桜木紫乃のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
おのれの欲に忠実に行きた男の一代記。著者桜木紫乃の父親がモデルだという。職業が理容師で後にラブホテルを経営した。その名前は「ホテルローヤル」なるほど、ここにつながるのかと妙に納得した。
父親は終戦を7歳でむかえた。貧しい魚屋の次男でその名を新川猛夫といった。時代がそうさせたのか分からないが両親とも長男だけを特別扱い。次男の猛夫は長男の一郎から壮絶なイジメを受け育った。そんな猛夫の唯一の落ち着ける居場所は母親の姉のカツ。芸者から身を起こし旅館を営んでいた。カツは両親から疎まれていた猛夫を親代わりのように面倒を見てくれた。旅館の女中、駒子もタケ坊と呼び可愛がってくれていた。しかし生来の気質か育ちの環境か卑屈な性格はあとあとまで響いた。
どうも主人公の猛夫には感情移入できない。はっきり言えばクズだ。卑屈さがバネになり人一倍の努力をして理容師になった。嫁も貰った。独立をして店を持った。2人の娘の父親になった。しかし、いつまでたっても満たされなかった。その感情を家族にぶつけた。言う通りにならない嫁に暴力を振るう、娘にも手を挙げる。今なら警察沙汰のDVだ。一郎から受けた暴力の連鎖だけでは説明のつかない猛夫の激情。カツも駒子も優しかったが、その優しさを素直に受け止めることができない男だった。
理容師の技術大会で全国に出場するもトップは取れない。その苛立ちを消化出来ずに駒子への情愛に溺れた。確かな技術を持ちながらも理容師に専念できず浪費を重ねた。浪費が金回りがいいように見えたのだろう。建築家が持って来た「うまい話に」に目が眩んだ。『おいおい辞めとけよ、うまい話には必ず裏があるぞ』と声を上げてしまった。いくらクズでもこの先に見える失敗をほっとけない気持ちになった。思わず、ここで感情移入してしまった。自分でも意外だった。 -
Posted by ブクログ
桜木紫乃さんの描写力に唸ってしまう。
アイヌ出身の赤城ミワについて彼女を知る人たちが語る六つの連作短編。ミワという女性の像が徐々に浮き彫りにされていく。
谷に生まれ育ったミワは札幌でアイヌ紋様デザイナーになる。"ミワ・ライン"と呼ばれる独特な曲線と鮮やかな赤が彩る物語。桜木紫乃さんの描く「男ですら太刀打ちできない考え方、生き方をする女性」に惚れぼれしながら一気に読んだ。
「無事に、行きなさい」が良かった。
ビストロシェフ、倫彦はミワと付き合い始めて二年。その関係に重さを感じるようになり…
「不意に、目の前にいる人の気持ちがこっちに落ちてくることがあるの」とミワに言われて始まった恋。
新しい店の白い壁には木のレリーフ。
「アプンノ パイエ」と名づけた波形の彫刻は、アイヌ民族であるミワからの別れの挨拶と知る。
「谷で生まれた女」
護られていると意識して暮らすのは、自分を半分なにかに委ねているということです。最後のミワの言葉が刺さった。
-
Posted by ブクログ
積ん読から。
「ママがぼけちゃったみたい」
この言葉は子ともにとって一番聴きたくない。
ましてや、その子どもも身動きがとれない年代になっているからなおさら。
5人の女性からの観点であるお話。
姉妹であり他人であり義姉妹であり
なんだかな、軸である姉妹の旦那さんが味があって優しくていい。無関心であり無関心でなく朴訥として、この姉妹はきっと自分の父親と違う男性に惹かれたのか。姉妹の母親の認知症とその家族を含みながら物語は進む。
どうしようもない女としての立場や性と戦いながら、ちゃんと介護や連絡を取り合わなかった家族とも繋がり助け合う。
ピンク=陽紅さんと、
屺和さんの話がこの物語の中でちょっとしたスパイスや和みになってまたいい。
終わりはちょい哀しくも素敵だ。
こっそりプリンを食べる老姉妹(笑)
「サトミ」さんは一番幸せだ。 -
Posted by ブクログ
読み始める前にチラッと紹介文を見たら「ラブホテル」「自身の父親をモデル」という言葉が出て来て、これは『ホテルローヤル』に繋がる物語かと。。。同時に「不快な460ページだった。(中略)作者がこの男を長々と描いた意味が分からない。」と酷評している書評が目に入りました。
確かに何とも不快な主人公です。最初は真面目なのですが、理髪店の修行を終え結婚してからどうしようもない男になります。欲しいものが有れば後先考えず買う。山師。常に見栄を張って崖っぷちを歩かないと気が済まない生き方。自分勝手に生きながら、そんな自分を理解してくれないと女房・娘に手を挙げる。本当にどうしようもない男です。
読んでるうちに気が重くなって、しばらくするとページをめくる手が止まります。寝る前に読むとその印象が残るのでしょうか、内容は異なるれど同じ雰囲気の夢を見て寝覚めが悪い。
しかしね、流石に桜木さん、内容は不快だけれどそれを最後まで読ませる力が有ります。まあ、最後に年取った主人公が少し優しくなったのが救いでした。 -
Posted by ブクログ
自分の来し方を思う時
いつも心に浮かぶのは、
娘が産声をあげた日と
思いがけず雪が降った
大学入試の朝。
どちらもその後の私の
生活が大きく変わった
人生の転機でした。
主人公の啓美に訪れた
それは、
母の束縛から逃れ教団
の門を叩いた日と、
思いがけず指名手配犯
となった23歳の春。
望むと望まざると自分
の人生の主人公として、
私たちはそのドラマの
新たな章が始まる転機
に何度も立ち会います。
美しく装丁され一冊の
本となった私の人生を、
いつか静かに読み返す
日が訪れたなら、
すべて最終章へ繋がる
伏線だったと感じるの
かな。
道を一本違えていたら
私の人生もこうだった
かもしれないと、
想わずにはいられない
筆者の見事な筆運び。
私の歩む途が穏やかな
最終章へ繋がることを
願うばかりです。 -
Posted by ブクログ
昭和初期に生まれ理容師となった男の、波乱万丈の人生を描く。
親兄弟からは疎まれて育ったものの、叔母や幼なじみからは過分な愛情を向けられ、感情の赴くままに身勝手を貫く主人公。
このダメダメ男のモデルは作者自身の父親だそうで、ご本人も登場するのだが、よくぞこれほど距離感を保って客観的に書けるものだと驚く。インタビュー記事によると、作中人物たちに自分の存在を気付かれないように、という意識で書いているとのこと、なるほど。
10年以上前に読んだ『ラブレス』は母親サイドの話で、本作と対を成すという。どの人物の言動にも共感するのは難しいのだが、どちらも作品としての底力に圧倒される。
昭和歌謡や演歌のイメージが重なる桜木節満載のこの作品、人生経験を重ねた読者ほど深く感じ入るものがあるのではないだろうか。 -
Posted by ブクログ
作家の父親がモデル? ほんとに身勝手でどうしようもない男と思った。奥さんもよく我慢し、男たちを育てるのもほどがある。今は考えられない。私の身近に少し猛夫ほどではないがこの現在でも同じタイプの男がいる。今でも奥さんは腰が曲がっている者の一生懸命働いて居る.居酒屋 唐揚げ屋 キッチンカー でまた何かをしようとしてる.そのた度お金がいる。時々奥さんに「もうすぐ死ぬから」 もう少し頑張るように話す。猛夫も歳を取るまで奥さんのことに気がつかない男もどうしようもない。本を読んでいて腹が立った。主人が「腹が立つなら読むな」と言うが、最後まで桜木志乃の本なので読んだ。