綿矢りさのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
綿谷りささんが17歳の時に書いたデビュー作で文藝賞を受賞した作品。17歳の綿谷さんがこの作品を書いたなんて本当にびっくり!
毎日みんなと同じ生活を続けることに疑問を感じる朝子は、友人の光一から「まあもし疲れてるんなら、一回学校休んで休養とったら?」「いいじゃない休みたいだけ休んだら」と言われ、登校拒否児になる。
お母さんの目を盗んで夜中に自分の部屋にあるピアノや家具など全部捨ててしまうというという大胆極まりない行動には本当に驚かされた。いくらなんでもそこまではしないだろう。徹底している。
古いコンピューターを捨てた時に知り合った男子小学生のかずよしに誘われ、風俗チャットのアルバイトを日中することになり、男子小学生の家の押し入れが居場所となった。
とにかく面白い。今まで読んだ本とは違う、新鮮さというか若々しさというか瑞々しさを感じさせる小説。
しかも、主人公の一つ一つの言葉に納得いや共感してしまう自分がいる。
かずよしという小学生の男の子も、言動が大人びているだけでなく物知りで、風俗チャットのアルバイトまで提案してくるなんて。本当に小学生なのか、人生何回目なの?と思ってしまうほど。
現実の世界からネットの世界へ、そしてまた現実の世界へと戻ってくる朝子。本人は、『何が変わった? 何も変わらない、私は未だ無個性のろくでなし。』と思っているが、『ただ、今私は人間に会いたいと感じている。昔からの私を知っていて、そしてすぐに行き過ぎてしまわない、生身の人間達に沢山会って、その人達を大切にしたいと思った。忘れていた真面目な本能が体の奥でくすぶっていた』とあるように、ネットの世界でのやり取りや母親とのやり取り等を通して、大きな成長を遂げたように思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ◾️record memo
一人で生き続けてゆくことになんの抵抗もない、と思っていた。一日の大半を過ごす勤め先にはたくさんの人間がいるし、否が応にも彼らとはコミュニケーションを取らなくてはいけないし、休日はときどきは一緒に遊ぶ友達もいるし、実家にもたまに帰る。また気に入ったスポットへ一人で出没するのが、私の趣味でもあり日課でもあるから、休日はいくらあっても足りないくらいだ。むしろ一人でいる時間を一日のうちでなかなか見つけられないので、帰宅後一人の時間が短くなるのがもったいなくて、ついつい夜ふかししてしまうほどだ。
男性も家庭も、もはや私には遠い存在になっている。女友達のなかには、二十代のうちに結婚しなければ生まれたときに妖精にかけてもらった魔法が解けて、カエルの姿に戻ってしまう、ぐらいに焦ってなんとか二十九歳で入籍して安堵のため息をもらした子もいる。結婚適齢期になれば実感も湧いてくるかなと思ったけど、しょせん他力本願で、身体の奥底から突きあがってくる欲望由来のエネルギーはいつまでたっても湧いてこなかった。
「夜にはっきり感じた孤独は忘れられません。孤独は、人生につきものです。誰かといても、癒やされるものではありません。はっきりと意識してはだめです。ふわふわと周りに漂っているときは、息をひそめて吸うのを避けるのです」
「自分が独りぼっちだって、気づいちゃいけないの?」
「気づくのはしょうがない、でもうまく逃げて。変に意識しない方がうまくやれます。普段意識せずにまとわりつかせるだけならいいですが、意識したとたん、どうやってこんな深い海で泳いでいたんだろうと息苦しくなって、なにもかも不自然な、ぎこちない動きになって溺れてしまいます」
「あなたのこと、信じてもいいの?」
「どうぞ、ご自由に。私は常に最善だと思う策をあなたに話しかけています。決してめんどくさがったり、なにかあなたをはめようとしたりして言葉を作ったりはしません。なぜなら私はあなた自身で、あなたが滅びれば私も無くなってしまうのですからね」
一方で、私の人生ぽくて、しっくりくるなぁとも思う。なじみのゆっくりしたペースで進む毎日のなか、長く引きのばした青春をいつまでもうっすら夢心地で楽しんでいたい。
片付いた自分の部屋でイライラせずに一日過ごせるってぜいたくだよなぁ、と気づいたのは国内の一人旅でホテルに泊まったときだ。一泊何千円や何万円の環境をお金を出して払うとき、家賃の存在も同時に思い出す。
「だからいままで独身なんでしょうな」
他人ごとのように答えながらも、私は結果をあまり悲観していなかった。
子どもかー、いたら楽しそうだけど別にいなくてもいいや。子どもがどうしても欲しい人には分かってもらえないが、意地でも誇張でもなく、等身大の正直な本音だ。そう言ってても後で欲しくなるんだって、と言われても、やっぱり実感がわかない。私にとって子どもは、"まだ欲しくない"ものではなく、"欲しいか欲しくないか聞かれれば、積極的に欲しいとは思わない"に分類されている。それが時間経過と共に変わるかは"いま生きていたいからって、いつか辛いことがあって死にたいと思うかもしれないじゃない"と言われているのと同じくらい、理屈は分かるが実感のわかないできごとだ。だんだん同類の女の人は見分けられるようになってきて、おそらくプッチは私の考えとわりかし似ているんだろう。
フンと鼻息を出すノゾミさんはたくましい。ノゾミさんはAがいなくても、正真正銘自分一人で、自分の世界を守ることができる人なんだろう。誰かをまるごと獲得しようともがくより、自分との接点だけを見つめて、大切にできる人なんだろう。
「じつはね、最近隠し撮りしてるの。ほらこれ、一人残業もせず、さっさと帰る瞬間のカーター。周りの非難の視線も気にせず、わきめもふらずに出口に向かう姿、かっこいいでしょ」
うれしそうにノゾミさんが見せてきた携帯の画面には、移動速度が速すぎたのか、残像の流線の姿でしか映ってないカーターが横切っていた。
入社したときこの会社は、わりと体育会系で、女性の先輩たちもビシバシ指導するぞという意気込みに満ちていた。彼女たちの指導は好みによって少し偏りがあり、ターゲットとして見定めた新人相手に、学生時代のいじめを思い出させる、すっぱい弾幕を張った。
彼女は私が入社した当時から私にはつめたく、私が彼女とその同僚のグループの前を通りかかると、「のんきを装ってる」と私に聞こえるぐらいの音量ではっきり言った。
たしかに私はのんきを装ってるけど、本当は自分でもあつかいに困るくらい、激しい人間なのだ。周囲の人たちが気づかずに見過ごしている状況に、感謝しなくてはならないほど、実はやっかいな性質である。
いじめの典型みたいに消しカス入りのお茶とか飲まされたけど、まあそれはそれ。これはこれ。
めざましい女性先輩たちは人生の展開が早くて、次々と辞めていき、残ったのはみそっかすの私やノゾミさんのような女の人たちだった。私たちは現場が発狂するくらい、同じミスを何回もくり返したり、辞表もののミスも一度や二度は披露してきたが、家に帰ってコンタクトレンズあるいは会社用の眼鏡を外して、泣いて寝たあとは、かならず翌朝出勤した。くり返してる間に、平気なことが増えてきて、ミスもなんとか寸前で避けられるようになり、ただ長く会社に居ただけながらも、後輩には新しい業務を教えるようになった。ミニお局はミニなりに、いばらないのが長所だ。数少ない後輩にも若干ばかにされてるくらいの、ちゃらんぽらんな湯温が、いまの私には心地よい。
辛い顔をしてないと頑張ってないと思われる日本社会は、息苦しい。
必要とされる喜びと利用される悲しみが混ざり合う「仕事」に、魂まで食われてしまいたくない。
ほんの一瞬の幸せじゃなく、小さくてもずっと感じていられる確かな幸せを探し求めてきたはずなのに、私はまだ見つけていない。心配ごとがいつかすべてなくなる日なんて来るのだろうか。どうして私は、いつでも不満なことがあるのだろう。課題がいつも視界を塞いでいる。ちょうど目の高さに掲げられた真正面のカードをにらみ続けている。
話しかけても、多田くんからはなんの反応もない。
恋人の小さな傷つきに敏感になるのも、なられるのも苦手だ。相手の不機嫌に気づけば、ひやっとして一分でも早く挽回したいのに、大体繕おうとすればするほど墓穴を掘り、逆に自分の気持ちの変化に敏感な相手に顔色をうかがわれると、当惑する。
男の人と付き合うのって、これだから嫌だ。さっきまで笑い合っていたのに。
無人の廊下を歩き製氷器コーナーにたどりついた。製氷器から落ちてくる氷でグラスを満たして、あとはもう帰るだけなのに足が動かなくなって、眩暈がしてきた。
「どうしたんですか」
遠くでAの声がする。
「部屋に帰りたくない。多田くんに会うのがこわい、また不穏な空気になったらどうしよう。一人で孤独に耐えている方がよっぽど楽だよ」
シャワールームでは出なかった涙が、いまさら溢れ出してくる。
「多田くんを愛しく思う気持ちはあるよ。でも距離の取り方が分からない」
さっきの小競り合いだけが原因ではなかった。いくら恋人同士とはいえ、私には予想外のお泊まりなどという、恋愛ドラマみたいな展開はきついのだ。ずっと静かな一人の部屋で眠ってきた私は、間違いなく今夜一睡もできない。それはいいとしても、ツインの空きの部屋が無かったからしょうがないけど、ダブルベッドで寝なければならない。多田くんはベッドで迫ろうかどうか今思いあぐねているだろうけれど、私はそれどころじゃない。身体がこわばって、きっと寝返り一つ打てそうにない。
独り言が異常に多いと気づいていても、とめどなく口からこぼれ落ちてゆくように、受け止め先もないまま"私"がこぼれ落ちてゆく。いままではなんとか形を保てていた"私"が、頭からチャックを開けられて、中身が外へ溢れ出てしまう。
だれでもいい、だれか私をくいとめて。応急措置の包帯でも、下手くそな漆喰の塗り固めでもいい、とにかく、早く、なんとかして。
「落ち込んでいた気分は良くなりましたか」
「うん、ずいぶん楽になった」
「一体なにがそんなにショックだったんですか。多田さんとの距離がぐっと縮まる良い機会じゃないですか。抱きついてきた彼に幻滅したんですか」
「ううん、多田くんは何も悪くなくて。自分が根本的に人を必要としていないことがショックだったの。人と一緒にいるのは楽しい。気の合う人だったり、好きな人ならなおさら。でも私にとっての自然体は、あくまで独りで行動しているときで、なのに孤独に心はゆっくり蝕まれていって。その矛盾が情けなくて」
A、もう聞いてないかもしれないけど、話すね。私から呼びかけるのは、これで最後にします。迷っているとき、いつも相談相手になってくれてありがとう。私は、私自身にさえすがりつかなければ困難を乗り越えられないほど弱い人間だけど、Aがいたおかげで何度も乗り越えられたよ。いつも励ましてくれて、つねに私の味方でいてくれてありがとう。いつも言ってほしい言葉をかけてくれてありがとう。これからは自分とは別の人間と、向き合って、体当たりで、ぶつかり合って生きていくよ。でももし頑張っても上手くいかなくて、また孤独でピンチに陥ったら、どうぞよろしく。頼りにしてるよ。
私はラッキーだって今気づいた、本物の孤独なんて私には永久に存在しないね、だって常にAがそばにいるから。Aは私なんだから。そう思うと、すごく強くなれるよ。返事は聞こえないが、頭の中でAが微笑んだような、脳のシワのうちの一本がゆるんだ感覚があった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ好きが詰まった盛り合わせ!めっちゃ良かった!
最悪よりは平凡 (岛本理生)
魔美のしんどさがしんどくて、それでも好きな人ができてこれから始まっていく感じに、人生捨てたもんじゃないよねと思えた。
深夜のスパチュラ (綿谷りさ)
ひとりで買物行く時のグルグルハイテンション感にめちゃくちゃ共感。スパチュラに泣けちゃう気持ちもわかりみしかなかった。
カーマンライン (一穂ミチ)
回想から始まるストーリー展開に安心感。「ホテル・ニューハンプシャー」読んでみようと思った。
無事に、行きなさい (桜木紫乃)
「アプンノ パイエ」の言葉の意味と2本の線のデザインがそのまま主人公へのメッセージになっていて良かった。ミワさんかっこいい!
海鳴り遠くに (窪 美澄)
主人公の恵美が、絹香と出会って自分の心にちゃんと向き合えたのが良かった。最後の携帯電話越しの波の音に新しい人生が始まる感じがした。
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Posted by ブクログ
女性の同性恋愛小説。
題材は別に興味をそそられるわけではなく、むしろ苦手な部類。
しかし、読み進めいていく、引き込まれる。
性描写がある題材は、「キレイ」だと受け取れるか、「ちょっと気持ち悪い」と受け取れるかで、その作家さんの次の作品を読むかどうかを判断する。
人気の作家さんでも、自分に合わない性描写は、次の作品を読むことは無い。
綿矢さんの描写は「キレイ」と思える。
途中、バッドエンドになるのではと思いながら読んでいたが、素晴らしい終わり方。
惹かれ合うのに、性別は関係ない。
自分にも子供がいる。親の葛藤もわかる。
でも、本人達の気持ちに偽りがなければ、背中を押せる存在になりたい。