桜木紫乃のレビュー一覧

  • 青い絵本

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    人生の半ばを過ぎ、あるいは老境に入り、来し方を振り返り幕の引き方に思いを致す。

    静謐に、残りの時間、閉じようとする生に色合いを添える短編集。

    「いつもどおり」「青い絵本」がとりわけ良い。
    絵に言葉を添えるか、言葉に絵を添わすか。
    対処に虚心で向き合うとき、それぞれの前作者の心と共鳴し一体化する。

    心の深い箇所に触れる良書。

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    2025年03月12日
  • 青い絵本

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    全話面白かったです。
    全話が登場人物全員の人生を想像させるような内容に震えます。
    めちゃくちゃ面白かったです。

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    2025年03月09日
  • ヒロイン

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    某宗教団体が起こした地下鉄サリン事件をモチーフにした女の物語
    何も知らずに巻き込まれた女は飄々と逃げ続ける
    その中で出会いや別れ、成長など悲喜こもごものロードノベルっぽい一面もある作品

    研ぎ澄まされた心理描写と静かに流れる人情
    心を鷲掴みにする文体に時間を忘れて一気に読んだ

    久々に好みド真ん中の作家に出会えた気がする

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    2025年03月06日
  • 霧

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    購入して読み始めるまで時間がかかりました。
    読み終えて、とてもいい本読んだ、と感じました。
    是非、映像化してほしい作品です。解説にあったように「愛の物語」、それをしっかり映像で観てみたいです。女の戦場、男の矜持、すべてが愛の中に垣間見える作品になると思います。

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    2025年02月25日
  • ワン・モア

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    桜木紫乃さんの本、文章は好きだけど暗くてじっとり湿気があるから読むのに体力がいる、と今日まで思っていました。
    大人の恋愛や感情の揺れを描かせたらピカイチなんだけど、なんかしんどい、と今日まで思っていました。

    今回は違った!違ってないけど違った。暗く湿り気はあるんだけど希望もある。
    現実的にありそうな話で綺麗事ばかりじゃないのが余計にいい。甘いだけの恋愛や都合のいいばかりの友情もいらない。
    胸に手をあてて読後感に浸りたい。四十代以上のちゃんと生きてきた大人に薦めたい本です。

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    2025年02月22日
  • ヒロイン

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    1995年の渋谷駅での毒ガス散布事件から始まり、無実の信者である岡本啓美の長い逃亡劇が描かれています。彼女は何も知らずに事件に巻き込まれ、他人を演じ続けながら17年もの間逃げ続けます。「いや逃げたわけではない。見つからなかっただけ」その間、彼女が自らの本当の“罪”を見つけるというテーマは非常に深いです。

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    2025年02月22日
  • ヒロイン

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    オーディブルで聴きました。
    久々に心にずっしりと来る小説でした。
    毒母に逆らえず、逃げるように入った宗教団体。知らないうちに全国指名手配犯になってしまう。
    母の呪縛が解かれ、宗教の教えもなくなり、初めて自分の意思で生きることになる。人を助けたり、人から慕われたり、友人ができたり、本気の恋をしたり、自分でない人間として生きた時間のなんと濃密なこと。
    最後に写真を撮るところからエンディングまでは、薄皮一枚で繋がっているからか、圧倒的な幸福感がある。圧巻、と言っていいと思う。
    最後までいって、プロローグに戻った。笑顔でよかった。それにしても、女性の心の描写が上手くて素晴らしい。
    ドラマ化されるとした

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    2025年02月04日
  • ヒロイン

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    ネタバレ

    実際の事件がモデルではないそうだけど、でもやっぱり誰もがあの事件、あの犯人を思い浮かべて読んでしまうのではないだろうか。
    だからもう少しリアルな感じかなと思って読んでみたけど、あくまでも作られたストーリーという感じ。
    でも読み応えがあってとてもおもしろい。

    宗教団体(現師)はもちろんだけど、母親もかなり罪深い許されざる人だと思う。
    「そんなふうに感じてると思わなかった」「良かれと思って」とか言い訳しそうだけど、実際はバレエが苦しいことを気付いてるはずだし、追い込んでいる自覚もあるはず。

    それはさておき、誰が通報したんだろうな。
    シンジではないと思う。
    家の大家か、職場の施設長かなー。
    周り

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    2025年01月22日
  • 青い絵本

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    絵本をフックに、新たな人生を踏み出してゆく5人の女性を描く。覚悟、決断、そして別離。彼女たちの強い意志が行間から立ち昇る。静謐で毛色が異なる深い短編小説でした。

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    2024年12月22日
  • 二周目の恋

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    (2023年12月21日の感想。帰りのバスで書く。)
    アンソロジーっていいよね。宝箱みたい。いろんな作家さんたちが一度に会していて豪華。

    この本を買った頃は丁度自分のなかで島本理生、窪美澄、一穂ミチのブームが来ていた。だからウッキウキで買って、そのあと暫く読めずにいたのを今になってようやっと読めた。

    面白かったのは綿矢りさ「スパチェラ」
    綿矢りさは、中学生の頃に『蹴りたい背中』、大学二年の秋に『勝手にふるえてろ』を読んだ。両方とも、それから今回の「スパチェラ」にも当てはまることだけど、今を生きる若い女の子を描くのが本当に上手。綿矢りささん自身は歳を重ねているのに、寧ろ作品のなかではより若く

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    2024年11月26日
  • 谷から来た女

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    民族とか出自とかでなくその人の生き方や生き様を見て判断してその判断を信じて流されずに自分の進む道を考えていかないとと思った。
    桜木ワールド好き。

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    2024年11月18日
  • 氷の轍

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    今見ないでいつ見るんだというタイミングでDVDが発掘されてドラマ見てますが、登場人物の名前以外ほぼほぼオリジナルストーリーじゃないですか。
    解説に制作経緯書いてあって納得したけど、これはもう、「原作」じゃなくて「原案」では?

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    2024年11月04日
  • ワン・モア

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    問題を起こして僻地に出向になった医師。母の理想になることを求めすぎて大切な人を失った医師。彼氏にDVを受けた元バイトを匿う店長。患者からの告白に淡い期待をしてしまうベテラン看護師。経済的理由で医学部進学を諦めたことを引け目に感じ続ける技師。それぞれの人生の綻びを紡ぎ直す話。

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    2024年11月03日
  • ラブレス(新潮文庫)

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    ラストシーンは3回読み返した。
     「溢れんばかりの愛と、愛になれなかったものたちが…」胸に迫って3回泣いた。

    死に向かっていく杉山百合江が握りしめている位牌。彼女の壮絶な波瀾万丈な生涯を通し、姉妹、娘たち、母親の人生も描かれていた。

    極貧生活の開拓小屋から出立し、病院のベッドに横たわるまで、百合江は生き抜いてきた。
    私には、許せない人たちがたくさん出てきて、幾度も怒りに震えたが、百合江は全てを赦してきたのだ。

    彼女の寛容さ、強さは誰も敵わない。
    百合江の人生は、決してみじめではなかった! 
    今年のベスト上位に入る

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    2024年09月06日
  • ブルースRed

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    桜木紫乃『ブルース Red』文春文庫。

    『ブルース』の続編。『ブルース』は極貧の中から這い上がる影山博人という孤独な男と、彼に溺れる女たちの姿を描いた連作短編集だったが、本作では影山博人の娘の莉菜を主人公に釧路の街で父親の影を追う独りの女の熱い生き様を描いている。

    本作は、ワルい女を演じる独りの女性を主人公にしたハードボイルドのような風合いの不思議な小説であった。著者は敢えて意識してなのか、端々で多くを描かず、読んでいると逆にその描かれない部分に想像が膨らんでいく。

    タイトルの『ブルース』のような小説ではなく、古いジャズの雰囲気が全編に漂う骨太の小説である。主人公の影山莉菜は街を支配する

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    2024年08月21日
  • 谷から来た女

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    1人のアイヌの女性をめぐり時代ごとに人々が翻弄され、成長する物語。
    上手にアイヌの文化が盛り込まれていると感じた。
    登場人物たちが作品と出会った時の感動を読者である私もヒシヒシと感じた。

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    2024年08月17日
  • 谷から来た女

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    ネタバレ

    現代におけるアイヌとは何か、に対する答えが、この中に見え隠れしている。それはアイヌに少しでも関心がない人には見えてこないかもしれない。

    シサムの間に入っていても見かけがアイヌらしくないからと言われる、デザイナーの赤城ミワ。アイヌ紋様をモチーフにしたデザインを手がけて世界に知られるようになるが、伝統的なものを踏まえつつ、自身でデザインをオリジナルにしていく。

    アイヌとして育ち、アイヌの文化をもつミワのバックボーンは、シサムの男にはない。彼らはミワにある種の怖れを抱くが、それは彼らの自信を喪失させるし、自尊心を奪っていく。

    女たちは違う。専門学校で一緒だった千紗、九州から文通相手に会いに北海

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    2024年07月29日
  • 家族じまい

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    ネタバレ

    介護の入り口の現実。
    身につまされすぎてどの登場人物にも共感と同情と批判と許容とがないまぜになったなんとも言えない感情がわく。

    さて、自分が親に対してどうするのか。どうしたいのか。自分はどうされたいのか。向き合わずに歳をとるのはもう逃げでしかない。

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    2024年05月11日
  • 俺と師匠とブルーボーイとストリッパー

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    今年のベスト10ランクイン候補!
    この、物哀しいのに明るい、そして前に進んでいく話、大好きだ♡
    桜木紫乃作品は3冊目、初の明るい作品。

    舞台は作者出身地の釧路のキャバレー『パラダイス』 
    主人公はそこで下働きをしている青年:章介。
    パラダイスに年末年始のショータレント3人がやって来る。

    北東の果ての凍てつく土地の哀愁と、いろんな人生を背負った人たち。
    タレント達と共同生活をする内に、章介も成長していくのだ。

    ブルーボーイという表現を初めて知った。シャンソン歌手やストリッパー、マジシャンの海千山千の人生論に唸った。

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    2024年04月04日
  • 俺と師匠とブルーボーイとストリッパー

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    久しぶりの桜木紫乃に、あぁやっぱり私が読みたい作家だと思っていたのに、しばらく進むと桜木紫乃を読んでいるということを忘れてしまいました。まるで高殿円の『グランドシャトー』を読んだときと同じ高揚感に駆られる。

    博打のためなら女房も売るような人でなしの父親が死に、母親とも離れてキャバレーに勤める章介。わずかな喜怒哀楽を表す場面もなかったような日々が、ドサ回りの芸人3人とひと月共同生活を送るうちに変わります。

    楽しくて、切なくて、永遠に読み終わりたくない気持ちに。北の国のキャバレーの話も最高だ。人生って、悪くない。

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    2024年03月25日