あらすじ
今まで裸でいても、私は全然裸じゃなかった。常識も世間体も意識から鮮やかに取り払い、一糸纏わぬ姿で抱き合えば、こんなにも身体が軽い――。互いに男の恋人がいるのに、止めようもなく惹かれあう逢衣と彩夏。女性同士、心と身体のおもむくままに求め合い、二人は一緒に暮らし始めた。芸能活動をしていた彩夏の人気に火が付き、仕事も恋も順調に回り始めた矢先、思わぬ試練が彼女たちを襲う。切ない決断を迫られ、二人が選んだ道は? 女性同士のひたむきで情熱的な恋を描いた、綿矢りさの衝撃作!
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
あなたは、大好きな人と7年もの間、引き離されてしまったらどうするでしょうか?
7年という年月は短いようで長いものです。保育園・幼稚園に通っていた子供が中学生になってしまっている、そう考えるとその月日の長さもよく分かります。もし大好きな人がいて、そんな相手と7年も逢うことができなくなったとしたら…考えるだけでもそこには辛く悲しい光景が思い浮かびます。
しかし、世の中にはさまざまな事情があります。お互いどんなに惹かれあっていたとしても一緒にいること自体認められないことは十分ありえます。そんな期間離れていた二人が再会することができた場合、そこにはどんな光景が広がっていくのでしょうか?二人の想いはすれ違いを見せるのでしょうか?
さてここに、『悲しいけどいま彼女の夢を終わらせるわけにはいかない』という想いを胸に、7年もの間離れ離れになった二人のその先を描く物語があります。後輩のまさかの裏切りの先に悲嘆の日々を送る二人のその後が描かれるこの作品。”私たちは、友達じゃない”という二人の関係性が描かれるこの作品。そしてそれは、”女性同士の鮮烈なる恋愛”のその後を描く「生のみ生のままで」下巻な物語です。
『凜ちゃん、なんでここに呼ばれたか、分かる?』と、『屈強で目つきの鋭い男性を一人連れてきて、近くのテーブルに座らせた』鈴木凜に話しかけるのは主人公の南里逢衣(なんり あい)。『できれば二人きりで話し合いたかったが仕方ない』と思う逢衣は、『いま話題の、彩夏先輩のスクープ記事に関してじゃないですか?』と答える凜に『何か心当たりない?』、『週刊誌に載ってた写真の私と彩夏の服装が、凜ちゃんが遊びに来た日とまったく同じだったよ…私たちを隠し撮りしたものでしょ』と訊きます。『あるわけないですよ!…まさか、私じゃないですよ…』と『口では身の潔白を主張しながらも、私たちを上手く嵌めることができた得意げな目つきを隠さずに、彼女は、声に出さずに口の動きだけで、バーカ、と言』います。『彩夏はあなたのことを可愛い後輩だと思って、すごく気に掛けてたよ…上海で撮影したあの映画、プロデューサーに掛け合ってあなたを推したのが、彩夏だって知ってた?』と逢衣が言うと『凜の顔が曇り、初めて素の表情が垣間見え』ました。『今さらそんなこと知っても、もうどうでもいいです。逢衣さんこそ、後ろ暗くないなら、堂々としてればいいじゃないですか。こんなとこで犯人探しなんてしていないで、彩夏先輩と恋人宣言でもなんでもすべきです…』と言う凜に『もう怒っていなかった』という逢衣は『この会話も録音されている可能性があ』ることを思い、『会計を済ませ、店を出』ました。
場面は変わり、『荘田彩夏(しょうだ さいか)さんの記事、南里さんはお友達だからご存じですよね?…あれって信憑性はどのくらいですか?』と『週刊誌部門の社員から廊下で声を掛けられた』逢衣は、『さあどうなんでしょう。彼女とは友達だけど、プライベートの部分はあんまり話さないから』と返します。そんな彩夏に『もしかして、相手は南里さんじゃないですか?』と訊く後輩に『やっぱりそれを訊くために話しかけてきたのか…』と思う逢衣は『まさか、違います。まったく心当たりがない』と否定し『自分のデスクに戻』りましたが『胸の動悸が収ま』りません。
再度場面は変わり、『帰宅後、携帯の画面に見知らぬ電話番号が表示されて、恐る恐る出』た逢衣。『逢衣?私だよ、事務所の人の携帯を一時的に盗んでかけてる』と『慣れ親しんだ声』に、『すぐ切った方がいいよ。電話は厳禁なんでしょ?』と返す逢衣。『大丈夫、浴室のなかだよ!』と言う彩夏は『仕事のとき以外はずっと事務所で諭されてる。プロ意識がないとか売り出し中なのにとか、記事をもみ消すためのお金がどうとか…』と置かれた状況を説明します。『でも平気、あと少し耐えれば逢衣と一緒になれるから』、『仕事は引退する、って近々伝えるつもり…早く逢衣のところへ帰りたいよ』と『さらっと爆弾発言をする彩夏に』『眩暈がした』逢衣は『そんな簡単に行くわけないでしょう。違約金が発生するんでしょ?』と訊くと『完全にこの業界から引退するって決めたら、あとはもうシンプルなものだよ。一般人に戻るんだから後追い記事も書けなくなるしさ』と説明する彩夏。そんな彩夏に『敵に周りを囲まれた状態で意思表示するのは危険だよ。明後日に私も事務所に行くから、そこで言うのはどうなか』と逢衣は提案します。
三度場面は変わり、『自分の娘が目の前に現れると』彩夏を『面前で平手打ち』する彩夏の母親。『事務所の応接室』で始まった話し合いの中で、『今回の記事は私たちが責任を持って綺麗にもみ消すので、あなたは彩夏ともう会わないでください…』と言う事務所の統括部長。同時にマネージャーの米原と彩夏の母親も一斉に逢衣を見ます。『刃向かった場合の制裁はすべて彩夏にいくと、暗に脅すため』と理解した逢衣は『私たちは別れません』と切り出すと『彩夏が仕事を続け、あなた方に今までかけてもらったお金をすべて返済するほど稼いだら』『連絡をください』、『その後は私たちの自由です…それまで一切彩夏とは会わないし連絡も取りません』と話します。そんな条件に表情を綻ばせる統括部長の一方で、『嘘でしょ、逢衣』と言う彩夏。『絶対に待ってるから。愛してる』と囁く逢衣に『顔を伏せ』てしまった彩夏…。
そんな先に7年の月日が経過し、『荘田彩夏様 こんにちは。身体の調子はどうですか。ひさしぶりですね。いきなり手紙を送りつけて、ごめんなさい…』と始まる手紙を書く逢衣。あれから7年、離れ離れの日々を生きてきた逢衣と彩夏のそれからの物語が描かれていきます。
“お互いに男性の恋人がいるのに、惹かれあう逢衣と彩夏。女性同士、心と身体をおもいのままに求めあい、逢衣は彩夏と一緒に暮らし始めた。しかし、仕事も恋も順調に回ったかのように思われたが、週刊誌によってふたりの関係が公になってしまう。彩夏の芸能事務所に呼び出された逢衣は、マネージャーらから彼女と別れるように迫られ、強制的に引き離されてしまい”と内容紹介にうたわれるこの作品。第26回島清恋愛文学賞を受賞したこの作品は、”芸能活動”をする彩夏とそんな彼女から紹介された出版社で働く逢衣の”同性同士”の恋愛を描く物語です。
綿矢りささんの作品では珍しく上巻、下巻に分かれた長編小説でもあるこの作品。上巻の結末では、彩夏のマンションで幸せな日々を送る二人を隠し撮りした写真が週刊誌に掲載され、二人が『思いきり唇を合わせ』る写真を事務所が『多額の資金』でもみ消しに動くという緊迫した状況の中に幕を下ろしました。この作品は元々の単行本も上下巻構成、かつそれぞれのページ数もほぼ同一です。物語の分岐点となる事象発生を上下巻の切れ目に持ってくる絶妙な構成を見ると、元々上下巻前提で執筆されたものなのかなと感じます。そして、それを上手く活かして物語の雰囲気感が上巻と下巻で別物に変化してもいきます。私は今までにも上巻、下巻に分かれた物語を数多読んできましたが、そのこと自体を演出と感じさせるくらいに巧みに構成された作品は初めてです。これからこの作品を読まれる方には、このダイナミックなまでに変化する物語の雰囲気感の違いを是非楽しみにしていただければと思います。
そんな下巻の物語の中でもさまざまな場面が描かれていきますが、とても新鮮な感覚に包まれる展開が用意されています。少しだけご紹介しておきたいと思います。
『飛行機に乗り込んでから十時間後、ハワイ島のヒロ空港に降り立ち、快晴の飛行場で』『まずしたことは、靴と靴下を脱いで、ビーチサンダルに履き替えることだった』。
そうです。下巻の物語には『ハワイ島』を旅する逢衣の姿が描かれていくのです。
『ヒルトン・ワイコロア・ビレッジは、周辺には何もない広大な面積の土地を丸ごと買い取った、テーマパークのようなリゾートホテルで、あまりの広さにホテル内の移動手段はモノレールが主になっているほどだった』。
『八つの大きな島と百以上の小島からなるハワイ諸島の主要な島の一つで、面積はもっとも大きい』という『ハワイ島』への旅が描かれていく物語はとてもリアルです。『ハワイ島』を訪れた方の中に『ヒルトン・ワイコロア・ビレッジ』をご存知でない方はいらっしゃらないと思いますし、かく言う私もその巨大さに圧倒された記憶があり、滞在先の選択としても全く違和感がありません。
『あらかじめ予約していた島一周ツアーに参加した。ただの見学ツアーではない、扉の無いヘリコプターに乗り込んで上空から島の全貌を眺めるのだ』。
そんな風に現実に存在するツアーの様子がリアルなまでに描かれていく場面の数々は『ハワイ』が好きな方にはたまらない魅力を感じられると思います。『ハワイ』が小説内に描かれた作品というと、よしもとばななさん「まぼろしハワイ」、近藤史恵さん「ホテル・ピーベリー」、そして山本文緒さん「パイナップルの彼方」などが思い浮かびますが、行ってみたい!という思いを強く掻き立てる描写はこの作品がピカイチだと思います。この作品のレビューや感想であまりこのことに言及されているものがないようですので、私のレビューではこの点をおすすめポイントとして特に強調しておきたいと思います。この作品の隠された、もしくは埋もれた魅力の一つだと思いました。
また、この下巻にも上巻に引き続き”同性同士”の官能的な描写が存在します。
・『刺激を受けて固くなる前の、ぼんやりとした三角形の輪郭の乳首が目の前にあった。この油断しきった乳首の方が私は好きだ』。
・『彼女の真ん中に激しく口ですがりついた。到達さえしてしまえば見えなくてもそこの仕組みは知りすぎるほど知っている。絶対に逃さないために、舌先で素早く核を探り当てると音を立ててその周り共々吸った』。
上巻同様に二人の行為の場面が複数箇所に描かれていきますが、上巻同様にそれが淫らに感じられないのが不思議です。
『浅い呼吸、視界が霞む。今の私は包丁で半分に切られた林檎の白い果肉みたいだ。彩夏の舌は真ん中最深部の種のある果芯に届き、優しく蠢いていた』。
巧みな比喩を用いることで芸術作品を見ているように描かれていく二人だけの世界。もちろんこういった官能世界の描写に好き嫌いはあると思いますし、”同性同士”という側面もこの作品には存在します。しかし、そういった次元を超えてこの作品の官能世界は完成された芸術作品だと思いました。間違いなくこの作品の魅力の一つであり、また、この場面なしでは逢衣と彩夏の心の根底にある感覚を理解することはできないようにも感じました。
さて、そんなこの下巻では、週刊誌に二人の生活の隠し撮りが掲載されたことをきっかけに別々の道を歩むことになり、7年の月日が流れた二人のその先の日々が描かれていきます。
『荘田彩夏様
こんにちは。身体の調子はどうですか。
ひさしぶりですね。
いきなり手紙を送りつけて、ごめんなさい』
そんな出だしから始まる彩夏宛の手紙を書いた逢衣。読者はこの手紙の内容からこの7年の間に彩夏に何があったのかをそこに知ることになります。そんな別離の日々を綿矢さんは逢衣の想いに託してこんな風に記します。
『私たちは性急に関係を結び、楽園に住み続けることもできたのに、見つかると別々の方向へ逃げた。春めく秋、夏めく冬、季節を飛ばし、輝く鱗粉をまき散らして羽ばたく蝶は、倍の速さで燃え尽きる。ちょうどろうそくの火を、火傷しながらも指でつまんで消すように』。
なんとも美しく綴られていく表現です。この下巻には綿矢さんならではの美しい表現が上巻以上に散りばめられています。これらの文章の力もあって、下巻の物語はどこか気高い雰囲気感に満ち溢れています。上巻が今一つしっくりこなかった方にも下巻の物語が放つ魅力にこの作品への見方が変わる方もいらっしゃると思います。かく言う私も、下巻に綴られていく物語世界にはすっかり魅せられてしまいました。
『余韻。いまの私の生活は、すべてあなたの余韻。リアルタイムで経験する出来事がすべてあなたとの過去に繫がって共鳴する。あなたを通してしか私は物事に関心が持てないし、感動できない』。
そんな風に彩夏のことを思い続けながら7年の年月を生きてきた逢衣。そんな逢衣が再会した彩夏は上記した手紙に暗示される通り、病に伏し、痛々しい姿を晒すようになっていました。
『会えなかった間、逢衣の顔はどんなときもいつも浮かんでたよ。誰よりも頼りたくない、でも同時に誰よりも頼りたい人だった』
しかし、そんな彩夏も逢衣への想いを強く抱き続けていたことが分かります。物語では再会した二人のその後の暮らしが描かれていきます。そこには、上巻とは別ものの暗い雰囲気感に包まれる物語が描かれてもいきます。
『この世界に、あなたと私がいるだけ。私はいま、彩夏と共に真っ白なゼロ地点にいる。これまでの彼女との歴史をすべて両手いっぱいに抱えたまま、私と彩夏は足並みをそろえて新しい道に踏み出そうとしている』。
そんな言葉の先に描かれていく逢衣と彩夏のそれからの日々が描かれていく物語は、この作品の表紙が象徴するまばゆい真っ白に輝く世界に向かって二人が歩みはじめる瞬間を鮮やかに映し取っていきます。そして、そんな物語が描く結末、そこには作品を読む前までは違和感でしかなかった”同性同士”を描く愛のかたちに強い説得力を感じさせる、どこまでも奥深く美しい愛の物語が描かれていました。
『何から伝えればいいのか分からないまま時は流れて…』
小田和正さん「ラブ・ストーリーは突然に」の一節が主人公・逢衣の心持ちと鮮やかにシンクロする先の日々が描かれるこの作品。そこには、離れ離れになっても消えることのなかった二人の想いの強さを見る物語が描かれていました。『ハワイ』の描写が物語を絶妙に演出するこの作品。ハッとさせられるような美しく気高い表現の数々にすっかり魅せられるこの作品。
読む前に抱いていた”同性同士の恋愛”という怖いもの見たさの感覚が吹き飛び、綿矢さんの描く恋愛世界の奥深さにどこまでも魅せられていく傑作だと思いました。
最高!
すごく感動しました!ハッピーエンドで終わってよかったけど結婚後の2人の生活を見てみたいとも思ってしまいました。
読み終えて嬉しい反面もう終わってしまったのかという寂しい反面もあります。
最初から最後までとても心をキュンとさせてくれる小説をありがとうございました😊
Posted by ブクログ
▼メモ
・逢衣(あい)、彩香(さいか)
・私は完璧じゃない。だから他人にいくら笑われてもしょうがない。でも自分だけは自分を笑っちゃいけない。私の頑張りを一番近くで見ているのは私だから。
・どんな退屈な毎日の連続でも、同じ場所には留まってはいられない。絶えず時間を移動し肉体を衰えさせて確実に死に近づいていく。骨や肺や塵になる、それまでの短いひととき、なんで自分を、もしくは誰かを、むげに攻撃する必要があるだろうか。同じ時代を生きているだけでも奇跡のような巡り合わせの周りの人たちを。
Posted by ブクログ
女性の同性恋愛小説。
題材は別に興味をそそられるわけではなく、むしろ苦手な部類。
しかし、読み進めいていく、引き込まれる。
性描写がある題材は、「キレイ」だと受け取れるか、「ちょっと気持ち悪い」と受け取れるかで、その作家さんの次の作品を読むかどうかを判断する。
人気の作家さんでも、自分に合わない性描写は、次の作品を読むことは無い。
綿矢さんの描写は「キレイ」と思える。
途中、バッドエンドになるのではと思いながら読んでいたが、素晴らしい終わり方。
惹かれ合うのに、性別は関係ない。
自分にも子供がいる。親の葛藤もわかる。
でも、本人達の気持ちに偽りがなければ、背中を押せる存在になりたい。
Posted by ブクログ
哀しいエンドを想像していたけれど、この上なくHAPPYエンドでした。
プロポーズってこんなに嬉しいものなのだな、添い遂げてほしいなと心から思います。
この話を読んで時間も立つけど、胸の中にすぐには消えない柔らかな温かさを刻んでくれました。
素敵なストーリーでした。
Posted by ブクログ
この時代に出会えたことですら奇跡なのに、どうして人を傷つける必要があるのだろうか!そうだ!あたしの今ほしい言葉はこれだった 読み始めはXで流れてきて何となくだったけれど本当に読んでよかった
Posted by ブクログ
一気に読んでしまった。とても良かった。
どうしようもないくらい好きになった人が同性だったら。彩夏のような芸能人はまた違った苦労が多いのかもしれないが、逢衣が直面した家族や職場へのカミングアウトの問題はリアルだった。最後の方で逢衣の両親が彩夏のことを認められないながらも、逢衣を愛する気持ちは変わらず、受け入れようと努力している描写は涙ぐましかった。
とにかく2人が一緒に生きていく道を選べて良かった。
Posted by ブクログ
同性愛の話かなと思って購入しましたが良い意味で裏切られました。
逢衣と彩夏の純愛の物語。
作者の美しい文章の表現力に読んでいて心を奪われました。
男とか女とか関係なく、
逢衣だから好きになった。
彩夏だから好きになった。
人を愛せることって素敵ですね。
そう思える作品です。
Posted by ブクログ
p131
なんかさ、上手く言えないけど、"その身体が何をして来たか"が分かるのってすごいセクシーじゃない?
p132
彼女の話で思い出したのは、私たちが離ればなれになる前に、彼女が自分に傷痕を、一生消えない傷をつけてほしいと懇願したことだった。
p252
なんでもいいから自分たちの愛の証を刻みつけて、見えないものから見えるものへ変化させ、そんな儚いやり方で永遠を見つけていこうと必死なのだ。
p253
私たちを見守る風が、空が、海が、永遠の証人となった。
Posted by ブクログ
ぐんぐん加速していった下巻。一目会うことさえ叶わなかった7年をはさんで、二人が一度クロスし、そして再び一本のラインとして交わりあっていく様子が、鮮やかに描かれていた。一方がむかし言っていたことをもう一方がずっと覚えていたり、現在と過去がシンクロしたりと、このふたりの長い年月を読者としてずっと追ってきた喜びが感じられた。
一度固く閉ざされてしまった彩夏の心がほぐされていった直接的なきっかけや、逢衣と両親のその後など、はっきりとは書かれていない。納得いかない読者もいるだろうが、現実って実際はこんなものだろうなと、むしろ自然に思われた。なにもすべてにおいて、はっきりした出来事をきっかけに心が動いていくのではない。ひかれあってしまうものはどうしてもそうなるというような、傍から見れば曖昧な、でも当人にとっては必然的な、自然な成り行きというものはたしかにある。
逢衣と彩夏が交わるシーンが全編を通して複数回、濃密に描かれるが、そのどれもがまったく同じでないことがすごいと思った。そこには二人の関係性における微妙な変化が、これ以上ないほどこまやかに映し出されている。私自身にはそんな経験が(たまたま)ないからなのかもしれないが、先入観にとらわれることなく、愛する人の身体をひとつずつ知っていく幸福をリアルに感じることができた。
同性愛に対する世間の風当たりがやや極端で画一的なのはちょっとひっかかった。とはいえ、本作の初出から7年が経っても、いまだに日本のトップに立つ政治家でさえ同性婚反対を声高に叫んでいる。これが現実かと思うと、逢衣と彩夏がたどり着いたラストの意味をあらためて考えさせられる。
Posted by ブクログ
7年もの時間が過ぎたのに、お互い結局ずっと想い合っていたところが本当に運命の2人って感じで憧れた。病気になって弱ってしまった彩夏を強引に引き取って看病していく中で徐々に2人の仲が以前と同じように深まっていくところがすごく良かった。
Posted by ブクログ
お互いの恋愛がすんなり受け入れてもらえない社会(人間関係)で在り続ける方法を模索し、全員に受け入れて貰えなくてもそのままで居ようと決意。
タイトル通りの恋愛を紆余曲折ありながら体現した。
世間にはありのままで居られなくても、自分自身はありのままでいる選択をし続けていて、真っ直ぐで気持ちいい。
Posted by ブクログ
最後まで一気に読み切り、解説を読んで、同じことを考えてくれていた人がいて安心した。
これは同性愛の物語ではない、という書評が多かったのは自分も認識している。でも、実際物語の登場人物たちが窮する立場に置かれているのは当人同士が同性同士だからに他ならない。ふたりが同性愛者かどうかと、社会の中で同性同士のカップルであることは、全く別の次元の話ということに気づいている人はまだ少ないのだと感じた。
同性愛の物語ではない、愛の物語なのだと語ってしまうことが、むしろ問題を矮小化してしまう。漂白されてしまう。愛の物語であることは否定しないし、ふたりにとってただ世の中で唯一の関係性なのはその通りだと思う。でも、第三者が困りごとを矮小化することは、その関係性を差別していることに他ならないと思う。
Posted by ブクログ
衝撃的な下巻の幕開けから、怒涛の。
単なる百合に落とさず、かと言って最近ありがちな多様性を強く説くようなものではなく、だからこそかリアルな当事者の心境が感じられた。
絡みのシーンでは、興奮してしまうほどの描写であったが、官能だけにとどまらない、心境の描写があった。
Posted by ブクログ
運命の赤い糸が離れてもつれ絡み合う__思わぬ試練が襲い、切ない決断をくだした2人の行く末は。
綿矢さんに愛することの喜び辛さをこれでもか!というぐらい見せつけられた...(深い余韻)
Posted by ブクログ
途中悲しくなって涙目になったりもしたけど、2人が幸せそうでよかった…よかったよ…
すごく純愛だった。二人共お互いをすごく大切に思っていて、すごく応援したくなってしまう。
女同士という壁がいろんなところで立ちふさがってきて、解決すべきことはまだあるのかもしれないけど、穏やかに二人が過ごせたら良いなと思えた。
Posted by ブクログ
2人の愛がもう一度一から確立されていった。
これが確かな愛だと2人もそして読者もわかったとき
そこに社会に祝福されないという壁が立ちはだかりこれがマイノリティとして生きることの
生きづらさなのだと心が痛んだ。
特に親が変わらぬ愛で理解しようとは
してくれつつも拒絶を示す点や
最後に2人で愛を誓い合う際にも
いわゆるフツーの結婚式をいう形をとれず
社会を超えたところで2人だけが納得する形で
行わざるを得ないということに
心を痛めた。
同性愛についてあまり関心はなかったけど
この作品のおかげでもっと
寛容な社会が築かれていく必要性を感じる
ことができた。
Posted by ブクログ
すごい良かった
余計な部分を感じなかったのに
描写は細かく書かれているから2人を空中から見ているような感覚で読めた
その場の空気感までリアルに伝わってくる
実写化して欲しい
最後地元が出てきてびっくりした
聖地巡礼します
Posted by ブクログ
とてもよかった。
上巻は他人の人生を傍観してる感じで、人ごと感があったが、下巻からはなんだか応援している自分がいて、不思議と世界に引き込まれていく作品だった。
下巻はつらい場面が続く。
やっと再開できたねラブラブラブ、とはならないところが現実を突きつけられた感じがしてよかった。
かなり後半は営みの描写が描かれていて、でもいやらしいというより、お互いの想いを確かめ合うこれ以上のない会話のようで、「人」と「人」が愛し合うということは、その事実だけが大切で、その他は不要なもののように思えた。
「人」が「人」を愛することはとても素晴らしい奇跡だと改めて思った。
Posted by ブクログ
社会の様々な障壁を乗り越えられずとも、二人の中で納得できる結末を迎えられて安心した。最後まで描写が美しく読み終わったあとの余韻が長く続く作品。
Posted by ブクログ
少し苦手だと思いつつ読んだ上巻。下巻はどうかと思ったが思いのほか、面白かった。
最後の解説を読み、気が付いたことがある。この作品は、当初同性愛の物語ではないと称賛されたという。なるほど、何度も感じていたこれは同性愛の話か?という感想を世間には称賛されていたのかと。そう考えると、私は「同性愛の物語」に何かを期待していたのかもしれない。
この作品は、生のみになれない読者にこそ、それを突きつけている。という最後の解説の言葉に納得。
綿矢りさは生のみ生のままを描いていた。これは女性達の生のみ生のままの物語。
私は、同性愛の話に勝手な想像をしていたのだなぁと感じた。
Posted by ブクログ
これまでのアイデンティティを打ち破るほど心震え特別な愛を感じる相手との出会い。異性/同性を超えた唯一無二の存在との関係性が描かれる。しかしその賞賛や感動はそもそも自らの偏見ゆえではないか、と釘を刺してくださる水上文さんの解説がまた鋭い気付きに。
Posted by ブクログ
1時間ぐらいで読んだ。けっこう介護、ケアの部分がフォーカスされていたのが意外だったけども、最も現実的な話題でもあるよなぁとも思った。逢衣の心象風景なのか詩的な文章が紡がれた段落が挟まったりして、上巻と比べてだいぶ印象が変わった気がする。性描写も丁寧、というかシチュエーションにあまり「できすぎ感」がなくて良い。適度にエロかった。
全体的に下巻の方が地に足ついた印象。実際、親とか友達とか同僚とか元恋人の反応とかそのテンションはこんな感じなんだろうかなあと想像できるくらい自然だった。上巻冒頭での彩夏→逢衣のアタックが、下巻では矢印の向きが反対になった関係(直接のセリフ引用もあった)になっていたのも、会えないブランクが生んだ変化をひしひしと感じさせ、逢衣に近い目線を持つ三人称語りに乗っかった私は、七、八年の時の流れや変化を感慨深く思ったりしながらページを繰った。
Posted by ブクログ
上巻の(官能小説のような)俗っぽさが抜けて、恋愛文学作品としてとても楽しめました。
逢衣と彩夏のもつそれぞれの自我(愛)はなかなか相寄らない振り子のように、でもときにリズムを合わせて仲良く時を刻むように、、
2人の織りなす独特のリズム感がそのまま物語の抑揚として胸を躍らせてきました。
対外的にも内面的にも、苦しみながら、真実の愛を築き上げていく姿が美しくて微笑ましくて、
最後どういう結末なのかなぁとハラハラしながらも内心は安心感もあったり。
心が洗われる作品でした。
Posted by ブクログ
わたしにとって綿矢りさは合う合わないが極端に分かれる作家なのだけどこれは合わない方の綿矢りさだった。
物語の展開はシンプルというか何かのテンプレートか?と思うくらいにお決まりのものばかりで、まあ、あるよねこういう物語…という感想。劇的な恋の落ち方、彼氏との別れと反発、同居、見え見えな感じで入ってくる邪魔、そこからの別れ、からの復縁、などなど…
ただ、逢衣のモノローグはとても鮮やかで、綿矢りさの力はここに表れているのだなと感じた。抑えめながらも情緒的で情熱的。すばらしいと思う。
そして彩夏が逢衣の存在を周囲に明かさないと選ぶこと、逢衣の家族の反応など、読者に夢を見させない展開も綿矢りさの意図するところなのだろうなと思うと同時に切なくもあるのだった。
物語はハッピーエンドで終わるけど、この物語がいつか時代遅れの古臭いものになってくれればいいなと思う。
Posted by ブクログ
一昔前に比べたら、多様性が叫ばれるようになって、ずいぶん生きやすい時代にはなったけれど、
好きになった相手が同じ性別だから、家族になることを諦めざるを得ない状況、なんとかならないか。
場合によっては未だに同調圧力が凄まじいことも多く、マイノリティは蔑ろにされがち。
ただ、心の性を偽るのはいかがなものかと思う。
心の性がどうであれ、性別でトイレや更衣室の使い分けることには特に何の思い入れもないし、それをありがたく享受しているわけでもない。それらに対して強い拘りを持っている時点で…とは思う。
いくら心の性が女性だからって、男の外見をした人が入ってくるのはこわいし、同性ならそれがわかるはずなんだけどなあ…
自分がマイノリティだと公言するのは、まだ少し憚られるような気がする。
いろんな人が胸を張って、それぞれの人生を生きられる時代が来ることをただただ願うばかり。