あらすじ
「あんた、葬式来る?」博打うちだった父の訃報を聞いても、キャバレーの下働きで糊口をしのぎ、廃屋のような寮に帰って寝るだけの章介の生活は何も変わらなかった。しかしこの年末は、キャバレーに出演する3人の芸人が、1か月共に寮で暮らすという。手品ができないマジシャンに女言葉の男性歌手、年齢不詳の踊り子。苦労の多い人生を送りながらも毎夜フロアを沸かせる3人に囲まれ、やがて章介は「淋しい」という感情を思い出していく――。舞台で出会った4人の共同生活が、1人の青年の人生を変えてゆく。
『家族じまい』『ホテルローヤル』の桜木紫乃が贈る、著者史上一番笑って泣ける”家族”小説。
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今年のベスト10ランクイン候補!
この、物哀しいのに明るい、そして前に進んでいく話、大好きだ♡
桜木紫乃作品は3冊目、初の明るい作品。
舞台は作者出身地の釧路のキャバレー『パラダイス』
主人公はそこで下働きをしている青年:章介。
パラダイスに年末年始のショータレント3人がやって来る。
北東の果ての凍てつく土地の哀愁と、いろんな人生を背負った人たち。
タレント達と共同生活をする内に、章介も成長していくのだ。
ブルーボーイという表現を初めて知った。シャンソン歌手やストリッパー、マジシャンの海千山千の人生論に唸った。
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久しぶりの桜木紫乃に、あぁやっぱり私が読みたい作家だと思っていたのに、しばらく進むと桜木紫乃を読んでいるということを忘れてしまいました。まるで高殿円の『グランドシャトー』を読んだときと同じ高揚感に駆られる。
博打のためなら女房も売るような人でなしの父親が死に、母親とも離れてキャバレーに勤める章介。わずかな喜怒哀楽を表す場面もなかったような日々が、ドサ回りの芸人3人とひと月共同生活を送るうちに変わります。
楽しくて、切なくて、永遠に読み終わりたくない気持ちに。北の国のキャバレーの話も最高だ。人生って、悪くない。
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「ボンと師匠とソコ•シャネルとひとみさん」
ギャンブル好きの父親 苦労させられる母親の姿を見て育った章介。幼少期家族との思い出も…。
言われるがまま人情薄く気がつけばヒモと思われても仕方がない生活。そんな彼がパラダイスに雇われたタレント個性豊かな3人と出会い賑やかな生活で人との出会い、別れが近づく寂しさを感じる短い期間で体験した素敵な思い出。
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自分の中の色々な感情が重なるし交差するし、
とにかくパラダイスに関わりたい気持ちになる。
長くもないのに濃すぎる思い出。
ふと気になって、まぁ買ってみるかくらいで買ったのに、こんなに良いとは、、、、
結末は寝る前の時間に読んでほしい。
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昭和の日本。
激しいのに何の規制もない日々。
人は一人ではないと。なんだか温かい気持ちになる。三島さんの後書きに企画があったように映画化を楽しみに、一人配役を妄想(笑)
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俺と師匠とブルーボーイとストリッパー
タイトルのメンツでの奇妙な共同生活が心地よかった。
難しいお節介も彼ら(彼女ら)には嫌味がなく、
かといって深入りしすぎない。
いつの間にかこの生活があと少し続くことを願いながら読んでいた。
実写化への熱量あふれるあとがきも良かった。
いつか観てみたいな。
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最高です!いやホントおもしろかった!
切なくて幸せで悲しくてほっこりする間合いが秀逸
久しぶりに本を読んで笑い声と涙が出た
スパイスの効いたロックでシャンソンなブルース
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桜木紫乃『俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』角川文庫。
ちょっと変わったタイトルの1人の青年の再生の物語。ラストの余韻が素晴らしい。
人生というのは山あり谷あり。すんなりと山を登り切れないのが人生だ。静かに暮らそうとしても波風は必ず起きる。それが家族のことだったり、家庭のことだったり、仕事のことだったりと。しかし、何があっても家族の支えがあれば、大概のことは乗り切れるものだ。そして、そういう困難を乗り切る度に人は強くなれる。
昭和という古き善き時代の北海道が舞台。
母親から博打打ちの父親の訃報を聞いても、キャバレーの下働きで糊口を凌ぎながら、廃屋のような寮に帰って寝るだけという名倉章介の生活は一つも変わることはなかった。
しかし、年末に師匠と名乗るマジシャンのチャーリー片西、女言葉の男性シャンソン歌手のソコ・シャネル、ストリッパーのフラワーひとみの3人がキャバレーに出演し、章介が暮らす寮で奇妙な共同生活が始まる。
苦労の多い人生を送りながらも、毎夜キャバレーのステージを沸かす3人と触れ合ううちに章介の中で何かが少しずつ変わっていく。
時代は平成に変わり、章介は東京で働いていた……
本体価格740円
★★★★★
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身を切るような北の地の寒さの中、諦観と無自覚な寂しさを抱えて日々を過ごす主人公。
マジシャンとブルーボーイにストリッパーという、個性の強い面々との出会いと、思いがけず始まった共同生活が、少しずつ冷えた日常をあたためていく。見守るような気持ちで読んだ。
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キャバレーで働く男のお話
マジシャン、歌手、踊り子の3人の芸人が
キャバレーで出るのでしばらく寮で暮らすことに
その生活、出来事の物語ですがとても楽しめました
3人の出番は年末までの期間限定なので
別れもくるのだけど・・・
読んでいてずっとこの4人の生活が続いて欲しいな
と感じました
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じんわりあったかくて、それぞれのキャラクターが非常に立ってて面白かった。別れのシーンは泣けました。
恋愛要素が出てきてしまってそこが少し残念でした。
そこは抜きで書ききってほしかった。
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北海道のキャバレーの下働き青年が、ドサ回りの出演者達と一時的に同居するお話
以下、公式のあらすじ
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「血のつながり」はなくても、そこには家族があった。
【第13回 新井賞受賞決定!】
切ない事情を持ち寄って、不器用な四人が始めた同居生活。
ギャンブルに溺れる父と働きづめの母から離れ、日々をなんとなく生きる二十歳の章介。北国のキャバレーで働きながら一人暮らしをする彼は、新しいショーの出演者と同居することになった。「世界的有名マジシャン」「シャンソン界の大御所」「今世紀最大級の踊り子」……店に現れたのは、売り文句とは程遠いどん底タレント三人。だが、彼らと言い合いをしながらも笑いに満ちた一か月が、章介の生き方を変えていく。『ホテルローヤル』『家族じまい』著者が放つ圧巻の人間ドラマ! このラストシーンは、きっとあなたの希望になる。
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冒頭で、3億円事件の時効が云々とあるので、時代は昭和とわかる
それを前提に読み進めるわけだけれども、当時は小学生だったので大人の世界の時代感がよくわからない
ギャンブル狂の父親は亡くなり、母もまた離れて暮らしているし、キャバレーの寮となっている酷くボロいアパートで侘しい生活をしているという状況なわけだけれども
二十歳の青年 章介はそんなに孤独を感じていないように最初は思える
まるで人生を諦めているような達観した姿勢だろうか
ひょんな事から1ヶ月間同居することになったタレント達
世界的有名マジシャンのチャーリー片西
シャンソン界の大御所のソコ・シャネル
今世紀最大級の踊り子のフラワーひとみ
しかし、赤西はマジックをとちりまくり、ソコ・シャネルはブルーボーイで(ブルーボーイという単語を初めて知った)、フラワーひとみはストリッパーにしては歳を取りすぎている見た目
彼ら彼女らにもそうなった事情があり、章介も共に過ごしていく中で少しずつ過去がわかってくる
公式でも「あの冬の1か月、たしかに僕らは家族だった。」と
この4人の関係を家族のように捉えている人がいるみたいだけど
個人的には家族的かどうかは疑問
じゃあ何かと聞かれたら、この共同体に適した単語が思い浮かばないわけだけれどもね
確かに家族的な何らかの繋がりはあって
人がいることで、章介が無くしていた寂しさを思い出していく事になる
寂しいのは、すっと一人でいるときではなく、大人数から独りになったときという事でしょうね
でもなぁ、共同生活の終わりとともに、キャバレーという自分にとって最低限の居場所からの脱却という終わり方は良かった
あと、心に残ったのは、お墓について
「会えないことを確認するために在るんだから」
というのが納得した
とある小説で、幽霊が怖いのは、幽霊が実はいないからというのがあって
故人を思い出す役目とともに、会いたい人に会えないという状況の再認識という意味もあるのだろうなぁ
大竹まことが、桜木紫乃さんの出身地である釧路のキャバレーへ営業に行った昔話をした際に
「その時のメンバーが “俺と師匠とブルーボーイとストリッパー”だったんだよ」と語ったエピソードが執筆のきっかけだそうな
何と言うか、話してるときの口ぶりが目に浮かぶなぁ
Posted by ブクログ
舞台が似合いそうなお話。頭の中ではすでに読みながら上演されていた。実際に舞台化したら見てみたい。
後半を読んでいる時は竹内まりやの縁の糸が脳内を流れていた。(キャバレーっぽくないけど)
みんないいキャラで、夜の世界を、芸事を心得ている感じで、その世界で出会ったら絶対仲良くなりたい!と思っただろうな。
先日読んだ千早茜さんの『男ともだち』でも思ったけど、何かをなくすならなくしきった方が、挫折するなら挫折しきった方が、中途半端よりもいいだろうなと思う。
別れもきっちりとする。そうしたら次の出会いを心から喜べる。
ついつい色んなものや関係をずるずる引き延ばしがちだけど、覚えておきたいなと思う。
Posted by ブクログ
タイトルに惹かれて読んでみたら、まさにタイトル通りの物語。
桜木紫乃さんが描く、北海道の寒々しさを感じる夜の世界の人々のお話、やっぱり好きだ。
北海道のキャバレーで雑用係として住み込みで働く主人公の章介と、年の瀬近くなった12月にそのキャバレーにやってきた、トランスジェンダー(ブルーボーイ)のシンガーソコ・シャネル、年かさのストリッパーフラワーひとみ、インチキ臭いマジシャンチャーリー片西(師匠)が送る、ひと冬の物語。
4人の関係性がとてもよかった。章介が住むキャバレー持ちの寮はねずみなども発生するくらいオンボロで、短期間ではあるけどその寮の別々の部屋に住む予定だったゲストの3人も、結局章介の狭い部屋に集まるようになる。
そこで食事をしたりするのだけど、その描写がとてもいい。かるく揉めたり、ぐだぐだ言いながらもいつも楽しそう。
4人はみんな訳ありで、「こういう生き方しか出来ない」感が漂う。だけど誰にも迷惑をかけてはいない。それを奥底で解り合っている4人だからこその、絶妙な空気感がある。
お互いに余計な干渉はしないものの、章介が母親に託された(?)ままほったらかしにしていた父親の遺骨を、真冬の墓場に4人でこっそり埋葬に行くくだりがとても好きだった。やってることは全然正しくないんだけど(笑)、阿吽の呼吸でやり遂げるところが素晴らしくて。
私も夜の世界にいたから敢えて言うけど、一般的に夜の世界に生きる人たちって「底辺」扱いされがちだと思ってる。実際はそうではなくても、昼間の世界の人たちがそう思っていることをひしひしと感じる瞬間が私自身あったから。
そして、そんなことで傷ついているようでは、やっていけない世界でもある。
蔑まれることでお金になるならいくらでも蔑めばいい、くらいのマインドが必要だし、そんなことで、プライドはひとつも傷つかない。
シャネルもひとみも片西もプロフェッショナルで、ステージは毎日きちんと盛り上げる。
ショーの描写にはそこはかとない哀愁が漂うけれど(舞台が場末のキャバレーだからなのか)プロの仕事をしっかりやりこなす人たちは格好良い。
そして4人に別れの日が来るのだけど、店の女たちに可愛がられながら風来坊のように生きてきた章介は、ここがターニングポイントであり、その先わずかにある未来の描写がまた心憎い。うらぶれた世界とは違う、希望的な場面がまた、とてもよかった。
これまでの桜木さんの小説とは共通点もありつつ雰囲気はちょっと違った。ひとりひとりの人物像に迫りすぎていないから、なのか。
すぐ別れがくることを知りつつ関わる4人の姿が、刹那的で濃密なのになんかあっさりもしてて、夜で生きる者の正しい姿だ、と思った。
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釧路のキャバレーで下働きをする、若い男が主人公。そのキャバレーへ余興に来た3人の芸人とのふれあいを描いた作品。その3人のキャラクターが個性的で、3人との絡みがめちゃくちゃ面白かった。
特に、自分の父親の遺骨を同じ名前の他人のお墓にこっそり納骨したシーンは、思いもしない発想で笑った。
Posted by ブクログ
昭和の場末の匂いまで漂ってきそうな雰囲気がたまらない。
登場人物のキャラが立っているので、映像化したらこの俳優だろうなあと想像しながら読んだ。
かなり悲惨な生い立ちの主人公と関わり合う人達の距離感が絶妙。
それぞれ訳ありでクセが強いが、素敵な大人達に出会えて良かった。
Posted by ブクログ
初めての作家さんです。登場人物のキャラクターがどれも個性的で、物語に立体感がありました。北の地、夜の世界のお話なのに、しんみりし過ぎることも無く軽やかに進んで読みやすい。心に影を抱えた者同士の、程良い距離を保ったまま心を開いていく様子…ありのままの姿で繋がる温もりを、感じさせてもらえた気がします。
Posted by ブクログ
カバーに惹かれて読みました。
桜木紫乃さんの作品は「ホテルローヤル」以来。
「ホテルローヤル」があまり私にはフィットしなかったので、この作品はどうかな?と思っていたけど、良かったです!
読み始めてすぐは章介の暮らしぶりの描写から湿っぽいお話かな?と思っていたけど、ショーに出演する3人が登場して章介と暮らし始めてからはガラリと変わった気がします。
この4人の関係がとても良かった。師匠もブルーボーイもストリッパーも、みんな良き人だった。
3人が釧路にいられる期間が決まっていたからこそのこの濃密な関係を築けたのかもしれないけど、3人と別れる時に章介が泣いて寂しいと思えるようになったことが良かったなぁと思います。
章介が転んだ時に助けてくれたタクシーのおじさんがよかった。あの場面が好きです。
釧路には行ったことがないのに、なんとなく釧路の風景が浮かびます。
Posted by ブクログ
題名に惹かれて読み始めた、初・桜木紫乃さん。読み終わりに「師匠〜」と章介の視線と重なって涙が出てしまった。
昭和の終わり、極寒の地、道東の港町にあるキャバレー「パラダイス」が舞台。
博打うちの父が亡くなりようやく解放された母から骨つぼを押し付けられ、綺麗好きなひとなら気絶しそうな寮で寝起きしているキャバレーの下働きの章介が主人公。
そんな折、月替わりゲストにやってきたのは、失敗ばかりするマジシャン、お寺の次男のシャンソン歌手ブルーボーイと自称28歳の口の悪いストリッパー。キャラ強めな三人となぜか一緒に住むことになって…というお話です。
読み進めるうちに当たり前だけど本のページが減ってきて、少なくなっていく本の左側の厚みに寂しい気持ちが募って、読み進めたいけど、読み終わりたくない…となってました。
あとがき…是非とも実現してほしい。シャネルのその後、ひとみさんのその後も短編でもいいから読みたいなぁ。
Posted by ブクログ
あの冬の1か月、たしかに僕らは家族だった。
「あんた、葬式来る?」博打うちだった父の訃報を聞いても、キャバレーの下働きで糊口をしのぎ、廃屋のような寮に帰って寝るだけの章介の生活は何も変わらなかった。しかしこの年末は、キャバレーに出演する3人の芸人が、1か月共に寮で暮らすという。手品ができないマジシャンに女言葉の男性歌手、年齢不詳の踊り子。苦労の多い人生を送りながらも毎夜フロアを沸かせる3人に囲まれ、やがて章介は「淋しい」という感情を思い出していく――。舞台で出会った4人の共同生活が、1人の青年の人生を変えてゆく。
『家族じまい』『ホテルローヤル』の桜木紫乃が贈る、著者史上一番笑って泣ける”家族”小説。
Posted by ブクログ
普段さみしさってほとんど感じることがない感情だけど、
主人公に感情移入して、ものすごく寂しくなっちゃった
共感したのは、
住む土地とか仕事とか、しがらみのない人に対して羨ましく思う気持ち。
もちろん自分を大切にしてくれる場所があるのも
自分が大切にしたい場所があるのも、とっても幸せなことなんだけど、
それがない人を羨ましいと思ったことは、
これまでにあったから、わかるわかると頷いちゃった
Posted by ブクログ
病院に入院中、院内のコンビニで購入。
本当に令和に刊行されたの?と思うくらい、昭和。舞台も昭和。境遇は最悪、男女の仲もドロドロ。しかし義理人情に溢れた世界。自分はあまり触れたことがないタイプの作品。自分の親世代のドラマとかではよくある世界だと思う。
自分が好きになるだろうと想像ができる作品ばかり読んでいると、自身の好きの世界を狭めてしまう気がしたので、あまり興味がなかった本作を読んだ。
自分の興味がそれなりに広がったと思う。
Posted by ブクログ
第13回新井賞受賞作
釧路のキャバレーで働く二十歳の青年
ギャンブルに堕ちていた「サソリのテツ」と呼ばれていた父親は亡くなった
葬儀にも出ず遺骨だけが彼の元へ
家族という存在に縁が薄かった青年は
「世界的有名マジシャン」の師匠
「シャンソン界の大御所」のブルーボーイ
「今世紀最大級の踊り子」のストリッパー
どさ回りの三人と 年を越す一カ月、キャバレーの寮で同居生活
社会からはみ出しているけれど、人としてなんだか暖かい人達
クセは強め 人情は厚め 後味が良い三人組
本当の家庭のような 一時の家族のような
彼らに出会った青年は、何かを求めて釧路を出ていく
Posted by ブクログ
辛い経験、苦労した経験が多いと人は優しくなれる。
章介は腐る前にほんとにいい人たちに出会えたな。
周りにもハチャメチャでわがままなのにちっとも嫌じゃない人いるなあ。
色んな空気を読み取ってる繊細で優しい人なんだとこの本読んで思いました。