桜木紫乃のレビュー一覧

  • 異常に非ず

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    昭和54年1月26日に起きた三菱銀行立てこもり事件を題材にした作品である。とはいうものの、事件そのものを直接描くのではなく、この事件を深く掘り下げた記事を書いた新聞記者の目を通して描くという手法を取っている。これにより間接的に犯人像が構築され、花川清史という男の内面を窺い知ることができた。その一方で視点があちこちに飛び、本筋には関係ない描写も多くなったように思う。
    検索すると『破滅 梅川昭美の三十年』(毎日新聞社会部編)という本が見つかった。献辞にある故近藤勝重氏は本書の近藤のモデルだろうか?

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    2026年07月14日
  • ホテルローヤル

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    ラブホテルが題材の中心となっている作品というのは、珍しいのでは?と思いながら、読み進めていきました。1つ1つの話やエピソードは、色々な人間関係の模様が描かれていくということもあり、時には切なく、時には深刻なものもありましたが、キャッチフレーズにある「身体を使って仕事をしなければいけない時がある」というのには、やはり、社会で生きていくことの辛さが滲み出ているような気がしました。

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    2026年07月12日
  • 異常に非ず

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    「オレは精神異常やない。道徳と善悪をわきまえんだけや。」

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    1979年(昭和54年)
    大阪の阪央銀行北畠支店に1月26日、猟銃を持った男が押し入り、支店長ら2人を射殺したうえ、客と行員多数を人質にして立てこもった。通報で駆け付けた警察官2人も射殺された。男は二昼夜にわたって立てこもり、香川から出てきた母親の説得にも応じない。28日午前8時41分、機動隊員が現場に突入して犯人を射殺し事件は解決する。

    犯人は無職、花川清史、三十歳。

    その後 人質となった行員たちの証言から、犯行の残虐さと異常さが明らかになる。しかし、花川の死亡により犯行の目的や動機は謎のままとなる。

    「オレは精神異常やない」
    そのひと言を残して花川は死んだ。

    たった三十年で五人(花川が十五歳で強盗殺人を犯し捕まっている)の命を奪った男。

    この男の三十年とは どんな人生だったのか-。

    毎報新聞の遊軍記者である海原将志は、花川の短い生涯を掘り起こす記事を書くよう指示を受ける。

    「あいつは異常やない。事件の芽になるもんを突き止めへんかったら、ブンヤの看板が泣くで」

    花川と同世代の将志は、自身の三十年と重ね合わせながら、何が花川を犯罪者にさせたのか。花川母への取材と、過去に関係のあった人物からの証言を元に筆を執る。ドキュメント本のタイトルは『異常に非ず』。

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    この作品のモチーフとなった「三菱銀行人質事件」を知らず、Wikipediaで調べました。なるほど。酷い。

    人質に遺体となった行員の耳を切らせる。女性に服を脱がせ盾にする…。

    小説の中では、事件の内容をここまで詳細には語られていないけど、同棲していたホステスに卑劣な暴行を繰り返していた花川も酷い男でした。

    さて、花川を非道な犯罪者にした要因とは何なのか…。

    わからん。

    息子の説得のため呼び出された際、「郵便局へ行く」と嘘をつき、美容院で髪をセットしてくるという謎の行為に出た花川の母親のカヨは、高齢で花川を出産し とことん甘やかして育てた。

    父親は女癖の悪い最低な男だった。

    八年もの間 生活を共にしていたホステスの亜紀には、暴力のかぎりを尽くした果てに捨てられ自暴自棄になっていた。

    親か、女か、逃れられない貧困か、劣等感か、はたまた時代のせいか…。

    わからん。

    わからんよ。

    ただ、同じ女性として、また母親として
    花川と自身の半生を語るカヨと亜紀の物語の方がズーーンと重く 興味を持って読めました。

    さすが桜木紫乃さんの作品。カヨの人生ってなんて過酷なんだって…。産まれた時から底辺で生きることが決まっていたような。そんでもって 人生の終盤に犯罪者の母になるって…。

    とにかく暗い!重い!そんな作品でした!!

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    2026年07月10日
  • 異常に非ず

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    期待値を上げすぎて読んだせいか、題名の「異常に非ず」の意味の切れ味不足に思えてならない。
    どこかで、うーん、やられた!と作者に思わされるところがきっとあるだろうと思いつつ読んだのだけど。

    花川があまりに魅力的でないせいで、ただのおバカさんに見えてしまう。「オレは精神異常やない。道徳と善悪をわきまえんだけや」という言葉が上滑りして、なんやそれ、で?と思ってしまう。
    そういうことか!と腑に落ちたかったのだけどね。
    この言葉が一人歩きしてる割に、中身を伴ってないと思うのだけどどうでしょう。

    力作だとは思うのだけど…。

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    2026年07月06日
  • ラブレス

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    百合江と里実の姉妹二人の生い立ちから人生の終焉までを描く。
    姉妹、母娘の名前(名付け)がバラバラなのがちょっと違和感があったが、なるほどそういう経緯で…と思わせる。
    しかし波乱万丈の人生だな…

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    2026年06月28日
  • それを愛とは呼ばず

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    ネタバレ

    最後そうきたかー
    まあでもあのままだといつか捕まってしまうかもしれなかったから、幸せなうちにというのも良かったのかな…なんて思ったりもしてしまったが。
    うーんでも難しかった。愛ってなんだ、とかよく分からなかった。

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    2026年06月28日
  • ホテルローヤル

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    すっかり廃墟と化した現在から開業直前の過去に遡るように、北海道のラブホテル「ホテルローヤル」での人間模様を描いた連作短篇集。

    ラブホテルを舞台としながらもホテル自体や性の営みではなく、そこに出入りし、また来ては去る人々が物語の中心。それぞれ緩やかな繋がりがある各篇での、生きていくうらめしさ・生々しさと一時の快楽との対比がいい。

    収録7篇のうち、日々の生活に追われている主婦 恵がふとしたきっかけで「ローヤル」にて夫と愉しむ「バブルバス」が好き。「五千円」という金額の描写がいい。

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    2026年06月25日
  • 家族じまい

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    訳ありな登場人物たち、それぞれの視点で家族を捉えていく。それぞれの人生、生き方が大きく変わっていて家族内の結びつきが変化して亀裂が入ることも…

    自分も老後とかこれから先の家族との関わり方がどんなふうになるのだろうかと考えた。

    少しでもお互いに楽しく仲の良い家族で居続けたいなと感じた。

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    2026年06月03日
  • 無垢の領域

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    ネタバレ

    これはダブル不倫ものか?
    秋津が母に対して床に物を投げつける動作を見せるところがこいつ妻の収入に頼る生活しといてクズやなと思ってヒリヒリしたけど、自分も同じ生活になったら同じことするわ多分
    秋津をクズと思って一歩引いたつもりで嘲笑いたかったけど自分にも起こり得ることだし一瞬嘲笑ったの卑しいな自分

    無垢の領域って本当に深い意味なんだろうな
    上手いなこの人
    姑お前…
    心理サスペンスって書いてあるから殺されちゃうのか?
    え、姑が亡くなったおばあちゃんに会わせてあげるからすごいもの書きなって純香に言ってまんまと息子はそれを提出したってこと?やば
    純香は好きな物書けって言われて母の模倣を書いたのか
    里奈もなんも悪くないけど里奈の一言で純香は家を出てしまったんだよな
    そしてやっぱりちょっと林原も里奈も純香の存在が煩わしかったんだよな
    橋から突き落とされる所もさ、やっぱりな感がすごいというか、私の男っぽいんだよな、ていうか中学生ってこのくらい危ういんだよな、この時期にきちんと愛情もらって育たないと将来が
    北海道の果てってそんな雰囲気なのかなあ…
    桜木紫乃さん自身の思いを知りたいな

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    2026年06月02日
  • 氷平線

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    ネタバレ

    短編集だった。一番最後の水平線が面白かった。
    短編集のためか、なぜ長編にできなかったのか理解が出来る内容だった。
    情景の描写が少しだるかった。もう少し巧みだと読んでいても面白い。

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    2026年05月29日
  • 家族じまい

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    ネタバレ

    "ふたりを単位にして始まった家族は、子供を産んで巣立ちを迎え、またふたりに戻る。そして、最後はひとりになって記憶も散り、家族としての役割を終える。"

    "結婚は、できるなら何度でもしたらいいのさ。いろんなものが見られて面白いじゃないか。"
    "嫌なら別れる。一回も二回もたいして変わらないし、こういうことは三回目からは楽になっちゃうもんよ。"

    "いいね、こういう静けさ。仕事場にはいつも同じようなBGMが流れてるから、家に帰ってきて静かだと、すごく贅沢な気がする。僕たちはけっこういろんな音に囲まれながらやってるんだよね"
    音楽がないと生きていけないけど、確かに静けさの贅沢もあると気づかされる

    歳と共に記憶の容量や一度に酷使できる脳の使用時間が少なくなっているのを感じる。考えることは好きだけれど、一方で考えすぎてめんどくさい考え方になっていたこともあるからやっと丁度良い領域に来た気分。これ以上考えたら他の大事なこと忘れるな、とか疲れすぎてしまうと思ったら一旦リセットする気持ちよさ。

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    2026年05月21日
  • ふたりぐらし(新潮文庫)

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    ネタバレ

    2人と2匹で暮らしているのでタイトルに惹かれて読んでみた。
    大きな事件は起こらないけど、日常の年齢とともに変化する環境中で『2人』というフィルターを通して自分の内面を見つめていく。
    視点が章ごとに夫から妻と変わるんだけど、いまいち夫の妻への愛情が感じられなかった。
    そこがまたリアルかも。
    この2人はいつか子供ができたとき、夫はもっと妻への愛情が深くなりそうな気がする。

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    2026年05月15日
  • 人生劇場

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    昭和初期の北海道。次男坊として生まれた猛夫。家族から離れて叔母のカツの元で育つ。理容師の修行を積み理容師として生きていくものの、大きな夢をもちそれを追いかけていく。
    猛夫の人生を描いた作品。傍目からだとバカだなーって感じなのだが、自分を客観的に見るのは難しいものだからなぁって感じ。このまま破滅の人生なのかと思いきや、1発逆転するでもなく、ちょっと幸せ?な感じで終わった。

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    2026年05月04日
  • 谷から来た女

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    もともとアイヌ民族の迫害が理解できていないため、理解が難しかった。人はそれぞれ色々な背景を背負っている。隠せることと隠せないこと。主人公は敢えて背中にアイヌ民族の証を彫り込んで立ち向かっていく。現代でもそんな偏見が存在しているのか?アイヌ民族というバックボーンが主人公に必要なのか分からなかった。

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    2026年05月02日
  • 人生劇場

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    生きている充実感が欲しくて好き勝手して、妻子を殴ったり借金をこしらえたりして家族を苦しめる。1ミリも共感出来ない。充実感が欲しいだとお〜それが全ての免罪符になるのか。ただの飽き性、欲望に流されてるだけやろ。全部自分の責任やのに、周りが理解してくれないと暴力を振るう。なんなんコイツ。ちょっとでも他人を理解しようとは思わなかったのか。へんこな男の一生を読まされた感じでした。
    あんまり感動出来なかったな。

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    2026年04月20日
  • 二周目の恋

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    恋愛小説アンソロジー
    一穂ミチさんが好きだから買ったやつ。やっぱり一穂ミチさんのカーマンライン最高だった。辛い…。
    遠田潤子さんのやつが恋愛というか、まぁ恋愛なんだけどトラウマ刺激系で顔を顰めながら読んだ。どれも良かった

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    2026年04月06日
  • 青い絵本

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    絵本と言うと子供とおとなの関係での話しと思いきや、ほぼ人生の終盤の哀歌を絵本と共に語る、みたいな感じでした。ややことか美弥子とか桜木紫乃さんの作品、よく出てくるなあみたいな。

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    2026年04月02日
  • 蛇行する月

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    女のグループは本当に不思議なもので、
    嫉妬と妬みと憧れと同調と愛情で 形作られてる。

    高く、どこまでも高くペラペラなプライドだったかと思えば、 低く果てしない分厚いプライドだったり…
    とにかく 女は難しい&面白い。

    そして本文の男の頼りなさといったら!もう。

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    2026年04月01日
  • ラブレス

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    人生が交差していくタイプは読みなれなかったけれど、序盤の百合江の生い立ちから引き込まれた。百合江の人生は暗いことばかしなのに、重たくならずに読めた不思議。ただ目の前の1日をやることをやって過ごす。生きるとはこういうことなのかな。

    個人的にはハギの弱さ、隠すことも上手くなさそうな純朴さがいちばん胸が苦しくなった。

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    2026年03月29日
  • 誰もいない夜に咲く

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    ネタバレ

    すうっと心に溶かされていくように読んだ。良い作品だったと思うけれど、あまり印象に残らない。あとあと、ふとしたときに思い出しそうな、どこか諦めの混じった薄暗いお話でした。女一人で着付師として自立を決意する「絹日和」が一番好きです。

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    2026年03月23日