桜木紫乃のレビュー一覧
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桜木紫乃さんの描写力に唸ってしまう。
アイヌ出身の赤城ミワについて彼女を知る人たちが語る六つの連作短編。ミワという女性の像が徐々に浮き彫りにされていく。
谷に生まれ育ったミワは札幌でアイヌ紋様デザイナーになる。"ミワ・ライン"と呼ばれる独特な曲線と鮮やかな赤が彩る物語。桜木紫乃さんの描く「男ですら太刀打ちできない考え方、生き方をする女性」に惚れぼれしながら一気に読んだ。
「無事に、行きなさい」が良かった。
ビストロシェフ、倫彦はミワと付き合い始めて二年。その関係に重さを感じるようになり…
「不意に、目の前にいる人の気持ちがこっちに落ちてくることがあるの」とミワに言われて -
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積ん読から。
「ママがぼけちゃったみたい」
この言葉は子ともにとって一番聴きたくない。
ましてや、その子どもも身動きがとれない年代になっているからなおさら。
5人の女性からの観点であるお話。
姉妹であり他人であり義姉妹であり
なんだかな、軸である姉妹の旦那さんが味があって優しくていい。無関心であり無関心でなく朴訥として、この姉妹はきっと自分の父親と違う男性に惹かれたのか。姉妹の母親の認知症とその家族を含みながら物語は進む。
どうしようもない女としての立場や性と戦いながら、ちゃんと介護や連絡を取り合わなかった家族とも繋がり助け合う。
ピンク=陽紅さんと、
屺和さんの話がこの物語の中でちょっとした -
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読み始める前にチラッと紹介文を見たら「ラブホテル」「自身の父親をモデル」という言葉が出て来て、これは『ホテルローヤル』に繋がる物語かと。。。同時に「不快な460ページだった。(中略)作者がこの男を長々と描いた意味が分からない。」と酷評している書評が目に入りました。
確かに何とも不快な主人公です。最初は真面目なのですが、理髪店の修行を終え結婚してからどうしようもない男になります。欲しいものが有れば後先考えず買う。山師。常に見栄を張って崖っぷちを歩かないと気が済まない生き方。自分勝手に生きながら、そんな自分を理解してくれないと女房・娘に手を挙げる。本当にどうしようもない男です。
読んでるうちに気が -
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自分の来し方を思う時
いつも心に浮かぶのは、
娘が産声をあげた日と
思いがけず雪が降った
大学入試の朝。
どちらもその後の私の
生活が大きく変わった
人生の転機でした。
主人公の啓美に訪れた
それは、
母の束縛から逃れ教団
の門を叩いた日と、
思いがけず指名手配犯
となった23歳の春。
望むと望まざると自分
の人生の主人公として、
私たちはそのドラマの
新たな章が始まる転機
に何度も立ち会います。
美しく装丁され一冊の
本となった私の人生を、
いつか静かに読み返す
日が訪れたなら、
すべて最終章へ繋がる
伏線だったと感じるの
かな。
道を一本違えていたら
私の人生もこう -
Posted by ブクログ
昭和初期に生まれ理容師となった男の、波乱万丈の人生を描く。
親兄弟からは疎まれて育ったものの、叔母や幼なじみからは過分な愛情を向けられ、感情の赴くままに身勝手を貫く主人公。
このダメダメ男のモデルは作者自身の父親だそうで、ご本人も登場するのだが、よくぞこれほど距離感を保って客観的に書けるものだと驚く。インタビュー記事によると、作中人物たちに自分の存在を気付かれないように、という意識で書いているとのこと、なるほど。
10年以上前に読んだ『ラブレス』は母親サイドの話で、本作と対を成すという。どの人物の言動にも共感するのは難しいのだが、どちらも作品としての底力に圧倒される。
昭和歌謡や演歌のイメ -
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作家の父親がモデル? ほんとに身勝手でどうしようもない男と思った。奥さんもよく我慢し、男たちを育てるのもほどがある。今は考えられない。私の身近に少し猛夫ほどではないがこの現在でも同じタイプの男がいる。今でも奥さんは腰が曲がっている者の一生懸命働いて居る.居酒屋 唐揚げ屋 キッチンカー でまた何かをしようとしてる.そのた度お金がいる。時々奥さんに「もうすぐ死ぬから」 もう少し頑張るように話す。猛夫も歳を取るまで奥さんのことに気がつかない男もどうしようもない。本を読んでいて腹が立った。主人が「腹が立つなら読むな」と言うが、最後まで桜木志乃の本なので読んだ。