桜木紫乃のレビュー一覧
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自分よりも悲しみが深そうな人間のそばに行けば、わずかでも明日に日が差すような気がした。このかんじがよくわかる。そして、自分よりも嘆きたい人間を思いつく限りの前向きな言葉で励ましていると、吐いた言葉によって気持ちが「浄化」してゆく、とも。心理描写がするどくて気持ちがはまった。
不遇な目にあい、行き場を無くした、亮介と紗季は偶然出会う。幾度と会い、気持ちが通いその後の展開の恋愛ものかと思えば。。春奈が出てきた一気にゾクッとした空気になった。これはホラー・・?
四人?でバーベキューをしている場は異空間で。
小木田は確かに狂ってはいるが、悲しい方向に話は進む。春奈をすんなり受け入れたところは紗季も空虚ということ・・
真があって全うな娘にうつった紗季が小木田と春奈の件で狂っていく。亮介は、なんだか自分(わたし)に似ていて感情移入した。
エゾカンゾウの花をぐぐった。花言葉は「憂いを忘れる」
その下に埋もれているのは、愛ではないでしょうか、と紗季。それは愛とは呼ばない・・とおもう。 -
Posted by ブクログ
桜木紫乃さんの小説は結構読んでいるけれど、メインの土地が北海道ではない作品を読んだのは初めてような気がする。
とは言え北海道も多く出てくるのだけど、札幌のような都会ではなく山深いリゾート地が舞台で、メインで出てくる土地は新潟なので栄えている感じはあるものの大都会ほどではなく、やはり桜木さんの小説特有の地方の少しうらぶれた雰囲気が漂っている。
そして私は桜木作品のそういうところが好き。
新潟で手広く事業を展開していた10歳上の妻・章子が突然の事故で植物状態になってしまった夫の亮介。
会社を追われて故郷を離れた54歳の彼は、東京でたまたま入ったキャバレーで、そこで働く美しい女・紗希と出逢う。
紗希は10年所属していた芸能事務所を解雇されたばかりの29歳で、芸能の道を諦めて新しい人生へと踏み出したところだった。
行き場をなくして岐路に立たされた亮介と紗希は、お互いの孤独に引き寄せられるようにして北海道で再会し、そしてひとつの事件が起きる。
亮介と紗希の関係は、単純な恋愛感情で結ばれているわけではない。実際付き合っているわけではないし、肉体関係も恐らくない。
お互いがお互いに自分を写して、孤独を癒し合う関係…と言うのが一番近いように思う。
不思議に引き寄せられるのは、相手の中に自分の淋しい部分を見出しているか、もしくは相手よりは自分の方がまだ孤独ではないと確認して安心できるせいなのか。
きっと単純な恋愛感情ならばこんな風にはならなかったのだろうな、と思う。
紗希はとても容姿が美しい。美しいだけで大成するとは限らない芸能界で散ってしまうものの、彼女は彼女なりに10年間必死にやってきたせいもあって、真面目さやひたむきさが少しおかしな方向に伸びてしまっているところがある。
適当さを許せない紗希の性格は、彼女自身のことを追いつめ、そして事件が起きてしまう。
亮介と紗希がそれぞれメインになったエピソードが順番に描かれていく連作短編集。
ラスト近くで驚く展開があったので桜木さんの小説の中では賛否が分かれそうな気がする。
個人的は流れを読むと納得出来るラストでした。シンプルに、面白かった。 -
Posted by ブクログ
桜木さんが生れ住む北海道を舞台に、男女の愛を描いた短編集。
「雪虫」「霧繭」「夏の稜線」「海に帰る」「氷の棺」「氷平線」の6編。
それにしても独特の雰囲気を持った上手い作家さんだと思う。
この人の描く北海道はいつもどんよりと重く、性愛を通して描く男女の愛はひたすらやるせない。
一度嵌り込むとなかなか抜け出せない様な魅力が有ります。
”関係”とか”結末”に”血”や”業(ごう)”をかき混ぜて発酵させると”因縁”とか”宿命”が出来る。
物語をじっくり深く発酵させるのが桜木さん。酸味が強くなった古漬け。味わい深い。歌で言えばPopsでは無く艶歌・怨歌の世界。
しかし、私の好みは浅漬けなのです。
そんな訳で少し離れていた桜木さんですが、ある人のレビューをきっかけにこの本を読みました。
2007年発刊の桜木さんのデビュー作です。
そのせいなのでしょうか発酵度合いはやや浅く、平均すれば私の範囲内。
なかなか読み応えがありました。 -
Posted by ブクログ
桜木紫乃の作品を読むと、毎回「この人はこんな作品を書けるのか」と、驚嘆してしまう。
ストリッパーという特殊な(申し訳ないが、私がこれまで触れたことのない世界なので、特殊な、という表現を許していただきたい)世界で生きる女。
踊ることを一身に愛し、その世界を離れられない女。
妖美で、可憐で、悲しい。でも、潔い。
アスリートとか、芸術家とか、そういう題材と同じように、ストリッパーを捉えている。
狂おしいほど全身全霊をかけて愛し、そしてそれに一生を捧げる人の美しさと強さ、儚さをきっちり書いている。
決して、キレイな話、美談一辺倒としてはおわらせないところが桜木さんの冷静な目であり、でもその目はあたたかで、優しい。愛情を滲ませて、どうしようもない人間というものを書く。
読んで、引き込まれた。
『硝子の葦』と比べて、どちらかというとストーリー重視なのでぐいぐい進むのだが、その分人物像系はどちらかというとキャラクター的かな。
立体的に、人臭さが香り立つところまではいかない。
ドラマ的、映画的なのかもしれないな。
だから、荻原浩とか、原田マハ的な感じもそこはかとなくある。
そしてその点において、対局には『砂上』がある。
桜木紫乃の心象風景は、作品ごとにその景色と色合いを変える北海道の風景、そして女のどうしようもなさ。ひたむきさ、儚さ。そして美しさ。そしてどうしようもなく乾いた砂。
それらの絶妙で危うげなバランスが、きっと桜木紫乃の物語の世界を唯一無二のものにしているし、読者はそこに夢を見るのだと思う。