【感想・ネタバレ】人生劇場のレビュー

あらすじ

『ラブレス』『ホテルローヤル』等、家族の光と闇を描き続ける直木賞作家・桜木紫乃のルーツ!

夢に生き、夢に死ね――
昭和の北海道。
己の城を求め、男は見果てぬ夢を追う。


【著者コメント】
書きながら改めて、生きることは滑稽だと感じました。
滑稽でいいと思うところまで、書けた気がします。
やせ我慢人生を歩いてきたすべての先人に、愛を込めて――人生劇場。


何もかもが赤く染まった鉄鉱の町・室蘭。
四人兄弟の次男に生まれた猛夫は、兄にいじめられ、母には冷たくあしらわれながら日々を過ごしていた。
心のよりどころは食堂と旅館を営む伯母のカツ。やがて猛夫はカツのもとで育てられることになる。
中学卒業後、理容師を目指し札幌に出た猛夫だが、挫折して室蘭に帰る。
常に劣等感を抱えるようになった猛夫は、いつか大きくなって皆を見返してやりたいと思うように。
理容師として独立、ラブホテル経営と、届かぬ夢だけを追い続けた男の行く末は。
自身の父親をモデルに、直木賞作家・桜木紫乃が北の大地で生きる家族の光と闇を描く。

【目次】
一章 鉄の町
二章 修業
三章 別れ
四章 長男
五章 夫婦
六章 闘い
七章 新天地
八章 落城

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

身勝手過ぎる猛夫の生き方に、巻き添えを食った妻娘らが痛ましい。また駒子も昔の情に絆され、波乱万丈の生涯を余儀なくされる。理容師の腕を磨き、家族を扶養し、弟子を育成し、師匠の恩に報いることが重荷だったのだろうか。いずれにせよ、暴力的な長兄一郎に近い、無謀な人生劇場に幕を下ろした猛夫。行間から哀しみが立ち昇るほどの素晴らしい筆致だった。

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2025年09月06日

Posted by ブクログ

昭和の北海道で生まれた次男の猛夫は、男兄弟に挟まれ両親の愛情の薄いなか、ただひとり伯母のカツだけが優しくしてくれ、そこで中学卒業まで育つ。

理容の道へと進みカツの元を離れるのだが、心身を滅ぼし戻ってくる…という始まりから理髪店を持ち家族をつくり、そしてホテル事業を始めるという、かなりの波瀾万丈の人生である。

幼い頃のひ弱で物静かなイメージから大人になるにつれて、こうまで変わってしまうのか…と思うほど感情が激しく抑えが効かない、欲しいものが目の前に現れるといてもたってもいられない性格に落ち着くことはないのかと思ってしまう。

伯母のカツが亡くなれば、駒子が心の拠り所となってはいたが、最後までそばにいるのは里美であることに何故かほっとした。

けっして平な道ではなく、苦悩や悲しみや怒りなどをぶち撒けながら、足掻きながら生きているというのが滲み出ていた。

人生はままならないものであるのが、これが生きているという現実なのだろう。



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2025年04月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2025/02/28リクエスト 1
まさに桜木紫乃作品。
室蘭で四人兄弟の次男に生まれた猛夫が主人公。兄にいじめられ、母には冷たくされる日々、そんな中、伯母のカツだけが猛夫を可愛がってくれる。養子でもなく口減らし的に、カツのもとで育てられる。理容師修行のため札幌に出たが精神的に崩し挫折して室蘭に帰る
その後、床屋独立、結婚、子どもが産まれ、ラブホテル経営と、山師的な生き様。
父親をモデルに描かれたとのこと、小説として面白く読めるが実際暮らすには大変な人だろう。この猛夫は幼少期に兄に暴力を受けたのに、結局、妻に暴力をふるう男になってしまった。あんなにカツによくしてもらって性根を入れ替えた、とはならないところが現実なのか…
妻の里美と、カツのところで幼なじみになり生涯付き合いの続いた駒子が信頼関係で結ばれるのも、女ふたりの本当の気持ちはどうだったのか気になる。
楽しみにしていた作品を読めて幸せ。

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2025年03月31日

Posted by ブクログ

桜木さんの作品は根底に暗いものが漂っている。
誰のせいでもなく、ただそこにあって、そこに生まれ落ちた人が宿命のように背負わされるもの
その不条理に涙が出てくる。
あちこちにぽこっと落とし穴があって、はまらずにすむ人と、はまってもがきまくる人と、その違いはなんだろうか。
夫婦は自分で選んだから責任はあるとして、親や兄弟は自分では選べないのに、しがらみから逃れられず、諦めなのか許せるようになるのは、自分自身も様々な人生経験を積んだ後なのだと思うと、なかなかしんどいな。

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2025年11月09日

Posted by ブクログ

北海道で生まれ育った男の一生を描いた作品。どこにでもいそうな、男性の生涯であり、めちゃくちゃドラマチックではないのだが、それゆえに共感できるし、物語に没頭してしまう。

幸せな人生か?どうかはわからないが、読後感が爽やかなのは間違いない。

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2025年10月20日

Posted by ブクログ

主人公の猛夫は幼少期より、両親や兄からどこか下に見られながら育つ。
その中で、彼らを見返そうと中学卒業後は床屋奉公に入るも、そこでも親方や先輩たちから疎まれ、技術を身につけつつある中で立ち去ることになる。
それでも、雑草魂は途切れることなく、自ら街中の床屋職人に弟子入りし、めきめきと腕を磨き、同じ床屋職人と家庭を持つ。

地域一の床屋職人となるも、それでは飽き足らず、床屋職人の腕を競う全国大会では入賞となり、不完全燃焼に。
その後は自分が人生を一発逆転させられるような、様々なビジネス話に手を出していき、妻子からも距離を置かれるようになる。

自分の生きたいように生きる情熱を絶やさぬ姿勢は一貫していたが、それが徐々に危うい方向に向かっていってしまった。
背景には幼少期から自分を疎んできた人たちを見返したいという思いがあったと思われるが、その情熱が短視眼的になると、時に危険を産んでしまうことになる。

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2025年08月13日

Posted by ブクログ

昭和の戦争前後の話は、重く苦しいことが多い。酷い時代だったなぁと思う。
そこを乗り越えて育ってきた主人公が、立派な人格者になるわけではない、か。
理髪技術の習得に一所懸命なすごい職人になったが、妻や子どもに手をあげる暴力描写には、思わず目を瞑る。が、レベルの差はあれ、職人だった父も、カッとなるタイプで、怖かったなぁ…
それでも離婚しない妻、最後は認知症。こうして書いていると状況が…うちと似てる。
ホテルローヤルが出てきて、え!その後、「家族じまい」も繋がってる?
読み直してみようと思った。

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2025年08月01日

Posted by ブクログ

前半は話が停滞してなかなか読み進まなかったが人生劇場がヒートアップするにつれ加速。ホテルローヤルが出てきた時はもしやと期待してしまった。

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2025年07月11日

Posted by ブクログ

おのれの欲に忠実に行きた男の一代記。著者桜木紫乃の父親がモデルだという。職業が理容師で後にラブホテルを経営した。その名前は「ホテルローヤル」なるほど、ここにつながるのかと妙に納得した。
父親は終戦を7歳でむかえた。貧しい魚屋の次男でその名を新川猛夫といった。時代がそうさせたのか分からないが両親とも長男だけを特別扱い。次男の猛夫は長男の一郎から壮絶なイジメを受け育った。そんな猛夫の唯一の落ち着ける居場所は母親の姉のカツ。芸者から身を起こし旅館を営んでいた。カツは両親から疎まれていた猛夫を親代わりのように面倒を見てくれた。旅館の女中、駒子もタケ坊と呼び可愛がってくれていた。しかし生来の気質か育ちの環境か卑屈な性格はあとあとまで響いた。
どうも主人公の猛夫には感情移入できない。はっきり言えばクズだ。卑屈さがバネになり人一倍の努力をして理容師になった。嫁も貰った。独立をして店を持った。2人の娘の父親になった。しかし、いつまでたっても満たされなかった。その感情を家族にぶつけた。言う通りにならない嫁に暴力を振るう、娘にも手を挙げる。今なら警察沙汰のDVだ。一郎から受けた暴力の連鎖だけでは説明のつかない猛夫の激情。カツも駒子も優しかったが、その優しさを素直に受け止めることができない男だった。
理容師の技術大会で全国に出場するもトップは取れない。その苛立ちを消化出来ずに駒子への情愛に溺れた。確かな技術を持ちながらも理容師に専念できず浪費を重ねた。浪費が金回りがいいように見えたのだろう。建築家が持って来た「うまい話に」に目が眩んだ。『おいおい辞めとけよ、うまい話には必ず裏があるぞ』と声を上げてしまった。いくらクズでもこの先に見える失敗をほっとけない気持ちになった。思わず、ここで感情移入してしまった。自分でも意外だった。

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2025年07月08日

Posted by ブクログ

ご自身のお父様をモデルに書かれた作品。
家族に手をあげる、他所に女を作る、ビッグマウスだけど仕事はなかなかうまくいかない…
あまり人様には知られたくないのでは?というような人生が描かれていた。そんな父親の人生を、文章にすることで客観視されているのかな。
「親の人生を肯定することが自分の人生を肯定することになる」という桜木さんの言葉にそんな思いが凝縮されていると感じた。
滑稽な痩せ我慢人生。自分が年を重ねていくにつれ、そんな親の人生をも愛せるようになるのかも。

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2025年05月13日

Posted by ブクログ

読み始める前にチラッと紹介文を見たら「ラブホテル」「自身の父親をモデル」という言葉が出て来て、これは『ホテルローヤル』に繋がる物語かと。。。同時に「不快な460ページだった。(中略)作者がこの男を長々と描いた意味が分からない。」と酷評している書評が目に入りました。
確かに何とも不快な主人公です。最初は真面目なのですが、理髪店の修行を終え結婚してからどうしようもない男になります。欲しいものが有れば後先考えず買う。山師。常に見栄を張って崖っぷちを歩かないと気が済まない生き方。自分勝手に生きながら、そんな自分を理解してくれないと女房・娘に手を挙げる。本当にどうしようもない男です。
読んでるうちに気が重くなって、しばらくするとページをめくる手が止まります。寝る前に読むとその印象が残るのでしょうか、内容は異なるれど同じ雰囲気の夢を見て寝覚めが悪い。
しかしね、流石に桜木さん、内容は不快だけれどそれを最後まで読ませる力が有ります。まあ、最後に年取った主人公が少し優しくなったのが救いでした。

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2025年04月30日

Posted by ブクログ

昭和初期に生まれ理容師となった男の、波乱万丈の人生を描く。

親兄弟からは疎まれて育ったものの、叔母や幼なじみからは過分な愛情を向けられ、感情の赴くままに身勝手を貫く主人公。
このダメダメ男のモデルは作者自身の父親だそうで、ご本人も登場するのだが、よくぞこれほど距離感を保って客観的に書けるものだと驚く。インタビュー記事によると、作中人物たちに自分の存在を気付かれないように、という意識で書いているとのこと、なるほど。

10年以上前に読んだ『ラブレス』は母親サイドの話で、本作と対を成すという。どの人物の言動にも共感するのは難しいのだが、どちらも作品としての底力に圧倒される。
昭和歌謡や演歌のイメージが重なる桜木節満載のこの作品、人生経験を重ねた読者ほど深く感じ入るものがあるのではないだろうか。

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2025年04月20日

Posted by ブクログ

作家の父親がモデル? ほんとに身勝手でどうしようもない男と思った。奥さんもよく我慢し、男たちを育てるのもほどがある。今は考えられない。私の身近に少し猛夫ほどではないがこの現在でも同じタイプの男がいる。今でも奥さんは腰が曲がっている者の一生懸命働いて居る.居酒屋 唐揚げ屋 キッチンカー でまた何かをしようとしてる.そのた度お金がいる。時々奥さんに「もうすぐ死ぬから」 もう少し頑張るように話す。猛夫も歳を取るまで奥さんのことに気がつかない男もどうしようもない。本を読んでいて腹が立った。主人が「腹が立つなら読むな」と言うが、最後まで桜木志乃の本なので読んだ。

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2025年04月19日

Posted by ブクログ

新川猛夫という男の波瀾万丈の人生。
壮大な大河ドラマのようだった。
伯母カツが惜しみない愛情を注いでくれたのに、実家の両親や兄妹の卑屈さと陰湿さがそれを台無しにしてしまうように思えた。
理容師として確かな技術を身につけ独立したのに、焦燥や苛立ちから妻へ暴力を振るい、身勝手な借金を重ねては見果てぬ夢を追い続ける男になってしまったのが残念。
自分の境遇を受け入れて女一人で生き、影で猛夫を支え続けた駒子の強さがかっこいい。

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2025年04月07日

Posted by ブクログ

まさに人生劇場。
波瀾万丈の一生を読み終えてお腹いっぱい。
読後、著者の父親がモデルになっていると知って驚いた。
まさに昭和の男といった感じで見栄と意地で生きているような男。
不快になる部分も多かったけど、時代背景においてこうだっただろうなと納得。

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2025年04月05日

Posted by ブクログ

戦前室蘭で生まれた猛夫が不幸な生い立ちから成功しようともがく話。

作者の父がモデルだそう。猛夫のコンプレックスとか欲望とか、わかるーと言いたいのと、全編に渡って暗いのと。ダメな自分を癒してくれたり、こんな男じゃダメだと叱咤してくれる。

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2025年04月01日

Posted by ブクログ

昭和13年に室蘭で生まれた新川猛夫の一生を描いた作品。桜木さんのお父上をモデルにして書かれた小説らしい。
主人公はもちろん猛夫だが、著者の目線は彼の周りにいた女性たちにより多く注がれている気がする。猛夫の母タミ、タミの姉であるカツ、カツの営む旅館の下働き・駒子、妻の里美などなど。彼女たちとの関わりによって、猛夫の人生が複雑に変わっていく。
男の見栄や矜持、弱さなどを考えさせられた。タイトルも含めて“昭和”の香りが濃厚に漂う作品だった。

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2025年03月21日

Posted by ブクログ

昭和から平成を生きる主人公のモデルは、桜木さんの実のお父さんだとは分かっていた。しかし、これほど嫌な主人公が居ただろうか。気弱なくせに承認欲求がめちゃ強い上に感情が昂ぶると妻に手をあげる猛夫。養母であるカツに可愛がられ、うまくいかなくなると親戚でもある幼馴染の駒子に慰められにいくのだが、最後まで掴めない男だった。彼だけでなく小説中に登場する男性陣は理解できない男が多かった。読んでいて胸糞が悪くなり途中で放棄するつもりだったのに、いつかはまともな男になるだろうと期待して最後まで読み終える。
最終章では猛夫が認知症になった妻の里美の面倒を看ながら二人の暮らしぶりが描かれていて、次第に私の憤りも収まったのだ。『人生劇場』という大上段に振りかざしたようなタイトルがなぜ付けられたのかもわかったような気もする。
自分の弱点や短所を知っていても直せないのは、誰だって当てはまる。足搔きながらもがきながら人は一度きりの人生を終えるのかもしれない・・・。今週、最終回だったドラマ『落語心中』を観終えた時に感じた切なさに似たような感情が過ぎった。

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2025年10月30日

Posted by ブクログ

救われない猛夫の一生を綴った物語。確かに思い通り行かなかったり、挫折することもあったり、家族とも上手く行かなかったり、騙されたりと色々あったのだが、戦中、戦後を駆け抜け平成まで生き抜けたのは勝ち組ではないかと思う。

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2025年07月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

あーあ。途中までは主人公のこと応援していたのに。妻に暴力を振るいだしてからがひどい。とある北海道の男の一代記。桜木さんの御父上がモデルだというのはホテルローヤルが出てきたあたりで「ハッ!」と気が付いた。昭和の悪いところを煮詰めたような男女の有様に心が痛くなったり怒りに震えたり失望でガッカリしたり、読むのがしんどい時もあったが読み応えはあった。でもこんな主人公では読者からの共感や応援は得られないだろう。彼に関わらければ女性陣にも違った人生があったのを思うと疫病神とすら思ってしまった。なので感動はしなかった。

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2025年06月30日

Posted by ブクログ

終始陰鬱なストーリー展開と主人公の猛夫に対する不快感とで読み進むのが苦痛なほどでした。
桜木紫乃さんの暗いストーリーは好みなのですが、お父様の人生、ご両親の人生を描いたホテルローヤル、ラブレスに連なるこの本作は誰にも共感できず。
生家で親に疎まれて育ったとは言いながら母親の姉である叔母に愛されて幼少時から引き取られて育ったと言う生育環境下でなぜにここまで?と言う思いでいっぱい。

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2025年05月26日

Posted by ブクログ

 感情表現がすごいね❢❢

 読んでるときはやるせなさ、歯がゆさ、空しさ、憤りを感じたのに〜〜読後感は爽やかな気持ちです。

 桜木紫乃の凄さがこの本でわかります。

 感動しました❢

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2025年04月28日

Posted by ブクログ

「ホテルローヤル」「ラブレス」に連なる、作者の家族を描いた作品。

作者の父親がモデルだという主人公の猛夫。卑屈で身勝手で、怒りに任せて女子供に手を挙げる、どこまでも自分本位で身勝手で、山気があって、堪え性がない。
読んでいて本当に不快になるけれど、こういう親父昭和初期生まれにはザラにいたな〜とも思う。

「男だもん仕方ないんだ」と我慢し、受け入れ、甘やかせてきた女がこういう男たちを育ててきた時代だったと思う。
カツ、駒子、里見といった女たちは皆、強かでたくましい。そして作者自身投影した春生も。

「親を肯定することは自己肯定に直結する」という作者が、この小説を書いて親の生き方を肯定できたと言う。
こんなどこにでもいるダメ男の人生をここまで“劇場”にできるのはやはり、作者の筆力でしかない。

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2025年04月03日

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