつもだらしない男ばかり書いてたから、たまにはいい男を書いてみたかったのよ」とおっしゃった。またあんな過激なものが好きなのねとも。おだやかで気さくな方だった。
異常に非ず、、淡々と語られる犯罪に至るまでの日々。良いことが一つもない人生を生きた親子の哀しみなのか寂しさなのか諦めか、何とも言えない空気が全編にわたって感じられる。すべてをなくし何もない男は、大きな事を成し遂げるために5人も殺さなければならなかったのか。わたしも播磨町の交差点に立ち、思いを馳せてみたいと思う。
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1979年1月、大阪の三菱銀行の支店に男が侵入し、強盗を試みた末に警官2人と行員2人を猟銃で射殺して立てこもる事件が起きた。犯人の梅川昭美(30)は42時間の籠城の後、警察に射殺された。日本犯罪史上に残る極めて重大な事件だった。
この事件を題材にした作家の桜木紫乃さんの最新作「異常に非(あら)ず」が新潮社から4月に刊行された。
桜木さんはかつて事件を取材した元毎日新聞記者との話が、本書を書くきっかけになったという。毎日新聞は事件後、梅川の生い立ちから籠城、射殺までを追った連載記事「破滅」を載せた。その連載をもとに全文をあらたに書き下ろした「破滅 梅川昭美の三十年」(毎日新聞大阪社会部編、1979年、晩聲社)が出版されている。
私は「異常に非ず」をより深く理解するためには、桜木さんが参考文献に挙げたこの本を読む必要があると感じ、ネットで古本を手に入れて読んだ。
第1部「破滅-梅川昭美の三十年」と第2部「密室-梅川昭美の四十二時間」で構成する。毎日新聞は梅川の犯罪を異常な人間の異常な行為で片付けるのでなく、犯罪が個人の暗い部分に根ざし、時代と社会のゆがみを反映するものとして、梅川の30年と、その30年が最後の42時間に凝縮されている、と考えたとしている。
同書は、梅川の人生と事件の全体像を知る、まさに新聞社の力を結集した大変な力作であり、資料的な価値も高い。梅川は死亡し本人は何も語らない中で、その心の闇に挑んだ。今読んでも全く古びておらず、逆に新鮮さすら覚える。
梅川がどのような人物で、なぜ凶行に至ったのか。「異常な犯罪者」で終わらせるのではなく、梅川と周囲の人間の心の深層に、小説の形で迫ったのが、桜木さんの「異常に非ず」である。
梅川がモデルの花川清史、花川の母のカヨ、愛人だった亜紀、毎報新聞のベテラン記者の近藤と若手の海原を主な登場人物に設定。特に花川とカヨの母子関係を基軸に据え、花川と亜紀の男女関係、花川の犯行動機を追う新聞記者の迷いや執着などを、小説的な想像力と創造力を駆使して物語に結晶させた。それぞれが語る会話の構築力は実に巧みで素晴らしい。
両書で鍵を握るのが、梅川が残した自分を語る言葉である。
<オレは精神異常やない。道徳と善悪をわきまえんだけや>
「破滅 梅川昭美の三十年」も「異常に非ず」も、この言葉の深い意味を探り当てるために書かれたともいえるだろう。
桜木さんは最近のあるインタビューで、こう答えている。
<罪自体は断罪されるものだし、誰かに憎まれて当然のことですが、小説は断罪するものでも、裁くための道具でもない。ジャーナリストは丹念に取材して「実」を積み上げ、真相にたどり着こうとする。小説家は「こうかもしれない」という「虚」を積み上げた先に何があるのかを確かめに物語へ入ってゆく。積み上げた「虚」と「実」が、似たような形をしていればいいなといつも思うんです>
「虚」と「実」の相克と共存。
「異常に非ず」を、梅川の事件を題材にしつつ犯罪者や周囲の人物の“心という謎”に迫る物語とリードで紹介した山陽新聞文化面の記事(4月30日付)にはこうある。
<小説とは人の道を説く道具ではない。読者が「共感」できなくても構わない。「このようにしか生きられなかったという人がいるんです。そういう人を書いていきたい>
梅川が書かせたこれらの2冊が、事件から半世紀近くを経て、私に新たな読書体験をもたらしてくれた。