あらすじ
今まで裸でいても、私は全然裸じゃなかった。常識も世間体も意識から鮮やかに取り払い、一糸纏わぬ姿で抱き合えば、こんなにも身体が軽い――。互いに男の恋人がいるのに、止めようもなく惹かれあう逢衣と彩夏。女性同士、心と身体のおもむくままに求め合い、二人は一緒に暮らし始めた。芸能活動をしていた彩夏の人気に火が付き、仕事も恋も順調に回り始めた矢先、思わぬ試練が彼女たちを襲う。切ない決断を迫られ、二人が選んだ道は? 女性同士のひたむきで情熱的な恋を描いた、綿矢りさの衝撃作!
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▼メモ
・逢衣(あい)、彩香(さいか)
・私は完璧じゃない。だから他人にいくら笑われてもしょうがない。でも自分だけは自分を笑っちゃいけない。私の頑張りを一番近くで見ているのは私だから。
・どんな退屈な毎日の連続でも、同じ場所には留まってはいられない。絶えず時間を移動し肉体を衰えさせて確実に死に近づいていく。骨や肺や塵になる、それまでの短いひととき、なんで自分を、もしくは誰かを、むげに攻撃する必要があるだろうか。同じ時代を生きているだけでも奇跡のような巡り合わせの周りの人たちを。
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女性の同性恋愛小説。
題材は別に興味をそそられるわけではなく、むしろ苦手な部類。
しかし、読み進めいていく、引き込まれる。
性描写がある題材は、「キレイ」だと受け取れるか、「ちょっと気持ち悪い」と受け取れるかで、その作家さんの次の作品を読むかどうかを判断する。
人気の作家さんでも、自分に合わない性描写は、次の作品を読むことは無い。
綿矢さんの描写は「キレイ」と思える。
途中、バッドエンドになるのではと思いながら読んでいたが、素晴らしい終わり方。
惹かれ合うのに、性別は関係ない。
自分にも子供がいる。親の葛藤もわかる。
でも、本人達の気持ちに偽りがなければ、背中を押せる存在になりたい。
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哀しいエンドを想像していたけれど、この上なくHAPPYエンドでした。
プロポーズってこんなに嬉しいものなのだな、添い遂げてほしいなと心から思います。
この話を読んで時間も立つけど、胸の中にすぐには消えない柔らかな温かさを刻んでくれました。
素敵なストーリーでした。
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この時代に出会えたことですら奇跡なのに、どうして人を傷つける必要があるのだろうか!そうだ!あたしの今ほしい言葉はこれだった 読み始めはXで流れてきて何となくだったけれど本当に読んでよかった
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一気に読んでしまった。とても良かった。
どうしようもないくらい好きになった人が同性だったら。彩夏のような芸能人はまた違った苦労が多いのかもしれないが、逢衣が直面した家族や職場へのカミングアウトの問題はリアルだった。最後の方で逢衣の両親が彩夏のことを認められないながらも、逢衣を愛する気持ちは変わらず、受け入れようと努力している描写は涙ぐましかった。
とにかく2人が一緒に生きていく道を選べて良かった。
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同性愛の話かなと思って購入しましたが良い意味で裏切られました。
逢衣と彩夏の純愛の物語。
作者の美しい文章の表現力に読んでいて心を奪われました。
男とか女とか関係なく、
逢衣だから好きになった。
彩夏だから好きになった。
人を愛せることって素敵ですね。
そう思える作品です。
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p131
なんかさ、上手く言えないけど、"その身体が何をして来たか"が分かるのってすごいセクシーじゃない?
p132
彼女の話で思い出したのは、私たちが離ればなれになる前に、彼女が自分に傷痕を、一生消えない傷をつけてほしいと懇願したことだった。
p252
なんでもいいから自分たちの愛の証を刻みつけて、見えないものから見えるものへ変化させ、そんな儚いやり方で永遠を見つけていこうと必死なのだ。
p253
私たちを見守る風が、空が、海が、永遠の証人となった。
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綿谷りささんは、わたしに一気読みをさせる天才なんだ。あらためてまずそこを実感。
同性愛とはつまり同じ性をもつ人間同士の繋がりなのであって、ことばや思想はさまざま行き交っているけど、
頭のうえを行き交っているだけで、
嫌悪感だったり理解し難いで片付けてしまったり、
わたしはまさしくその側の人間だった。
つまりちがう性をもつ人間同士の繋がりだけが
きれいなのか。当たり前なのか。ただしいのか。すばらしいのか。
そこだけじゃない。上手く言えないけど、文章で泣ける物語は、テーマだけではない深いふかい部分があることの証明なんだと思わされる。
いちばんは、生のみ生のままで このタイトルだと思う。
駆け抜けていく最後もよかった。
やっぱり綿谷りささんは、いつもわたしを美しく裏切ってくれる。
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ぐんぐん加速していった下巻。一目会うことさえ叶わなかった7年をはさんで、二人が一度クロスし、そして再び一本のラインとして交わりあっていく様子が、鮮やかに描かれていた。一方がむかし言っていたことをもう一方がずっと覚えていたり、現在と過去がシンクロしたりと、このふたりの長い年月を読者としてずっと追ってきた喜びが感じられた。
一度固く閉ざされてしまった彩夏の心がほぐされていった直接的なきっかけや、逢衣と両親のその後など、はっきりとは書かれていない。納得いかない読者もいるだろうが、現実って実際はこんなものだろうなと、むしろ自然に思われた。なにもすべてにおいて、はっきりした出来事をきっかけに心が動いていくのではない。ひかれあってしまうものはどうしてもそうなるというような、傍から見れば曖昧な、でも当人にとっては必然的な、自然な成り行きというものはたしかにある。
逢衣と彩夏が交わるシーンが全編を通して複数回、濃密に描かれるが、そのどれもがまったく同じでないことがすごいと思った。そこには二人の関係性における微妙な変化が、これ以上ないほどこまやかに映し出されている。私自身にはそんな経験が(たまたま)ないからなのかもしれないが、先入観にとらわれることなく、愛する人の身体をひとつずつ知っていく幸福をリアルに感じることができた。
同性愛に対する世間の風当たりがやや極端で画一的なのはちょっとひっかかった。とはいえ、本作の初出から7年が経っても、いまだに日本のトップに立つ政治家でさえ同性婚反対を声高に叫んでいる。これが現実かと思うと、逢衣と彩夏がたどり着いたラストの意味をあらためて考えさせられる。
Posted by ブクログ
7年もの時間が過ぎたのに、お互い結局ずっと想い合っていたところが本当に運命の2人って感じで憧れた。病気になって弱ってしまった彩夏を強引に引き取って看病していく中で徐々に2人の仲が以前と同じように深まっていくところがすごく良かった。
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お互いの恋愛がすんなり受け入れてもらえない社会(人間関係)で在り続ける方法を模索し、全員に受け入れて貰えなくてもそのままで居ようと決意。
タイトル通りの恋愛を紆余曲折ありながら体現した。
世間にはありのままで居られなくても、自分自身はありのままでいる選択をし続けていて、真っ直ぐで気持ちいい。
Posted by ブクログ
最後まで一気に読み切り、解説を読んで、同じことを考えてくれていた人がいて安心した。
これは同性愛の物語ではない、という書評が多かったのは自分も認識している。でも、実際物語の登場人物たちが窮する立場に置かれているのは当人同士が同性同士だからに他ならない。ふたりが同性愛者かどうかと、社会の中で同性同士のカップルであることは、全く別の次元の話ということに気づいている人はまだ少ないのだと感じた。
同性愛の物語ではない、愛の物語なのだと語ってしまうことが、むしろ問題を矮小化してしまう。漂白されてしまう。愛の物語であることは否定しないし、ふたりにとってただ世の中で唯一の関係性なのはその通りだと思う。でも、第三者が困りごとを矮小化することは、その関係性を差別していることに他ならないと思う。
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衝撃的な下巻の幕開けから、怒涛の。
単なる百合に落とさず、かと言って最近ありがちな多様性を強く説くようなものではなく、だからこそかリアルな当事者の心境が感じられた。
絡みのシーンでは、興奮してしまうほどの描写であったが、官能だけにとどまらない、心境の描写があった。
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運命の赤い糸が離れてもつれ絡み合う__思わぬ試練が襲い、切ない決断をくだした2人の行く末は。
綿矢さんに愛することの喜び辛さをこれでもか!というぐらい見せつけられた...(深い余韻)
Posted by ブクログ
途中悲しくなって涙目になったりもしたけど、2人が幸せそうでよかった…よかったよ…
すごく純愛だった。二人共お互いをすごく大切に思っていて、すごく応援したくなってしまう。
女同士という壁がいろんなところで立ちふさがってきて、解決すべきことはまだあるのかもしれないけど、穏やかに二人が過ごせたら良いなと思えた。
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2人の愛がもう一度一から確立されていった。
これが確かな愛だと2人もそして読者もわかったとき
そこに社会に祝福されないという壁が立ちはだかりこれがマイノリティとして生きることの
生きづらさなのだと心が痛んだ。
特に親が変わらぬ愛で理解しようとは
してくれつつも拒絶を示す点や
最後に2人で愛を誓い合う際にも
いわゆるフツーの結婚式をいう形をとれず
社会を超えたところで2人だけが納得する形で
行わざるを得ないということに
心を痛めた。
同性愛についてあまり関心はなかったけど
この作品のおかげでもっと
寛容な社会が築かれていく必要性を感じる
ことができた。
Posted by ブクログ
すごい良かった
余計な部分を感じなかったのに
描写は細かく書かれているから2人を空中から見ているような感覚で読めた
その場の空気感までリアルに伝わってくる
実写化して欲しい
最後地元が出てきてびっくりした
聖地巡礼します
Posted by ブクログ
とてもよかった。
上巻は他人の人生を傍観してる感じで、人ごと感があったが、下巻からはなんだか応援している自分がいて、不思議と世界に引き込まれていく作品だった。
下巻はつらい場面が続く。
やっと再開できたねラブラブラブ、とはならないところが現実を突きつけられた感じがしてよかった。
かなり後半は営みの描写が描かれていて、でもいやらしいというより、お互いの想いを確かめ合うこれ以上のない会話のようで、「人」と「人」が愛し合うということは、その事実だけが大切で、その他は不要なもののように思えた。
「人」が「人」を愛することはとても素晴らしい奇跡だと改めて思った。
Posted by ブクログ
社会の様々な障壁を乗り越えられずとも、二人の中で納得できる結末を迎えられて安心した。最後まで描写が美しく読み終わったあとの余韻が長く続く作品。
Posted by ブクログ
少し苦手だと思いつつ読んだ上巻。下巻はどうかと思ったが思いのほか、面白かった。
最後の解説を読み、気が付いたことがある。この作品は、当初同性愛の物語ではないと称賛されたという。なるほど、何度も感じていたこれは同性愛の話か?という感想を世間には称賛されていたのかと。そう考えると、私は「同性愛の物語」に何かを期待していたのかもしれない。
この作品は、生のみになれない読者にこそ、それを突きつけている。という最後の解説の言葉に納得。
綿矢りさは生のみ生のままを描いていた。これは女性達の生のみ生のままの物語。
私は、同性愛の話に勝手な想像をしていたのだなぁと感じた。
Posted by ブクログ
これまでのアイデンティティを打ち破るほど心震え特別な愛を感じる相手との出会い。異性/同性を超えた唯一無二の存在との関係性が描かれる。しかしその賞賛や感動はそもそも自らの偏見ゆえではないか、と釘を刺してくださる水上文さんの解説がまた鋭い気付きに。
Posted by ブクログ
1時間ぐらいで読んだ。けっこう介護、ケアの部分がフォーカスされていたのが意外だったけども、最も現実的な話題でもあるよなぁとも思った。逢衣の心象風景なのか詩的な文章が紡がれた段落が挟まったりして、上巻と比べてだいぶ印象が変わった気がする。性描写も丁寧、というかシチュエーションにあまり「できすぎ感」がなくて良い。適度にエロかった。
全体的に下巻の方が地に足ついた印象。実際、親とか友達とか同僚とか元恋人の反応とかそのテンションはこんな感じなんだろうかなあと想像できるくらい自然だった。上巻冒頭での彩夏→逢衣のアタックが、下巻では矢印の向きが反対になった関係(直接のセリフ引用もあった)になっていたのも、会えないブランクが生んだ変化をひしひしと感じさせ、逢衣に近い目線を持つ三人称語りに乗っかった私は、七、八年の時の流れや変化を感慨深く思ったりしながらページを繰った。
Posted by ブクログ
上巻の(官能小説のような)俗っぽさが抜けて、恋愛文学作品としてとても楽しめました。
逢衣と彩夏のもつそれぞれの自我(愛)はなかなか相寄らない振り子のように、でもときにリズムを合わせて仲良く時を刻むように、、
2人の織りなす独特のリズム感がそのまま物語の抑揚として胸を躍らせてきました。
対外的にも内面的にも、苦しみながら、真実の愛を築き上げていく姿が美しくて微笑ましくて、
最後どういう結末なのかなぁとハラハラしながらも内心は安心感もあったり。
心が洗われる作品でした。
Posted by ブクログ
わたしにとって綿矢りさは合う合わないが極端に分かれる作家なのだけどこれは合わない方の綿矢りさだった。
物語の展開はシンプルというか何かのテンプレートか?と思うくらいにお決まりのものばかりで、まあ、あるよねこういう物語…という感想。劇的な恋の落ち方、彼氏との別れと反発、同居、見え見えな感じで入ってくる邪魔、そこからの別れ、からの復縁、などなど…
ただ、逢衣のモノローグはとても鮮やかで、綿矢りさの力はここに表れているのだなと感じた。抑えめながらも情緒的で情熱的。すばらしいと思う。
そして彩夏が逢衣の存在を周囲に明かさないと選ぶこと、逢衣の家族の反応など、読者に夢を見させない展開も綿矢りさの意図するところなのだろうなと思うと同時に切なくもあるのだった。
物語はハッピーエンドで終わるけど、この物語がいつか時代遅れの古臭いものになってくれればいいなと思う。
Posted by ブクログ
一昔前に比べたら、多様性が叫ばれるようになって、ずいぶん生きやすい時代にはなったけれど、
好きになった相手が同じ性別だから、家族になることを諦めざるを得ない状況、なんとかならないか。
場合によっては未だに同調圧力が凄まじいことも多く、マイノリティは蔑ろにされがち。
ただ、心の性を偽るのはいかがなものかと思う。
心の性がどうであれ、性別でトイレや更衣室の使い分けることには特に何の思い入れもないし、それをありがたく享受しているわけでもない。それらに対して強い拘りを持っている時点で…とは思う。
いくら心の性が女性だからって、男の外見をした人が入ってくるのはこわいし、同性ならそれがわかるはずなんだけどなあ…
自分がマイノリティだと公言するのは、まだ少し憚られるような気がする。
いろんな人が胸を張って、それぞれの人生を生きられる時代が来ることをただただ願うばかり。