綿矢りさのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ホント言葉のチョイスが上手いというか、表現力が凄いと感じる。柔らかくも的確で巧みな比喩表現が琴線に触れて、心地よく入り込める世界が提供されてクセになる感じ。
よくまぁこんなうまい言い回しが出来るもんだと冒頭から感じてしまう。「京都の空はどうも柔らかい。頭上に広がる淡い水色に、綿菓子をちぎった雲の一片がふわふわと浮いている。鴨川から眺める空は清々しくも甘い気配に満ちている。春から初夏にかけての何か始まりそうな予感が、空の色にも溶け込んでいる感じ。(p.5)」「意識を手放せないまま、すうっと夜が明け、カーテンを開けるとかさかさの心に朝焼けが差す。薄い光は傷に塗る消毒液みたいに少し心にしみて涙がにじんだが、純粋に朝が来たのがうれしかった。(p.240)」とか。
このところ、セクシャル•マイノリティだったり、虐待だったり、生きづらさが描かれる物語が多い中で、本作はその様なテーマには触れず、これまでの王道というか、普通とういか、マジョリティな女性目線での京都に暮らす3姉妹家族の物語で、実に愛おしく、懐かしさも感じながら読んだ。
京都出身作者ならでは、と感じる表現も。
•なんて小さな都だろう。まるで川に浮いていたのを手のひらでそっと掬いあげたかのような、低い山々に囲まれた私の京。(p.162)
-
Posted by ブクログ
ネタバレ令和の推し活文化がすっかり浸透した現代に読んだわけだが、当時のオタクってこんなに肩身狭かったのかぁと思いながら読んでいた。
とにかく人と群れていないとこちらが変わってる人扱い。そこは現代も当時も変わらないところかもしれない。多少受け入れられるようにはなったが…
主人公のハツちゃん、孤独こそ感じるが、レベルの合わないクラスメートに合わせるよりも一人でいることを選べるしっかりした芯のある子という印象を受けた。
にな川に対して感じるそれは今でいうところの、キュートアグレッシブなのだろう。
フェチが開花するお話なのかと思いながら読んだが、見当違いでした。
-
Posted by ブクログ
隣にいるのに分かっているようで何も分かっていなくて、近くにいるのに分かろうとし合えない絶妙な関係性。わかる、わかりすぎるこの痛み、、
弦が感じている一緒に過ごす時間が長いだけでは溶け合わないこだわりや価値観も、奈世が漠然と感じているこんなにも長くいるのに結婚することの覚悟すら固められないのねという大きな失望感も。奈世の両親の感じも痛いほど身に覚えがあるからこそ、なんだかこの小説は刺さりすぎました、、
弦と奈世、果たして本当に結婚することはできるのでしょうか?わたしは、お父さんが言った通りこのままでは上手くいかないだろうな、って思ったな、、 -
Posted by ブクログ
我が家の方針は同棲反対だった。
母曰く、同棲は女に妻の真似事をさせておきながら男の決心を鈍らせるものだそうだ。「同棲するくらいなら結婚しろ」と口酸っぱく言っていた。
きっと母は同棲に対して苦い経験があるのだろう。
でも、同棲は相手が自分にとって必要なのかどうか、その先の将来を考える上で重要な期間だと思う。きっと相手は母を選ばなかったのだ。
「煮え切らない男と煮え切った女」という表現がぴったりな2人。奈世(「なせ」じゃないんかい)のねっとりした、ややテンパった愛情、弦のやや神経質な面倒くさい男感がリアル。
私も将来結婚するからと努力(転職活動)もせず、後先考えず仕事も辞めたので、奈世の事をとやかく言えない…。
弦視点での話で奈世と暮らしていた日々を「あのささやかな努力と忍耐の積み重ねの毎日」と表現していたのを見て「あぁ、このカップルはダメだな」と思った。
多分この先もお互いを押し付けあって上手くいかないんだろうな。奈世は都合のいい時だけ両親を頼るんだろうな。いや、そうであってほしいと思う。
どうも読んでいて応援したくなる2人ではないのだ。 -
Posted by ブクログ
綿谷りさの作品は必ず後味がある。想定通りのストーリーにならない。人間の醜い部分がどこかあって、後半に目掛けて晒し出される。思春期特有の頭と行動の乖離にずっとついていけてない愛と、育つ中での環境で一足早く大人に近づいてる2人。
自己肯定感まっくすでと自己中心的な行動を続ける愛と、自分のことには興味がない彼女。愛が変だと思っていた前半、この年齢でこの考え方をする彼女に対して普通ではないと思う。教室にいる地味な男の子を好きになる青春恋愛小説かと思ったが、突然脱線してみるみる堕落していく少女に見入ってしまった。この後味の悪さが綿谷りさを表しているのかと、どんな思考回路してんねんです。