渡辺淳一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
渡辺淳一が推理小説を書くなんて意外性があり。
医者という視点がよく生きている。
桑島という勘で事件を解決するという古典的な捜査手法。
若手刑事の和泉がパートナー。
この和泉は、あまり役割を果たしていると言えない。
桑島が ゴルフの練習に行って、骨にひびが入る
という導入部が おもしろい。
局部をメッタ刺しにされた若い女性が発見される。
それが、小室聖子といい、ゴルフの練習所の受付嬢だった。
桑島は 殆ど思い出せなかった。
小室聖子のパトロンが、梅原病院病院長だった。
梅原夫人の冷ややかな対応。
そこから、犯人像が浮かび上がってくる。
うまれつきの不具な身体。ふたなり。
それを小室聖子に笑わ -
Posted by ブクログ
書き方によっては下品な官能小説だが、登場人物の品の良さも相俟って大人の色気を持つ、妖艶な芸術作品として昇華されている。阿部サダや有島武郎を引用しながら、物語りを終える。
人の一生とは何か。生物としての快楽中枢に素直に従い、人生を飾る哲学や倫理観でもって、行為に観念的なストーリー性を持たせる。行為は、ただの行為に過ぎぬであり、特別性など持たぬのに、生まれた場所や環境による刷り込みにより、観念が備わり、息吹を与えられるのだ。登場人物の選ぶ二人の結論は、確かにその枠をはみ出しはしないものの、二人が決めつけた特別性において、息吹を与えられた。物言わぬは、死人と同じという比喩の対極である。 -
Posted by ブクログ
溺れるほど、自らの日常を破壊する程に堕ちていく二人。男女の恋愛における絶頂期には、このような状況が訪れる。しかし、それとは異なるのは、この恋愛が、世間一般からは許されぬ、不倫だからである。
学生時代、講義を受けず、朝から晩まで恋人と情事に耽り、このままで大丈夫だろうかと不安になる感覚。堕ちるだけ堕ちて、退廃的な自らの生活に少しだけナルシシズムを感じるような。それでも愛おしく、こんな時間が永遠に続くことを願い。しかし、それは過去の話で、自分は当時とは違う日常に身を置いている。
小説が齎す疑似体験により、この感覚を味わえるとすれば、この物語は、青春を想起するきっかけとなる。その一点だけでも、本