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Posted by ブクログ
二人暮らしの夫と妻 交互の視点で描かれた連作短編集。
『ふたりぐらし』というタイトルに
同じ身の上として食指が動いた。 ただ 私の場合はプラス 猫一匹とときどき義母だけれど。
定職に就かず脚本家の夢を追う不惑の夫・信好とそれを支える看護師の妻・紗弓 三十五歳。
信好の胸中は常に自尊心と妻への遠慮でせめぎ合っている。一方 紗弓は収入の大部分が生活費に消えてしまい ごく近い将来さえも見えないという不安を抱えている。
家計のやりくりもさることながら、
お互い 相手を傷つけないように そして自分も傷つかないようにと気持ちのやりくりも大変そうだ。
本書には様々な形の “ふたり” が出てくる。 信好と紗弓のように相手を慮って思っていることを言えないふたり。
思ったことをズケズケ言う紗弓の母とそれを笑って受けとめている紗弓の父たちのようなふたり。夫が定年退職する日 玄関で迎えてあげたいと言った紗弓の同僚。長年の想い人への手紙の代筆を紗弓に頼んだ入院患者の老婦人。
つよくひとりを意識しながらふたりを生きる岡田と百合。
どの形が良くてどの形が悪いなんて誰が言えるだろうか……
読んでいて三十代の頃を思い出した。
二人から三人になることはなかったけれど 今がいい。
よい短編集でした。
Posted by ブクログ
子どものいない夫婦の日常が、淡々と描かれています。仕事を選び働かない夫が出てきますが、家事はしますし、妻も生活優先で給与の安い勤務先に転職した過去があります。
経済的には厳しいけれども、相手を批判せず、互いに認めながらも、どこか言い出せない秘密がある。そんな夫婦の話。
結婚は当人同士の話ではあるけれども、互いには育ててくれた親があって、それがどんな親であれ、関係ないとは割り切れない当人たちの気持ちが丁寧に描かれています。
家族を想う言葉が、ストレートすぎれば反発を招き、気遣いが過ぎれば重くなる。縁の切れない家族との付き合いは他人よりも難しい。
切なく優しい大人向けの話でした。
Posted by ブクログ
子供のない30代の夫婦の話
夫は映画の脚本家になることを諦めきれず定職はない。実家では母親が一人で暮らしている。
妻は看護師として働き生活を支えながら実母との確執に悩む日々。
夫がいつもの桜木さんの作品に出てくるクズ男だと思ってたら違うのよ笑
妻もわたしのイメージの看護師とは違うし…
お互いが相手に気遣いながら波風を立てないように
暮らしている日常が、夫と妻の視点から交互に語られていきます。
自分の至らなさに悩みながらも相手に対して不満を持つことはない。
劇的に変化が起きることもないし。
この空気感にイライラする人には向かない作品だな
わたしには良作でした:.゚٩(๑˘ω˘๑)۶:.。♡︎
作品中心に残ったフレーズ
「自分はひとり娘だ。親のことでは責任ばかりが重たい、一人っ子という点では信好も自分も、換えのきかない指定席に座っているようなものだった。」
このくだり…
「おびさ〜ん」と叫びたくなった。゚(゚´Д`゚)゚。
Posted by ブクログ
書いてる方が多いけど、良作。
思ったより平均の☆が低いけど、わたし的には4.5くらい!
こういう、どこにでもいそうな、なんでもない日常がいちばんリアルでおもしろい。
看護師の紗弓と、脚本家を目指す信好。夫婦と、それぞれの家族と、それぞれを取り巻く人たちとのお話。
愛情と絆で結ばれているけど、だからこそ知られたくない姿があって、聞けないことがある。
相手のことをすべて知るなんてできない。知らない顔がある。あたりまえのことかもしれないけど、その微妙なすれ違いがうまーく書かれている。
一番印象的だったのは鰻の話。信好が母と食べた鰻。その店の前を通った時に、信好は母を思ったのだろう。でも、そのことを知らない紗弓は、信好が鰻を食べたいけれど決して口に出さないのだと思う。
こういうちょっとした思い違いって、どこにでもあるよなぁ。
紗弓の嫉妬の仕方とか、モヤり方とか、すごく共感。時間を置いてもう一度読みたい。
Posted by ブクログ
もし子供を授からなければ、この先ずっと夫との「ふたりぐらし」を生きていくんだな。
不妊治療をしていた頃、そんな風に考えることで授からなかった時に備えようとしていた。子供の声がしない、大人2人の生活。2人の為だけにお金も時間も費やせて、それはそれで静かで満ち足りた人生じゃないか、って。治療生活が長引くにつれ、保険のようにそんな想像をすることもしばしばだった。
そんな時に、書店の店頭で本作に出会って、なんとなく手に取ってから早数ヶ月。
2ヶ月前に私たちのもとに来てくれた赤子がスヤスヤと寝ている隣の部屋で、ようやく本作を読み終えた。完全に読む時期を逸した感があるけど、こういう読書体験もあるあるだよね。
脱線してしまった。
本作の感想に話を戻そう。
本作の主人公は2人の夫婦。
脚本家を目指す無職の夫と、
看護師の仕事を掛け持って家計を支える妻。
交互に描かれる2人の視点の物語です。
ボケ始めた母親の通院に付き添いながらも疎ましく思う男の鬱々とした日常が導入部なので、終始この感じだと読み進めるのキツイなあと思っていたら、ところがどっこい←
読み進めるにつれ、この夫婦がめちゃくちゃ魅力的になっていくから面白い。
特に、夫の前では明るく立ち振る舞う妻が、実母に対して感じている後ろめたさや苛立ちなんかが、すごくリアルなのに嫌な感じじゃないのが良かった。自分の夫を「ヒモ」呼ばわりされたら、いくら血の繋がった母親が言ったとしてもムカつくよなあ。
本作の最大の魅力は、この女性です。
この女性が、かなり人間デキている。
甲斐性無しの夫に対して、彼女がめちゃくちゃ愛情深く接してるのが素敵なんですよ…。普通はさ、定食も安定した収入もない夫に対しての妻の態度なんて推して知るべしじゃん。この女性はそんな夫を優しく見守ってて、何なら看護師の仕事掛け持ちで日勤の後に夜勤のバイトまでしてるんですよ。しかもそれをイヤイヤやってるんじゃないの。夫がやりたいことでいつか身を立ててくれたらいいなって見守ってくれてるの。糟糠の妻じゃん。愛じゃん…。
(本作、作者が女性じゃなければアンチが湧いた気がする。「こんなん男が求める理想の女像じゃん」みたいな感じで)
そんな妻の愛に胡座をかかずに葛藤する夫もまた魅力的なんですよね。読んでて「もうちょいしっかりしなさいよ旦那さん」と軽くヤキモキはするんですが、後半にそんな読者を安心させてくれる展開が待ってるんで無問題。
私と夫は、こうあれるかな。
お互いのことを大事に思い合いながら、二人にとって一番形のいい夫婦になれるかな。
そんなことを、小さなお手手を頭の横でパァの形に開く我が子の寝顔を見ながら思う夜更けでした。
「さんにんぐらし」、頑張ろうね。
Posted by ブクログ
「岡田さんとおつきあいさせていただいているのは、母を一緒に看取って欲しいのではなくて、母に忘れられてゆくわたしを、誰かに見守って欲しかったからなんです。同性じゃだめなのね。どこかに憐れみが混じるから、お互いによくない。ふと見回してみたときに、職場にも職場以外にも知人はたくさんいたけれど、異性と思えるような相手はいなかったの」
「お見合いというかたちを選んだのは、なぜですか」
「知り合う時間を待てなかったの。本当は時間をかけてお互いが理想のひとに育ってゆくのがいいのだけど、自分にはもうそこにかける時間がないんだなって気づいちゃった。……」
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