桜木紫乃のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
沁みる、沁みる。
それぞれ独立した6つの短編、「兎に角」「スターダスト」「ひも」「グレーでいいじゃない」「らっきょうとクロッカス」「情熱」。一つの短編を読み終えるたびに、しばらく余韻に浸りたくなり、次の短編へとページをめくる手が止まります。
桜木作品には『ホテルローヤル』をはじめ、「血」「業(ごう)」「因縁」「宿命」といったキーワードが思い浮ぶものが多いですが、主に60代前後、熟年から老境にさしかかる男女を扱ったせいでしょうか、この作品では、そういったドロドロとした関係性は少なく。もちろん全体を通して暗調で、突き抜けるような解放感はありませんが、柔らかな感じの作品集です。
特に気に入ったのは「グレーでいいじゃない」。35歳の女性サックス奏者がかつて組んでいた、還暦のジャズピアニストが亡くなった。その葬儀中に一人「G線上のアリア」を弾いていたのは、90歳の母親。彼女はクラシック至上主義の厳格なピアノ教師で、息子がジャズに転向してからは疎遠でした。しかしある日、この母親が主人公の出演するジャズハウスに現れ、見事にジャズを共演してみせます。この90歳の母親が実に格好良い。
最後の一編「情熱」は、北九州や下関が舞台となっています。「おや、珍しい。桜木さんが北海道以外を舞台にするなんて」と思いましたが、作中で「北海道以外の土地を舞台にするのは、何か心境の変化でも?」と聞かた主人公(北海道出身の男性小説家)が、「毎年ひとつでも何かに挑戦していかないと、仕事がなくなるんです」と語っていました。今後は“脱北海道”になるのでしょうかね。
角は有っても、その先端を随分と柔らかくして行く事で、年齢を重ねてもなお前に進み続ける人々を描いた作品集。 -
Posted by ブクログ
すごく良かった。
良かったという表現は不適切かもしれないが、すごく素晴らしい作品だった。
地下鉄サリン事件がモデルになっている作品であり、かなりセンシティブなテーマを取り上げている。
読む人によっては不快感を抱くかもしれない。
また、無実であるにも関わらず何故逃げ続けるのか不思議に思う人もいるかもしれない。
さっさと出頭すればいいじゃん、と。
いやいやいや...そんなこと冷静に考えられる精神状態なら最初からカルトに心酔しないんだわ...
逃亡生活の中で出会う多くの人々のバックグラウンドを丁寧に描いていて読み応え抜群だった。
この作品の心理描写の表現、とても好き。
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世間を震撼させた白昼のテロ事件から17年。
名を変え他人になりすまし、“無実”の彼女はなぜ逃げ続けたのか?
1995年3月某日。渋谷駅で毒ガス散布事件が発生。実行犯として指名手配されたのは宗教団体「光の心教団」の幹部男性と、何も知らずに同行させられた23歳の信者岡本啓美(おかもとひろみ)。この日から、無実の啓美の長い逃亡劇が始まった。他人を演じ続けて17年、流れついた地で彼女が見つけた本当の“罪”とはいったい何だったのか――。