桜木紫乃のレビュー一覧
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あの冬の1か月、たしかに僕らは家族だった。
「あんた、葬式来る?」博打うちだった父の訃報を聞いても、キャバレーの下働きで糊口をしのぎ、廃屋のような寮に帰って寝るだけの章介の生活は何も変わらなかった。しかしこの年末は、キャバレーに出演する3人の芸人が、1か月共に寮で暮らすという。手品ができないマジシャンに女言葉の男性歌手、年齢不詳の踊り子。苦労の多い人生を送りながらも毎夜フロアを沸かせる3人に囲まれ、やがて章介は「淋しい」という感情を思い出していく――。舞台で出会った4人の共同生活が、1人の青年の人生を変えてゆく。
『家族じまい』『ホテルローヤル』の桜木紫乃が贈る、著者史上一番笑って泣ける”家 -
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ネタバレヒロイン/桜木紫乃さんは初めて読む著者ですが、ワンパターンではなく面白い。
どんな風にしたら不幸になるのか、自分で選択してしまったら後に戻れないが本で読むと体験できる。
<書評より>
世間を震撼させた白昼のテロ事件から17年。
名を変え他人になりすまし、“無実”の彼女はなぜ逃げ続けたのか?
1995年3月某日。渋谷駅で毒ガス散布事件が発生。実行犯として指名手配されたのは宗教団体「光の心教団」の幹部男性と、何も知らずに同行させられた23歳の信者岡本啓美(おかもとひろみ)。この日から、無実の啓美の長い逃亡劇が始まった。他人を演じ続けて17年、流れついた地で彼女が見つけた本当の“罪”と -
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ネタバレ・「子犬を飼いませんか。ラッキーカラーの赤じゃなく、白衣の白なんですけれど」 子犬、と語尾を上げたきり赤沢が黙り込んだ。寿美子はどこから説明しようかと考えあぐね、ひとまず「できれば一緒に」と付け足した。赤沢が大きく息を吸い込む気配。さぁ何から説明しよう。何と言ってこの男を手に入れよう。 里親の条件どおり、幸せになる。決めた。 いい夢は、これからだ──。
・柿崎美和医師
「鈴音はわたしよりもあんたよりも長生きする。わたしがさせる」
・柿崎美和医師
あなたに支えてほしいのは、彼女の気力です。志田さんが支えてくださらなければ、どんな治療も効果が出ない。
・解説
ここには、死ぬということ、 -
Posted by ブクログ
決して明るいストーリーではないのに、読んでいて穏やかで心地よさを感じました。
お気に入りは、「卒婚旅行」と「青い絵本」。
「卒婚旅行」
卒婚を描いた作品なのに殺伐とした空気とは程遠い、穏やかで優しい雰囲気が良かった。
夫の願いが沁みた。その願いに相手への愛情が透けていて切なくなった。
好きな人の声が愛おしい気持ちに、懐かしさを覚えてしまいました。
「青い絵本」
血の繋がらない、切れてもおかしくない「母」と「娘」。二人の距離感が心地よく、それぞれが歩んできた人生を思う。
タイトルと表紙に繋がるストーリーがいい。
桜木紫乃さんの文章を、今度は長編を読んでみたい。 -
Posted by ブクログ
意図せず犯罪の共犯者にさせられていた主人公の、17年間にわたる逃亡生活の物語。出会う人は、様々な事情で世間から身を潜めているような人達。自分が日々忙しく充実した生活を送る今も、どこかで身を潜めたり、何かに怯えたりしながら生きている人がいるのかもしれないと思うと、やり切れなくなる。
意図せず犯罪の現場に同行していたことで意図せず逃亡生活に突入し、辻褄を合わせ身を隠すために自動的に次の行動が決まり、死体遺棄をも厭わなくなってしまう。このような状況下で「出頭」に舵を切ることができなかったのも、自然な流れのように感じた。
一体何が罪だったのか。主人公は罪人なのか。自殺者を死体遺棄したことくらいしか