桜木紫乃のレビュー一覧
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意図せず犯罪の共犯者にさせられていた主人公の、17年間にわたる逃亡生活の物語。出会う人は、様々な事情で世間から身を潜めているような人達。自分が日々忙しく充実した生活を送る今も、どこかで身を潜めたり、何かに怯えたりしながら生きている人がいるのかもしれないと思うと、やり切れなくなる。
意図せず犯罪の現場に同行していたことで意図せず逃亡生活に突入し、辻褄を合わせ身を隠すために自動的に次の行動が決まり、死体遺棄をも厭わなくなってしまう。このような状況下で「出頭」に舵を切ることができなかったのも、自然な流れのように感じた。
一体何が罪だったのか。主人公は罪人なのか。自殺者を死体遺棄したことくらいしか思い当たらない。それだって、自ら始めたことではない。
罪なんて誰でも犯す可能性があり、その場の流れで誰にでも犯罪者になる可能性がある、その差は紙一重なのではないか。そんなことを感じた。 -
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桜木紫乃『孤蝶の城』新潮文庫。
『緋の河』の続編。カルーセル麻紀をモデルにした小説である。主人公の秀男の芸名がカーニバル真子とは良く思い付いたものだ。
自分は、最近流行りのLGBTQなるものには、どうしても抵抗を感じる昭和世代である。昭和の時代にもゲイとかオカマと呼ばれる人たちが存在したが、今ほど権利や何だと騒ぐことも無く、一般人にその存在を容認しろと強要することは無かった。
今や一般企業の管理職向け教育などでLGBTQを容認しろと強要してくるものだから呆れてしまう。そういう存在や生き方を嫌うのも自由であるはずだ。そういう今流行りの立派な教育を行う企業もLGBTQの皆様のために多くの種類のトイレや更衣室、制服を用意していないのだから、きっと口先だけの綺麗事なのだろう。
人それぞれ様々な生き方があろう。それは理解出来るし、様々な生き方がある分、それぞれが大小に関わらず悩みを抱え、それでも必死に生きているのも当たり前のことだと思っている。
主人公の秀男はカーニバル真子という芸名で芸能界で活躍する中、モロッコで陰茎切除と造膣手術を受け、念願の女の体を手に入れる。しかし、手術後の苦しみは並大抵のことではなかった。
帰国後の凱旋ショーは大成功を納めるが、世間の注目を集め続けるために秀男は、歌手デビューや地方回り、話題づくりのための結婚などあの手この手で奮闘する。
出会いと別れを繰り返しながら、必死に芸能界にしがみつく秀男だったが、次第に心と体のバランスが崩れ始める。
本体価格950円
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表紙の青色に惹かれて手にとった。
絵本は、子どもの頃読んでもらって幸せな想いや楽しい思い出があったり。
大人になり、読み聞かせしての思い出が出来たり。
子どもの頃に受けた印象と大人になり読んだ後とでは、感想などが違ったり。
絵本といえば、子どもが対象のような感じも受けますが、大人も十分楽しめると思う。
5編からなる話の中で、私が良かったなと思ったのは、“鍵key”と“青い絵本”。
青い絵本の中の作品『あお』、実際手に取って読んでみたいと思った。読んでいて、色々なあおを想像した。
表紙は、美弥子と好子が見た支笏湖の碧なのでは??と思った。
皆さんがみた “あお”は、どんなあおですか?
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桜木紫乃さんの五編の短編集。
表題作の「青い絵本」では、一時期親子だった2人の来し方行く末が描かれていました。
絵本作家と漫画の背景を描くアシスタントの2人の合作の絵本は、どんな青色で表現されたのか、とても興味深くて見てみたいなと思わせてくれました。言わなくてもわかってしまった悲しい事実と向き合って懸命に作られた絵本。親子として過ごす時間は少なかった2人だけれど、この絵本がずっと2人の繋がりを残してくれることになったのが、とても印象的でした。
もうひとつ印象的だった短編は「卒婚旅行」です。定年後の夫婦の生活は、お互いの思いがすれ違うとよく聞きます。この短編もまさしくそのとおりでした。
ななつぼしの列車の旅を楽しみにする夫。ひとつの決意のもと、計画的にひたすら掃除をする妻。妻の立場は、わかる、わかるでした。
卒婚という言葉を聞いてからの夫は、穏やかに自分の思いをとつとつと語ります。そこで始めてお互いの心うちが通じたように思いました。こういうときに穏やかに話せる人を選んで結婚していたことが、とても羨ましく感じた短編でした。
「卒婚旅行」
「なにもない一日」
「鍵key」
「いつもどおり」
「青い絵本」 -
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核家族などと言われて久しいけれど、もはや核家族どころかおひとり様世帯の時代と言っても過言ではない。
「ママがね、ボケちゃったみたいなのよ。」
長女である智代の元へ届いた、妹乃理からの一本の電話。
身勝手でワンマンな父について行けず、実家とは疎遠となった智代に「これはお姉ちゃんにも関係あることなの!親は親でしょ。」と妹の言葉が重くのしかかる。
28歳バツイチの陽紅は、農協の窓口業務について間もなく、3日に1回は訪れる80歳過ぎのおばあちゃんから「ウチの嫁にきてくれ」と迫られていた。
55歳未婚。
結婚離婚を5回も繰り返した母は、悩む娘に「ありだね」と言った。
とうとうテレビも映らなくなってしまった。
これを機に大型テレビにしようと言われたらどうしよう…これ以上、切り詰めようがない。
仕事帰りに買う1本の缶ビールが乃理の心のモヤモヤを取り除いてくれる。
大丈夫。1本だもの。
少しずついびつさを増してゆく家族の物語。
連作5話のしまいの物語。
突飛すぎるわけじゃなない。どこにでもありそうな家族がしまえてゆく憂鬱な5話。
夫婦であっても親子であっても同じ屋根の下に暮らしていても、おひとり様感が拭えない。
他人事ではない感じが読後にじわじわとくる。
今年の5冊目 -
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絵本に纏わる5つの短編集。
さまざまな形で絵本に関わる人々が、絵本を通じて過去と対話し再生する姿を描いている。
絵本は、短いことばでいちばん伝えたいことを表現していると思う。
その1行に込められた思いが、今の自分の心に届いたときに感動し何度も読み返す一冊となる。
そんな絵本を誰もが持っているのだろう。
卒婚旅行〜大人のための絵本読み聞かせに出会ってから絵本セラピストの資格を取得していた妻に読んでもらったのは『ほら、みて』。
なにもない一日〜やや子が朗読する短編小説の話から義母が昔、夫に読んであげた記憶があった絵本が『だいすき だいすき』。
鍵key〜小説家の夫を亡くし、閉店するまで書店で働いた15年、最後に買った一冊『鍵key』を持ち息子に会いに。
いつもどおり〜キダジュンが描いた「今際」の作品集に文章をつける仕事を依頼したのは小川乙三であり、小夏は書いた『いつもどおり』。
青い絵本〜絵本作家として活躍する高城好子は、かつての美弥子の継母だった。彼女に誘われて行った旅行で余命幾ばくもないことを知り、彼女の望みで絵を描き『あお』が最後の一冊となる。