桜木紫乃のレビュー一覧
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書いてる方が多いけど、良作。
思ったより平均の☆が低いけど、わたし的には4.5くらい!
こういう、どこにでもいそうな、なんでもない日常がいちばんリアルでおもしろい。
看護師の紗弓と、脚本家を目指す信好。夫婦と、それぞれの家族と、それぞれを取り巻く人たちとのお話。
愛情と絆で結ばれているけど、だからこそ知られたくない姿があって、聞けないことがある。
相手のことをすべて知るなんてできない。知らない顔がある。あたりまえのことかもしれないけど、その微妙なすれ違いがうまーく書かれている。
一番印象的だったのは鰻の話。信好が母と食べた鰻。その店の前を通った時に、信好は母を思ったのだろう。でも、そのことを知らない紗弓は、信好が鰻を食べたいけれど決して口に出さないのだと思う。
こういうちょっとした思い違いって、どこにでもあるよなぁ。
紗弓の嫉妬の仕方とか、モヤり方とか、すごく共感。時間を置いてもう一度読みたい。 -
Posted by ブクログ
もし子供を授からなければ、この先ずっと夫との「ふたりぐらし」を生きていくんだな。
不妊治療をしていた頃、そんな風に考えることで授からなかった時に備えようとしていた。子供の声がしない、大人2人の生活。2人の為だけにお金も時間も費やせて、それはそれで静かで満ち足りた人生じゃないか、って。治療生活が長引くにつれ、保険のようにそんな想像をすることもしばしばだった。
そんな時に、書店の店頭で本作に出会って、なんとなく手に取ってから早数ヶ月。
2ヶ月前に私たちのもとに来てくれた赤子がスヤスヤと寝ている隣の部屋で、ようやく本作を読み終えた。完全に読む時期を逸した感があるけど、こういう読書体験もあるあるだよね。
脱線してしまった。
本作の感想に話を戻そう。
本作の主人公は2人の夫婦。
脚本家を目指す無職の夫と、
看護師の仕事を掛け持って家計を支える妻。
交互に描かれる2人の視点の物語です。
ボケ始めた母親の通院に付き添いながらも疎ましく思う男の鬱々とした日常が導入部なので、終始この感じだと読み進めるのキツイなあと思っていたら、ところがどっこい←
読み進めるにつれ、この夫婦がめちゃくちゃ魅力的になっていくから面白い。
特に、夫の前では明るく立ち振る舞う妻が、実母に対して感じている後ろめたさや苛立ちなんかが、すごくリアルなのに嫌な感じじゃないのが良かった。自分の夫を「ヒモ」呼ばわりされたら、いくら血の繋がった母親が言ったとしてもムカつくよなあ。
本作の最大の魅力は、この女性です。
この女性が、かなり人間デキている。
甲斐性無しの夫に対して、彼女がめちゃくちゃ愛情深く接してるのが素敵なんですよ…。普通はさ、定食も安定した収入もない夫に対しての妻の態度なんて推して知るべしじゃん。この女性はそんな夫を優しく見守ってて、何なら看護師の仕事掛け持ちで日勤の後に夜勤のバイトまでしてるんですよ。しかもそれをイヤイヤやってるんじゃないの。夫がやりたいことでいつか身を立ててくれたらいいなって見守ってくれてるの。糟糠の妻じゃん。愛じゃん…。
(本作、作者が女性じゃなければアンチが湧いた気がする。「こんなん男が求める理想の女像じゃん」みたいな感じで)
そんな妻の愛に胡座をかかずに葛藤する夫もまた魅力的なんですよね。読んでて「もうちょいしっかりしなさいよ旦那さん」と軽くヤキモキはするんですが、後半にそんな読者を安心させてくれる展開が待ってるんで無問題。
私と夫は、こうあれるかな。
お互いのことを大事に思い合いながら、二人にとって一番形のいい夫婦になれるかな。
そんなことを、小さなお手手を頭の横でパァの形に開く我が子の寝顔を見ながら思う夜更けでした。
「さんにんぐらし」、頑張ろうね。 -
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北海道のキャバレーの下働き青年が、ドサ回りの出演者達と一時的に同居するお話
以下、公式のあらすじ
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「血のつながり」はなくても、そこには家族があった。
【第13回 新井賞受賞決定!】
切ない事情を持ち寄って、不器用な四人が始めた同居生活。
ギャンブルに溺れる父と働きづめの母から離れ、日々をなんとなく生きる二十歳の章介。北国のキャバレーで働きながら一人暮らしをする彼は、新しいショーの出演者と同居することになった。「世界的有名マジシャン」「シャンソン界の大御所」「今世紀最大級の踊り子」……店に現れたのは、売り文句とは程遠いどん底タレント三人。だが、彼らと言い合いをしながらも笑いに満ちた一か月が、章介の生き方を変えていく。『ホテルローヤル』『家族じまい』著者が放つ圧巻の人間ドラマ! このラストシーンは、きっとあなたの希望になる。
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冒頭で、3億円事件の時効が云々とあるので、時代は昭和とわかる
それを前提に読み進めるわけだけれども、当時は小学生だったので大人の世界の時代感がよくわからない
ギャンブル狂の父親は亡くなり、母もまた離れて暮らしているし、キャバレーの寮となっている酷くボロいアパートで侘しい生活をしているという状況なわけだけれども
二十歳の青年 章介はそんなに孤独を感じていないように最初は思える
まるで人生を諦めているような達観した姿勢だろうか
ひょんな事から1ヶ月間同居することになったタレント達
世界的有名マジシャンのチャーリー片西
シャンソン界の大御所のソコ・シャネル
今世紀最大級の踊り子のフラワーひとみ
しかし、赤西はマジックをとちりまくり、ソコ・シャネルはブルーボーイで(ブルーボーイという単語を初めて知った)、フラワーひとみはストリッパーにしては歳を取りすぎている見た目
彼ら彼女らにもそうなった事情があり、章介も共に過ごしていく中で少しずつ過去がわかってくる
公式でも「あの冬の1か月、たしかに僕らは家族だった。」と
この4人の関係を家族のように捉えている人がいるみたいだけど
個人的には家族的かどうかは疑問
じゃあ何かと聞かれたら、この共同体に適した単語が思い浮かばないわけだけれどもね
確かに家族的な何らかの繋がりはあって
人がいることで、章介が無くしていた寂しさを思い出していく事になる
寂しいのは、すっと一人でいるときではなく、大人数から独りになったときという事でしょうね
でもなぁ、共同生活の終わりとともに、キャバレーという自分にとって最低限の居場所からの脱却という終わり方は良かった
あと、心に残ったのは、お墓について
「会えないことを確認するために在るんだから」
というのが納得した
とある小説で、幽霊が怖いのは、幽霊が実はいないからというのがあって
故人を思い出す役目とともに、会いたい人に会えないという状況の再認識という意味もあるのだろうなぁ
大竹まことが、桜木紫乃さんの出身地である釧路のキャバレーへ営業に行った昔話をした際に
「その時のメンバーが “俺と師匠とブルーボーイとストリッパー”だったんだよ」と語ったエピソードが執筆のきっかけだそうな
何と言うか、話してるときの口ぶりが目に浮かぶなぁ -
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アイヌ民族の赤城ミワをめぐる6遍の物語。
登場人物はミワの立ち居振る舞いやストレートな言葉によって、自分の感情の気づきを得る。
始めのほうは、民族問題というテーマを扱っている恋愛小説かと思っていたけど(★3)、最後の2遍が特にアイヌ民族を深掘りしているように感じた(★4)。
責任を取りたくないから当たり障りのない意見が溢れているし、自分はそんなこと全然気にしないよっていう意見も、当事者にとっては慰めでもなんでもなくて、逆にその無関心さに腹が立つ人もいるんだろうなと思った。でも知りたいっていうのもお節介だという。こういうのはアイヌ民族に限らずだけどね。じゃあどう接したらいいんだって向き合うことを放棄する人もいるだろうけど、答えがない難しい問題だからこそ、向き合い続けることがある意味答えなんだと改めて思った。
という当たり障りのない感想しか書けない自分がいることに気づく。登場人物たちと一緒だ…。 -
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明日から夏休みと言う日に水谷貢が行方不明になる。釧路は湿地帯が広がり、誰もが考える事は最悪のケースを想定する、姉の比呂が見た最後の人物湿原と言うのは大量に水分を含み、そこに動物人間が落ち込むと出来る事も出来なく成る。姉の比呂と相棒の片桐修平はこの事件とは別に営業の鈴木洋介の死を探っていた。洋介の青い目の事で両親は離婚。母親は死に父親と姉が残っている。主人公の長部キクは樺太でソ連に家族を殺されキクは生き抜く、白い物を色々な色に染め上げる。そのキクの人生も色々な色に染め上げた。十河キクに成りこの釧路は沼地であるので、霧 モヤ が立ち込め上を向いても下を見ても鼠色。そしてあまり自分のルーツを気にしない不思議な土地柄だった。
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ネタバレアイヌ民族の女性の物語で、章ごとに未来へ過去へ飛ぶのが読んでいて、ああ、この時代の主人公はこんなだったんだ、ああ、あれからまた歳を重ねたんだと読むたびに主人公の新たな面が見えてくるのが面白い。これほど強い女性像に久しぶりに出会えたって感じで、でも自分には決して立ち向かうことはできないだろう程の力強さが圧倒的で、その生い立ちがまた感慨深く最後まで常に新たな一面に出会わせてくれるのが読んでいて飽きさせない。ぜひとも一度は背中を見てみたい気もするが、やはり怖いと思ってしまうのだろう、この”ミワ”は強い。自立している人はいつでも強い。