綿矢りさのレビュー一覧
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CM子役からドラマ女優へ、TVが生活の中心にあった平成時代の夢と現実の物語。「夢を与えるとは、他人の夢であり続けることなのだ。だから夢を与える側は夢を見てはいけない」。学年が上がるにつれ、発達していく夕子の心と人間関係の解像度。夢を与える側の孤独と諦念、現実に向き合い続ける中で生まれる与えられる側との深い溝に胸を抉られました。
綿矢りさは対談記事で「影響を受けた作家は太宰治」と語っていますが、この辺りの描写はとても似ているなと感じます。他人からどう見られるかを気にするあまり、終には自分の心身を失ってしまう正に現代版の『人間失格』なのではないでしょうか。
折しも本作は『蹴りたい背中』から4年後の芥川賞受賞後第一作。良くも悪くも読者の見る目が変わった中で、綿矢さん自身の不安や葛藤が"夕子"として描かれた渾身の一作だと感じました。 -
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黒田みつ子33歳。独身彼氏なしの主人公が恋愛や今後の人生についての気持ちの揺らぎや葛藤を描いています。
脳内のAとの会話やノゾミさんとの会話、多田くんとの会話。そして、みつ子が聞いた他人の会話など。私はやっぱり綿矢さんの書く会話劇が本当に好き!
リアルで繊細な描写は読んでいて楽しいし、グサグサ刺さる!
イタリア旅行に行く飛行機のシーン。主人公のフライトに恐怖する様子が面白かったです!あまりにも丁寧で詳細すぎて綿矢さん自身の気持ち…?と思ってしまいました
物語が進むにつれ、みつ子が少しずつ前に進む様子もよかったです。前向きな気持ちになれる作品でした。
ラストのAへの感謝のメッセージも心が温かくなりました。 -
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ネタバレp.170
これほどたくさんの星があるのに、どの星とも交流せずに幾多の命を乗せて回っている地球は孤独だ。この宇宙のどこかに、地球以外にも生命体がいるとすれば、と考えると気が遠くなりそうだが、本当に地球にしか生命体がいない、と考えた方が余計恐ろしかった。宇宙では流れている時間の尺も桁違いだから、もし違う星に生命体がいたとしても、もう何億年も前に滅びたとか、何億年もあとにならないと生まれないとか、誕生する時期が違ったらめぐり会えない。
p.196
「そもそもあんたは奏のこと好きなの?」
返答に困る質問を萌音は簡単にしてくる。好きだの愛だのという言葉を聞くと、どうしてもかつての拒否反応が甦ってきて、自分の気持ちを問いただしてみても、たまねぎのどこまでが皮か分からなくなって全て剥き切ってしまい、残るは無みたいな感覚に陥る。
p.197
「やっぱ私のアシスト効いてるじゃん。でも判定としてはグレーかな、誰だって真っ暗な海に男と二人でいたらドキドキしてくるよ。普段の何気ない日常でちょっと目が合っただけで電気が走るのが、恋だね」
「そうなんですかね、自信ありません」
恋とはそんなにも細かく条件が決まっているものなのか。年頃の人間全員がこの条件を共有しているのだろうか。
私にとって恋愛とは、最近になってから発見した、自分の心に建つ家の隠し部屋みたいなものだった。その部屋は二階の奥にあり、壁だと思っていた部分が実は戸で、押すと開く。なかには入れたけど、暗くて見えないから、手探りで照明のスイッチを探す。壁に手をすべらせて、探して、探して、見つからなくて。
ようやく雲に隠れていたほの白い月の光が部屋を照らしたときに、スイッチ自体がそもそも存在しないと気づく。ショックよりも先に予期していた絶望が頭を涼しくして、逆に冷静になれる。
みんなの家にきちんとあるこの部屋が、私の家では壊れている。
p.252
「特殊能力をわざわざ起こそうとしなくても、生き物は生きてること自体が不思議である種の特殊能力なんだから、無理に発揮する必要はないよ。生命の光が身体の内側に灯り続けていることぐらい、不思議で奇跡的な出来事は無いんだからね」
奏樹の言葉を聞いていると、力を示そうと無理をしていた自分が、何もない場所に向かって必死にパンチやキックを繰り出していたように思えてきた。
「私は一人でいても、つらくないんです。誰かと一緒に生きることは、やればできる気がしていますが、きっと他の皆さんはやればできるとかじゃなくて、自然に一緒に居たいと思うようになって、付き合ったりするんですよね。私はそこまでの欲がどうしても身体の内から湧かない。おそらく私は、一人で足りすぎているんだと思います。足りちゃいけないところまで、足りているんだと思います」
「僕はきっと、ミルちゃんの足りているところが好きなんだし、羨ましいんだと思う。欠けている人間は誰かをいつまでも探し求めなきゃいけないし、満たされたなら満たされたで、相手がいなくなったらどうしょうって怯えたり、"人は一人では生きていけない”って言葉を呪文のように唱え続ける人生になるからね。
僕は世界じゅう色んな国を旅しても、どれだけ楽しくても”誰かとこの素晴らしい景色を共有したい”って思いが強くて、まあ白状しちゃうとミルちゃんと一緒に見たいって気持ちが強くて、一二〇%は楽しめてはいない実感があった。それが僕の弱さなんだよね、一人でいるのが完全体じゃないっていう。ミルちゃんが美しいものも楽しいことも悲しいことも、すべて自分一人で受け止められるタイプの人なら、それはそれで、素敵だと思うよ。だから……あれ、おかしいなあ、僕」
p.254
「周りの皆が言ってるような通常の「好き”とは違うかもしれませんが、私は奏樹のことが好きです。あなたの傍にずっと居てもいいですか」
奏樹が大切だという気持ちは、ずっとぶれずに自分の内にあった。二人で一緒に色んな景色を見たい欲望は、確実に私にもある。
私の動悸は激しく、奏樹の顔も見られないほど緊張していたが、笑顔の彼が私の顔を覗き込んだ。
「もちろんだよ。好きの形は人それぞれだし、一人でも満たされてるミルちゃんは素敵だと思う。でも二人で一緒にいたらもっと温かく楽しくなれるように、努力していきたい」 -
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純文学は、一か所でも知っている感情に出会えればいい。
というわけで私が知っていた感情。↓
「自分の内側ばっかり見ているから、何も覚えていない。学校にいる間は、頭の中でずっとしゃべっているから、外の世界が遠いんだ。」
ここだ。
これはまさしく高校生の時の私だ。
なんならおばさんになった今でも若干そうだ。
綿矢りさと同世代なので、雑誌を集めたり、ラジオを聴いたり、ライブに行ったり…あの感じがリアルに想像できた。まぁ同世代じゃなくても想像できるだろうけど、90年代後半~00年代前半のあの感じ。
ていうか、主人公よりもにな川にシンパシーを感じてしまっている(笑)
好きなアーティストに心酔して、痛いことしちゃうよね。はたから見たら引くよね。
主人公への共感ポイントはまだある。
運動部ではなかったのでスポーティな格好ではなく制服だが、夏に部活のあとお店に入ってひんやりする感じ、懐かしかった。少し場違いな変な感じ。
思春期の学生生活特有の、グループ面倒臭い、人間関係面倒臭い、というか他人をとことん見下している、基本いら立っている、そのくせ認められたい。
わかる。わかりすぎる。もう戻りたくないな、と思いながら読んだ。
しかし読後、「こういう感情の時期はもう戻らないのだな」とちょっと寂しくなった。
そして「好き」という単純明快な表現では絶対に収まりきらない「蹴りたい」という感情。なったことはないけどわかる気がする。
こういう人間は20代になってもこじらせた恋愛をしそうに思えてきた。
やっぱり戻りたくない(笑)
忘れていた感情を思い出して懐かしむことができるから、読書ってやっぱりいいよね。 -
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「いなか、の、すとーかー」は、綿矢りささん特有のオチが読めるのに奇妙で、あり得ないだろっていう描写がたっぷりなのに人間の"あるある"が詰め込まれてる感じ。
表題作である「ウォーク・イン・クローゼット」は、特に28歳の私自身の"あるある"が詰まっていてちょっと苦しくなった。
主人公の早希は自意識過剰で自己肯定感が低くて生きづらくて人に期待しては傷ついていく弱くて強い女の子。
親友のだりあは反骨精神で生きてて強いけど純粋で実は柔らかい女の子。
そんな2人の幼馴染のシスターフッドが描かれている。
「死んだら皆が泣いて惜しむような人間になろうって」と気高く生きてた芸能人のだりあが出産を経て大量の服を手放すのも
デート相手に合わせて服をチョイスし、着ていく服に4.5時間悩み、体目的の男の甘い言葉にいちいち騙されてたOL早希が人の反応を気にせず趣味は"お家でお洋服クリーニング"と他者に話すようになり、だりあから貰ったお洋服を愛でて暮らすのも
女の子ってかわいくて最高だなぁって思えてとても好きだった。
コピーライター尾形真理子さんのあとがきもよかった。
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早希は「私たちは服で武装して、欲しいものを摑みとろうとしている」といって、〝対男用〟の洋服をクローゼットに揃えます。だりあは「きれいな服は戦闘服なのかも」といって、自分の存在を肯定するために服でウォーク・イン・クローゼットを満たします。なぜ女の子は、こんなにも自信がないのでしょうか。自己肯定が苦手というか。彼氏を作らなきゃダメ、結婚しなきゃダメ、というのは「誰かに選んでもらえなきゃダメ」という感覚と同義になっているのかも知れません。
良い場所に並ぶ努力をしたり、POPをつけたり、できるだけ素敵なお客さんに選んで欲しい。だけど売れ残るのは最悪だから、どこまでなら値下げできるか必死で計算する……みたいな。狡猾なようで、けなげであり。
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「服は口ほどにモノをいう」
自分と他者の間に服はあるということ。人間を知ってないとおしゃれはできないということ。
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私の胸に刺さった等身大感を言語化してくれた!
女の子は安売りしちゃいけないし、胸張って好きな事を好きでいていいんだ。
おしゃれって難しいけど、自分の状態、相手をどう捉えてるかが表れるから楽しい。
女に生まれたからにはおしゃれ楽しんで生きてこう。 -
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どこに共感できたか。
恋に狂気がかるくらい情熱的な奈世と、いかにも冷静なユヅルのお話。好きになればなるほど、度がいきすぎてしまうナヨに、私と通ずる部分があって、自分も気をつけようと思った。
ナヨの父親も言っていたが、「結婚とは、努力して得た結果ではなく、流れで、スムーズになるもんだ」という言葉が印象に残った。
今の私と彼は、付き合いが続くように、無理矢理頑張っている状態だと思った。その結果、お互いの心が疲れてしまい、結婚しても幸せを手に入れられないと考えてしまう。
私は、そんな彼との関係性を客観的に見直せる作品だったと感じるし、カップルにはカップルなりタイミング・流れがあり、無理して付き合うものでもないと思った。
途中で、3ヶ月の時を経てナヨには気持ちが無くなってしまったのかと、ドキリとさせられた場面があったが、すぐに調子を変えて彼と東京に戻る姿には驚いた。両親もびっくり。私も両親を大切にしようと思った。また、ナヨの友達が「ユヅルくんの時の速さは3ヶ月だったんだね」と言ったその一言にも納得した。 -
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良かった!
他の方も書いているが分厚い書籍で、読み切る自信がなかった。が、読み始めてすぐ、惹き込まれた。
寝る間も惜しんで、読み進めた!
読みやすい文章だ
久乃も綸も幼稚でワガママで実に自己中
綸が久乃に惹かれた理由はよくわからない
というか綸の体たらくなとこや、久乃の失言、卒業式での暴力騒動、清盛と別れたといいつつ久乃を裏切った綸、、、
久乃と綸どちらにもイライラしたり、自分ならどこかのタイミングで別れるなと多々思った。
だから駄作だったのかと問われると「否」だ
間違いなく良作だった
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上のように読者に感じさせたのは、こういうダラダラな関係や理屈だけでは語れないのが現実の恋愛でリアリティがあり身近に感じさせた著者の表現力が優れている証だ
実写で見てみたい
中学時代の久乃
・當真あみ
・清原果耶
・松本穂香
30代久乃
・綾瀬はるか
・徳永えり
・波瑠
・小芝風花
綸
・河合優実
・土井志央梨
・小松菜奈
・見上愛
・中村ゆりか
思い浮かびました