桜木紫乃のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
オーディブルで聴きました。
久々に心にずっしりと来る小説でした。
毒母に逆らえず、逃げるように入った宗教団体。知らないうちに全国指名手配犯になってしまう。
母の呪縛が解かれ、宗教の教えもなくなり、初めて自分の意思で生きることになる。人を助けたり、人から慕われたり、友人ができたり、本気の恋をしたり、自分でない人間として生きた時間のなんと濃密なこと。
最後に写真を撮るところからエンディングまでは、薄皮一枚で繋がっているからか、圧倒的な幸福感がある。圧巻、と言っていいと思う。
最後までいって、プロローグに戻った。笑顔でよかった。それにしても、女性の心の描写が上手くて素晴らしい。
ドラマ化されるとした -
Posted by ブクログ
ネタバレ実際の事件がモデルではないそうだけど、でもやっぱり誰もがあの事件、あの犯人を思い浮かべて読んでしまうのではないだろうか。
だからもう少しリアルな感じかなと思って読んでみたけど、あくまでも作られたストーリーという感じ。
でも読み応えがあってとてもおもしろい。
宗教団体(現師)はもちろんだけど、母親もかなり罪深い許されざる人だと思う。
「そんなふうに感じてると思わなかった」「良かれと思って」とか言い訳しそうだけど、実際はバレエが苦しいことを気付いてるはずだし、追い込んでいる自覚もあるはず。
それはさておき、誰が通報したんだろうな。
シンジではないと思う。
家の大家か、職場の施設長かなー。
周り -
Posted by ブクログ
(2023年12月21日の感想。帰りのバスで書く。)
アンソロジーっていいよね。宝箱みたい。いろんな作家さんたちが一度に会していて豪華。
この本を買った頃は丁度自分のなかで島本理生、窪美澄、一穂ミチのブームが来ていた。だからウッキウキで買って、そのあと暫く読めずにいたのを今になってようやっと読めた。
面白かったのは綿矢りさ「スパチェラ」
綿矢りさは、中学生の頃に『蹴りたい背中』、大学二年の秋に『勝手にふるえてろ』を読んだ。両方とも、それから今回の「スパチェラ」にも当てはまることだけど、今を生きる若い女の子を描くのが本当に上手。綿矢りささん自身は歳を重ねているのに、寧ろ作品のなかではより若く -
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桜木紫乃『ブルース Red』文春文庫。
『ブルース』の続編。『ブルース』は極貧の中から這い上がる影山博人という孤独な男と、彼に溺れる女たちの姿を描いた連作短編集だったが、本作では影山博人の娘の莉菜を主人公に釧路の街で父親の影を追う独りの女の熱い生き様を描いている。
本作は、ワルい女を演じる独りの女性を主人公にしたハードボイルドのような風合いの不思議な小説であった。著者は敢えて意識してなのか、端々で多くを描かず、読んでいると逆にその描かれない部分に想像が膨らんでいく。
タイトルの『ブルース』のような小説ではなく、古いジャズの雰囲気が全編に漂う骨太の小説である。主人公の影山莉菜は街を支配する -
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ネタバレ現代におけるアイヌとは何か、に対する答えが、この中に見え隠れしている。それはアイヌに少しでも関心がない人には見えてこないかもしれない。
シサムの間に入っていても見かけがアイヌらしくないからと言われる、デザイナーの赤城ミワ。アイヌ紋様をモチーフにしたデザインを手がけて世界に知られるようになるが、伝統的なものを踏まえつつ、自身でデザインをオリジナルにしていく。
アイヌとして育ち、アイヌの文化をもつミワのバックボーンは、シサムの男にはない。彼らはミワにある種の怖れを抱くが、それは彼らの自信を喪失させるし、自尊心を奪っていく。
女たちは違う。専門学校で一緒だった千紗、九州から文通相手に会いに北海