あらすじ
今まで裸でいても、私は全然裸じゃなかった。常識も世間体も意識から鮮やかに取り払い、一糸纏わぬ姿で抱き合えば、こんなにも身体が軽い――。互いに男の恋人がいるのに、止めようもなく惹かれあう逢衣と彩夏。女性同士、心と身体のおもむくままに求め合い、二人は一緒に暮らし始めた。芸能活動をしていた彩夏の人気に火が付き、仕事も恋も順調に回り始めた矢先、思わぬ試練が彼女たちを襲う。切ない決断を迫られ、二人が選んだ道は? 女性同士のひたむきで情熱的な恋を描いた、綿矢りさの衝撃作!
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Posted by ブクログ
▼メモ
・逢衣(あい)、彩香(さいか)
・私は完璧じゃない。だから他人にいくら笑われてもしょうがない。でも自分だけは自分を笑っちゃいけない。私の頑張りを一番近くで見ているのは私だから。
・どんな退屈な毎日の連続でも、同じ場所には留まってはいられない。絶えず時間を移動し肉体を衰えさせて確実に死に近づいていく。骨や肺や塵になる、それまでの短いひととき、なんで自分を、もしくは誰かを、むげに攻撃する必要があるだろうか。同じ時代を生きているだけでも奇跡のような巡り合わせの周りの人たちを。
Posted by ブクログ
哀しいエンドを想像していたけれど、この上なくHAPPYエンドでした。
プロポーズってこんなに嬉しいものなのだな、添い遂げてほしいなと心から思います。
この話を読んで時間も立つけど、胸の中にすぐには消えない柔らかな温かさを刻んでくれました。
素敵なストーリーでした。
Posted by ブクログ
一気に読んでしまった。とても良かった。
どうしようもないくらい好きになった人が同性だったら。彩夏のような芸能人はまた違った苦労が多いのかもしれないが、逢衣が直面した家族や職場へのカミングアウトの問題はリアルだった。最後の方で逢衣の両親が彩夏のことを認められないながらも、逢衣を愛する気持ちは変わらず、受け入れようと努力している描写は涙ぐましかった。
とにかく2人が一緒に生きていく道を選べて良かった。
Posted by ブクログ
p131
なんかさ、上手く言えないけど、"その身体が何をして来たか"が分かるのってすごいセクシーじゃない?
p132
彼女の話で思い出したのは、私たちが離ればなれになる前に、彼女が自分に傷痕を、一生消えない傷をつけてほしいと懇願したことだった。
p252
なんでもいいから自分たちの愛の証を刻みつけて、見えないものから見えるものへ変化させ、そんな儚いやり方で永遠を見つけていこうと必死なのだ。
p253
私たちを見守る風が、空が、海が、永遠の証人となった。
Posted by ブクログ
社会の様々な障壁を乗り越えられずとも、二人の中で納得できる結末を迎えられて安心した。最後まで描写が美しく読み終わったあとの余韻が長く続く作品。
Posted by ブクログ
わたしにとって綿矢りさは合う合わないが極端に分かれる作家なのだけどこれは合わない方の綿矢りさだった。
物語の展開はシンプルというか何かのテンプレートか?と思うくらいにお決まりのものばかりで、まあ、あるよねこういう物語…という感想。劇的な恋の落ち方、彼氏との別れと反発、同居、見え見えな感じで入ってくる邪魔、そこからの別れ、からの復縁、などなど…
ただ、逢衣のモノローグはとても鮮やかで、綿矢りさの力はここに表れているのだなと感じた。抑えめながらも情緒的で情熱的。すばらしいと思う。
そして彩夏が逢衣の存在を周囲に明かさないと選ぶこと、逢衣の家族の反応など、読者に夢を見させない展開も綿矢りさの意図するところなのだろうなと思うと同時に切なくもあるのだった。
物語はハッピーエンドで終わるけど、この物語がいつか時代遅れの古臭いものになってくれればいいなと思う。