綿矢りさのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ「インストール」や「蹴りたい背中」に比べて、文才で魅せる印象ではなくプロットや雰囲気で面白くしている気がした(短編集であるからだとも思うが)。それにしても読みやすくあっという間に読み終えてしまった
「おとな」
気持ち悪かった。いきなりこんな短編がきてびっくりしてしまった。自分が幼いころの記憶は、確かに夢のようでもある。幼いころの拙い理解力で理解の範疇を超えた出来事があれば、なおさらそれは夢のようだ。しかし、その夢と錯覚された記憶もわすっれることはないだろう。「ねえ、おぼえていますよ。」こんなにぶきみなことばああるだろうか。
「トイレの懺悔室」
終わり方以外にも、どこか狂気のにじみ出る文章だった。解説にも合った通り、地蔵盆という子供の頃の日常会話から、ヒトコワへのシフトは目を見張るものだった。子供の頃の感覚で、どこか色ガラス越しのように思い出すあの景色を表現できるところに綿矢りささんの才能を感じた。個人的な感想として、「おやすみプンプン」みたいにリアルとフィクションが入り混じった狂気的な映像を、頭の中に思い浮かべていた。
「憤死」
表題作ではあったが、自分的には少し印象がうすい作品だった。作品を書いた理由が本当に「憤死」というものが気になってそれを軸に想像したんだろうと思った。主人公のひねくれた性格で語られる佳穂がなんとなく現実的な輪郭を帯びてきて、いるなとなる。憤って死ぬことそれがどれだけ贅沢なことか、着眼点が面白い。
「人生ゲーム」
4作品の中で一番好きな作品だった。文章の書き方も主人公の年齢とともに変化していて、時間経過に違和感を感じずらくなっていた。人生ゲームになぞらえたあまりに現実的でつらい世界に、超現実的な存在であるあのお兄ちゃんが異質に重要な一部として機能している。人生ゲームのルールとして、いつゴールするかよりもゴールした時の豊かさが求められる。それを人生に落とし込み、ゲームの終わった後みんなでワイワイ語り合うそれこそが人生ゲームの醍醐味なのだろう。きっと死ぬ前の親友二人の前にも彼は現れたのだろう。
すべての短編に共通して言えることは、幼いころの描写があること。「こども」であるということの持つ力とは何なのだろうか、大人を脅かすような記憶や狂気、命を蔑ろにするほどの憤り、幼さは文学に於けるテーマだろう。
解説の森見登美彦がよかった。「ペンギンハイウェイ」の人だと知って、この本の解説として適役だとも思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレいやー面白かった。笑いと共感と学びと感動と。綿矢りさ恐るべし。
夫で語り手の俊貴は温厚で比較的鷹揚な性格。そんな彼でも由依の変貌ぶりに混乱や不満が芽生えるのは当然のことではある。男性である私は基本的に彼に共感しながら読み続けた。
しかしふと気づく。女性作家が夫の一人称で男性が共感できるように書いたものに、私はまんまと共感していたのだ。どうして男性の気持ちを完全に把握した上で書けるのか。しかもこんなぶっ飛んだ話で。もうこの時点で私は綿矢りささんの手のひらで転がされていたのだ。
読んでいる側ですら困惑するしかない由依の変貌ぶり。しかしその理由を知ると途端に応援したくなってしまった。
「強い自分になりたい」
これ以上ないくらい端的な理由だけれど、由依は新しい命を体内で育みながら自分自身も生まれ変わろうとした。言動のインパクトが強すぎるので目立たないが、子を宿しながら母もまた生まれ変わる。何かとても崇高な光景だと思った。
妊娠した人が妊娠出産に関する諸問題について語ることにより、妊娠を望みながら叶わずにいる人たちの反感を買ってしまうという現象。私は世の中にこんな事があるなど考えたことすらなかった。作者は由依をその現象に巻き込ませ、反感を持った人の為に由依に反省の涙を流させた。これは「どちらも間違ってないよ」という双方に対するメッセージであると捉えた。
対立するのではなくてお互いの手を取り合うことができないか。私は素直にそう思うのだが、男性として安易に語って良いことなのかという躊躇もある。これに関しての私の答えはまだ出ない。
この手の作品はきっとハッピーエンドで終わるだろうと思いながら読んでいた。そして実際ハッピーエンドだった。しかし、思っていたものとは違った。
私はなんだかんだで最後は由依は妊娠前のような姿に戻るのだろうと思っていた。ところが由依、変わらないでやんの。おまけに俊貴がそのまんまの由依を丸ごと愛している。
これについて私は心の底から猛省した。最近女性作家の作品ばかり読んでいる自分に酔っているだけで全く何にも分かってなかった。結局私は男性目線でのハッピーエンドしか想像できていなかった。由依は自分がなりたい自分になって、しっかり自分の足で立っているではないか。これ以上のハッピーエンドがどこにあるのか。思いもよらず良い学びの機会となった。今作に出会えて良かった。
『深夜のスパチュラ』は難しいことを考えずにただただ楽しく読みました。スパチュラをGoogle検索しなくてよかった。
次に読むときはPerfume『チョコレイト・ディスコ』でも流しながらかな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレとある出来事を契機に、そこに心を置かざるえなかった女性
それは執着なのか
執着が発するエネルギーの強さは、自分でもコントロールできない
きっと多くの人は、大人になるにつれ、その執着の花を枯らす
しかし執着で熱せられた命は
激しく輝き、燃える
前半は中学生パート
綿矢さんと年代か近いからか、共感できる話ばかり
その時の気持ちを思い出しながら、まぁ、思い出すのは苦い気持ちの所だけだけど、読み干した。
日常に大きな変化はない。
些細な変化を積み重ねていくなかで生まれた感情。
その感情は一時的なものなのか、違うのか。
戸惑いながら触れていく2人。
中学生という多感で冷酷な時期が、2人を悲しくも引き離していく
そこに感情を落としたまま、その時に執着している主人公。
後半は約20年後
主人公の執着さが、また引き寄せ、引き離さない。
空いた時間を埋めるのに戸惑いつつも、あの時の答え合わせをしていく2人。
しかし、相変わらずに同性という壁が彼女らをはばみ、襲ってくる。
自分の気持ちを再確認しながらも、突き進んでいくのは、執着がもつエネルギーか。 -
Posted by ブクログ
ネタバレいずれ訪れる爆発を予感しながら読み進める、アトラクション待ちのようなストーリーだった。
英語がわからない故のアンジャッシュみたいなシニカルな場面や、自制しようとする樹里恵のモノローグから、読者も心の広さや判断基準を試されている気がしてくる。…が、そこへアキヨのグロいメールのインパクトよ。修羅場不可避すぎる。
樹里恵の約束されたぶちまけタイムは凄まじかったのに、アキヨはアキヨで強かだから、読んでいるこっちはなんだかスッキリしなかった。
樹里恵は素敵な人を見つけて幸せになってほしい。
「亜美ちゃんは美人」は複雑な友情を描いていて、100%の好感じゃなく、嫌いだったり苦手な面ごと認められるって素敵な関係だなと感じた。同じ思い出を共有する尊さも相まって、温かな気持ちになるラストだった。
-
Posted by ブクログ
知らないうちに自分の物差しで他人を見ているのだと感じた。
表題作では「かわいそう」という言葉が印象に残った。相手を思いやる優しい言葉のようでありながら、相手を自分より弱い立場に置いてしまうこともある。「困っている人はいてもかわいそうな人なんて一人もいない」という言葉に、この作品のテーマが詰まっているように思った。
「亜美ちゃんは美人」では、「美人」という評価もまた人を縛るものとして描かれていた。さかきちゃんが「自分自身が満たされれば亜美への嫉妬もなくなる」と気づく場面が特に印象に残った。
「かわいそう」も「美人」も、結局は他人がつける評価なのかもしれない。人と比べたり、勝手にその人の幸せや不幸を決めたりするのではなく、その人自身を見ることの大切さを感じた一冊だった。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ北京と日本の文化や生活の違いが、説明ではなく菖蒲の体験を通して自然に伝わってくるところが面白かった。文章も現代的で読みやすく、北京の街の様子もイメージしやすい。
特に、周囲の目を気にせず自分の「興味」に向かって進んでいく菖蒲のバイタリティが印象に残った。菖蒲の考えは、現代社会においてマイノリティーの立場にあたるポジティブ思考なので、多くの人に刺さる作品だと思う。作中で夫が菖蒲の考え方を『阿Q正伝』の「精神勝利法」にたとえて説明する場面もあり、二つの考え方を重ねながら読める。
また、今の時代の言葉で書かれたこの作品を読んで、昔の文学が難しく感じられるのは、内容だけでなく当時の言葉に慣れていないことも理由だと考えているので、綿矢りさの作品は現代的で親しみやすい言葉遣いで書かれていながら、人間の考え方や生き方を描いているところからもしかしたら何十年、何百年後に生きる人たちがこの作品を見たら使い慣れてない言葉が多く読みずらいと感じるのかもしれないと考えたら不思議な感覚になった。 -
Posted by ブクログ
一気読みした。
一話目の彼氏にはただただムカついたけど、私が1番印象を持ってかれたのは二話目。
私も高校時代、本当にさかきちゃんだった。亜美ちゃんみたいな存在の女の子の隣にいるのが自分だった。
今思えば、なんで私と一緒にいたんだろう?って思うけど、当時は正直、その子のこと好きなのに一緒に居て欲しくない気持ちがあった。みんな直接的な言葉では比べたりはしなかったにせよ、いつも褒められるのはその子。誰かが私と喋ってても、私のことを聞いてくるんじゃなくて、その子のことを聞いてくる。
完全に嫉妬してた。
でもその子特有の悩みがあるのは当時から分かってた。また、男や女から注目を浴びたり、褒められることへの反応が、根本から違った。本当の私をみんな知らないだけなんだよって。
私が感じてる嫉妬も、彼女の抱いている世界を思えば、お門違いだった。本当の意味で、世界が違うんだなと気づいてたからか、だからか嫉妬に狂うことはなかった。
その子は今でも彼氏がいないし、結婚もしてない。言い寄る男は常にいるんだろうに。
何を考えてるのかずっとわからないし、あみちゃんみたいにまだ愛には目覚めていないみたいだけど、それ以外はマジであみちゃん。
私はさかきちゃんみたいに寄り添う気はないけど。
感想ってか自分の話になった。笑 -
Posted by ブクログ
ネタバレ厚さに怯みつつ、どんな話か気になり、時間をかけて読んだ。
主に学生時代の描写と、大人になって再会してからの2部構成で。学生時代、自分も色々あった年頃の描写があまりに鮮やかすぎて、ところどころくらいながら読んだ。学校や家庭の閉ざされた状況描写もだし、残酷なほど悪意がむき出しになりやすい子どもたちの感情描写も、うぁぁ…って唸ってしまいそうに。
ここまで長く丁寧に鮮やかに描くからこそ、大人になってからの二人の関係のところが輝くんだろうなぁ。
久乃も綸も、似てないけど、似てるのよね。大事なものを抱きしめすぎて壊しちゃう感じとか。あと、タイプが違うけど自分を疎かにしている。から、心配で、見届けたくなる。どうしてこうなるのー!!ってもどかしく思いながらも、二人の関係が良くなってくるとホッとする。でもまた壊れて…の繰り返しで、毎日コツコツ読むのが楽しかった。読書の秋にぜひ。