【感想・ネタバレ】ブルースRedのレビュー

あらすじ

誰にも負けなかった釧路の女が、最後に守りたかったもの

釧路の街を裏社会から牛耳る影山莉菜は、ある青年を代議士にしようとしていた。人を裏切り、裏切られてきた女が最後に見た景色とは。

父の死という重い十字架を背負った女・影山莉菜は釧路の街を裏社会から牛耳っていた。亡父である博人の血をひく青年を自らの後継者とするため、代議士への道を歩ませようとする。だが、かつてのやり方では街を支配できなくなり、後継ぎとなるはずの青年も……。裏切りに直面した彼女が、人生の最後に見た景色とは。解説・宇垣美里

※この電子書籍は2021年9月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。

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Posted by ブクログ

桜木紫乃『ブルース Red』文春文庫。

『ブルース』の続編。『ブルース』は極貧の中から這い上がる影山博人という孤独な男と、彼に溺れる女たちの姿を描いた連作短編集だったが、本作では影山博人の娘の莉菜を主人公に釧路の街で父親の影を追う独りの女の熱い生き様を描いている。

本作は、ワルい女を演じる独りの女性を主人公にしたハードボイルドのような風合いの不思議な小説であった。著者は敢えて意識してなのか、端々で多くを描かず、読んでいると逆にその描かれない部分に想像が膨らんでいく。

タイトルの『ブルース』のような小説ではなく、古いジャズの雰囲気が全編に漂う骨太の小説である。主人公の影山莉菜は街を支配するためには女衒にも殺人者にもなるのだ。


霧の立ち込める釧路で極貧の中、六本の指を持って産まれた影山博人は、自ら六本目の指を切り落とし、夜の支配者としてのし上がる。しかし、博人は殺害され、博人を殺害した男は娘の莉菜に嬲り殺される。


かつて父親の用心棒を務めた齋藤弥伊知に助けられながら釧路の街を裏社会から牛耳る影山莉菜は、昔のやり方では街の支配が難しいと知り、父親の忘れ形見ではある松浦武博を跡継ぎに考える。

武博を釧路の市長に据え、後には国政に進出させようと陰から手を差し伸べる莉菜の前に、かつて博人により市長の座を奪われた元市長の娘が現れる。元市長の娘で女医を務める儀俄内あすみは、莉菜の助言で釧路市長に立候補し、あっさり当選してしまう。

あすみは市長を3期務めた後、その座を武博に譲るという約束だったが、莉菜はあすみと武博、武博の父親にまで裏切られ、釧路の街を捨てる決意をする。

本体価格700円
★★★★★

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2024年08月21日

Posted by ブクログ

 前作より続編。偉大なる父を亡くし、その後を継ぐ義理の娘の莉菜の人生を描いている。

 話はハードボイルドで、裏の世界が描かれている。淡々と歳月が進み、余計な文章はなく、読みやすく、面白かった。

 前作より、終始暗いが、その暗さが好きで、くせになる。

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2025年11月18日

Posted by ブクログ

ブルースの続編。
殺された義理の父から娘に主人公が交代。
前作もそうだったと記憶しているが読んでいる時に頭でイメージするのだがずっと白黒映像で展開していくのが妙に心地良かった。
内容は影山博人の後継者となり釧路のフィクサー的な役割として生き抜いていく様を描いているのだが、事柄に焦点を当てるのではなく、生き様そのものを冷静に淡々と描いているのがハードボイルド的というか渋くてカッコ良かった。
また、博人を父としてだけでなく、男としてヒロトと表現しているのもカッコ良かった。
タイトルに相応しい作品。

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2025年01月30日

Posted by ブクログ

『ブルース』の続編として本書を手に取った読者は、影山博人に恋をしていると思う。

本書の主人公:莉菜は、継父の博人に恋焦がれ、この世にいない博人の亡霊をいつも追いかける。
莉菜の目標は、博人の遺伝子を受け継いだ武博を、代わりに担ぎ上げること。
道東の釧路の裏社会を牛耳るも、その土地をどこかで恨んでいる。

『ブルース』は博人の視点で描かれなかったが、本書は莉菜の視点でしか語られていない…両書とも【女目線】なのだ。

「男と違って女のワルには、できないことはない」は莉菜の呪縛ではなかったのか⁈
紫乃氏作品は、余韻が凄い。

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2024年09月29日

Posted by ブクログ

釧路の裏社会を仕切る男の死後。妻と娘が跡を継ぐと書けばハードボイルドだが、娘の心象で語られていく。残された女の哀しみ。

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2024年08月14日

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