桜木紫乃のレビュー一覧
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思い出して、思い出して、忘れて行くこともある──
釧路で書道教室を営む夏紀は、軽い認知症を患った母がつぶやいた、聞き慣れない地名を新聞の短歌の中に見つける。
父親を知らぬ自分の出生と関わりがあるのではと、短歌を投稿した元教師の徳一に会いに根室へ。ひとつの短歌に引き寄せられた二人の出会いが、オホーツクで封印された過去を蘇らせる……。
面白かった〜
徳一は教師時代に受け持った女生徒への後悔と懺悔を胸に抱えて生きてきました
夏紀が訪ねてきた事で過去の出来事を息子と共に探っていくんだけど…
徳一、息子、夏紀…それぞれの心情が丁寧に描かれてて良いの♪
曇天のオホーツクと過去を探っていくミステリー -
Posted by ブクログ
ネタバレ【あらすじ】
人間関係につまずいたイチコ。ある人のことばに背中を押されて生き方の舵を切り直した彼女は、一匹の猫との出会いで新たな感情を手に入れる。イチコ、モネ、ケイ。年齢も生い立ちも異なる三人の物語。それぞれやっかいごとを抱える彼女たちの人生は、とある喫茶店でかすかに交わる。店でひととき過ごしたあと訪れる、ささやかだけれどたしかな変化とは。 ひたむきに、今を生きるあなたへの一冊。読んだあと誰かに贈りたくなります。
『仕事も恋も結婚も、今しかできないことを選びつづけてきたのに。どうしてこんなに疲れているんだろう。』
【個人的な感想】
予想よりかなりページ数の薄い本だった。
綺麗な写真がたくさ -
Posted by ブクログ
貧しい開拓の村に生まれた女性の半生を描く大河小説。
「北海道の開拓の村」と聞くと明治を思い浮かべるが、
舞台はなんとザ・ピーナッツが流行した昭和の時代。
まずその設定に驚かされた。
クソビンボーな境遇から始まり、旅芸人となり、未婚の母となり、
数々の裏切りにあう百合江。
特に義母の嫌なヤツっぷりは全開で、思わずひっぱたきたくなるほど。
それでも百合江は、そんな困難な世の中をはんなりと交わして生きていく。
対照的な妹・里実のしっかり者ぶりといい、
登場人物ひとりひとりが丁寧に描かれていて、読後に余韻が残った。
同時期に出版された『ホテルローヤル』で直木賞を受賞しているのも納得の筆致。
個 -
Posted by ブクログ
5人の小説家の短編と、2人のクリエイティブディレクターのアンソロジー
テーマは九州の特別列車「ななつ星」に乗り込む乗客の物語だ
列車はたくさんの人を一度に運ぶけど、乗客の一人一人はそれぞれ特別な想いを持って列車に乗り込む
5人の作家さんが寄せたとても短い物語には人生という長い長い想いが乗っていることに気が付く
恩田陸さんの「お姉さん」が仕組んだ、複雑で切ない物語も時間の長さと、生きようとする想いの深さが音楽に乗ってやってくる
個人的には小山薫堂氏の言葉が圧巻だった
人から人へ繋ぐ想いが言葉となって、香り高く温かみを持って伝わってくる
「共感」という到達点はその気持ちを理解しようとする意識の -
Posted by ブクログ
この作者さんの作品は何点か読んでいます。大きな事件や修羅場などは一切なく、大人の静かな感情の中に潜む“情熱"を描いた作品ばかりかと思います。この作品はコロナ禍の頃に書かれたものでしょう、随所にコロナ禍について書かれています。あの騒ぎはなんだったんだろう…と、コロナ禍から2年経った今、全てが日常に戻ってみて"当たり前の暮らし"のありがたさに気づかされました。
さて、物語はどれも中高年というよりも定年、リタイア後の人達にスポットを当てて進んでいきます。
「もう、若くないから」と言いつつ、現実を受け入れ残された未来に向けて歩もうとする登場人物に自分の姿を重ねて読みました