綿矢りさのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「いなか、の、すとーかー」と「ウォーク・イン・クローゼット」
どちらも主人公が一つの事件をきっかけに自分の生き方を見直す物語
しかし、それ以外にもう一つの要素が必要だ
「いなか、の、すとーかー」は仕事
「ウォーク・イン・クローゼット」は衣服
最初はあまり共感できないな、と思っていた主人公がラストシーンではすっかり見違えた姿を見せてくれます
時には滅茶苦茶に重い雰囲気を持つこともある綿矢りさ作品ですが、本書はコメディタッチなところもあり非常に読みやすいです
(私はその滅茶苦茶に重い雰囲気が著者の一番の魅力だと思っていますが)
ホラー、ミステリ、冒険活劇など様々な要素が花を添えているのも本書の魅力 -
Posted by ブクログ
こな描写は凄いなぁ、と感じ入る場面が多々あった。
なかなか言語化出来ない感覚というか、感性というか、人の感情や性格的な側面、関係性などを、絶妙な比喩を用いた、うーんなるほど、まさしく、と違和感なく受入れる事の出来る描写が心地良い。
例えば、心情とは全く異る自分の作られた笑顔のことを「ちょうどいま穿いているソックスの刺繍。表側の真白い生地には、四葉のクローバーの刺繍が施されているが、裏返せば緑色の糸がなんの形も成さず、めちゃくちゃに行き交い、ひきつれているだけ。」とか。
たとえ君をめぐる愛と美雪の、3人の恋と嫉妬の青春物語は、其々の内面がぶつかり合い183pの小編ながら読み応えがあった。 -
Posted by ブクログ
同棲中の恋人がいて結婚をしたがっている女である姉から、同棲中の恋人がいて結婚をしたがっている女の私に送られた本。
主人公のねっとりした視線やポエミーなところがユーモラスというよりも怖い。
主人公の彼氏の潔癖さや冷淡な部分が誇張しすぎているように見えてリアル。つまり怖い。
この本はかなり怖い本だった。
20代後半の主人公は子どもが欲しいかどうか、という点には触れていない。それよりも「同棲したし、次のステップである結婚をしたい」というぼんやりとした理由から結婚を迫る。彼氏の方は「そんなぼんやりした感じで始まって大丈夫なわけがない」と考える。
そもそも結婚ってなんでするんだろう。
「好き同士で、ずっと一緒にいたいから」という理由だけでは結婚はできないということに改めて気付かされる。
むしろ「2人がずっと一緒にいるために」結婚をするんじゃないかと思う。離れたくても離れられないように。これはロマンチックな意味じゃない。相手がいないと困る自分になる、自分がいないと相手が困るようになる、そんな呪縛の掛け合いだ。
こんなおどろおどろしく書いてしまったが、それでも人は結婚をする。これを読んでも私自身も結婚をしたいという気持ちは変わらない。なぜか。
ひとりで生きていくのも楽しいのだろう。だが1度くらいはつらくて苦しくて幸せな「結婚」というひどい目にあってみたい。究極にしがみつきたくなるような他者がいないと成り立たない、この呪縛にかかりたいのだ。この本を読んでそう思った。 -
Posted by ブクログ
読み終わって、胸の奥がじんじんするような感覚が残った。
とてもリアルで、ヒリヒリする物語だった。
奈世の弦への愛は、「好き」というよりも依存に近くて、弦がすべてになってしまっている感じが少し怖かったところもあった。
一方で弦は、関係を客観的に見ていて、考え方に共感できる部分もあった。
印象に残った言葉
「あともう少しがんばれば、幸せになれるかもしれない。でも、愛や結婚は、あともう少し、と努力するものなのでしょうか?」
読みながらずっと頭から離れなかった。
努力が必要な関係と、努力し続けないと保てない関係は、同じなのだろうか。
「お互いがお互いを好きだという点が奇妙にも一致しているのだから、その最初で最後の一致点だけは大切に守っていきたいものです」
この一文を読んで、切なさとあたたかさが同時に押し寄せてきた。価値観も、生活も、未来の見え方もズレているかもしれない。
それでも「お互いが好き」という一点だけが、奇跡みたいに重なっている。
簡単に手放していいものじゃないし、雑に扱ってはいけない気持ちなんだと思った。
恋愛や結婚では「合う・合わない」がよく語られるけれど、好きという気持ちが同時に、同じ方向を向いて存在していること自体、本当はとても尊くて、儚いものなのかもしれない。
弦のお父さんの言葉も強く刺さった。
「ほんとに合っている2人ならもっと、自然に、とてもスムーズに結婚まで至るものなんだ。」
正論だと思う。でも同時に、少しだけ疑問も残った。合わない部分があっても、お互いに愛情があるなら、分かり合おうと努力したり、妥協点を探したり、どうにか折り合いをつけて一緒にいる道はないのだろうか、と。
何が正解かはわからない。
この物語は答えをくれないからこそ、こんなにもヒリヒリする。
自分の恋愛観や「一緒に生きる」ということについて深く考えさせられる一冊だった。