あらすじ
『ホテルローヤル』で第149回直木賞を受賞した桜木紫乃のデビュー作品集! 真っ白に海が凍るオホーツク沿岸の町で静かに再会した男と女を描く『氷平線』。酪農の地を継ぐ者たちの悲しみと希望を、牧草匂う交歓の裏に映し出した『雪虫』(オール讀物新人賞受賞作)――。北海道の農村を覆う閉塞感と、そこに生きる男女の虚無的で乾いたセックスを鮮烈に描いた、読む者の魂を熱く震わせる全6篇を収録。桜木紫乃の原点はここにある。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
なかなか面白かった。
僕の今のメンタルでは、短編集がちょうどいい。
集中力がもたない。
処女作とは思えない良作だ。
北海道が舞台だということにも、
とても親近感を覚える。
Posted by ブクログ
やっぱり好きだ!
この曇天のような灰色で息苦しい、そして覗き見しているような生々しい背徳感。そんな桜木紫乃作品を無性に読みたくなった。
6話短篇集は全部、北海道が舞台。
ご出身の釧路だけでなく、十勝やオホーツク海の入江の町など。『雪虫』がデビュー作。
閉鎖的な場所に留まる人、土地を捨てる人、行き場のない人。どの作品も完成度高い。哀しいけど逞しくもある男女の物語に、溺れそうになった。
今年の上位に入る!
Posted by ブクログ
北海道で生きる女性の6つの物語。
雪深い土地ならではの静かな強さが前面に出ている。
性的描写も、イヤラしくなりすぎず、けど淡白になりすぎず。
静かに激しいとてもドラマティックで、あっという間に読み終えた。すごくよかった。
Posted by ブクログ
桜木紫乃さんのデビュー作です。デビュー作とは思えないほど、短編集なのに、重厚な本だと思います。単なる男女の愛だけではない、様々な感情が生まれる不思議な読後感です。オススメ!
Posted by ブクログ
モノトーンなのに鮮やか。冷たいけど生々しい。
(瀧井朝世さんの解説より)
忘れられない思いの作品だったので、再読しました。
しかし、
自分の3年前の感想を見ますと、忘れられない作品と思ったわりにはあっけらかんとブログしておりました。
特に短編6篇(「雪虫」「霧繭」「夏の稜線」「海に帰る」「水の棺」「氷平線」)のうち最初の「雪虫」が何とも言えずいいのです。オール読物新人賞デビュー作だそうで、これで世に出ましたという作品だからでしょうか。そもそもの桜木さんワールドのはじまり。
どんな風にいいのか?ストーリーがうまい。情景が湧いてくる。
芳しい牧草の中での交歓、牧歌的風景。高校以来付き合ってるいい年の男女の紆余曲折。
持っていかれる感情。明るい中の哀歓をかみしめたくなる。余韻が嫋々とそして納得する。
*****
<3年前の感想>
桜木紫乃さんの短編集『氷平線』と『誰もいない夜に咲く』にはまって
「格差社会の現代の片隅に生きている」短編の主人公たち(『誰もいない夜に咲く』解説)
「一億総中流」の昭和に駆け抜けたわたしからみれば、「庶民の哀歓」になる
やっぱりちょっと古いかなあ(笑
つまり、いつの時代も庶民は悲哀に満ちた人生を送っている、ってこと
主人公たちが
けしてお金持ちではなく、家庭が崩壊しかけてるか、肉親同士が解り合えず
夫婦円満でないか、離婚してるか、恋人フラれているか、さびしい、きびしいひとり身か
しかし
この作者の短編の数々が一見「暗いものがたり」を編んでいるようにも
背景にからっとした空気の北海道の風景がそこはかとなくはめ込まれてあるので
そこに目が行く、目だけで無く、そこへ旅行したくなる不思議さ
その風景の中で哀歓をかみしめてみたい、なんてさ
だからうまい作家ってことになるのだけれど
北海道がからっとしているという感想もわたしの幻想なのかもしれない
霧の摩周湖は行った時、ほんと霧で何も見えなかったしね(笑
Posted by ブクログ
北海道に生きる大人の男女の愛と人生を描き続ける直木賞作家・桜木紫乃さんの心を打つデビュー作品集。ここに描かれる男女達は意志が強固なしっかり者ばかりなのですが、でも時には自力ではどうしようもない辛くて哀しい運命もあるのですね。『雪虫』達郎の仕事は四季子を愛しマリーを幸せにする事ですね。『霧繭』真紀には男よりも着物なのですね。『夏の稜線』京子は最早限界でこれが最善の道でしょう。『海に帰る』自由気ままでいたい女・絹子。『水の棺』不幸や落ち目の時も見捨てないのが真実の愛。『氷平線』友江の薄幸の人生に涙が溢れます。
Posted by ブクログ
短編集、やっぱり好きだな。すぐにぐっと物語に入り込め、瞬時にその世界観を味わうことができるから。そして桜木さんの物語は本当に迷いがない。いつだって登場人部と私が対面できる贅沢な場面を作り上げてくれる。北海道は寂れた街や村。そこで藻掻いて生きる人間たち。当人は努力していても状況環境が許してくれない。いつの間にか足を引っ張られズボズボと地獄へ落とされてしまう。その地獄から這い上がれるかどうかはやっぱ当人次第となる。桜木さんの描く人物、弱さもあるが気骨もある。最終的に幸せになってくれれば、と応援したくなる。
Posted by ブクログ
思うに任せぬ人生を歩女性の切ない話。雪虫のフィリピン人女性、幼馴染、夏の稜線の都会から来た女性、「深奥」に潜む熾火のようなものを通して、女の幸せとは何かを考えさせられる。
Posted by ブクログ
雪が降る様は、緩慢な時の流れを思い起こさせる。一年のうち、三分の一はそれが続く。積もれば容易く抜け出せない要塞を築き、人々を中に閉じ込める。
雪国に在って、しだいに神経が麻痺していくような感覚はわかる気がする。
極寒の気候で熱はひときわ存在感をもち、痛みは研ぎ澄まされて鋭く、悲しみは沁み通る。
寥々たる地を背景にすれば、生きた人間の輪郭は否が応でも太く浮き出てくる。
あらゆる要素が舞台装置として、これ以上ないほど有効に機能している。
故に、どの作品も「北海道でなくてはならない」と思わされる。もしも別の場所が舞台だったなら、まったく異なる印象をもったと思う。
全体を通して、思ったことがもう一つある。
和裁師、理容師、歯科医師…桜木さんの描く職人像がどれも好ましかった。
倦んだ空気をまとった作品群の中で、自らの職務を矜持を持ってやり遂げる人々の姿は、晴れ晴れと描かれている。
Posted by ブクログ
今回は特に渋いなあ。。。
と思ったら、桜木紫乃さんのまさかのデビュー作
卓越された描写力と人物造形力は既に健在
収録されているのは六編だが、
長編小説を読み終えた様な深い読後感がある
オホーツク沿岸の冷たい大地とは対象的に、北の大地に人生をささげてきた家族や男女の関係が生々しい
狭い社会の中でのままならない日常、行き場のない心はさまよい、温めてくれる他人を求める
しかし、どの話にも出てくる女は逞しくブレない生き様だ
良かったのは『霧繭』と『氷平線』
『霧繭』は和裁師の女の話
『氷平線』とは”水平線”ならぬ”氷水線”
水平線のように広がる氷の大地のことであり、凍てついた海と空の境をなす線をいう
あの頃を思い出し友江を手に入れたいと思う誠一郎
誠一郎を思いながらも将来を見てしまう友江
交わることのない二人の想いがどこまでも続く氷平線に溶けていく
最後は衝撃が待っている
雪虫、海霧、氷平線、出面取り等、北海道ならではの言葉に、より凍てつく大地の描写がリアルになった
Posted by ブクログ
今まであまり読まないジャンルでしたが面白かったです。どうにも上手くいかない仄暗い男女の関係をくどすぎずさっぱりすぎず描かれていてなんとも言えない気持ちになりました。大人の苦い恋愛小説です。
Posted by ブクログ
どの話も静寂と暗さと、どうしようもない、しがらみ?みたいなものが漂っていて、
そして、決して幸せにはなれなくて…。
でも読み応えがあって個人的には好みでした。
Posted by ブクログ
オホーツク海。流氷。
どこまでも広くて、冷たい大地。
デビュー作「水平線」を含む作品集。
孤独を抱えた人々の、くっつきそうでくっつかない、くっつけない、
苦しい切ない哀しい思い。
どうして、って思うけれど、
どうにもならないこともある。
北海道には一度しか行ったことがないけれど、
そこで暮らしたことのある人にしか分からない、
重く張り詰めた空気が描かれているのだろうと思った。
「雪虫」が好き。
”青白い時間は、苦く美しく変化する。”
あと「水の棺」。
愛と憎しみと。
Posted by ブクログ
凍てつく北海道を舞台にした6話の短編。
どれも陰鬱としてラブストーリーなんてお気楽には言えないけれど、これは間違いなく愛の物語。
雲一つない空であっても、そこには黒く立ち込める雪雲しか見えない。そんな中で必死に生きて行こうとする主人公たちの諦めや足掻き、再出発が決して美しくはない人間くさいドラマで描かれている。
男性作家の場合…どうしても男性にとって理想の女性、こうあって欲しいという視点が否めない…男性作家さんごめんない。反して女性ならではの傷付く言葉や扱い、惨めさが現実味を帯びて胸を付く。
風土や環境はどうしたって変えられない。郷に入れば郷に従えと言うように従えないものは生きづらい。都会では気にならないことも話題のない田舎ではたちまち〝噂〟となる。
果てしない土地と海にある世間が小さく狭い町の中でおこる男と女の愛にまつわる葛藤。
以下、本文よりですが、ネタバレにはなっていないと思います。気になる方は読まれないでください。
文中より…
雪虫
好きとか嫌いじゃないんだよ。あんたの気持ちは執着なの。
霧繭
いい女ってのは一生かかっても主役にはなれないのよ。主役はいつだって愚かな女なの。覚えておいてね。
夏の稜線
「男を産むまで頑張ってもらわなくちゃ」
陣痛の痛みから開放されたとたんタキが言った。優しいおばさんは姑になり、温厚な夫は良い息子へと変わった。
海に帰る
こんなけりのつけかたしか思い浮かばない女の不器用さを憎んだ。
水の棺
視線が一瞬泳いだ。わずかにほっとした表情のあと、それを打ち消すようにうろたえ、目を逸らす。
氷平線
友江の話が少しも本当っぽく聞こえないのが、嘘をついていないせいだとは、十八の誠一郎にはまだわからなかった。
2021.6.1
今年の11冊目
Posted by ブクログ
エッセイを読んでから、まずはデビュー作へ。
男と女の関係を描いた文学を、これまであまり読んでこなかった。それよりも物語の題材の面白さが優っていた。
桜木さんの小説を読んで、小説に男女の関係を盛り込むことは、人が生きている部分の、全部を描いていただけなのでは・・・と思った。その描写はリアルであるが、ときには幻想的だ。それぞれの人が生きていく哀しみが透けて見えた。
北海道に暮らすようになったからだろうか、気候も、時間に移ろう景色の様子も、海霧や流氷のことも、ここに出てくる人たちも、リアルに迫ってくる。その分、入り込んでしまう。他の土地に暮らしていたら、また違う印象を持つのだろうか。私が読んだ北海道を舞台にした小説は、どこかもの悲しいものが多い。
ご近所さんからは、自慢話、苦労話、面白い話をたくさん聞いてきた。もちろん言えないことは聞いていないが、他言できない秘密や、事実はたくさんあっただろう。桜木さんに、傍で耳打ちされているような気がしてきた。
Posted by ブクログ
桜木さんが生れ住む北海道を舞台に、男女の愛を描いた短編集。
「雪虫」「霧繭」「夏の稜線」「海に帰る」「氷の棺」「氷平線」の6編。
それにしても独特の雰囲気を持った上手い作家さんだと思う。
この人の描く北海道はいつもどんよりと重く、性愛を通して描く男女の愛はひたすらやるせない。
一度嵌り込むとなかなか抜け出せない様な魅力が有ります。
”関係”とか”結末”に”血”や”業(ごう)”をかき混ぜて発酵させると”因縁”とか”宿命”が出来る。
物語をじっくり深く発酵させるのが桜木さん。酸味が強くなった古漬け。味わい深い。歌で言えばPopsでは無く艶歌・怨歌の世界。
しかし、私の好みは浅漬けなのです。
そんな訳で少し離れていた桜木さんですが、ある人のレビューをきっかけにこの本を読みました。
2007年発刊の桜木さんのデビュー作です。
そのせいなのでしょうか発酵度合いはやや浅く、平均すれば私の範囲内。
なかなか読み応えがありました。
Posted by ブクログ
「ホテルローヤル」以来、桜木紫乃の作品を読んだのは2作目だったが、こちらも短編で土地のしがらみや人間関係の窮屈さが描かれている。読後感はあまり良くないが、そこがかえってリアリティがあり、物事のケジメや再出発を感じた。
Posted by ブクログ
「雪虫」田舎から出て夢破れて舞い戻り昔の女とズルズルと…
「霧繭」和裁師と呉服問屋の顧客部長と。
「夏の稜線」東京から嫁に来て女しか産めなかった末。
「海に帰る」田舎の理容店を継ぐ圭介とキャバレーの女、絹子。
[水の棺」田舎の歯科医師と僻地へと勤務を移す元カノ。
「氷平線」田舎の漁村から東大へ行った男と売春婦。
彼女の小説は、描写や背景。男と女の深い闇みたいなものが面白すぎる。
Posted by ブクログ
桜木さんの描く道東の景色は結構好きで。乾いた夏の牧場。深く深く雪に静められる各々の家。雪の閉塞感と除雪はそこに住んでる人のあらゆるものを狭くする。からこそ家族、同じ土地に住んでる人大事であり、鬱陶しい。
そんな、家族の6編。地方のどこにでもある人々だが、その人々が北海道の大地で生きている。広い北海道だが閉塞感は半端ない。
人は置かれた場所で生きるのか、置かれた場所に変化をつけるのか。逃げ出すのか。
なかなか、奥深い。だから桜木さんの物語は読後、閉塞感から逆に抜け出せる
Posted by ブクログ
男と女の物語。道東という地域はその土地に根をおろすことができれば、自然も豊かで食べ物はうまい。娯楽は少ないがないわけではない。だけど、一方で目に見えない檻のようなしがらみはある。3代遡れば何かしらの期待を胸に抱いて入植した同郷者。それでも道東にたどり着いたということは推して知るべし。たどり着いたとしても同様だ。先祖のつながりは本州に比べれば薄いかもしれないが、息苦しさはどこかにある。だけど、苦しいだけではない。束の間の幸せや淡い希望を抱いて、生きていくしかない。男も女も強かに愚直に愛を囁く。
Posted by ブクログ
北海道、雪と氷に閉ざされた薄暗い中で繰り広げられる男女のドラマを6編収録。恋愛モノと言えばそうなのだが、心ときめく話は無い。恋愛と言うより、性愛である。しかしエロくはない。純文学のような読後感。
Posted by ブクログ
既に「起終点駅(ターミナル)」と「誰もいない夜に咲く」を読んでいるので、デビュー作の本作は読む順番を明らかに間違えていた。
しかし、表題作は作者の中でもとても良かった。普段と作風が違うような印象を受けたが、それが良かった。少し駆け足のような感じがしたし、最後のシーンは唐突で、そこが目新しくも後味がなんとも絶妙だった。
他だと、「海に帰る」の床屋の師匠から「いいか、失敗したなと思っても、その素振りはは絶対に見せちゃいけない。謝ることで楽になったぶん、客は不満を持つんだ」「恥はお前だけのものだ。満足させるんだ。それが技術じゃないのか技だけじゃ何も作れないぞ。人間相手なんだからな」サービス業で働いている者としては耳が痛かった。
Posted by ブクログ
【今より一歩進もうとしている人たちの話】
『ホテルローヤル』で直木賞を受賞した桜木紫乃さんの短編集。書評を読みいつか読んでみたいと思っていた本です。
北海道の田舎で現状にあがきながら、それでも今の状況を受け止めつつ、でも一歩先へ進もうとしている人たちの物語でした。全部で6篇収録されています。
文庫の解説を滝井朝世さんが書かれていたのですが、桜木さんは物語の筋(ストーリー)だけではなく風景描写も読ませる力のある作家さんらしいです。確かにな〜と思いました。風景描写になるとちょっと集中力が切れたり、流し読みしてしまうことがあるのですが、ほとんどなかったなあと。
「霧繭」に登場する和裁師の仕事の描写や、「海に帰る」に登場する理容師の仕事ぶりはかっこよかったです。「夏の稜線」は田舎の短所でもある噂話などが出てきていやでしたが、最後の主人公の行動に希望が持ててよかったです。
出てくる人たちは燻っているのですが、それでも嫌な読後感はありませんでした。