綿矢りさのレビュー一覧
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『なにここ!クローゼットっていうより衣装部屋じゃない』
『海外ドラマで見て憧れてたんだ。ウォーク・イン・クローゼットがあるのを第一条件にして物件を選んだの』
新しい部屋に引っ越す時、あなたなら何を一番重視するでしょうか?駅までの距離、日当たり、それとも間取りでしょうか?”人が中に入って物を出し入れできる広さのある収納スペース”、それが「ウォーク・イン・クローゼット」。『私のクローゼットが丸ごとすっぽり入るくらい広い』というその空間。部屋を選ぶ時にそれを何よりも重視した主人公の友人・だりあ。一方で『輸入雑貨店で買った』、『アンティークで一九三〇年代の品』という『古めかしく重厚感がある』クローゼ -
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全8編からなる短編小説。最初の3編を読んでこれは小説集なの? エッセイでは?とも思った。
綿谷りさは「日陰者から見た社会」みたいな視点がが本当に面白い。かなりの捻くれ者。陽キャを軽蔑と羨望の目で眺めてる陰キャみたいな。
言葉の扱い方もうまくて、たまに突拍子もない比喩を入れたりするんだけど、それがすごくストンとイメージできる。文章のリズムというか緩急があるから、どんどん読み進められるし、読んでいて心地いい。
ちなみに私は『こたつのUFO』が好き。30歳独身の女性が部屋の中で悶々と自分の人生を振り返ったり、宇宙人に連れて行かれる夢を見たりする話。「20代の宿題、30代に持ち越した…」という一 -
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少し前の新聞に中村文則の「掏摸」が紹介されていた。中村さんは今や海外でも名を知られた作家だが、そのきっかけになったのが大江健三郎賞を受賞した本作が、賞の特典として翻訳されたからだ、という内容だった。
大江健三郎賞は聞いたことがあったが、選考委員は大江健三郎さんひとりで、賞金の代わりに海外に翻訳されて紹介される、賞は八年続いて既に終了しているということも知らなかった。
で、その賞の始めから終わりまでの受賞作の紹介とそれぞれの著者との対談を収録されているのが本作。
なかなか手ごわい本だったがおもしろかった。
受賞作のどれも読んだことが無いが、長島有の本は読んでみたいと思った。対談も一番楽しかった。 -
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一つ目のの作品、「いなか、の、すとーか」はミステリー要素が入っており、普段の綿矢りささんとはまた違ったテイストで面白かった。
そして、なんといっても読みやすい!!
綿矢りささんの細かい情景描写、心情の描写は状況理解を助けてくれ、スイスイ読めた。それしても細かい。二作品目、「ウォーク・イン・クローゼット」の服の種類の事細かさ。妥協を感じない。そして、綿矢りさの服への並々ならぬ愛と比類なき博識っぷりを感じた。
後書きの
「服は口ほどにモノをいう」
という言葉は自分にだいぶ刺さった。結局、だらしない性格っていうのはにじみ出るんだな、っていうこと。しゃんとした服装をして、髪型をして、綺麗な靴を履 -
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表紙が可愛い。「いなか、の、すとーかー」、ストーカーみたいか過激な被害にあった事はないが自分が何気なく人にした行為がきっかけで相手に過度な期待を持たせてしまって、その後苦労したって経験は多くの人があるのではないでしょうか。人はどこで執着のスイッチが入るか分からないから怖い。自分以外の人気持ちなんてコントロールできないし、執着する側の人はどうしたって満たしてあげられない飢えのような気持ちを抱えてしまっているのでは。その気持ちが上手く書かれてて相変わらず綿矢さんの小説は引き込まれる。「ウォークインクローゼット」のだりあ側視点での話も読んでみたい。
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ネタバレ中盤、おい!こんな展開かよ!と
主人公の破天荒な行動にかき乱されたけれど、
最後まで読んでよかった。
最後まで読んで、まるごと一冊で完結する立派な小説でした。
「高校生の青春と恋愛を瑞々しく描いた傑作」と
裏表紙に書かれていて中盤までではウソだろと思いましたがね。
どろどろしてきます。
主人公の「愛」みたいな女子はいるなあと思った。
破天荒さをちょっと差し引いた「愛」はいる。
「なんでも自分の思う通りにやってきて、
自分の欲望のためなら、他人の気持ちなんか、一切無視する奴」
それが「愛」でありLOVEのどうしようもないところでもありますね。
「なぜすべて奪うまで気づけない。欲しがる気持ちに -
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ネタバレ「私、毎日みんなと同じ、こんな生活続けてていいのかなあ。みんなと同じ教室で同じ授業受けて、毎日。だってあたしには具体的な夢はないけど野望はあるわけ。きっと有名になるんだ。テレビに出たいわけじゃないけど。」
初っ端から痛々しさの漂う、受験を控えた高校生の女の子。クラスメイトに唆され登校拒否することに。ついでに全てを捨て(物理的に)、小学生の男の子とエロチャットのアルバイトを始める。
胸の膨らんだ身体に慣れて、生理ナプキンの交換にも手なれてきはするけど、17歳ってやっぱりまだ子どもだった。自分なら何にでもなれるんだっていう選民思想と、自分はこんなもんだっていう諦観がせめぎ合う。無理してはしゃ -
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表題作と「亜美ちゃんは美人」の2編を収録した文庫版です。
女流作家のえがく「女性の世界」の小説なので、
オトコからすればある意味、「秘密のベールの内」をのぞくような
読書体験になるのですが、
しかし、そういう「女性世界のおもしろさ、新奇さ」で売る作品ではなく、
その内容・中身に価値があるので、人間学を深めているような、
それも女性学を深めているような感覚を持ちながら楽しめました。
綿矢さんは、初期の『インストール』や、
以前読んだ『勝手にふるえてろ』にくらべると、
完全に目が据わっている印象をうける小説家になられたようだ。
もうこれでいくしかないのだ、と腹をくくったように読めました。
そし -
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『インストール』や『蹴りたい背中』に比べると、
だいぶ、社会のというか、俗世間の俗っけある成分に
作者は侵されたようにも感じました、それは良いとか悪いとかではなく、
歳を重ねたことなんだろうと思います。
生活してきた、その証としての俗っけでしょう。
表題作の「勝手にふるえてろ」はまずそう読んだんです。
主人公・ヨシカの、地味目で控えめながらも、
自律的に生きていて、その自らの滑稽さともつきあい、
女性ならではの細やかな計算もありながら、
物事をすぐさま先鋭的につきつめることなく、
時間とともに見えてきた骨の部分をやんわりと捉えて言葉にする感覚。
僕とこの主人公は歳も離れているし、性別も違う -
購入済み
むき出しの自意識
オサーンになってしまうとリアルに感じることは難しいけど、たしかにこういう自意識のかたまりみたいな時期もあったような。
思い出すとこそばゆい。
このストーリーに反発を覚える人の気持ちもわかる気がする。 -
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17歳のときに、漫画で読んだ。
当時はただ女子高生と小学生がチャットで金稼ぎをしている印象しかもたなかった。
大人になり、無性に読みたくなった。
なにか見える世界が変わるのではないか?
17歳という年は、ちょっと大人の世界に足を入れたくなるけど、少し怖い。
でも子ども扱いはされたくない、なんとも中途半端な齢である。
これから来るであろう大人の世界に足を入れるのは怖いけど、手で顔を覆って大人の世界を見ないふりをして、指と指との隙間から、こっそり知らない世界を見たくなる。
大人になって「私も昔はこんなだったなぁ…」と思いださせてくれる。
大人でもないけど大人に近い中途半端な齢で、大人と感じる