桜木紫乃のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
釧路にあるラブホテル「ホテルローヤル」を舞台に、世界の隅っこで生きる人の物語が、短編が進むごとに時間を遡りながら展開します。
私が読んだ文庫本は、この本のサムネとは違っていて、大きなベットの上で女の人が膝に頭をつけて体育座っているものです。
窓からは日が差していますが、なんとも物悲しい表紙です。
この物悲しさが短編に共通する寂しさ、虚しさ、鬱々とした雰囲気にぴったり合っています。
大吉が仕事や自分の家族、愛人を丸ごと抱えるつもりで始めたホテルローヤルが、最終的に冒頭の短編では廃墟となっているのが虚しくて、人生の盛りや陰りを感じられ、なんともいい感じでした。
桜木紫乃さんと言えばタミヤTシャツ姿が思い浮かぶのですが、その桜木さんからこういう物語が生まれるのがまた面白いです。 -
Posted by ブクログ
時代やキャラクター的に昨今テレビでよく見るオネエタレントよりはカルーセル麻紀のようなイメージで呼んでました(解説では彼女がモデルとありました)。
今よりもゲイボーイがずっと奇異な目で見られていただろうなという時代。芸能界で生きるために私生活も体も切り売りして話題を提供し続けるカーニバル真子。心をすり減らしそうな毎日を反骨心と享楽的な性格で乗り切る彼女のストーリーは骨太で読み応えがありました。
虚構に生き続ける彼女が終盤で初めて本心を吐露する場面は少し涙ぐみました。はじめは頼りなかったマネージャーの坊やがその相手になれるほど頼もしくなったのも、彼女の芯のある生き方が影響を与えてのこと。とても面白かったです。 -
Posted by ブクログ
世間が求める「温かい家族」や「豊かな愛情」からはみ出しているのに、当事者たちはそれを一切「不幸」だと思っていない。
咲子、千春、そして、やや子。
母娘3代に受け継がれたのは、驚くほど「情の薄い」血脈だった。
一般的に「情の薄さ」は悲劇として湿っぽく描かれがちだが、彼女たちには被害者意識も相手への執着もない。血縁であっても互いを独立した個人として割り切り、淡々と自分の生を生きる。そのベタつかない乾いた距離感があるからこそ、この作品はドロドロとした重苦しさに陥らず、不思議な清涼感すら漂わせる。
主人公・千春の感情が徹底して伏せられているプロットも際立っている。
望まれた記憶もなく愛し方も知らず、胸の大きさに目をつけられては愚鈍だと見下される千春。
北の大地をさすらう彼女は、捉えどころのない怪物のようでもある。
だが、彼女の作品集が『星々たち』だと気づいた瞬間、全てが腑に落ちる。
千春にとって、出会ってきた人々は遠い空に光る星々なのだ。
血を分けた母や娘すらも遠くで輝く星。
そして身体を通り抜けていった男たちは、一瞬の光を放って風に消える星くずなのだろう。
情は時にはありがたく、時には鬱陶しい。それでいいのだ。そんな家族があってもいい。
世間の価値観や「不幸」の標準スペックを軽やかに無効化し、それぞれの足で立ち続ける女たち。
彼女たちの冷ややかで逞しい生きざまに、静かな救いを感じる傑作だった。