あらすじ
美しい季節の移ろいの中で激しい愛の炎を燃やす凛子と久木。人間の中に潜む底深い性の悦びと妖しさに気づき驚き、周囲から孤立しながらも、永遠に自分の中に相手をとどめておきたいと願う。性愛の極致を描いた男女小説の名作。新聞連載時から圧倒的な反響を巻き起こした注目の大ベストセラー。
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Posted by ブクログ
死を引き立て役にして雰囲気を弄んでいるうちに、気づくと死に絡まり陥っていく哀れな2人。どっぷり浸かっているようで最後まで冷めた視線も残っている久木と、死を幸福な夢と思い込む凛子、少し男女の違いがある。阿部定、有島武郎。太く短い恋。幸せの絶頂の死。仕事も家庭も社会も捨てるしかなく、現実離れした大人の純愛というのは、こういうものなのかもしれません。
「「わたしたちが死ぬこと、まだ誰も知らないんだわ」久木はそれにうなずきながら、凛子とベッドのまわりに漂う死の快楽に馴染んでいく自分が愛しく、不思議である。」
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書き方によっては下品な官能小説だが、登場人物の品の良さも相俟って大人の色気を持つ、妖艶な芸術作品として昇華されている。阿部サダや有島武郎を引用しながら、物語りを終える。
人の一生とは何か。生物としての快楽中枢に素直に従い、人生を飾る哲学や倫理観でもって、行為に観念的なストーリー性を持たせる。行為は、ただの行為に過ぎぬであり、特別性など持たぬのに、生まれた場所や環境による刷り込みにより、観念が備わり、息吹を与えられるのだ。登場人物の選ぶ二人の結論は、確かにその枠をはみ出しはしないものの、二人が決めつけた特別性において、息吹を与えられた。物言わぬは、死人と同じという比喩の対極である。
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たまに出てくる渡辺淳一のうまい表現。
主人公が仕事を辞めて、何も目的なく過ごしている時間の書き方。
駅へと向かうサラリーマンの列を見て、とやかくいっても
あの列につながって会社へ行く限り、一日の生活と家族の安泰が
保障される、という表現。うまい。
読めば読むほど、死に逃げる凛子はしょうもない女性だ。
たぶん、また読むことになる小説だろう。色々な意味で。
Posted by ブクログ
2012/08/28
なんて淫靡で,究極を求めた空前のベストセラー小説でした.”性度”の高い人間を描いたという.
あぁ,箱根にも軽井沢にも行きたい.
・しずこころなく,心の静まる暇もなく
・修繕寺 源頼朝が幽閉
・男の濛々しさなど,沼の表面で跳ね返る魚のようで瞬発的
・夭折(ようせつ) 若死に
・時分の花 年齢の若さによって現れる、芸以前の一時的な面白さ.
・縊死(いし)とは、死因の一つである。一般的には首吊り死をさす。
・梅雨明けの10月 桐始結花から土潤辱暑
・匕首
・歳月という腐食作用
昔読んでもう一度読んでみた。
経済新聞で掲載されていてその当時、話題となり映画化されたりテレビ化されていました。
何だかもう一度読んで渡辺淳一のエロチズム満載のこの本、いまのこの世の中で読み直してみると随分身勝手な二人だなぁと思います。
どうせ死を選ぶなら人知れず死を迎えれば良いのではと思います。
さらに最期の願いで二人を一緒のお墓にほおむってほしいなんて残された家族の事など考えなのかしらと思います。
Posted by ブクログ
世の中には心で繋がる愛を描いた小説が多いけれど、この本は躰で繋がる愛を正当なものとして描いている。
躰が心を裏切ることがあると。
凛子はもはや恥じらいを捨て、永遠の愛を夢見て死を渇望する。今が最高な時だと。
共感はできないけれど苦しさは分からなくもない気がした。描写が多い割にいやらしさを感じないのはこの作者の文章力のおかげだろう。
Posted by ブクログ
上巻ではとんだ下衆野郎にしか見えないが、女が完全からの崩壊を恐れる末の逃げ道に潔く付き合う辺りは大したものだし、其処まで人に愛されるのも男子の本懐といえよう。
娘の叫びが届かなかったのが何ともいえないし、家族に一生モノのトラウマを与えたであろうことを除けばだが。。
Posted by ブクログ
ああ、そうだよな。
堕ちる時まで一緒にって、きっと思ってしまうのだろうな。でも駄目だろう。そうじゃ、いけないだろう。みんなそんな自分に負けないように必死に立ってるんだよな…。と、思った。
Posted by ブクログ
上下巻共に濃厚でした。
描写などはとても美しく、読みやすいです。
しかし、やはり身勝手さが目についてしまいました…。
男と女の事をこれでもか!!!と言うくらい見せられてしまうと恐怖すら感じてしまいます。
私は明日を生きるために、誰かと愛を育んでいきたいなぁ。
色んな愛の在り方があるのですねぇ。
途中、主人が外でこんな事をしていたらどうしよう…!!と考えズーンと重い気持ちになってしまいました 笑