【感想・ネタバレ】意識のリボンのレビュー

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Posted by ブクログ

お洒落な表紙、「意識のリボン」なんてファンシーなタイトルだが、その中身はひどく人間らしい感情に溢れている。岩盤浴で見かけた見知らぬ女性二人組の間の歪なパワーバランスを外野から密かに憂慮してみたり、三十歳を迎えた女性が抱く、日に日に老い行く自らへの焦りを何気ない日常と混ぜ合わせながらユニークに表現してみたり。
綿矢さんの小説に出てくる登場人物はとにかく濃ゆい。特にそのキャラクターを表現するための容姿、性格、言動、それらの描写の細かさには毎回舌を巻くものがある。この広い引き出しは一体どこから来るのか。常日頃から人間観察を欠かさずしているのかな。より多くの人間のことを見て、知っていなければここまでは書けないような気がするのだ。

また綿矢さんは度々太宰治に触れられることがあるが、超短編「ベッドの上の手紙」の主人公である小説家の男性の卑屈さは、川端康成に宛てて書かれた太宰治の愛憎入り混じった手紙を彷彿とさせられた。「刺す。そうも思った」というかなりストレートなフレーズで有名なあの手紙である。
それから、猟奇的事件のデマに踊らされる人々を描いた「声のない誰か」は若干ホラーテイストを含む話で、結末を読むと「果たしてそれは本当にデマだったのか?」と薄ら寒く感じた。

個人的には「履歴のない妹」で登場する、過去に撮影された美しくも不気味なヌード写真を躊躇なく当人である妹が破り捨てるシーンが好きだ。「私は本物の、生の写真なんていらない。嘘っぱちでもいいから、笑顔でピースしている写真さえあればいい。人生で残しておく思い出は、安心でたいくつな方がいい」。
この本を読んだ後、改めて自分のスマホのカメラロールを見返してみた。どの写真も笑顔だった。確かにそれは生の姿でなければ感情でもない、作り物を写しとったものかもしれない。それでもこのカメラロールに並んだ写真を見ると、わたしは確かに「安心」していた。写真とは過去の記録、思い出を残す以外にも、「安心」を作り出すための媒体なのかもしれない。

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2024年01月07日

Posted by ブクログ

綿谷りささんの小説を初めて読んだ。
率直にどれも面白い。そして女性を描くのが上手い。
1番最初の話から心を掴まれた。見知らぬ展開としての面白さもあるし、地で面白いというのもある。
1番好きだったのは表題作である「意識のリボン」こんな考え方をしたことはなかったがこんな感じだと良いなと思うし、心にスッと入ってくる感じ。

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2023年10月19日

Posted by ブクログ

2014〜2017年、4年の間に発表された9つの短篇をまとめた1冊。ずっと先、綿矢りさという作家を語る時、この短篇が重要なターニングポイントだったと語られるような気がしている。

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2023年08月01日

Posted by ブクログ


なんとなく手に取る機会がなかった
はじめての綿矢さん作品。

リボンモチーフのものが好きなわたしは
ただ単純にタイトルに惹かれ
装丁のイラストのタッチも好みだったから
パッと目についたのがきっかけ。


独身女性、母、妻、娘…女性が主人公の短編集。
「こたつのUFO」「怒りの漂白剤」そして
タイトルにもなっている「意識のリボン」が
好きだった。


ここしばらくの自分と重なるものが多すぎて
ちょっと苦笑いしてしまう場面も。

怒りは、ちょっと厄介だ。
そのまま放置していればどんどん膨れ上がり
いつか爆発、暴走しかねない。
かといって、ないものにはできない。
そこのところのさじ加減を
見つめるきっかけになったし
いまの自分の受け止め方や対処の仕方を更新。


“意識”については、まだまだ大人になりきれていない年頃からぼんやりと考えてた。
心ってなに?どこにあるの?
意識って?意識と無意識のさかいは?

この本のなかに、その答えのようなものがあった。

父が逝ってしまったときから、“この世”も“あの世”も自分とぜんぶが一体化したように思う。
安心したくて、そう思いたいのかもしれない。
でも、そこから見守られながら
わたしの意識とわたしは結ばれているんだと思うと
安心感で包まれる。


綺麗事ではなく
人間臭い負の感情と呼ばれるであろう
怒りや情けなさ…
そういう部分に蓋をすることなく
まっすぐでリアルな感情むき出しの描写に
とても共感したし、好感が持てた。
なんだかホッとできた作品だったな。

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2022年04月03日

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不思議で、どこか怖さのある短編集。
昔読んだのを読み返してるけど、全然覚えていなかった。

●履歴のない女
娘と自分が、肺炎をきっかけに剥がれる。
病気になったのが自分じゃなくてよかった、と思ったと。
妻や母の役割が剥がれて、自分になるきっかけがわたしにも訪れるのかも。不思議な読後感。

●履歴のない妹
妙に魅力的な、裸の写真にまつわるお話。
本物の、生の、写真なんて私にはいらない。笑顔でピースしてる写真さえあれば良い。って言い切る潔さ、自分にはまだ無い。

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2022年03月17日

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みなさんおっしゃってる通り、エッセイなのか小説なのか分からない不思議な短編ばかりだった!
「こたつのUFO」にあったように、書いたものからその筆者の人柄を判断してしまうのは多かれ少なかれあるなあ、と思った
何ならその人がどういう文章を読むかでも判断してしまうこともあるし
相手のことを知りたいと思ったときに、相手がどういうものを作るか・好むかから知ろうとするのってよくないのかな

とか言いつつ「怒りの漂白剤」を読んで、そうか綿矢さんの文章から感じるエネルギーって根底には怒りがあるのかなって納得してしまった

「意識のリボン」は、ちょうど同じタイミングで読んでた
全然雰囲気の違うような2作だけど、フランクルの「それでも人生にイエスと言う」と同じようなメッセージを感じたところがあった(愛に関するところとか、その人なりの実りある人生だったっていう記述とか、意味/超意味みたいなところとか)

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2021年11月17日

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超久しぶりの綿矢作品は短編集。エッセイなのかと思わせる小説、独特の捻くれた視線が鮮やかな小説、どれも面白かった。

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2021年09月30日

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エッセイ集のような短編小説集。
「こたつのUFO」の突拍子もなさに笑いながら、姉妹の話に心当たりがあってすこし気分を害しながら(それだけ巧みだということ)。だけど「意識のリボン」表題作で、それまでのちまちまとした感情を突き抜けてしまった。
ずっと読んできた綿谷りさによる、魂と肉体とひかりの話を読めるなんて最高としかいえない…この1篇があるから手放せない1作になりました。

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2021年04月06日

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綿谷りさの表現力には脱帽。この話は小説というより、 名前の知らない女性たちの日記を読んでいるかのよう。だから、面白いではなく、共感できるといった感想が沸く。 頭の中で渦巻くもやもやに形を与えてくれた。
特に好きなのは、怒りの漂白剤。

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2021年03月29日

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エッセイのような“岩盤浴にて”や、異色の“こたつのUFO”、あったらいいなの“怒りの漂白剤”あたりが好みかな。軽妙なタッチも重厚な哲学的思考も、どっちもいける。久々に綿矢ワールドを堪能しました。あぁ、この鬱屈したものを吐き出したい!

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2020年11月22日

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全8編からなる短編小説。最初の3編を読んでこれは小説集なの? エッセイでは?とも思った。

綿谷りさは「日陰者から見た社会」みたいな視点がが本当に面白い。かなりの捻くれ者。陽キャを軽蔑と羨望の目で眺めてる陰キャみたいな。

言葉の扱い方もうまくて、たまに突拍子もない比喩を入れたりするんだけど、それがすごくストンとイメージできる。文章のリズムというか緩急があるから、どんどん読み進められるし、読んでいて心地いい。

ちなみに私は『こたつのUFO』が好き。30歳独身の女性が部屋の中で悶々と自分の人生を振り返ったり、宇宙人に連れて行かれる夢を見たりする話。「20代の宿題、30代に持ち越した…」という一文が今の自分と重なる部分があり、とても苦しくなった。あいたたた…

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2020年08月09日

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最初から最後までハマらない。難しい話だったよ、キーワードの言葉も何を伝えるのかも全然掴めないで終わりました、短編なのに悔しいね、唯一の読み切った事だけは褒めてもいいかな自分。

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2024年02月16日

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エッセイっぽい小説。

割とサクサク読めたけどノンフィクションっぽい表現が多々あってイマイチ物語に入りこめず。
綿矢りささんの女性描写は本当に美しくて好きです。

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2023年12月19日

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短編小説の集まりで読みやすかったが、話の内容がイマイチ理解しにくかった。
各話の最後にあとがきを読めば、内容の理解が深まると感じる。

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2023年11月28日

Posted by ブクログ

一見まとまりのない短編集に見えるが、収録されている作品にはさまざまな女性が語り手として登場する。独身女性、女性作家、元カノ、妻、姉、妹、母、娘。人生において私たちの呼び名は変わるけど、「私は私」ということを忘れずに生きていこうね、というようなメッセージを感じました。

特に好きだったのは最初に収められている「岩盤浴にて」。岩盤浴でリラックス&デトックスしようと思って来た語り手が、周りの人の様子や会話に気を取られて、逆にいろんなことをグルグル考えちゃう感じ、わかるなあ〜って思いながら読みました。

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2023年11月23日

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読みやすかったけど、エッセイなのか小説なのか混沌して作中に入り込めなかった。
(綿矢りさに高校生の娘いたっけ?あたりで小説だと気付いた)
でも「意識のリボン」と「履歴の無い妹」は面白いというか考えさせられることが多く読み応えあった。
特にこの一文はとても好き。

“本物の”“生の”写真なんて、私はいらない。嘘っぱちでもいいから、笑顔でピースしている写真さえあればいい。人生で残しておく思い出は、安心で、たいくつな方がいい。

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2023年07月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

エッセイかと思うほど、リアルで感情移入してしまう。
短編集ではあるが、女性の不安に思う感情に寄り添ってくれる優しい小説だった。
最後の短編「意識のリボン」では、生死を彷徨う事故により心の余裕を得た主人公がいた。私もせかせかせず、広い心を持って人に接したい。のにそれができていない‥

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2022年06月24日

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女性の描写が本当に美しいな…
内容は正直ピンとこなかったけど、多分妻になったり母になった時に読んだら分かるのかな

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2021年06月13日

Posted by ブクログ

綿矢りさっておっぱい好きなのかなぁ…

エッセイなのか小説なのか不思議になる短編集。
これ読んでると作家の考えが小説に出てくるキャラクターや設定に反映されているんだなってのがわかる気がした

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2021年02月27日

Posted by ブクログ

8篇の短編のうち、7篇は女性の語りですすむ。
「岩盤浴にて」は、見知らぬ中年女性の会話を聞きながら、色々思う話である。
外は秋の風だというのに、なんとも湿度が高く、汗が吹き出そうな、そんな気持ちにさせた。
まあ…岩盤浴は行ったことないし、汗もあまりかかない性質なので想像力とはげにおそろしげなり、なのだが。

「怒りの漂白剤」は、短気な私はよくわかる。
クーパー靭帯に例えられた時は面食らったが、わかる気がする。
舌打ちされると腹立つよね、わかるわかる。
怒りの沸点、というか、私はチャッカマン(これ、登録商標だっけか、あとで情報プラットフォームで調べてみよう)なみに火が簡単につく。
だからおっさんの「女が退くのは当たり前だろ、チッ」に「なんだ、コラ」というような態度を取ったことも若い頃にはある。
しかし喧嘩は買ったらだめだ。
そう言うわけだからあまり愛、平等、平和、みたいなことを偉そうに言えないのだ。
良い人じゃないから正しくいきたいとおもうのだ。
さてなんの話だっけ。

「声の無い誰か」は子供を持つ人には恐怖でしかない。
なんだこの終わり方。
ホラーじゃないか。
デマの恐怖と現実の恐怖。
子供が巻き込まれる事件は実際にある。
それから守ろうとしてデマが出来上がる。
デマもまた違う恐怖を引き起こす。
言葉にならない教訓のようなもの。
ざわつくこころは、私に何を伝えようとしているのだろう?

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2020年10月17日

Posted by ブクログ

シスヘテロの日本社会に馴染んで暮らす女たちの短編集。女性のこの社会で生きる上での悩みやもやもや、コンプレックスなどを描いていて、響く人には響くんだろうと思ったけれど、でも私はシスでもヘテロでもないからあまり共感できるところはなかった。

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2020年05月24日

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