【感想・ネタバレ】無垢の領域のレビュー

あらすじ

道東釧路で図書館長を務める林原を頼りに、25歳の妹純香が移住してきた。生活能力に欠ける彼女は、書道の天才だった。野心的な書道家秋津は、養護教諭の妻伶子に家計と母の介護を依存していた。彼は純香の才能に惚れ込み、書道教室の助手に雇う。その縁で林原と伶子の関係が深まり……無垢な存在が男と女の欲望と嫉妬を炙り出し、驚きの結末へと向かう。濃密な長編心理サスペンス。

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Posted by ブクログ

桜木紫乃にはまりつつある。
中年の男女がメールの行間を読んだり嫉妬したり絶望してたり、じめっとしてるけどリアルな人間模様の作品。このまま終わっていくと思ったら、中盤とラストで2段階の衝撃にやられた。秋津のその後が知りたいような知りたくないような。
発達障害で、若く純真無垢な純香を介して、周りの大人たちが欲望や嫉妬でそれぞれ破滅していくようなぞくっとする一冊だった。

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2022年01月24日

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純香と龍生の母、それぞれの家庭が持つ闇の部分をうまく表現している。

最後がすごい純香からの龍生へのプレゼント!
こんな展開があるなんて!!!

桜木紫乃のすごさを見た。

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2017年05月16日

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覚悟はしていたけど、
重く苦しく悲しかった
それでも、桜木さんの小説は
読もうと思わせてくれる力強さがある
純香を思う、気持ちや葛藤
寝たきりの母親と息子の静かな駆け引き
なみだがとまらなくなりながらも
ゾッと背筋が寒くなったりして
人の心の奥底のこわさが辛かった

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2016年02月08日

Posted by ブクログ

 うわ〜…面白かったです。
他の方々の評価は、低めな印象でしたが、十分に面白かったと思います。

 じっとりした展開で、秋津親子にはずっと嫌悪を感じながら読みました。最後の展開も、あ、なるほど…と納得。伶子さんが秋津と離婚したら、幾分気持ちがスッキリするのに…とモヤモヤ。でも、最後の展開が周囲に発覚すれば、さすがに伶子さんも見限るのかな?

 私的に、嘉史にも、もう少しスポットを当てて、心情を描いて欲しかったなと思いました。

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2025年11月20日

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ネタバレ

生活能力には欠けるけれど書道の天才である林原純香が、民間に運営を委託されその館長となっている兄の元にやってきて起こす、周りへの人々の心のさざ波をえぐり出した問題作。書道家の秋津龍生はなかなか書道界で力を認められず、妻であり養護教員の怜子に経済的に支えられていたが、純香の件で林原館長に相談を受けてから男女の関係を持つ。秋津は純香の天才さに衝撃を受けつつ、そばに置くことを望んで自分の書道教室の教師として迎え入れる。林原館長には純香も馴染んでいる里奈という彼女がいるが結婚までは考えていない。秋津の母は、もうろくしているのか正気なのか定かではない状況。こうした人たちが抱える静かな嫉妬と羨望を、林原純香はそれぞれに気づかせていく。無垢である恐ろしさはそこにある。そして純香の急死。そこで人々の心のさざ波は薄らいでいく。
章ごとに主人公が違ったりして話の深みに入りにくいが、読み進めていくとざわざわとした心持ちになっていくところがこの小説の怖いところか。一度読んだだけでは、その深みに存在する「何か」を読み取るのは難しいかも知れない。自分も、その「何か」を探りあぐねて読み終わった。ジャンル的にはサスペンスらしいが、この作家の作品としては必ずしも成功作とは言えないのかも知れない。

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2022年07月24日

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結末は終わりではなく、始まりである。

思えば、この作品においてはすべてがそうかもしれない。
何かが終わること、それは取りも直さず、何かの始まりとまったくの同義なのだ。

全体の作りとしては、上質な、けれどももどかしい、大人の恋愛である。
大人の恋愛と本来は相反するプラトニックな愛と交流が(途中までは)描かれている。それを浮き彫りにしているのが不倫という道ならぬ恋と、母親の介護、日の目を見ない才能という生々しいものだ。
終盤に入って、物語は急展開を迎えるが、それはそれまでにたくさんあったわだかまりの、一つの出口の塊なのかもしれない。
心理戦(といってよいのか、わからないが、幾人ものモノローグが語ること)が多く、12回の連続ドラマにしたらもしかしたら物足りないかもしれない。けれどもだからこその重厚な物語の造形であるように感じる。

桜木紫乃さんは生身の人間を描くのが上手だ。
それもある程度、自分自身に諦めているような、自分の弱さを知っている、けれども懸命に毎日を生きている、どうにかして前に進んでいる、どうしようもない人を描くのが上手だ。
角度によっては、誰もがそういう弱さや生々しさを抱えている。それを教えてくれる。

絶対的な悪なんてどこにもいないのと同じように、絶対的な善なんてものも、やっぱりない。
人は思惑を持って生きている。その思惑に自分を染めている人もいれば、その思惑に辟易し、けれどもそれにすがって生きていくしかない人もいる。

そしてやはり、道東に行きたい。

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2020年06月30日

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本のタイトルにピッタリの話。無垢の領域がひたひたと広がり周りを侵食していく。桜木紫乃さんの人の心の動きを丁寧に書いてるところが好き。しかし呆けてる事を装いながら生活するほどの念、欲望って末恐ろしいわ。。

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2018年11月29日

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桜木さんらしい抑えた筆致は林原兄妹と秋津夫妻が出会ったことで、何かしら不幸なことが起こることを最初から予感させる。信輝、伶子、龍生の悩み揺れる心理描写に、いつ不幸が起こるのかと身構えながら読んでいる部分がありました。若干引っ張りすぎで冗長かなとも思えますが、1か所だけ純香の視点を入れたのは効果的だったと思う。彼女の才能が明らかになった時点でオチは予測できたけど、これから先、どうするのかなと余韻を持たせる終わり方だった。

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2016年05月31日

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大人の男と女、ある時は自ら共鳴し、そしてある時はすれ違う。そんなどうしようもない、滑稽ですらある交わりが一人の純粋無垢な女性を媒介にして饒舌に語られる。ちょっとした心の揺らぎや迷いを掬い上げる言葉の数々が鋭く迫ってくる。

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2016年04月17日

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違う人間の価値観で作られる違う人生が混ざり合う物語。
小説は1つの事件に全員が巻き込まれる形式が多いけど、この作品はそれぞれに事件がある中で全員がゆるく絡み合い、人生、という感じがした。

自分の卑屈さを紛らわすために、より惨めになりたい気持ち。
自分の冷たさに気づかないように傷を求める気持ち。
分の狡さを隠すために、相手に委ねる気持ち。
人間の汚い感情が丁寧に描写されていて、そこに存在する無垢が強調されていた。

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2024年07月24日

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北海道の地方を舞台に鬱屈した想いを抱えた三者三様な登場人物による愛憎劇とでも言おうか
主要登場人物3人誰もが煮え切らず共感はしにくいが、ストーリーとしては読ませる

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2021年11月15日

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ネタバレ

手本どおりの書道の作品をかける適応障害の純香が生きていればあの書は彼女の名前で応募したのかなと思った!親の過剰な期待で生きる世界が狭まる。沢山の親子の形が書かれている!

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2021年07月13日

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大人はみんな生きづらさを抱えながら生きていて、
幸か不幸かの線引きもできない。
親子も夫婦もきょうだいも、煩わしいと思っても簡単には捨てられないし縁を切れない。
自分の生きる道を探りながら、選んでいく。それが正解かどうかは分からないけど。
すっきり読み終える本ではなくて、生きていくことの"グレーさ"を感じさせられる物語。

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2020年11月12日

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今回学びました。桜木さんの本は、続けて読むものではないと。舞台は北海道、子どものいない夫婦、夫は甲斐性なしで妻が生計を立てる.....って、この間読んだ本と同じ設定や。ストーリーの大きな核は、子供の心まま成長できない天才書道家女子・純香なのだけど、彼女以外の登場人物が全てイヤだなぁ。各々の言動・心理描写が地味ーにイヤらしい。そしてラストにかけてがちょっとわかりづらくて、ネタバレサイト見たところ、ゾッとさせられた。心に墨汁を垂らされて、その染みがこすっても取れないような、そんな後味の書道にまつわる物語。

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2019年02月19日

Posted by ブクログ

桜木紫乃の作品は初作から全て読み続けているが、この作品だけは気に入らない。そういう結末だろうと途中で予測出来るし、もっと燃えるような男女の関係と人間関係の機微が描かれるものかと期待したのだが、見事に裏切られた。

まったく普通の通俗小説というレベル。一体、どうしたんだろう。

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2016年01月29日

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