桜木紫乃のレビュー一覧
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釧路の高校を卒業してすぐ、年の離れた男と駆け落ちした順子。
彼女はいつだってひたむきで、時に危ういほど直情的に突き進み、そして今、貧しさのなかで「とても幸せだ」と言う。
この物語の凄みは、順子本人の波乱万丈さ以上に、彼女と交わり、揺さぶられていく女たちの「様々な生き様」のリアルさにある。
順子の眩しいほどの「幸せ」に触れたとき、彼女たちの心に去来するのは、純粋な祝福だけではない。羨望、蔑み、嫉妬、自己嫌悪、そして自身の抱える生活の歪み…。
順子というひとつの強い光によって、彼女たちの隠したかった孤独や葛藤が、容赦なく照らし出されていく。
満ちては欠け、時に歪んだ軌道を描く月のように、彼女たちの人生は決して平坦ではない。けれど、互いのドロドロとした痛みや孤独に向き合った時、その生き様はあたかも月のように、互いの行く末を静かに、確かに照らし出す。
綺麗事だけではない、けれど決して突き放さない。
順子と、彼女に引き寄せられた女たちの切実な生き様に、ページをめくる手が止まらなかった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ釧路の高校で同級生だった女性たちのその後の人生を追う小説。
それぞれの章が清美、桃子、弥生、美菜恵、静江、直子と全6章から構成されているが、いずれの話にも登場する『順子』という女性がいる。この『順子』が主人公の章は無いのだが、それぞれ物語の話題として登場するのだ。
順子は高校卒業後に就職した札幌の和菓子屋の20歳も上の旦那の子供を孕んでしまい、東京に駆け落ちするが、彼女はどんな貧乏な貧相な状況でも『私は幸せだ』と言い切る。
6章のうちの4章(清美、桃子、美菜恵、直子)は順子の同級生。
残りの2章、弥生は和菓子屋の捨てられた妻であり、静江は逃げた順子の母親の立場での物語。
人はいま自分が幸せかどうかを、他人と知らず知らずのうちに比較してしまうことがあると思う。
他人よりも自分が優っていたら、『あの人よりは幸せだ』と思うが、同じくらいのレベルだった人が自分より上の立場になっていたら、悔しい気持ちになるだろう。
物語の同級生たちは、波瀾万丈で他人や家族に迷惑をかける人生を送っている順子が、自らを『幸せだ』と言っていることを自分の境遇に照らし合わせ、ある者は嘘だと思い、ある者はやせ我慢してる、虚勢を張るなと訝しく思う。最後まで答えのようなものは無い。
結局『幸せのモノサシ』は他人が決めるものではなく、あくまでも自分の心ひとつなんだろうなあ。様々な女性が登場するが、誰一人自分の生活に満足せずに、順子の『幸せ』を確認しつつ心の穴を埋めながら生きている。
全体がどんよりと曇っているような内容であり、全く清々しさが無い。
タイトルの蛇行する月。この月の軌跡というのは、あっちへ行ったりこっちに来たり…定まらない生き方ということなのかな。
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「兎に角」60年振りに再会した同級生と、自分ならどんな言葉を交わすだろう…淡い夢物語がシャボン玉のようにポッと浮いてプチンと消える。「ひも」70代ホストの登場に驚く!さらに”ボケたら関係解消”が条件の美容師のひもだという。70代で、こんなに豆に動けるのは愛情のたまものではないのかと、ほっこりと感動。「グレーでいいじゃない」厳しいピアノ教師に育てられた息子とその母との関係。昔の母は、”背中を読め”と本音なんて見せなかった!「スターダスト」久し振りに、コルトレーンの”スターダスト”を聴いてみた。みんな優しい。短編集。中年と呼ばれる事にもとうに慣れ、体力的にも心の有り様にも、淡白になる男と女の物語。いつからか、何処かにその熱を置いて歩いて行くのだろうか。あの寝ても醒めてもどうしようもない熱を、かつて確かに持っていたと思い出す一冊だった。ただの若造だった男や、既に女であった女の子、年齢を重ねて今、この歳で再会したとしたら。そんな事がふと掠めてしまう。分別か、それは歳を重ねたからこそ手に入れられた私たちの最大の鎧なのかもしれないな。「ひも」「らっきょうとクロッカス」そして「情熱」桜木さんを読んだ気持ちで満たされる。
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二人暮らしの夫と妻 交互の視点で描かれた連作短編集。
『ふたりぐらし』というタイトルに
同じ身の上として食指が動いた。 ただ 私の場合はプラス 猫一匹とときどき義母だけれど。
定職に就かず脚本家の夢を追う不惑の夫・信好とそれを支える看護師の妻・紗弓 三十五歳。
信好の胸中は常に自尊心と妻への遠慮でせめぎ合っている。一方 紗弓は収入の大部分が生活費に消えてしまい ごく近い将来さえも見えないという不安を抱えている。
家計のやりくりもさることながら、
お互い 相手を傷つけないように そして自分も傷つかないようにと気持ちのやりくりも大変そうだ。
本書には様々な形の “ふたり” が出てくる。 信好と紗弓のように相手を慮って思っていることを言えないふたり。
思ったことをズケズケ言う紗弓の母とそれを笑って受けとめている紗弓の父たちのようなふたり。夫が定年退職する日 玄関で迎えてあげたいと言った紗弓の同僚。長年の想い人への手紙の代筆を紗弓に頼んだ入院患者の老婦人。
つよくひとりを意識しながらふたりを生きる岡田と百合。
どの形が良くてどの形が悪いなんて誰が言えるだろうか……
読んでいて三十代の頃を思い出した。
二人から三人になることはなかったけれど 今がいい。
よい短編集でした。