桜木紫乃のレビュー一覧

  • ラブレス

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    物語は、音信不通だった母・百合江の昏睡現場から始まります。理恵が従姉妹の小夜子と訪ねた町営住宅で、老衰した百合江が握りしめていたのは「杉山綾子」という名の位牌。理恵は、叔母の里美に促されてその位牌の謎を知る人物を訪ねていきます。ミステリーのような導入ですが、本書は百合江の生き様を描きながら「愛」の形を炙り出す物語です。
    北海道の開拓村で生まれた百合江は、奉公先を飛び出し、夢を追い旅一座に弟子入りします。一座が解散すると、百合江は弟弟子の宗太郎と深い仲になり綾子という娘を授かりますが、宗太郎は姿を消してしまいますーーーー

    百合江や妹の里美、そして母のハギは苦労します。ハギに至っては文盲でルコール依存症、夫や息子たちから暴力を受けても耐え続ける受け身で無力な存在として描かれ、手に職を持ちせっせと働く娘たちとは対照的です。本書に登場する男性がほとんど身勝手でクズなので、「女性の自立」「生きること」というテーマが際立ちます。一方で「ラブレス」というタイトルの意味も物語の展開とともにじわりと重要性を帯びてくるのがとてもいいです。
    そしてラストはめちゃくちゃ泣きました。こんなに涙が出た小説はひさしぶりです。作中のキーワードを反芻してまたうるうる(TᵕT)

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    2026年06月30日
  • 氷の轍

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          他ト我 北原白秋

         二人デ居タレドマダ淋シ、
         一人ニナッタラナオ淋シ、
         シンジツ二人ハ遣瀬ナシ、
         シンジツ一人ハ堪エガタシ。

    冒頭に書かれているこの白秋の詩で物語が始まる。
    もうわたしは曇天の暗い北海道に迷い込む…
    期待を裏切らない桜木ワールドの幕開けだ!!


    この作品は前作「凍原」の第二弾であり、北海道警釧路方面本部シリーズです。

    主人公を変え、一作目のバディだったキリさんが今作の主人公と組むといった設定です。
    キリさんがサポートしながら主人公の女性刑事が成長していくのも物語の重要ポイント。

    事件は北海道の海で発見された身元不明の老人…
    指紋からすぐに身元は判明したのだが情報量の少なさから捜査は難航する。

    北海道から青森へと被害者の足跡を辿るうちにわかってくる真実…

    もう大好物のストーリーです:.゚٩(๑˘ω˘๑)۶:.。♡︎

    そしてずっと暗い!哀しい!!
    桜木さん大好き笑

    全てが明らかになって読後の余韻に浸りながら
    冒頭の白秋の詩を再び読む!
    必ず読みたくなる!!

    切ない。゚(゚´Д`゚)゚。



    ちょっと印象に残ったセリフを残しておきます

    生きてきた時間に良し悪しなんてないんじゃないかって思う…自分しか生きる箱がないこととどう折り合うか、一生かけて考えるんじゃないか…

    善意の人だったと思うんですよ…言葉も言動も、なにもずれがない。ずれがないから他人の嘘と都合にも気づかないし気づけない…善意しか優先するものがないんです。

    感情は希薄なくらいでちょうどいい
    過剰なものを削ることも出来なければ、希薄なものを濃くすることも無理なんです。
    落としどころを見つけるのも、生きる作業のひとつじゃないかと思うんです…

    事実が真実とは限らない…
    氷の轍というタイトルが胸にくる(/ _ ; )


    桜木先生また警察小説書いて欲しいな〜





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    2026年06月24日
  • 異常に非ず

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    ネタバレ

    昭和54年の銀行立てこもり事件をモチーフにした作品。凶悪な犯人の男に焦点を当てつつ、その母親と、男の元交際相手の女の人生をたんねんにつづったフィクションだ。四十路でうまれた念願の男児がどんどん粗暴に、荒れていくさまをどうしようもなくなすがままにせざるを得なかった母親。男は重大な犯罪をおかした後に親元をはなれた。大阪へ出て女に会う。母親、女の人生を狂わせながら破滅する男。男の振る舞いにときに目をそむけたくなる。著者の筆致、関西弁の巧みさでぐいぐい読ませる。舞台回しは記者たち。いい味を出していた。

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    2026年06月22日
  • 家族じまい

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    どんな話なのかな〜と読み始めた。
    人物ごとに章があって、どれもやはりちゃんとおもしろいと思った。すごいなぁ。

    認知症は辛い。

    これから先の親のこと、自分のこと、夫婦のこと、子どものこと、いろんなことが頭に浮かんできて、考えさせられる。不安になるねぇ。

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    2026年06月10日
  • 蛇行する月

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    がむしゃらに純粋に生きる順子。
    周りはバカにしたり下に見ているのに、何故かそう感じている自分自身に寂しさや虚しさを感じる友人たち。
    目に見える分かりやすいものが幸せとは限らなくて、自分の幸せの定義は自分が決める軸を無理せずに貫いている。
    いくつになろうと、その順子の姿を見て周りが1歩踏み出して行く姿が勇敢で素敵でした。

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    2026年06月03日
  • 青い絵本

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    最初ページを開いた時は「スカスカだな」と思った。行間が思いの他取り過ぎてるのだ。タレント本に多いパターンで桜木紫乃さんどうしたの、と不思議だった。
    五篇全ての作品を読み終えて知った。この行間は計算されたものであったのだった。いずれの作品も読みごたえがあったが、表題の「青い絵本」にはより深い感動を覚えた。

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    2026年05月25日
  • 裸の華

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    自分にとって忘れられない一冊に出会えたという確信がある。気概に溢れ、今を今と割り切るさっぱりとした心を持っている登場人物たちがみな本当にかっこいい。私は禁欲的な生活をしている女性に(現実でもフィクションでも)とても憧れるので、自分の背筋もすっと伸びるようだった。物語の閉じ方も美しい。すべてを読者の想像に任せるのではなく、書くべきところまではきちんと書ききって、いつまでも心の中に余韻を残してくれた。映像化したらどんな深みが出るだろうと思う。期待したいしたいし、桜木さんの作品をこれからも追い掛けていきたいと強く思った。

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    2026年05月12日
  • ラブレス

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    友人に薦められ、というか、読んでみてと持って来てくれて……初・桜木紫乃さん
    最後の場面にぐぐっとくるから、と涙目で言われ、楽しみに読み始めました

    我慢強くたくましいオンナたち、そしてその周りのクズオトコ(その1、その2、その3……)、昭和といえどもこれはないだろう、と思われる環境や言動……
    私はとにかく、終始にわたってオンナたちの強さが心に残った

    そしてぐぐっときました、ゾワっときました、あの場面でのあのセリフ……スポットライトが当たっている2人の姿が浮かんだ
    余韻が長引く本でした

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    2026年05月08日
  • ヒロイン

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    ネタバレ

    サイン会で買って2年半ぐらい積んでたけど7月に文庫化するようだから慌てて読んだ。
    積んでたのを後悔するぐらい面白かった。

    訳も分からないまま追われる身になった主人公。
    周りに気づかれるのではないかと常にビクビクしながら暮らしていくのは息が詰まりそうになった。
    とはいえ優しい人や変わった人もいて教団にいた時より幸せだったのではないかと思えるほど。
    色んな人と出会って別れていくなかでどんどん本来の自分がなくなっていく虚ろさもあり読むのが止まらなかった。
    なぜこうなってしまったのか、いつまでこうしていくのか自問する主人公はそのまま読者の自分にも返ってくる感じがした。
    夢中で読んだけど、読後感は手からするりと物語が落ちていく感覚があった。
    良かったのになんかうまく言語化できないのがもやもやする。

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    2026年05月06日
  • 人生劇場

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    常に刺激を求めていく猛夫。理容師として大会での優勝を目指したかと思えば挫折。パンチパーマを北海道では先駆けて導入するも上手くいかず、遂には理容師を辞め、ラブホテル経営にまで手を出してしまう。嫁や子に手をあげるのは全く共感出来ないが、行き当たりばったりの様でも彼にしたら、その時はそうするしか無かったのだろう。まるで「横山やすし」だ。「ラブレス」「人生劇場」と読んだので「ホテルローヤル」も読まねばな。

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    2026年04月24日
  • 蛇行する月

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    自分の幸せとは何かを考えさせられる本になった。
    自分も他人と比較する癖があり、そこで優越感であったり、自分を卑下するなど、相手によって感情をコントロールされている。
    なので、この本の順子のように自分の幸せという核を知り、自分で自分の感情をコントロールしたいと感じた。

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    2026年04月19日
  • 砂上

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    「それはまるで、長いあいだ秘めていた感情を顧みて怒りにまぶしてゆくような作業だ」という表現が好き。「人に評価されたいうちは、人を超えない」については、なるほど、たしかにと思った。「なぜ小説を書くのか」という深いテーマのなかにヒトの優しさが見え隠れする傑作。

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    2026年04月19日
  • 人生劇場

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    猛夫みたいな人が身近にいたら、ほんとにもうどうしようもない奴だと思ってしまうんだろう。
    妻子を得ても、理容師としての腕や店を得ても、どうやっても満たされなかった猛夫の飢えみたいなものは、もし駒子と結ばれていたとしても満たされることはないんだろう。
    絶対叶わないものを求め続ける姿に人間の業を感じた。

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    2026年04月08日
  • 彼女たち

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    美しい写真と
    優しく、切ない言葉。

    短い文章の中に、ぎゅっと込められた想いがあり、
    それを風のように伝えてくれる写真。

    ページを繰るときに、
    涙が出そうになる。

    心の中の言葉。
    耳を傾けるように読み、
    胸あたためられる。

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    2026年04月07日
  • ラブレス

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    文庫カバーには表題がふたつ
    ラブレス と Love less
    愛がない? 愛を失った? 愛を感じない?

    人と人が心から理解し合うのはとても難しい
    言葉を尽くしても
    口から出ない言葉は聞こえないし
    思ってもいないことを言ってしまうこともある

    祖母と母と娘
    時代と個々の経歴が
    お互いをわかりにくくしているかもしれない
    けれど………
    それぞれが自分の判断で生きてきた道を
    誰にも否定はできないと思う


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    2026年04月02日
  • 情熱

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    ネタバレ

    物語の始めは設定や背景の説明が多くなりがちだが、この短編集はスパッと本筋入ってくる感じがする。余計な説明がなく読者の想像力に委ねられるところがいい。 「スチール」とか「寸借詐欺」とか想像でカバーできないところはググって調べる。
     『「挫折」という独りよがりなど及ばないかなしみを抜けようとしている』という表現は琴線に触れた。

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    2026年04月01日
  • ラブレス

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    北海道の貧しい開拓村で生まれ育ち、その境遇から自ら人生を切り拓こうと流浪の生活に身を捧げる姉の百合江と同じ境遇でも常に先を見据え堅実に進もうとする妹の里美。百合江の人生は幸せだったのか不幸だったのか、その様な事はどうでも良くなる、その時、その時を懸命に、自分の気持ちに正直に生きただけ、
    最後に妹の里美が流す涙に百合江の人生が家族全員に肯定された気がする…

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    2026年03月30日
  • 蛇行する月

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    月が蛇行。。。あまりに秀逸なタイトルに鳥肌が立つ。
    女神が降りてきそうなイメージの輝く存在とは真逆の、地を這うようにして土着的に生きる女性たちが主人公の連作短編集。なるほど、みんな蛇行して生きている。泥まみれだけど、どこかなんだか格好いい。そして輝く瞬間が周期的にやってくる。光はまたなりを潜めるけど、またも輝く時がくる。なるほどやはり彼女たちは月なのか。

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    2026年02月23日
  • 二周目の恋

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    全部の話が読みやすく、おもしろかった

    特に、綿矢リサさんの「深夜のスパチュラ」は、バレンタイン前夜の片想いする女の子の焦る心情の文章が共感すると共に引き込まれてた。

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    2026年02月23日
  • 情熱

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    説明めいた記述が全くなく、ただ情景が描かれているだけなのに、そこから登場人物の状況や関係性や思いが鮮やかに見えてくる。
    著者の、「いい歳をした」大人に対する暖かい眼差しがうれしい。

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    2026年02月20日