2022/05/18リクエスト 2
★10
モロッコでカーニバル真子(英男、カルーセル麻紀)は日本で初めて「女の体」を手に入れた。
前作の「緋の川」での、カーニバル麻紀の人生を描いた、と簡単に言うには重すぎる話。
あたしは偽物の女なんかじゃなく、あたしの本物になりたい。本物のあたしになれるよう鍛
...続きを読むえてください。
モロッコのヤブ医者、ブルウにされた手術のおかげで、三途の川を渡りそうになったところを、一緒にパリに来ていた清羽が見つけてきた日本人研修医の風間のおかげで奇跡的に命拾いする。本当は研修医ですらなかったけど…
本物はどんな安物を穿いてもいい。
けれど、あたしは一流の皿に載せないと三流より不味い養殖魚になっちまう。
ところどころで出てくる実の姉、章子とのやり取りが痛々しい。英男はショコちゃんがいるから、マヤねえさん、ノブヨがいるから、居場所を探しているときにもやってこられたのだろう。
作家の北澤のことが好きで初めてした。
女の体が欲しかった。ちゃんと衣装を着こなして踊りたい。性別よりすわりのいい衣装を着た感じ。
あたしは母親以外の誰にも懺悔したくはない。
仕上げを間違った神様を許しながらやってきた。
だから誰にも許しを請わない、これからもない。
母親からの電話で、テレビ出演を喜んだり後悔したり。自分の胸に挟んでもらったチップを貯めて、母親に仕送りする。着物も山ほど贈る。
黙ってお金を使って欲しいが、実の兄に流れていそうで気になる、近所からなにか嫌なことを言われてはいないか、それも気になる。
母親には最後まで嘘を突き通して、それがひっくり返って真実になる。
そんな気持ちでいる、英男はなんて素敵な人なんだろう。男か女か、でなく、人として信頼できるのかどうか、その分かれ目だけなのだろう。
人として、一本の芯がある、そんな単純な言葉で伝えられない考え方の英男。そして英男(というかカルーセル麻紀)のお母さんやお姉さんのショコちゃん、この二人はどうしてこの時代に、こんなにもフラットな気持ちで英男に接することができたのだろう。
大きなテーマ、「男でも女でもなくあたしの本物」
この作品は、桜木紫乃にしか描くことのできない作品なのだろう。
どの作品も好きだけど、この作品は一番になりそうな気がする。