あらすじ
元映写技師の夫・信好は、看護師の妻・紗弓と二人暮らし。映画脚本家の夢を追い続けて定職はなく、ほぼ妻の稼ぎで食べている。当の妻は、余裕のない生活で子供を望むこと、義母との距離、実母との確執など、家族の形に悩む日々だ。幸せになるために生涯を誓ったはずなのに、夫婦とは、結婚とは、一体何だろう。夫婦が夫婦になっていく“家族のはじまり”を、夫と妻交互の視点で描く連作短編集。(解説・友近)
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元映写技師の信好と看護師の紗弓の物語。
結婚したはいいが信好に定職はなく経済的に紗弓に支えられている。
色んな出来事の中で2人が成長していく様子が窺える。
しっかりとした愛情を育てている2人にこちらも幸せになれました。
読んでいてホッとしたり共感できる場面もたくさんありました。
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桜木さん作品の男性といえば、DV気味のクズ男かヒモ男(口が悪くてすみません…)が多いのですが、今回は違いました。
頼りない男性が描かれているのですが、桜木さん作品にしては珍しくほっこりするお話でした。
私的には実家をリフォームして暮らし始めるあたりがなんだか温かく優しい気持ちになりました。
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書いてる方が多いけど、良作。
思ったより平均の☆が低いけど、わたし的には4.5くらい!
こういう、どこにでもいそうな、なんでもない日常がいちばんリアルでおもしろい。
看護師の紗弓と、脚本家を目指す信好。夫婦と、それぞれの家族と、それぞれを取り巻く人たちとのお話。
愛情と絆で結ばれているけど、だからこそ知られたくない姿があって、聞けないことがある。
相手のことをすべて知るなんてできない。知らない顔がある。あたりまえのことかもしれないけど、その微妙なすれ違いがうまーく書かれている。
一番印象的だったのは鰻の話。信好が母と食べた鰻。その店の前を通った時に、信好は母を思ったのだろう。でも、そのことを知らない紗弓は、信好が鰻を食べたいけれど決して口に出さないのだと思う。
こういうちょっとした思い違いって、どこにでもあるよなぁ。
紗弓の嫉妬の仕方とか、モヤり方とか、すごく共感。時間を置いてもう一度読みたい。
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もし子供を授からなければ、この先ずっと夫との「ふたりぐらし」を生きていくんだな。
不妊治療をしていた頃、そんな風に考えることで授からなかった時に備えようとしていた。子供の声がしない、大人2人の生活。2人の為だけにお金も時間も費やせて、それはそれで静かで満ち足りた人生じゃないか、って。治療生活が長引くにつれ、保険のようにそんな想像をすることもしばしばだった。
そんな時に、書店の店頭で本作に出会って、なんとなく手に取ってから早数ヶ月。
2ヶ月前に私たちのもとに来てくれた赤子がスヤスヤと寝ている隣の部屋で、ようやく本作を読み終えた。完全に読む時期を逸した感があるけど、こういう読書体験もあるあるだよね。
脱線してしまった。
本作の感想に話を戻そう。
本作の主人公は2人の夫婦。
脚本家を目指す無職の夫と、
看護師の仕事を掛け持って家計を支える妻。
交互に描かれる2人の視点の物語です。
ボケ始めた母親の通院に付き添いながらも疎ましく思う男の鬱々とした日常が導入部なので、終始この感じだと読み進めるのキツイなあと思っていたら、ところがどっこい←
読み進めるにつれ、この夫婦がめちゃくちゃ魅力的になっていくから面白い。
特に、夫の前では明るく立ち振る舞う妻が、実母に対して感じている後ろめたさや苛立ちなんかが、すごくリアルなのに嫌な感じじゃないのが良かった。自分の夫を「ヒモ」呼ばわりされたら、いくら血の繋がった母親が言ったとしてもムカつくよなあ。
本作の最大の魅力は、この女性です。
この女性が、かなり人間デキている。
甲斐性無しの夫に対して、彼女がめちゃくちゃ愛情深く接してるのが素敵なんですよ…。普通はさ、定食も安定した収入もない夫に対しての妻の態度なんて推して知るべしじゃん。この女性はそんな夫を優しく見守ってて、何なら看護師の仕事掛け持ちで日勤の後に夜勤のバイトまでしてるんですよ。しかもそれをイヤイヤやってるんじゃないの。夫がやりたいことでいつか身を立ててくれたらいいなって見守ってくれてるの。糟糠の妻じゃん。愛じゃん…。
(本作、作者が女性じゃなければアンチが湧いた気がする。「こんなん男が求める理想の女像じゃん」みたいな感じで)
そんな妻の愛に胡座をかかずに葛藤する夫もまた魅力的なんですよね。読んでて「もうちょいしっかりしなさいよ旦那さん」と軽くヤキモキはするんですが、後半にそんな読者を安心させてくれる展開が待ってるんで無問題。
私と夫は、こうあれるかな。
お互いのことを大事に思い合いながら、二人にとって一番形のいい夫婦になれるかな。
そんなことを、小さなお手手を頭の横でパァの形に開く我が子の寝顔を見ながら思う夜更けでした。
「さんにんぐらし」、頑張ろうね。
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「岡田さんとおつきあいさせていただいているのは、母を一緒に看取って欲しいのではなくて、母に忘れられてゆくわたしを、誰かに見守って欲しかったからなんです。同性じゃだめなのね。どこかに憐れみが混じるから、お互いによくない。ふと見回してみたときに、職場にも職場以外にも知人はたくさんいたけれど、異性と思えるような相手はいなかったの」
「お見合いというかたちを選んだのは、なぜですか」
「知り合う時間を待てなかったの。本当は時間をかけてお互いが理想のひとに育ってゆくのがいいのだけど、自分にはもうそこにかける時間がないんだなって気づいちゃった。……」
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子供のいない夫婦のお話で
夫と妻の視点で交互に語られる
ふたりに起こる出来事のお話ですが
誰にでも起こりえるような話で飽きません
このふたり、今度どうなるんだろう?
続編あるのかなとちょっと気になりました
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夫婦のあり方、家族との関わり。
北海道の少し田舎。
辛いこともありましたが、読んでるときにほっこりしました。
桜木さんは優しいな。
この夫婦幸せであれ。
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最初の数編がすごく良かったです。どうしてこんな心のひだを言葉にできるのだろうと感動しました。次第にその緊張感も薄れてしまいましたが満足のいく読書でした。ただ、性的な描写って必要なのでしょうか?
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ふたりの日常を覗いているようで我に返った時隣をふと見てしまいたくなる。
色んなふたりがあってそれを解ってもらえなくともふたりが分かり合っていければ到底問題はない。とそう思わされた。
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著者の本、11冊目だった.エピソードがほんのりとした味わいの短編が10.信好と紗弓夫婦にそれぞれの親が絡み、日常に出てくる様々なトピックがうまく描写されている.紗弓が両親と定山渓に行った時の、彼女と父の会話が素晴らしい.父の思いと彼女の心がうまく溶け合った感じだ.登場人物も多彩で甲田桃子、大浦美鈴、岡田慎吾、森佳乃子、大村百合、泉タキ等々、キャラクターの捉え方が面白かった.
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桜木紫乃節と言いたい、きらりと光る文が、りばめられた連続短編集。
言葉のあや(とり)に心地よくくすぐられるような、あやされるような、うまいんですね。
主人公たちの「ふたり」夫婦も、その親たちの「ふたり」夫婦も、ご近所の、職場の夫婦の「ふたり」も日常はいろいろ事情が様々なんですよ。そこから教訓を得ようが、等身大と思おうが、何気なく安心してしまおうがいいんです。
どちら様もおなじ、夫婦は所詮他人と思えば、大概のことは過ぎていく。突き放しているわけではなく、「ひとりぐらし」も「自立心をもって、頑張って、大丈夫!」と自信満々大きな声で言えないときがあるでしょう。
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読もう、読もうと、やっと読めた本。予想以上に良かった!『予想以上に面白かった』ではなく『予想以上に良かった』。 この作者の本は2冊目。何故か文章がスゥーっと入り込んでくる。
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40歳の映写技師と35歳の看護師の夫婦の話10篇。
・こおろぎ
・家族旅行
・映画のひと
・ごめん、好き
・つくろい
・男と女
・ひみつ
・休日前夜
・理想のひと
・幸福論
理想のひと、と幸福論が好きかな。
こんな感じで静かに暮らせるなら結婚してもよかったかな。
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帯には1日1編で10日かけて…と書いてあったが、結局4日で読み終える。桜木紫乃は「砂上」に続いて2冊目。共通してるのは舞台が北海道で現実離れしたハッピーもなく、アンハッピーもない落ち着いた作風。そんな暮らしの中、夫婦とは?を両者の視点を交互に描いた良作。
Posted by ブクログ
夫と妻交互の目線で描かれる、静かに生活が降り積もっていく夫婦の物語
ぐるりと季節がすすむたび、2人ははより「夫婦らしく」寄り添いながら生きていく
『男と女』『理想のひと』の2作が特にすきだったな
紗弓の母が信好にいろいろ言いたくなる気持ちも少し分かる
主人公2人の性格が穏やかだからか、日常の些細な事件もそんなに苦しくなく淡々と進んでいく
家族、夫婦って最小限の社会単位なんだな〜
Posted by ブクログ
北海道で暮らす半分無職の夫と看護師の妻の日常が、妻と夫交互の視点から描かれた連作短編集。
元々他人だった二人が、探り探り夫婦という最小単位の家族になっていく様が味わい深い。
お互いの両親との軋轢も、かなりリアル。
ただ、結婚して数年は経っていそうな夫婦が、ここまで相手に遠慮して暮らすものだろうか、と少し違和感があった。
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夫婦の日常。夫と妻それぞれの立場から書かれてる。話の盛り上がりに欠けるので、結論何が言いたかったかよく分からなかった。ただ男と女の関係はどの世代でも難しいことは分かった。他人同士だった二人が長い間過ごすのはより大変。紗弓の父親を見てると余計そう思った。心労が大きかったからあの穏やかさに達したのではと懐疑したくなる。
Posted by ブクログ
おすすめ文庫王国2022からのチョイス(って、いつの話だよ)、恋愛小説ベストテンの第8位(この微妙な順位のどこに惹かれたのだったけな)。
定職を持たず時々入る映写技師の仕事をしながら映画評論や脚本を書いて暮らす信好40歳と、昼夜の看護師を掛け持ちして彼を支える紗弓35歳。
親ともあまり関わらず近所付き合いもないような二人だけで暮らす世界で、甲斐性のなさに後ろめたさを持つ夫と、そんな夫の屈託を理解し彼の心に踏み入らない妻。
それぞれの心の中にある小さな棘や夫婦であっても相手に話さぬ気遣い話せぬ秘め事、そうした夫婦の微妙な心根と日常が交互の視点で描かれていく。
仲の良い、健気な夫婦の話は、悪い話ではないが、二人の間柄が年齢の割には青臭い気もして、あまり私の気持ちには入ってこなかった。
寧ろ信好の中の、母が逝ってから時間が過ぎた後に『つくろいたいあれこれが、胸から溢れて』きたり『ただ疎ましかった通院の付き添い、実家通いの際に感じていた焦りが一気に押し寄せて』きたりする心情のほうが、久し振りに実家で母の顔を見た今の私には沁みるのだった。
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特別な事情を抱えているわけでもない、どこにでもいる夫婦の話。だからといって心に響かないわけではなくて、夫婦であってもお互いに遠慮して言えないことがあって、それが足かせになるけど、相手が好きであることに変わりはない、そんな状態が当たり前、というか、そんな状態でもいいんだ、と思わされる。
解説で友近さんも書いているが、特に、娘が母を嫌うのは一人の女性として当然であるという視点は新しかった。
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平坦な感じで、子なし倹約夫婦の日常が綴られている。つまらない夫婦ではなくて、お互いに愛情深く支え合っている夫婦なんだな、という印象。傷つけまいと全てを話すことはしなかったり、お互いの親の話だったり、夫婦のひとつの在り方をみた。ヤマナシオチナシって感じはしたけど、安心して読み進められた。評論家カップルの生き方も素敵。
「気遣いの仕方を間違わない」人に私もなりたいなぁ
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現在は無職の元映写技師と看護婦の話、紗弓の父が素晴らしい 義父になるが信好との秘密
この議父の意外な姿を知って変わっていく信好、気が合うか、好きで一緒になった2人だが時間をかけて夫婦になっていく。
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紗弓の、言いたいことをすべて口にすると却って傷ついてしまう癖は子供のころから直っていない。思いはできるだけ仕舞っておきたい。信好といるとそれができた。そしてまさにこの、過剰な言葉を欲しない生活の静かな幸福感が、母に上手く説明できないのだった。
「わたし、お母さんのことたぶん嫌いなの」
言ってしまうと、涙がこぼれ落ちた。
いつからか佇まいの良いひとだと思うようになった。気遣いの方向を間違わない男として、信好はまだ紗弓の父の足下にも及ばない。
Posted by ブクログ
映画脚本家の夢を追う信好は定職に就かず、看護師の妻の紗弓と2人暮らし。
紗弓は
義母の距離
子供を望むこと
実母との確執
などに悩む
夫婦や家族の形を考えさせられる
家族には色々な形があってよい
色々なことを乗り越えてつくられていく
人への思いも様々で正解はない
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母に勧められ読んだ。
30代後半の夫婦間のやり取りや関係性、性欲のリアルさ、言わなくても良い事、ちょっとした嘘…面白かった。
連作の短編で読みやすい。
色んな「ふたりぐらし」が出てくる。
一人っ子が多いのに気づくのも面白い。
1話ごとに、2人に関わる様々な登場人物が出てきて面白かった。
和田やタキの娘の現在等分からない事は分からないまま、なのも良い。
好きなセリフ
*「いいんだよ、女の子はそれで。母親が大好きだなんて、女として次の一歩を踏み出せていない証拠でしょう。彼女のことは、紗弓のぶんまで僕が好きでいればいい。もしも彼女が娘の言葉以外の事で傷つくときは、僕が全力で守ればいいんだ」
…母親を嫌いだと伝えた紗弓に対する、父親の言葉
*知られたくない事実にもときおり、分かって欲しいという欲が膜を張るのだ。
*「俺、紗弓のお父さんとお母さんのこと好きだな。」
「ありがとう。自分のことを好きって言われるより、嬉しい。」
Posted by ブクログ
はじめ、つまらなくてなかなか読み進まなかった。
たぶん、このような夫婦はどこにでもいて、それぞれが多かれ少なかれ色々な事情があるものだ。そんな、自分の周りでも起きているであろう日常がただただ描かれているという印象。しかしそれは、他人から見れば幸せと見えたりするもので、本人たちは幸せを模索していたりする。
ニンゲンそんなものだよね、と思わせる。
すごく身近に起きそうな分、特に盛り上がりもなく、そんなもんなのかな、みたいな感じで淡々と終わった印象。
Posted by ブクログ
最近、考え事をしているとどんどんネガティブになってしまっていて、たぶんこのまま1人で老後を迎えて死ぬんだなって思ってる。
自分の中でそれは怖いことなのに、誰かと一緒にいることで、その関係が壊れてしまうことも怖い。その生活が壊れてしまうことも怖い。
それでどうすることもできなくて、地団駄を踏んでいる間に、みんなとっくに先の方へ進んでしまって、わたしだけがずっと同じ場所にいる。
こんなことばっかり考えてるうちに、なんかお盆休みで太っちゃったなぁ、なんて思ってトレーニングを始めた。
きついトレーニングはしんどくて、今やっていることに集中できるからなんにも考えなくてよくなるし、身体を鍛えると心も強くなるってことらしいので続けていきたい。
この、死を考える一方で存在する、たぶん強烈に生きたい気持ちが、今のわたしの全部なんだろう。
40歳で夢追い人、元映写技師の夫・信好と、35歳で看護師、家計を支える妻・紗弓の、これといって大きな出来事があるわけではない日常、けれどだからこそより二人の関係性が際立って描かれている印象を残す本作品。二人が交互に主人公となって進む連作短編集。
信好は定職についておらず、生活費は紗弓に頼るところが大きいが、わたしはこんなにお金のことで気を遣われるくらいなら、なんも考えずにお金使ってくれた方が気分がいい。ヒモならヒモらしく、ということなんだろうけど、わたしはなんだか、こんなヒモは気詰まりだなぁ。何かにつけ、責められていると感じたり、他人からの目ばかりを気にしたり。周りはそんなふうに思ってないのに本音を隠してかっこつける。だったら働いてほしい。
わたしはもっと、「今日も家事、やったよ!キラキラ」「今日も君可愛い!キラキラ」みたいなヒモの方が好きだなぁ。「そんなこと言われるなら今日もあなたのために働きます!」とか思っちゃう。(ヤバイですか?)
でも、現実的な生活ってきっと気詰まりだ。
一方で、信好が女性だったら、こんな風に卑屈に思わないんだろうな、とか思ったり。
傍から見ると、なんで一緒にいるのかなー、と思えなくもない、のだけれど、それは信好が、「気遣いの方向を間違わない男」であることと、紗弓が「ひとりではうまく流れてゆけないから」「どうしても(信好を)好き」だからなんだろう。
かっこつけても、相手にはちゃんと伝わってる。お金の悩みも、泣くのを我慢することも、本音を言えないことも。それをお互いわかっているからこそ、大きくぶつかることなく、配慮し合えるんだろう。もう一度言う。わたしには気詰まりである。
しかし、一方でこんな言葉もあった。
P234「事情はそうでも、出来ればそこは隠しておいて欲しいかなと思ったわけだ。本音ってのは一つの暴力だしね。そこまで言わずともいいところを、言わなきゃわからない男だと思われてるのかなと」
わたしは本音を言えるって大事なことだと思うのだけれども、相手によってはそれが逆に暴力と感じられることもある。本音を出すタイミング、伝え方、本当に言うべきことなのか否か。わたしは、言うべきことと言わなくてもいいことは分かっているつもりだけれど。でもいつかは伝えたいと思っている。それがわたしにとっての本音。
妻・紗弓の父の言葉は、バシンと言い当てるものが多く、それがこの二人の緩やかな日常の中に突然現れるのでハッとさせられる。
P63「お母さんは義理を欠いたと言うけれどね、それは彼女の価値観だから、家庭を持った娘と考え方が食い違うのは仕方ないことだと思うんだ。常識と感受性の間で悩むことも、大人として生きていく上で大切だからね。お母さんの言葉に、お前があれこれと思い煩う必要はないんだよ」「思い煩う時間があったら、もっと自分の喜べる方向へ頭を使いなさい」
P65(紗弓「わたし、お母さんのことがたぶん嫌いなの」に対して)「いいんだよ、女の子はそれで。母親が大好きだなんて、女として次の一歩を踏み出せていない証拠でしょう」
一人になる老後に脅えつつこの作品を読んで、わたしはどうなることを期待していたんだろう。「やっぱり一人は寂しいから誰かと生きたい」なのか、「やっぱり誰かと生きるって大変じゃん、一人って最高じゃん」なのか。たぶん求めていたのはその中間「それでもやっぱり、この人と一緒にいたい」的なやつ。
わたしは結局、求めていたところへは行けてなくて、「やっぱり誰かと生きるって大変じゃん、でも一人って寂しいじゃん」てとこから動けてない上に、なんならこの二人の「配慮」に気詰まりを感じてしまって、やっぱり一人って楽!っていうのをさらに実感してしまったのであるorz
方向性といえば、過去に、音楽の方向性の違いで別れたことがある。
彼はあまりにも、J-POPに心酔しすぎていたのである。
Posted by ブクログ
北海道生まれとしては、馴染みの地名が出てきて懐かしかった。
紗弓が信好を好きな理由がいまいちわからず。
自分はわりとあけすけに話している関係なので、夫婦関係がもどかしく見えたりもした。
つかみどころがなくて、にこやかだけど腹の中を見せない、穏やかな人の思考回路を覗き見したような気がした。
Posted by ブクログ
短編集と思いきや、登場人物、景色は同じ。ささやかな夫婦の生活の中にも、実はいろいろな事柄が繊細に動いている。
個人的に母親との関係を疎ましく思っているこの頃なのでこの言葉は響いた。あと、紗弓のお父さん好き。
家族旅行
「それは彼女の価値観だから、家庭を持った娘と考え方が食い違うのは仕方ないことだと思うんだ。常識と感受性の間で悩むことも、大人として生きていく上では大切だからね。お母さんの言葉に、お前があれこれと思い煩うことはないんだよ」