桜木紫乃のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
*「あなた、なぜ小説を書くんですか」北海道・江別で平坦な生活を送る柊令央は、応募原稿を読んだという編集者に問われ、渾身の一作を書く決意をする。いつか作家になりたいと思いつつ40歳を迎えた令央にとって、書く題材は、亡き母と守り通した家族の秘密しかなかった。執筆にのめりこむうち、令央の心身にも、もともと希薄だった人間関係にも亀裂が生じ―。直木賞作家・桜木紫乃が創作の苦しみを描ききる、新たな到達点! *
うーーーん??
桜木さん、好きな作家さんなのですが。
冷淡な女編集者の言いたいことがよくわからず、主人公の書く小説の良さも全く伝わって来ず・・・
人間関係の機微についてはさすがでしたが、珠子おばさ -
Posted by ブクログ
ポイントが三つある。
小説家を目指している柊玲央が小説を生み出していく苦しみ、新人を叱咤する編集者、そして柊玲央本人の人生事情。
いや、むしろ登場する小説に厳しい目線の編集者小川乙三を描くことで、桜木紫乃さんの小説への心意気を言いたかったのかのではないかと。
この小説中の小説「砂上」が、もし出版されないという結論だったらどうだろう。やっぱり小説家志望はあきらめないのか?また、本になったのはいいけれど、売れなかったら?読まれなかったら?読者に理解されなかったら?
出版されなくて、売れなくて、うずもれていった物書きたちの積んでも積んでも崩れる砂の山。 -
Posted by ブクログ
ある会社の社長である10歳年上の妻が、交通事故で意識不明の状態になってしまった亮介。副社長の地位も追われ、会社を辞め、新たな会社に勤めた。
かたや北海道からタレント(なのかな)を目指して上京してきた沙希は恵まれた容姿を持ちながら、なかなか芽が出ず、銀座にある老舗のグランドキャバレーでホステスのバイトをし、生活している。
2人は彼女の勤めるお店で出会い、お互いの行き詰まった状態に共感し合うが、その日は何事もなく終わった。でも、沙希は亮介に惹かれていた。その感情は好意とともに、同情や憐憫の気持ちも含まれていたようだ。
人は、自分より不幸な人が近くにいると安心する場合もある。うまくいっていない今の -
Posted by ブクログ
既に「起終点駅(ターミナル)」と「誰もいない夜に咲く」を読んでいるので、デビュー作の本作は読む順番を明らかに間違えていた。
しかし、表題作は作者の中でもとても良かった。普段と作風が違うような印象を受けたが、それが良かった。少し駆け足のような感じがしたし、最後のシーンは唐突で、そこが目新しくも後味がなんとも絶妙だった。
他だと、「海に帰る」の床屋の師匠から「いいか、失敗したなと思っても、その素振りはは絶対に見せちゃいけない。謝ることで楽になったぶん、客は不満を持つんだ」「恥はお前だけのものだ。満足させるんだ。それが技術じゃないのか技だけじゃ何も作れないぞ。人間相手なんだからな」サービス業で働い -
Posted by ブクログ
【今より一歩進もうとしている人たちの話】
『ホテルローヤル』で直木賞を受賞した桜木紫乃さんの短編集。書評を読みいつか読んでみたいと思っていた本です。
北海道の田舎で現状にあがきながら、それでも今の状況を受け止めつつ、でも一歩先へ進もうとしている人たちの物語でした。全部で6篇収録されています。
文庫の解説を滝井朝世さんが書かれていたのですが、桜木さんは物語の筋(ストーリー)だけではなく風景描写も読ませる力のある作家さんらしいです。確かにな〜と思いました。風景描写になるとちょっと集中力が切れたり、流し読みしてしまうことがあるのですが、ほとんどなかったなあと。
「霧繭」に登場する和裁師の仕事