あらすじ
京都に生まれ育った奥沢家の三姉妹。長女の綾香はのんびり屋だが、結婚に焦りを感じるお年頃。負けず嫌いの次女、羽依は、入社したばかりの会社で恋愛ざたといけず撃退に忙しい。そして大学院に通う三女の凜は、家族には内緒で新天地を夢見ていた。春の柔らかな空、祇園祭の宵、大文字焼きの経の声、紅葉の山々、夜の嵐山に降る雪。三姉妹の揺れる思いを、京の四季が包みこむ、愛おしい物語。(解説・佐久間文子)
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女三姉妹。本当にバラバラな性格の3人。姉妹の理想型ともいえる、くっつきすぎず、でも何かあれば絶対に助けてくれる力強いつながり。
一番きょうかんできたのは、母の主婦定年宣言!退職金も欲しいくらい。
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作者の文章の巧さに驚いた。京都を描く筆が実に見事である。解説に綿矢版『細雪』とあるが、たしかにそれも納得できる。特に四季の風景描写においては京都に住んだことのある人なら、実感をもってイメージできるだろう。京都が舞台だからこそ紡げる物語がある。
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京都を舞台にそれぞれの人生を生きる三姉妹が中心の物語。
就職や結婚で上京した経験のある人。
京都に生まれ育った人。
恋愛や結婚について思い悩む人。
人生のハイライトに心当たりがある人は思うところがあるだろう。
川端康成「古都」に通ずる愛おしさ。
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今まで読んだ綿矢りさ作品の中でいちばんのお気に入りになった。京都という土地の四季の描写と共に感情の移ろいが描かれているからか、綿矢作品の中では比較的穏やかな作品だなとも感じた。波のように荒ぶる感情の「お腹いっぱい!」感がないので個人的にはとても好みだし、もう一度繰り返して読みたいとも思った。
綿矢りさ作品に時折出てくる「毒」のあまりの生々しさに、私は読むたびに時に胃もたれを起こしそうになったり時に大笑いしたりしている。いずれにせよこの「毒」は良いも悪いも作品の中の特に印象に残るシーンとして記憶に残されている。今回この作品を読んで、なるほどこの毒は京都という土地が生み出したものなのだな、と思わされた。作中にもあるように、京都は日本を代表する華やかな観光地であるが、さまざまな死や人間ドラマが蠢いてきた一千年の歴史の舞台でもある。そんな歴史のある京都という土地で生まれ考えてきたことが、人間を面白おかしく、シニカルに、そして的確に描写する綿矢作品の魅力に繋がってるのだろうか、とも思わされた。
作中に、
「京都の伝統芸能『いけず』は先人のたゆまぬ努力、また若い後継者の日々の鍛錬が功を奏し、途絶えることなく現代に受け継がれている」という一文が出てきたのだが、私はこれを見て思わず笑ってしまった。人間模様をこんなに描写できる綿矢りさも「いけず」な人だと私は思う。ただ、それは作中に出てくるような人を傷つけるようなものではない。「いけず」のスキルポイントを文章表現力に振り切って出来上がったのが綿矢りさなんだろうな、などと考えた。
「約束の日が近づいてくると憂鬱さは増し、前原への怒りも増した。いつかあいつの葬式に部下として行ってやろう、と前原のうちへ行くために乗った電車のなかで羽依は決意した。位牌にオリーブオイルを塗ってテカテカにしてやる。焼香の葉を深蒸し緑茶の茶葉にすり替えて香ばしい匂いを漂わせてやる。棺桶の顔のとこのミニ観音扉には、生前の似顔絵をマジックで雑に描いてやる。棺のなかに花を手向けるときにはキッチンタイマーも一緒に入れて、ちょうど出棺のときに合わせて、ピッピピッて鳴るようにしてやる。」
この文章も非常に印象に残った一節だ。しつこく迫ってくる元彼前原に対して、苛立っている感情を「怒り」という一言で終わらせずに(しかもほぼ感情語がないのに)じわじわと湧き上がる怒りの感情がよく伝わってくる。上手い文章は「形容詞を使わずにどう表現を変えるか」で決まる、と聞いたことがあるが、まさにこれが的確な例だと思う。
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大学時代を過ごした京都の地名があちこちに出てきて懐かしい気持ちになった。京都に漠然とした憧れを抱き続けている自分にぴったりの本だと思って読み始めたが、あの場所で育ってきた人とは"京都"に対する感じ方が違うんだろうな。
3姉妹の会話に癒されたし壁にぶつかってもがくそれぞれの気持ちに共感できた。
早くまた京都行きたい。
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面白かった。三者の視点で描かれているため飽きずに最後まで楽しめた。
三姉妹がバラバラの性格だからこそ「この子の視点では、そういう考え方をするのか」と3人から人生を教えてもらった気分。
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普段の綿矢さんとは少し違ったテイストでおもしろかった。私も京都に住んでいることから、物語の中に出てくる街並みや様子が頭の中に浮かび、よりリアルに感じられた。特に京都はクリスマスはこぢんまりで正月の方が豪勢だというところはその通りだと思った。
大阪や兵庫はクリスマスマーケットやイルミネーションなど、クリスマスに力を入れているが京都はあまり聞かない。なぜなのか考えたこともなかったが、確かに京都はクリスマスツリーよりしめ縄のほうが似合う。
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京都で生まれ育った似てない三姉妹のお話。
長女・綾香の恋愛模様が可愛いし、次女・羽依は自分を持ってる強い女でかっこいいし、三女・凜の選ぶ道がとても気になったし、京都の四季の移り変わりを感じてじーんときた素敵なお話でした。
自分も京都で生まれ育ったので、わかるわ〜ってなる箇所が多くて楽しかった。綿矢先生の京都の表現が的確で面白いし文学的。
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京都で暮らす三姉妹の物語。それぞれに問題や悩みを抱えていて、どう展開していくのか気になりつつ、京都の美しさが際立ってすごく良かった。『細雪』が読みたくなりました。
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爽やかな読後感。
お父さんの体調がちょっと心配だけど、きっとこの家族なら大丈夫。と思える。
生活者としての視点で京都の街や観光地が描かれているところが好き。
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愛着のもてるチャーミングな三姉妹。綿矢りさから見る京都の風景やあるあるがとても良かった。
ラストの寂寥感あるけど、どこか前向きな感じも良い。
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綿矢りささんといえば毒っ気の強い本を書かれる印象だったので、穏やかな日常を切り取った内容に驚いたが読み進めやすい一冊だった。京都で暮らすようになって時間も経ったので情景も思い浮かびやすく、こんな風に作家さんなら目を止めて表現できるんやなというのも感嘆した。自分が凛と同じような生き方をしてるので、彼女が恋愛する訳でもなく、京都に結局残る訳でもなく、信じる道を行く終わり方なのも個人的には嬉しかった。
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温かすぎず温かい話でよかった
京都の切り取り方とか、姉妹の関係性とか。
京都の人が読んだらめっちゃいいだろうな〜自分の地元バージョンで読みたい
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両親の喜ぶ顔を見るために結婚にあせる長女、恋愛に積極的だが彼氏や周囲の女性とうまくいかない次女、心のなかで上京に強い思いを抱く三女。京都を舞台で、性格の異なる三姉妹がそれぞれの抱える悩みに向き合っていく。単なる名所紹介ではなく、京都特有の閉鎖的かつ独特な文化を知ることができた。
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森見作品以外の京都が舞台の小説は久しぶり。やはり故郷が舞台だと鮮明に想像できて読書が捗る。綿矢作品は大昔に読んだ『インストール』以来。勝手なイメージからもっと尖った内容を想像していたが、意外に優しかった。両親の凛の上京反対には閉口したが、三姉妹はもちろんのこと、家族仲が非常に良いのが羨ましい。
次女・羽依の啖呵が気持ち良くスッキリしたが、現実にこれをやると働きにくいどころではないだろう。そもそも「いけず」という言葉の語感は、中身の陰湿さに比べて軽すぎる。そして羽依の受けた仕打ちはいけずでなく社内イジメだ。
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綿谷りささんは『蹴りたい背中』以来だわ。
京都で生まれ育った奥沢家の三姉妹。
長女綾子は31歳のおっとりさん。そのうち結婚して子どもも産みたいと思ってるけど、彼氏もいないし無理なんじゃ?って不安になるけど、焦ってると思われたくなくて行動出来ない。
次女羽衣は勝気でいけず撃退に忙しい。美人で男性にはよくモテるけど、女性には嫌われがち。いけずする先輩に反撃するけど、その後激しい自己嫌悪に陥る。
三女の凛は大学院生。まだ恋愛に興味がないのもあって、恋愛で右往左往する姉達を一歩引いたところから観察してる。
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京都から出たことのない両親の子たち、三姉妹。それぞれの迷いながら将来に進みたいと思いつつ過ごす日常。
三姉妹全員性格が違っていて長女の綾香、次女の羽依、三女の凛、女性ならだれかに似ていて共感しやすい作品かも。
この作品のなにが一番良かったかというと話し言葉!今の京都を含む関西ってこんな感じの喋り方、自然な喋り方が書かれていて本当に良い。ネットでは標準語の私も家では関西弁。
私は大学が京都(田舎でしたが…)、家族の職場が京都なのでわりと身近なんですが、独特な雰囲気の街ですよね。やたら若い人(大学生)が多くて。綿矢さんは京都出身なんですね。ぜひこの三姉妹のその後も書いていただきたいなぁ。
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京都の四季折々の情景、三姉妹それぞれの個性が描かれ、京都に住んでいる家族を、かいまのぞいたかんじだった。
長女の綾香と宮尾さんとのお付き合いの様子は、とても穏やかでうらやましかった。
次女の羽依は、京都の伝統芸能「いけず」にも元恋人の圧力にも負けない強さが魅力的だった。
三女の凛は、化学的に料理をおいしくできるのがすごくて、唯一京都から離れることを考えられる、自ら視野を広く持とうとするところがいいなと思った。
なんだか小説のなかで京都を味わえた感じがした。最後、お父さんのことが気ががりだけれど。
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3姉妹の物語というとすぐに手にとってしまう。だいたいが性格が全く違ってそれぞれの生き方に自分はどのタイプかと重ねたりする。今回のお話では3女タイプかな〜など自己分析。京都という特別な土地柄もありその情景が目に浮かび楽しめた。3姉妹のその後も知りたくもなるけれどこういう話はこんな感じで終わるのかな。
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京都の街で暮らす三姉妹の1年間の物語
京都府に住んでいて京都市内の大学に通っていたので知っている地名やイベントがたくさん出て来て嬉しかった!
そして、訪れるのと暮らすのは全然違うなあと。
祇園祭も大文字焼きも私にとっては気合を入れて出かけるイベントだけど、本当の京都の人たちはそれが生活に馴染んでいて毎年のスケジュールに当然のように入っているんだなあ
三姉妹の末っ子の凛はとりわけ京都や街が好きでその想いに感化されて、私も自分の街の好きなところを思い浮かべて、そしてもっと好きになるような感覚があった
負けん気の強い次女の羽衣のパートもハラハラしつつ面白かった!
京女達のの陰湿で卑しい物言い(作中では伝統芸能と言われていた笑)や、それに対して黙って背中で耐えるという暗黙のルールには京都人恐ろし〜と思いつつ、果敢にやり返す羽衣は見てて爽快だった!笑
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初めて綿矢さんの本を読みました。
生まれも育ちも京都市内の三姉妹の物語。
京都の町の描写、話し言葉など、楽しめました。私はひとりっこなので、三姉妹は楽しそうだなぁと思いました。
また、「いけず」を京都の伝統芸能と表現されているのは最高に面白いです。
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タイトルに惹かれて買いました。文章は上手いし京都の描写も京都出身の作者ならでは。でも内容自体は私には若い人向けすぎた。20〜30代の女子の方は楽しめるのではないでしょうか。
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京都の三姉妹の物語。
家族の数だけある家族の形。
その家の当たり前や価値観は他の人にとっての当たり前じゃないよね。
二人姉妹で育った実家の頃を思い出したり、親の立場になった今の家族を思いました。
京都の雰囲気や描写が素敵で、よかったです。
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京都を舞台とした、三姉妹の物語というところに惹かれ、迷わず手に取った。なかなかストーリーに入り込めず、読み進めるのに時間がかかってしまったが、後半あたり、お正月をみんなで過ごす場面から、奥沢家の空気感がリアルに想像できるようになり、読み入ってしまった。全くタイプの違う姉妹たちの仲の良さや、家族のやり取りに、自分が生まれ育った実家を重ね合わせて、温かい感覚に包まれた。姉妹で、同じ環境で生まれ育っても、全く違う性格で、人生になっていくのは当たり前のことなのだな、それでいいんだなと、控えめで心地良い幸福感、安心感に包まれて読み終えた。
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正確には星3.6。
三姉妹それぞれ個性豊かで、どの話も読んでいて面白かった。
次女の羽依の話は、このタイプで京都弁で言い返すタイプは珍しく、笑ってしまった。でもしっかり現実は全部がうまく行かないと言うことも書いてあり、さすが綿矢さんだと思った。
そして三女の凛の話。この展開にしておいて最後がああくるかと思ったけど、まぁ現実か。
故郷を離れてみたい気持ちは分かる。京都に住んでいるわけではないけど、京都の閉塞感はわかる気がした。
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京都育ちの人からみた京都ってこんなところなんだろうか。知らない風習などあって楽しめた。
綿矢さんの作品は、「蹴りたい背中」が良くて、「夢を与える」がそこまででそれ以降読んでなかったのだが、こういう作品の幅もあるのだなと思った。
一人っ子の自分にはあまりに理想すぎる三人姉妹像で、実際はどうなの?って思った。親でもない、他人でもない兄弟ってどういう関係なのだろうか…。
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3姉妹3者三様の青春。
恋っていいなあ。
若いっていいなあ。
そうそう、若い時ってこん風に色々悩むよね!
京都という歴史やブランドある街に翻弄されながらも、自分の道を自分で見つけて生きていく彼女たちの強さがいい。
その京都独特の幻想の様も描かれていて、綿矢さんも京都出身なんだね。