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京都に生まれ育った奥沢家の三姉妹。長女の綾香はのんびり屋だが、結婚に焦りを感じるお年頃。負けず嫌いの次女、羽依は、入社したばかりの会社で恋愛ざたといけず撃退に忙しい。そして大学院に通う三女の凜は、家族には内緒で新天地を夢見ていた。春の柔らかな空、祇園祭の宵、大文字焼きの経の声、紅葉の山々、夜の嵐山に降る雪。三姉妹の揺れる思いを、京の四季が包みこむ、愛おしい物語。(解説・佐久間文子)
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Posted by ブクログ
出だしから最高。こういうセンス抜群の豊かな感性で自在に綴っていく語り口の読み物を欲していたことに気付かされました。自分に足りない、渇きを覚えていた成分がここに。 と思っていたら、文章の色合いは日常ドラマを綴るものへと少しシフトします。情感を喚起するものとは違うフィールドをつかって、現実的な感情の生...続きを読む々しい部分も描いています。それでも、カミソリの刃によるようなドギツイ切り付けはありません。淡々とした日常生活が尊重されている作品ですから、まあ、前原という男性上司のような面倒くさくて怖いタイプの人が出て来はするのだけど、全体的にいえば、あたたかな物語になっています。付けくわえて言うと、あたたかな物語の中にも人の怖さや悩みなどがしっかりでてきて、そこは楽天的には書かれていないので、横に流れていくストーリーの起伏としても、その最中で縦へ広がっていくイメージとしても、飽きさせない刺激となってもいて、読者を楽しませてくれます。 長女・綾香は婚期を逃したのではないか、と焦っている。次女・羽依はモテ女で男性関係で苦労しているが、そこで育んだ哲学を持っている。そして、三女・凛は大学院で難しい研究をしていながら就活もしていて、秘かな望みをこころに抱いている。そして、父の定年を機に自らも定年宣言し食事を作らなくなった母、一家で唯一の男である父・蛍。仲のいい五人家族です。でもそのぶん、家族のなかに縛られる目に見えない力も働いているふうです。 さて。 マジョリティの世界でそこいる人たちに辟易したり、深く傷ついたりして、そのために社会の細い傍流の世界で生きていく、というような作品が「文学的」と認められるように、ステレオタイプ的にではありはするのだけれど小説というジャンルについては思い浮かんだりするのです。それが綿矢りささんは、マジョリティに踏み込んでいって、見事に闘い続け、そこでの経験を言葉にしてしまう。マジョリティの世界で獲物として持ち帰ってきたものたちが、本書を成している。マジョリティの世界の計算高さや虚栄や意地悪や貪婪さやモラルとか節操のなさや自己中やら様々なストレッサーと取っ組み合いつつ、マジョリティの世界を謳歌することで経験できる煌びやかさや健全さや楽しさや恋しさや愛おしさなど様々な幸福的な体験を味わう。絶対、しんどいと思う。でも転んでも、なにくそ、と立ち上がり大地を踏みしめて進んでいくかのように、食らいつくバイタリティを感じさせる。どちらかというと自分は健康なタイプらしいから、とそうではない人たちにできない道を進むかのように、こういった、現実の美しさと醜さをその速いスピードで過ぎていくまま流してしまわず正対して、みんなに伝わるような客観的な状態に創り上げてこの時代の文化に刻み込む。いつしか、そんな勇猛といえるような作家になっていた。繊細なセンスを失わず、蛮勇を奮える作家という高みに到達していた。 では、引用しながら書いていきます。 __________ 京都の伝統芸能「いけず」は先人のたゆまぬ努力、また若い後継者の日々の鍛錬が功を奏し、途絶えることなく現代に受け継がれている。ほとんど無視に近い反応の薄さや含み笑い、数人でのターゲットをちらちら見ながらの内緒話など悪意のほのめかしのあと、聞こえて内容で間違いなく聞こえるくらいの近い距離で、ターゲットの背中に向かって、簡潔ながら激烈な嫌味を浴びせる「聞えよがしのいけず」の技術は、熟練者ともなると芸術的なほど鮮やかにターゲットを傷つける。(p91) __________ →次女・羽依が主人公の章です。このあと、社内ではひとりだけ土産のお菓子を配られない「お菓子外し」が起こり、休憩室に居ても率先する先輩女子の空気を読んで女子社員みんなに避けられ、新しい私服を着ていくと非難がましい目つきで見られ、仕事で聞きたいことがあってもつっけんどんにしか教えてくれないので要領が分からず、ミスが増えて無能だと叱られることも出てきます。 こういった事柄を自分事として言葉にしていくのは、たとえばその渦中に居ながらでは相当な心的負担がかかるものです。作者は過去にこういった激しい「いけず」の経験があったのだろうか、観察していたのか、それとも社会で勤め人をしている友人や家族などから話を聞いて咀嚼して落とし込んで使ったのか、ちょっと知りたくなります。いずれにせよ、フィクションのなかでしっかりリアリティを持たせてこういった内容が繰り広げられているのは見事だし、読者としてもこの部分を読むと自身がうまく言語化できなかったことが書かれていてありがたい気持ちになる人もいるのではないでしょうか。言葉にしたいのになかなかうまくいかないものが無意識に沈み込んでいくとコンプレックスになったりして、ある瞬間にそれが出てきて元気を失くすことがあるものです。そういった点で、無意識の言語化という行為は健全だったりもして、こうやって小説作品から助けを得られたりもするものなんだよなあ、とあらためて感じました。 __________ 私を嫌いな人もいれば、好きな人もいる。みんなに好かれるなんて無理。当たり前のことなのに、ときどき憔悴するほど傷ついてしまうのは、自惚れがあるせいだろうか。(p101) __________ →これも次女・羽依が思い考えているところです。こういうふうに、「いい人」でいたいという気持ちがデフォルトである人は珍しくはないでしょう。そこを、自惚れがあるせいだろうか、と内省できるところがとてもいいですね。 __________ 前原は自分では気づいてないかもしれないが、人を本気で好きになった途端、その相手を苦しめ始めるタイプだ。普段周りの人間を己のパワーで従わせているから、誰かを好きになっても、歪んだ方法で相手との距離を無理に縮めるやり方しか知らないのだろう。傍目から痛々しく思えるほど、前原は一歩外に出たら自分のキャラを完璧に演じ通していた。(p187) __________ →続いても、羽依。僕はこういった人の内面の奥のほうを考えてしまうほうです。不安障害だ、とか、パーソナリティ障害の傾向だ、とか、認知の歪みだ、とか。いわば本質ばかりみようとするため、どう表面に出ているかについては薄い認識になりがち。この箇所は、どういう行動になっていて、それがどういった理由なのか、行動原理を端的に突いているのが人に読んでもらうものとしての技術だなあと思いました。 __________ 私にもそんな時期はあった。日常生活なのにまるでTVタレントのようにイメージ通りの自分でずっといるために、体内の電池を毎日新しいのに取り替えた。裏では暗い顔しているのに、人前に出たとたん明るくふるまって話したりしていた。高校生でもう卒業したけど、不思議なことに、大人になっても演技をやり通している人が時々いる。常にテレビカメラに撮られているかのごとく、弱みを見せず、誰にでも同じ笑顔を向け、妥協は許さないと努力を努力を続けてゆこうとする人間が。(187-188) __________ →最後も羽依。言いかえると、「人前では仮面を被って生きていた」といえそうで、これは僕がそういうふうに生きてきたから(今でもその傾向はあります)とても刺さる箇所です。初めて就職した会社でも、先輩の女子社員に「社会では演技しなさい」としつけられました。それはそれで、建前なんかのことを言っていたのでしょう。くわえて、僕の場合は世間に母の病状のことを隠し続けねばならなかった。子どもの頃からそうやって生きていると、もうそういうもんだっていう生き方になっていきます。ただ、こうやって、仮面を被るような性格的要素が珍しいものではないことを知れる、というのはありがたいものです。 というところですが、モテ女・羽依は味わいのあるよいキャラクターなのでした。水商売でも成功しそうな、市井の哲学をもった女性という感じ。
女三姉妹。本当にバラバラな性格の3人。姉妹の理想型ともいえる、くっつきすぎず、でも何かあれば絶対に助けてくれる力強いつながり。 一番きょうかんできたのは、母の主婦定年宣言!退職金も欲しいくらい。
作者の文章の巧さに驚いた。京都を描く筆が実に見事である。解説に綿矢版『細雪』とあるが、たしかにそれも納得できる。特に四季の風景描写においては京都に住んだことのある人なら、実感をもってイメージできるだろう。京都が舞台だからこそ紡げる物語がある。
京都を舞台にそれぞれの人生を生きる三姉妹が中心の物語。 就職や結婚で上京した経験のある人。 京都に生まれ育った人。 恋愛や結婚について思い悩む人。 人生のハイライトに心当たりがある人は思うところがあるだろう。 川端康成「古都」に通ずる愛おしさ。
とても好き。 綿矢りささん、こう言う作品も書くんだね。 三姉妹それぞれ個性的でみんな良い。愛らしくてかわいい。
今まで読んだ綿矢りさ作品の中でいちばんのお気に入りになった。京都という土地の四季の描写と共に感情の移ろいが描かれているからか、綿矢作品の中では比較的穏やかな作品だなとも感じた。波のように荒ぶる感情の「お腹いっぱい!」感がないので個人的にはとても好みだし、もう一度繰り返して読みたいとも思った。 綿矢...続きを読むりさ作品に時折出てくる「毒」のあまりの生々しさに、私は読むたびに時に胃もたれを起こしそうになったり時に大笑いしたりしている。いずれにせよこの「毒」は良いも悪いも作品の中の特に印象に残るシーンとして記憶に残されている。今回この作品を読んで、なるほどこの毒は京都という土地が生み出したものなのだな、と思わされた。作中にもあるように、京都は日本を代表する華やかな観光地であるが、さまざまな死や人間ドラマが蠢いてきた一千年の歴史の舞台でもある。そんな歴史のある京都という土地で生まれ考えてきたことが、人間を面白おかしく、シニカルに、そして的確に描写する綿矢作品の魅力に繋がってるのだろうか、とも思わされた。 作中に、 「京都の伝統芸能『いけず』は先人のたゆまぬ努力、また若い後継者の日々の鍛錬が功を奏し、途絶えることなく現代に受け継がれている」という一文が出てきたのだが、私はこれを見て思わず笑ってしまった。人間模様をこんなに描写できる綿矢りさも「いけず」な人だと私は思う。ただ、それは作中に出てくるような人を傷つけるようなものではない。「いけず」のスキルポイントを文章表現力に振り切って出来上がったのが綿矢りさなんだろうな、などと考えた。 「約束の日が近づいてくると憂鬱さは増し、前原への怒りも増した。いつかあいつの葬式に部下として行ってやろう、と前原のうちへ行くために乗った電車のなかで羽依は決意した。位牌にオリーブオイルを塗ってテカテカにしてやる。焼香の葉を深蒸し緑茶の茶葉にすり替えて香ばしい匂いを漂わせてやる。棺桶の顔のとこのミニ観音扉には、生前の似顔絵をマジックで雑に描いてやる。棺のなかに花を手向けるときにはキッチンタイマーも一緒に入れて、ちょうど出棺のときに合わせて、ピッピピッて鳴るようにしてやる。」 この文章も非常に印象に残った一節だ。しつこく迫ってくる元彼前原に対して、苛立っている感情を「怒り」という一言で終わらせずに(しかもほぼ感情語がないのに)じわじわと湧き上がる怒りの感情がよく伝わってくる。上手い文章は「形容詞を使わずにどう表現を変えるか」で決まる、と聞いたことがあるが、まさにこれが的確な例だと思う。
大学時代を過ごした京都の地名があちこちに出てきて懐かしい気持ちになった。京都に漠然とした憧れを抱き続けている自分にぴったりの本だと思って読み始めたが、あの場所で育ってきた人とは"京都"に対する感じ方が違うんだろうな。 3姉妹の会話に癒されたし壁にぶつかってもがくそれぞれの気持ちに...続きを読む共感できた。 早くまた京都行きたい。
面白かった。三者の視点で描かれているため飽きずに最後まで楽しめた。 三姉妹がバラバラの性格だからこそ「この子の視点では、そういう考え方をするのか」と3人から人生を教えてもらった気分。
ホント言葉のチョイスが上手いというか、表現力が凄いと感じる。柔らかくも的確で巧みな比喩表現が琴線に触れて、心地よく入り込める世界が提供されてクセになる感じ。 よくまぁこんなうまい言い回しが出来るもんだと冒頭から感じてしまう。「京都の空はどうも柔らかい。頭上に広がる淡い水色に、綿菓子をちぎった雲の一片...続きを読むがふわふわと浮いている。鴨川から眺める空は清々しくも甘い気配に満ちている。春から初夏にかけての何か始まりそうな予感が、空の色にも溶け込んでいる感じ。(p.5)」「意識を手放せないまま、すうっと夜が明け、カーテンを開けるとかさかさの心に朝焼けが差す。薄い光は傷に塗る消毒液みたいに少し心にしみて涙がにじんだが、純粋に朝が来たのがうれしかった。(p.240)」とか。 このところ、セクシャル•マイノリティだったり、虐待だったり、生きづらさが描かれる物語が多い中で、本作はその様なテーマには触れず、これまでの王道というか、普通とういか、マジョリティな女性目線での京都に暮らす3姉妹家族の物語で、実に愛おしく、懐かしさも感じながら読んだ。 京都出身作者ならでは、と感じる表現も。 •なんて小さな都だろう。まるで川に浮いていたのを手のひらでそっと掬いあげたかのような、低い山々に囲まれた私の京。(p.162)
姉妹が三者三様で面白い。自分も三姉妹なので、どこか重なる。そして、京都について少し深く知れるのも面白い。特に、「いけず」文化は、京都を象徴するような、近寄り難さを示すものと思ってきたが、何だか可愛く思えるのが、著者の腕と思う。
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