あらすじ
【第149回直木賞受賞作】北国の湿原を背にするラブホテル。生活に諦念や倦怠を感じる男と女は“非日常”を求めてその扉を開く――。恋人から投稿ヌード写真の撮影に誘われた女性事務員。貧乏寺の維持のために檀家たちと肌を重ねる住職の妻。アダルト玩具会社の社員とホテル経営者の娘。ささやかな昂揚の後、彼らは安らぎと寂しさを手に、部屋を出て行く。人生の一瞬の煌めきを鮮やかに描く全7編。
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Posted by ブクログ
初読み作家さん。Instagramで広告で出てきて気になったので読んでみました。
時系列が現在~過去なので、次は章を逆にして読んでみたいな。
静かな寂しい感じの本でした。人間ドラマで読みやすかったです。
Posted by ブクログ
7篇のショート短編集。
最初の話で、舞台であるホテルローヤルはすでに廃業し、廃墟となっていることが示される。時代が逆戻りする構成で、読み進むにつれて、ホテルローヤルに関わってきた人たちのドラマがひとつずつ語られる。
自分は一人旅が好きで、旅先ではよくホテルの廃墟を見てまわる。
当たり前だが、どの廃墟にも、人が住み、人が訪れ、毎日さまざまな出来事があったはず。今は誰もおらず、建物も朽ち果てている。そんな事を考えながら廃墟を見ると、何もかも終わってしまうのだなあ、でも、その時々でそれぞれの物語があったのだなあ、と考える。それぞれの物語の中では、それぞれの人が主人公だったのだろう。
この作品でも同じことを感じる。作者の目線はやさしく、普通の人たちの日常、あっという間に消えていってしまい、誰も覚えていることもないだろう日常を、丁寧にすくい取り、語っている。
最初は映画から見たのだが、(仕方ないことがが)、原作の深みには及ばなかった。
集英社文庫、218ページ。
Posted by ブクログ
場所から連想する下世話な感じはさほどないけれど、好奇心は刺激され続ける。その中で交錯する人間模様は構成の妙と文学的な余韻に満ちている。外堀を埋めてからの高校教師と生徒のエピソードには唸った。グイグイ読めました。
全体を読むと
一つ一つの物語がそれとなくつながっていて、時間の流れもさまざまで、それが読者にその間の出来事を想像させる。そんな全体の構成はすごいと思う。
Posted by ブクログ
全体的に寂れててジメッとした雰囲気が漂う ホテルにまつわる連作短編集 時系列が通常とは逆で、廃墟となったホテルローヤルから始まり、終盤はホテル開業前まで時間が遡って描かれていく。ギリギリの生活をしている登場人物ばかりで、非現実感やそういった世界の恐怖なども感じる。どこか物悲しさが漂うが、不思議と引き込まれる作品だった。
Posted by ブクログ
たくさんの芸術家が影響を受けたと口にされているのので遅ればせながら。
すでに評価が確立された本に対していうのもあれだけど、面白かった。独特の世界観と呼ばれるものがなんなのかよくわかった。そして惹きつけられた。
行間から登場人物の人間味が感じられてとてもよかった。これを噂に違わず、というのだろう。
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章ごとに時間が逆行してるのはなかなかおもしろい。最初では廃墟になってるラブホテルが、章を追うごとに「こんな過去もあったのね…」となり、もの悲しい気持ちになる。
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読後、がんばらなきゃなぁとしんみり思った。普通の時系列だったらやるせなさの方が大きいのだろう。どちらかと言うと物悲しいホテルの歩みだが、おめでたい空気で読み終えられた。
作中もっとも好きだった教師と女子高生が、ホテルで心中した2人だと気づいたときの悲しさよ。2人のその後がもう描かれないと悟らされたのは、本作の時系列が生んだ残酷さである。どうか釧路行きを選ばないでいてくれ。
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それぞれが心の奥底に秘めた情念が行間からゆらゆら立ち昇ってくるような。
どの登場人物も多かれ少なかれ不器用な部分を持っていて、そこが良かった。
語弊を恐れずに言えば、ぱっと見はものすごく作り込まれた文章ではなく、さらっとナチュラルで読みやすい文章だと思う。
けれども噛み砕いていくとものすごく味わいがあって、厚みがある。文章の裏側に濃密な意味が込められているというか。
桜木さんの作品を読むのは初めてで、読むまでは男女の行為が全面に押し出された作風を想像していた。
けれど、その想像は良い意味で裏切られた。誰もが持つ人間としての寂しさ・哀しさを変に誇張したり矮小化したりせず、真正面から描き出している。その筆致に滲む淡い温もりは桜木さんの視線そのものだと感じた。
Posted by ブクログ
直木賞受賞作品。
過去へ遡りながら、ホテルローヤルを取り巻く人々の誰にも知られない人生のかけらたち。
最後まで読んだ後、再び初めに戻ると、ダイレクトではない人の感情表現が、より切なく深く感じました。
Posted by ブクログ
直木賞受賞作ということで、著者も、はじめてだが読んでみた。
連作短編集で、各章の終わりが中途半端であとは読者の想像で愉しむものかと思ったが、普通とは違い現代から過去へと流れていって、これは面白い。と思った。
ラブホテルという、ある意味世間から隔離された空間に、深みのある物語を嵌め込む技量を感じた。
まあ、評価は普通なんだけど。
Posted by ブクログ
煙のような透明感があって、生臭いのにさっぱりしていて、
不思議な連作小説だった。
せんせぇ、という作品が一番好きかも。
でも、どの作品もみんな一生懸命生きている人ばかりで、泣ける。
Posted by ブクログ
オーディブルで聴きました。
「ヒロイン」がとても良かったので期待して選びました。
暗くてみじめで少々エロいお話の数々。読後感も良くない。多少のハッピーはあるものの、アンハッピーが圧倒的に多い。現実ってそんなものなのか。。?私が無駄にポジティブなのか。
マウント取られている男に嫌と言えずにヌード写真を撮らせる女性。見かけが悪い故、檀家相手に売春することに納得している住職の妻(ってどんだけ設定が昭和エロいんだ)。。人生山あり谷ありかもしれないけれど、谷部分多すぎでは?
映画にもなってるけど、原作とはかなり違うっぽい。見てみようかな。
オーディブルのナレーションは極悪だったので、紙の本をお勧めします。
Posted by ブクログ
ホテルローヤルというタイトルで、背表紙にはその名前のラブホテルが舞台の小説だと書いているのに、最初の話でそのホテルが廃墟になってて、おぉ?と思った。
そしたら時間が逆行していった。
Posted by ブクログ
ラブホテルが題材になっている短編小説。どの話にも繋がりがあって、読んでいくうちにその繋がりが見えて面白い。同じラブホテルを舞台にしているのに、その時代によって全く違った印象になっている。1つのところを舞台にしているけれど、物語は人の数だけあるんだなと思った。
Posted by ブクログ
連作短編集。饐えた匂いを味わさせようとした話と思う。中でも『本日開店』の奥さん、『星を見ていた』のおばさん、は性生活含め饐えた凄みを放出していると思う。
Posted by ブクログ
短編で読みやすいと思うのだけど、ラブホテルがテーマだからかなんとなく全体的に陰鬱な雰囲気があって(それが良さでもあるんだけど、私には合わず)、なかなか読む手が進まなかった。短編の構成はとても面白かったけど、物語が全体的にさらっとぼやっとしてて、行間を読む力が乏しいせいか物足りなさを感じた。直木賞という期待もあったせいかな。
Posted by ブクログ
ホテルローヤルというラブホテルを取り巻く人々のストーリー。それぞれが短編なので、読みやすいです。ストーリーを読み進めると過去にさかのぼっていくのが、面白かったです。
桜木紫乃さんの作品を初めて読んだのですが、空気感を描くのがとても上手な作家さんだなと思いました。
Posted by ブクログ
ラブホテルを舞台に様々な背景の男女を描いたオムニバス作品。
章ごとに時間が逆行していく形式で、廃墟に至った経過が少しずつ明かされてくる作品。
1冊を通して”ホテル”という生き物の一生を見ているかのようだった。
Posted by ブクログ
釧路湿原の近くにあるラブホテルを舞台にした男と女の話、7編を収録。ラブホテルの名は『ホテルローヤル』。時系列が逆になっているが、そのホテルを建てるところから、廃業し荒廃していくところまでが描かれ、ホテルが主人公のようだ。
Posted by ブクログ
湿原を見渡せる場所に位置するラブホテルが舞台の連作短編集。
どのストーリーも湿っぽくて、物悲しくて、趣深い。
廃墟になったホテルローヤルから、現役のホテルとして色んな人に利用されていた時代を経て、ホテルができた頃の話へと遡っていく。
たくさんの人が少しずつ関わって歴史って積み重ねられていくんだな。
Posted by ブクログ
直木賞受賞作。短編7つで構成されている、ラブホテル ローヤルに関連した人間関係が描かれているが、未来から過去に短編が構成される。あまり結論的なことがなく、ちょっとモヤモヤした。
Posted by ブクログ
シャッターチャンス
加賀屋美幸
短大を卒業してから十三年「スーパー・フレッシュマートしんとみ」の事務を執っている。貴史にヌード写真を撮らせて欲しいと頼まれ、断れず撮影に備えてダイエットしている。
木内貴史
「フレッシュマートしんとみ」の正社員。宅配運転手。美幸の中学の同級生。地元パルプ会社のアイスホッケー選手だったが、二十八で右膝靱帯を損傷して引退した。
本日開店
設楽幹子
「歓楽寺」の大黒。結婚前は看護助手をしていた。
中学卒業まで養護施設で育ち、その頃施設に来ていた初代住職と出会う。
佐野敏夫
幹子の夫が二代目住職を務める「歓楽寺」の檀家のひとり。父親の興した水産会社を五十歳で受け継いだ。
設楽西教
「歓楽寺」の二代目住職。幹子とは二十歳が離れている。
青山文治
青山建設社長。歓楽寺の檀家。幹子にホテルローヤル社長の死に際を語り、遺骨を預ける。
田中大吉
ホテルローヤルの社長。
えっち屋
田中雅代
二十九歳。ホテルローヤルの二代目社長。高校の卒業式翌日に母が駆け落ちしたため、家業を手伝うことになった。ホテルで心中事件があってから閑古鳥が鳴いており、廃業を決める。
田中大吉
それまでの家族と仕事を捨てて、身ごもった愛人とラブホテルを始めた。
宮川
十勝のアダルト玩具販売会社・豪島商会の営業。三十九歳。
バブルバス
本間恵
専業主婦。狭いアパートで子ども2人と舅の世話に明け暮れている。そろそろパートに出たいと考えている。
本間真一
恵の夫。大手家電量販店・イマダ電機のフロア主任。店舗の売り上げが悪く、左遷されそうになっている。
本間太一
恵と真一の長男。
せんせぇ
野島広之
木古内の高校の数学教師。自宅は札幌で単身赴任。妻の里沙とは上司である校長に紹介され結婚した。
野島里沙
広之の妻。高校時代の担任と二十年にわたり関係を続けている。
佐倉まりあ
野島が担任する二年A組の生徒。両親は駅前で「チェリー」という喫茶店を経営していた。父が弟の借金を被り、母親は弟と出ていき、父親も出ていった。
星を見ていた
山田ミコ
ホテルローヤルの清掃婦。六十歳。生活のため、遅くまで働いている。子どもは三人いるが、みな中学を卒業してすぐに家を出た。
和歌子
ホテルローヤルの清掃婦。ミコをこの仕事に誘った。四十八歳。仕事は午後4時まで。
山田正太郎
ミコの夫。六十歳。漁師をしていたが、漁船員同士の喧嘩が元で、右脚の腱を痛めて船をお下りた。ここ十年はどこへも働きに出ていない。
田中るり子
ホテルローヤルの女将。大吉の後妻。ホテルに飲み物の補給にやって来るK珈琲の若い配達員と不倫している。
山田次郎
ミコの次男。二十二歳。中学卒業後家を出て、左官職人に弟子入りし自力で夜間高校を卒業したとミコに伝えていた。
ギフト
田中大吉
塗装業。四十二歳。同い年の女房、小学六年生になる息子がいる、るり子と不倫している。ラブホテルを経営したいと思っており、後にホテルローヤルを創業する。
るり子
中学卒業後、住み込みで団子屋で働いている。大吉のことを「おとうちゃん」と呼んでいる。
大吉の義父
娘が公務員との見合いを蹴って中卒の看板職人を選んだことを気に入らない。
Posted by ブクログ
あまり感情移入できずに最後まで読みました。あるラブホテルを巡る短編集なんですが、どの短編も尻切れトンボみたいな終わり方をして、消化不良でした。私には理解できない内容でした。
Posted by ブクログ
北海道釧路市のラブホテルをキーとして進んでいく、
第149回直木賞受賞の連作短編集。
少しずつ、でも、確かに深みにはまっていくような読感。
初めの一篇はなんのことなかったのに、
次の短篇を読み進めていくことで重なっていくものがある。
「つらさ」、「悲しみ」とか「寂しさ」とか、
そういう言葉が陳腐になってしまう。
たとえ人生の中の短い瞬間であっても、
そこに感情の多層性、現実の状況・局面の多層性、関係の多層性などがあることを
作者はそのフィクション表現のなかでつまびらかにしているからだと思う。
ラブホテル業はうしろめたい商売です。
そして、この小説に登場する人々は金銭的にだったり人間関係的にだったり、
日々の暮らしに追われている。
そんなほの暗く感じられるような世界なのですが、
どうしてか、優しさを感じるんですね。
逆に、陽のあたる場所で堂々と仕事をする世界のほうが殺伐としていることを、
逆説的に、暗に読者に知らしめているようにも思います。
巻末の解説が、ほんとにうまい解説になっていて、
読後の読解の助けになってくれました。
そうだよなあと思いつつ、余韻に浸れます。