あらすじ
守るものなんて、初めからなかった――。人生のどん詰まりにぶちあたった女は、 すべてを捨てて書くことを選んだ。母が墓場へと持っていったあの秘密さえも――。直木賞作家の新たな到達点!
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Posted by ブクログ
何が起こるか分からない、面白い話だった。読み終わってもするりと指の間を抜けていくような、掴みどころのない登場人物たち。それなのに惹かれてしまう女たちが書かれている。とにかく、面白い。
主人公が小説を書き、その話に出てくる主人公も同名の小説を書いている。主人公の家族を題材に書いているし、読んでいる方もフィクションの中の更に事実と虚構の境目が曖昧になっていくのがなんともいえない感覚だった。
実話を読んでいるような気持ちになる。本当にそういう反応を相手が示したんだというような錯覚をさせられる。
虚構でも問題ないのかもしれない。これは小説なのだから。
主人公は小説を書き上げるために自分を見つめ、母の過去を辿り、その他様々な人の言葉を飲み込み自分のものにしたのだと思う。自分を認めなければ先には進めない。その過程で得た感触はそのまま実生活に反映され、ますます強固な自分になっていくように見えた。
自らの意思で物語を生み出していく女たちに引き摺り込まれる。ミオ、令央、美利、そして乙三。豊子も珠子もそうかもしれない。
どれもが真実でどれもが嘘なのだ。こんな魅力的なこと、あるだろうか。こんな女たちのようになれたらいいのに。
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一人の女が、とても鋭い感性の編集者と出会い、本を一冊書き上げるまでの話。
作家さんは、なんてまぁ大変で過酷な作業をされているのかと驚き、そして、ほとんどが自己を見つめて、自分の内面を知っていくという作業で。
乙三が聞いた言葉として語る
「人に評価されたいうちは、人を超えない」は、
そういうことかと、最後の方で理解できた。
それは自己を知ることこそが大切で、誰かの為にとか、支点を自分以外にしないことなのかなぁと、思った。
「主体性のなさ」が今ひとつ私の中で理解できないので、もう一度読み直すこととする。
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どこまでが創作で、どこまでが現実なのか、そして柊玲央はどのように虚構を築きあげるのか・・・。
あまりにリアルな、編集者と、まだスタートラインに立ててもいない作家のやりとり。もっと上手く嘘をつきなさい、と、隠さずに真実をあぶり出す、に矛盾がない。その編集者さえ、虚構に見せる筆致。
スタートから10年後、こう振り返るのか。しかも作品にしてしまう。当たり前のようでいて、これをエッセイにしなかったところが桜木紫乃さん。
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小説家が書く小説家の話。痛烈な編集者の言葉が面白い。小説家としてデビューするって厳しいんだな。他の桜木紫乃の作品と比べると少しカラーが明るめな感じがした。
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四十女の物書きがデビュー作となる「砂上」を書き上げる話。創作の様子や物書きの思考を辿れるのが初めての感覚でゾワゾワした。
言葉にするのむず笑
気に入った段落↓
令央は「虚構」を信じたかった。すべて嘘に塗り替えてしまえば、己の真実が見えるはずだ。あのときなにが足りなかったのか、あの日どうすればよかったのか、あの人にどう接すれば間違わずに済んだのか。それらの答えはすべて現実ではなく再構築された虚構のなかにある。
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桜木紫乃の世界でした。
初めは、この本はどうかな?的な感じでしたが、引き込まれて行きました。
母ミオ、娘令央、令央の姉妹として育った美利の親子が織りなす物語でした。女編集者の乙三が良い感じ。
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地元だからこの辺かな、あの辺かな、と想像するのが楽しかった。
ただ読み終わる頃には偶然だけど似たようなことが自身にも起きていて、読み返すのは少しつらい。
数十年後、自分はこの作品をどう思うかもう一度読み返してみたい。きっと感想が違う気がする。
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「ケチは生き方、せこさは性分」
「屈託とか葛藤とか、簡単な二次熟語でおさまらない話が読みたいんですよね」
舞台が江別 珍しいな~とおもいつつホテルローヤルに続いて手に取った一冊。本当は前回書店に行ったときも気になったんだけど、読むのを延期しておいた作品でした。小説を書く40歳女性、柊令央を取り巻く関係が母親の死をきっかけに大きく変化していくお話。彼女が16歳で産んだ娘を、妹として育てる母親。彼女の人生を小説として表すために、令央はミオ(母親)の人生を追っていく。
「一人称じゃなく三人称で書く」自分の人生も嘘で覆い、作家に作品を描かせる編集者、小川乙三がなかなかインパクトがある。言語力堪能な彼女の言葉は、令央と同じように読んでいる私もうーんと悩まされたりと考えさせられたりするものばっかり。物を、文章を、産み出す苦しみを主軸において主人公を取り巻く環境について軽快な書き口で表していた。
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面白くて苦しくて、読んでも読んでも読み終われなかった。
女3人のうち、ミオは令央の再構築した虚構からしか探れない。他人への興味が薄い令央のである。
ただ、最後の令央と美利の実際のやりとりで、息をつける。
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小説を書く人と 書かせる人と 小説の中の人生と 現実の生活が どれがホントでどれが嘘か曖昧になりながらも ふりしぼるように文章にする主人公に心打たれます。
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この小説に出てくる人も解説の新井さんもみんな全然優しくなくて、なのに清々しくさっぱりした後味。
日常がねっとりした優しさや必要以上の厳しさなんかに覆われてるからですかねー。
作家も編集者も大変だ!!
読むだけってありがたい。
Posted by ブクログ
なにかよくわからないけど、早く続きが読みたいと読み進めていった小説だった。
すべてが共感できるというわけでもないけど、自分と重なる部分があったりして考えさせられた。
おもしろかった。
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10年連れ添った旦那と別れ、彼の不貞による慰謝料とバイト代で暮らしながら文章を書き続けてきた令央。「主体性のなさって、文章にでますよね」と編集者から言われるほどどこか掴みどころがない彼女は、母であるミオと、母の子として育てた実の娘美利との関係もどこか希薄。そんな自分、母、娘との関係を題材にした文章「砂上」はミオの死により色を帯びたものとなる。
主体性がなくても人間関係が希薄でも生きてれば文章書けるしオッケー
それよりもまず自分の人生を肯定しながら生きることが1番大事なのかもな〜と編集者の乙三の発言から思ったりした
Posted by ブクログ
読みたい桜木紫乃全開で、ホントあの一行から始まる小説俺も読みたい!
ちょっとラブレスを思い出しますね。現代版ってとこか。増えた40kgのエピソードも読ませてもらいたかったな。
裏小川乙三、気になりますね!!
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柊令央、感情が安定しているのか周囲に興味がないのか気持ちの動きのない人。こういう人が作家になるのか…と思って、読んだ。彼女の成長若しくは変化を見届けた感じ。
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作家と担当者のやりとり…と簡単な内容ではありませんでしたが、桜木さんにしては異色の内容な気がしました。変わらず、テンションは低く、暗い内容でしたが…。
面白かったですが、もう少しパンチが欲しい気がしました。
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編集者の言葉が、
少しずつ今の自分に突き刺さる感じだった。
共感も褒めもせず、原稿を仕上げさせるためだけに言葉を発する乙三。
主人公の主体性のなさが、どこか自分に重なり、『結局ここまで突き放して言ってくれる人っていいな』って思えた。
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淡々と生きる人たち。誰にでも闇があるのだろうかと思わせる。大層なことも小さなことも何でもないかのように大差なく描かれる。この、編集者さん主人公の話を読みたい
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16歳で美利を産んだ令央、事情をひと言も聞かずに自分の娘とした母、ミオ。この女3代の物語を令央は小説に書く。何度も何度もダメ出しをする辣腕編集者の小川乙三。この小川さんの小説論はそのまま桜木さんの小説論なんだろう。一気に読み終えたけど深い一冊
Posted by ブクログ
※
読み終えて小説を書くってことは、ある真実に
たくさんの嘘を装飾して限りなく現実にみえる
虚構を作り上げることなのかなと思いました。
作家さん全てがこの方法で小説を書いている
訳ではないだろうけれど、少なくとも『砂上』の
作者である桜木紫乃さんは、話を生み出す際に
こんなふうに話を構築していく手法を取ることが
あるんじゃないかと感じました。
話の中で主人公に感情の薄さが武器になると
告げた編集者との出会いは主人公にとって
運命的に感じましたが、編集者には別の意図が
あって、主人公が自分に利する人間かどうかを
様子見するために網を張られただけと考えるのは
穿ちすぎでしょうか。
物語の中の主人公の主体性の無さぶりや、
編集者の突き放しっぷりに、返って体温や
人間味を感じました。
Posted by ブクログ
一人のアマチュア作家が、一人の編集者に出会い突き動かされたように小説を書き上げていく。
彼女の作品の題材は、私小説的な狭い自分の家庭の世界。それを虚構として、第三者の視線で書きあげるようにアドバイスを受ける。彼女の家族の現状と小説とがクロスする。自分の産んだ子供を母の子として妹として家族となリ、女としても母としても主体性なく生活してきた。自分のルーツを知り小説を書き上げる事で、娘と向かい合い、亡き母を認めていく。彼女の作家として、家族としての成長過程。
桜木さんの「小説を書く」という事への想いを込めているのかなと思う。
Posted by ブクログ
友達が貸してくれて読み始めました。
中盤から展開が気になってグングンと読み進めた。
最期は解説に至るまで、勢いは止まず。話はじっとりと暗い重たい感じはあるのに、疲れて飽き飽きすることなくどっぷりとこの世界にのめり込みました!
Posted by ブクログ
著者在住地が舞台となっています。実際にあるビストロもそのままの名で出ていることから、何となくリアリティーを感じてしまいそうでした。
同級生のビストロでアルバイトをしながら小説を書き続ける柊令央。
新人賞に何度応募しても落選。しかし、ある編集者から声がかかる。期待して会うと、母親に対し、乾いた感情を持つ自分の親子関係を書いた小説を令央の胸をえぐるような短い言葉でダメ出し。でも、視点を変えてこの小説を書き直すことを勧められる。
何度書き直しても、表情も変えずダメ出しされるが、しがみついて書き続ける令央。
母親とはどういった人物だったのか、それを知るために母を昔から知る、そして自分も出産のときにお世話になった助産師を訪ね、知らなかった母親の姿を知るのです。
小説を書くことで、家族のことを理解し、見ないふりをしていたものに目を向ける。
1冊の小説を書く生みの苦しみというのは、凄まじいな、と感じました。そして、編集者の腕の見せ所、というか、優秀な編集者がいて、初めて読み手が面白い小説が書けるということがある、ということも知りました。
家族関係のことがテーマなのかもしれないけれど、私は、編集者と作家の関係や、本ができるまでの大変さの方が心に残りました。
2021/12/22
Posted by ブクログ
北海道・江別市に暮らす柊令央は、友人が経営するビストロ勤務で得る数万円の月収と、元夫から毎月振り込まれる5万円の慰謝料で細々と暮らしていた。いつか作家になりたいと思ってきたものの、夢に近づく日はこないまま気づけば40代を迎えた。
ある日、令央の前に1人の女性編集者が現れ、彼女は強い口調で今後何がしたいのかと令央に問うた。彼女との出逢いにより令央は過去に書いた自伝的小説の改稿に取り掛かることになる。理解しきれずにいた亡き母のこと、そして他人任せだった自分自身のことを見つめ直した果てに、令央はひとつの小説を書き上げる。
主人公の令央は作家志望の女で、作品の中で令央は小説を書く。令央が書いた小説の一部が時折挟まれていて、読んでいてとても不思議な感覚になる。なぜなら、どちらも主人公が令央だから。
何世代かにわたる女の小説的な作品が桜木紫乃さんはとても巧い。親子だからこそ知らないことがある。知ろうともしない事実もたくさんある。それで当たり前だと生きていたけれど、小説を書き上げるために令央は徐々に向き合い始める。
そうしているうちに彼女自身も気づかない内面の変化があり、周りとの人間関係が変化していく。良い風に変わった関係もあるし、悪い風に変わった関係もある。
自分と向き合う、ってどういうことだろうと考えたりする。よく使われる言葉だけど、向き合っているつもりでも自覚的に自分自身と向き合うことはなかなか難しい。つい「これでいいや」「こんなものだろう」と思ってしまうのが人間だと思うから。
令央はあまり良い女ではない。容姿という意味ではなく、生き方や性質にあまり賛同はできないという意味で。自分から逃げてきた結果、うだつの上がらない生活をしている。そしてひとつ秘密を抱えている。
だけどそういうところが「でも解る」という感じで共感も出来てしまう。どこにでもいるような人間にも、探ってみればひとつの濃い人生ドラマがある。
令央も、母のミオも、妹の美利も、編集者の乙美も、それぞれに一癖ある。
小説家が書く小説だからこそ、「小説を書くこととは」にスポットを当てた、ある意味でとても苦しい一冊なのかもしれないと思った。
Posted by ブクログ
編集者という職業が存在することは知っていましたが、作家に与える影響や関係性がどの程度のものかを考えたことはありませんでした。この本を読む限り、その存在は大きく、力量次第で作家も変わるほどなのだろうと感じました。
自分の卒業論文を思い出しました。教授が朱書きを入れ、自分の文章はどこへやら。そして力作になったことが懐かしい。
2022,1/31-2/3
Posted by ブクログ
スラスラ読みやすい桜木紫乃をイメージして
読み進めると、あれ?となりながらも
どうなっていくのかが気になっていく。
登場人物の女たちが
これからどうなっていくのか
気になったままラスト
こんなラストもまた良い
Posted by ブクログ
最近欠かさず読んでいる桜木 紫乃さん
主人公は北海道・江別で生活する柊令央(ひいらぎ れお)
別れた夫から振り込まれる月5万の慰謝料と、友人の店で働いて得る数万円の月収で生活しています。
小説家を目指してはいるものの一向に目が出ず…
と言った地味な印象の40代の女性です。
そんな彼女が敏腕女性編集者、小川乙三(おがわ おとみ)との出会いで「砂上」と言うタイトルの小説を書上げて行くストーリーなのですが、その背景には令央の家族の秘密が描かれていて言うなれば柊令央自身の私小説に限りなく近いフィクションです。
小説の中で小説が題材となっている事、登場人物全てにクセがあり共感出来る人物がいない事、全体的に不穏な空気が流れている事で中編ながら中々ページが進みませんでした。
特に女性編集者、小川乙三の存在は編集者の枠を超える辛口キャラで、名セリフもありますが、自分が言われたら心が折れるであろう辛辣なセリフもいくつかあり辛かったです。
令央と小川乙三のやり取りから、物書きを生業にしている方達の苦労や苦悩を強く感じました。
ダークで地味、だけど深みがある1冊。
Posted by ブクログ
*「あなた、なぜ小説を書くんですか」北海道・江別で平坦な生活を送る柊令央は、応募原稿を読んだという編集者に問われ、渾身の一作を書く決意をする。いつか作家になりたいと思いつつ40歳を迎えた令央にとって、書く題材は、亡き母と守り通した家族の秘密しかなかった。執筆にのめりこむうち、令央の心身にも、もともと希薄だった人間関係にも亀裂が生じ―。直木賞作家・桜木紫乃が創作の苦しみを描ききる、新たな到達点! *
うーーーん??
桜木さん、好きな作家さんなのですが。
冷淡な女編集者の言いたいことがよくわからず、主人公の書く小説の良さも全く伝わって来ず・・・
人間関係の機微についてはさすがでしたが、珠子おばさんをあそこまで怒らせる必要性あったのかな、とも。その辛辣さまでもネタにするのが小説家の性なんだ、と言う暗喩なのでしょうか。もやもやする読後感でした。
Posted by ブクログ
ポイントが三つある。
小説家を目指している柊玲央が小説を生み出していく苦しみ、新人を叱咤する編集者、そして柊玲央本人の人生事情。
いや、むしろ登場する小説に厳しい目線の編集者小川乙三を描くことで、桜木紫乃さんの小説への心意気を言いたかったのかのではないかと。
この小説中の小説「砂上」が、もし出版されないという結論だったらどうだろう。やっぱり小説家志望はあきらめないのか?また、本になったのはいいけれど、売れなかったら?読まれなかったら?読者に理解されなかったら?
出版されなくて、売れなくて、うずもれていった物書きたちの積んでも積んでも崩れる砂の山。