あらすじ
黒田みつ子、もうすぐ33歳。一人で生きていくことにも抵抗はなく、悩みは脳内の分身「A」に相談。でも、いつもと違う行動をして何かが決定的に変わってしまうのが怖いんだ……。同世代の気持ちを説得力をもって描く著者の、待望の文庫化。(解説:金原ひとみ)
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Posted by ブクログ
◾️record memo
一人で生き続けてゆくことになんの抵抗もない、と思っていた。一日の大半を過ごす勤め先にはたくさんの人間がいるし、否が応にも彼らとはコミュニケーションを取らなくてはいけないし、休日はときどきは一緒に遊ぶ友達もいるし、実家にもたまに帰る。また気に入ったスポットへ一人で出没するのが、私の趣味でもあり日課でもあるから、休日はいくらあっても足りないくらいだ。むしろ一人でいる時間を一日のうちでなかなか見つけられないので、帰宅後一人の時間が短くなるのがもったいなくて、ついつい夜ふかししてしまうほどだ。
男性も家庭も、もはや私には遠い存在になっている。女友達のなかには、二十代のうちに結婚しなければ生まれたときに妖精にかけてもらった魔法が解けて、カエルの姿に戻ってしまう、ぐらいに焦ってなんとか二十九歳で入籍して安堵のため息をもらした子もいる。結婚適齢期になれば実感も湧いてくるかなと思ったけど、しょせん他力本願で、身体の奥底から突きあがってくる欲望由来のエネルギーはいつまでたっても湧いてこなかった。
「夜にはっきり感じた孤独は忘れられません。孤独は、人生につきものです。誰かといても、癒やされるものではありません。はっきりと意識してはだめです。ふわふわと周りに漂っているときは、息をひそめて吸うのを避けるのです」
「自分が独りぼっちだって、気づいちゃいけないの?」
「気づくのはしょうがない、でもうまく逃げて。変に意識しない方がうまくやれます。普段意識せずにまとわりつかせるだけならいいですが、意識したとたん、どうやってこんな深い海で泳いでいたんだろうと息苦しくなって、なにもかも不自然な、ぎこちない動きになって溺れてしまいます」
「あなたのこと、信じてもいいの?」
「どうぞ、ご自由に。私は常に最善だと思う策をあなたに話しかけています。決してめんどくさがったり、なにかあなたをはめようとしたりして言葉を作ったりはしません。なぜなら私はあなた自身で、あなたが滅びれば私も無くなってしまうのですからね」
一方で、私の人生ぽくて、しっくりくるなぁとも思う。なじみのゆっくりしたペースで進む毎日のなか、長く引きのばした青春をいつまでもうっすら夢心地で楽しんでいたい。
片付いた自分の部屋でイライラせずに一日過ごせるってぜいたくだよなぁ、と気づいたのは国内の一人旅でホテルに泊まったときだ。一泊何千円や何万円の環境をお金を出して払うとき、家賃の存在も同時に思い出す。
「だからいままで独身なんでしょうな」
他人ごとのように答えながらも、私は結果をあまり悲観していなかった。
子どもかー、いたら楽しそうだけど別にいなくてもいいや。子どもがどうしても欲しい人には分かってもらえないが、意地でも誇張でもなく、等身大の正直な本音だ。そう言ってても後で欲しくなるんだって、と言われても、やっぱり実感がわかない。私にとって子どもは、"まだ欲しくない"ものではなく、"欲しいか欲しくないか聞かれれば、積極的に欲しいとは思わない"に分類されている。それが時間経過と共に変わるかは"いま生きていたいからって、いつか辛いことがあって死にたいと思うかもしれないじゃない"と言われているのと同じくらい、理屈は分かるが実感のわかないできごとだ。だんだん同類の女の人は見分けられるようになってきて、おそらくプッチは私の考えとわりかし似ているんだろう。
フンと鼻息を出すノゾミさんはたくましい。ノゾミさんはAがいなくても、正真正銘自分一人で、自分の世界を守ることができる人なんだろう。誰かをまるごと獲得しようともがくより、自分との接点だけを見つめて、大切にできる人なんだろう。
「じつはね、最近隠し撮りしてるの。ほらこれ、一人残業もせず、さっさと帰る瞬間のカーター。周りの非難の視線も気にせず、わきめもふらずに出口に向かう姿、かっこいいでしょ」
うれしそうにノゾミさんが見せてきた携帯の画面には、移動速度が速すぎたのか、残像の流線の姿でしか映ってないカーターが横切っていた。
入社したときこの会社は、わりと体育会系で、女性の先輩たちもビシバシ指導するぞという意気込みに満ちていた。彼女たちの指導は好みによって少し偏りがあり、ターゲットとして見定めた新人相手に、学生時代のいじめを思い出させる、すっぱい弾幕を張った。
彼女は私が入社した当時から私にはつめたく、私が彼女とその同僚のグループの前を通りかかると、「のんきを装ってる」と私に聞こえるぐらいの音量ではっきり言った。
たしかに私はのんきを装ってるけど、本当は自分でもあつかいに困るくらい、激しい人間なのだ。周囲の人たちが気づかずに見過ごしている状況に、感謝しなくてはならないほど、実はやっかいな性質である。
いじめの典型みたいに消しカス入りのお茶とか飲まされたけど、まあそれはそれ。これはこれ。
めざましい女性先輩たちは人生の展開が早くて、次々と辞めていき、残ったのはみそっかすの私やノゾミさんのような女の人たちだった。私たちは現場が発狂するくらい、同じミスを何回もくり返したり、辞表もののミスも一度や二度は披露してきたが、家に帰ってコンタクトレンズあるいは会社用の眼鏡を外して、泣いて寝たあとは、かならず翌朝出勤した。くり返してる間に、平気なことが増えてきて、ミスもなんとか寸前で避けられるようになり、ただ長く会社に居ただけながらも、後輩には新しい業務を教えるようになった。ミニお局はミニなりに、いばらないのが長所だ。数少ない後輩にも若干ばかにされてるくらいの、ちゃらんぽらんな湯温が、いまの私には心地よい。
辛い顔をしてないと頑張ってないと思われる日本社会は、息苦しい。
必要とされる喜びと利用される悲しみが混ざり合う「仕事」に、魂まで食われてしまいたくない。
ほんの一瞬の幸せじゃなく、小さくてもずっと感じていられる確かな幸せを探し求めてきたはずなのに、私はまだ見つけていない。心配ごとがいつかすべてなくなる日なんて来るのだろうか。どうして私は、いつでも不満なことがあるのだろう。課題がいつも視界を塞いでいる。ちょうど目の高さに掲げられた真正面のカードをにらみ続けている。
話しかけても、多田くんからはなんの反応もない。
恋人の小さな傷つきに敏感になるのも、なられるのも苦手だ。相手の不機嫌に気づけば、ひやっとして一分でも早く挽回したいのに、大体繕おうとすればするほど墓穴を掘り、逆に自分の気持ちの変化に敏感な相手に顔色をうかがわれると、当惑する。
男の人と付き合うのって、これだから嫌だ。さっきまで笑い合っていたのに。
無人の廊下を歩き製氷器コーナーにたどりついた。製氷器から落ちてくる氷でグラスを満たして、あとはもう帰るだけなのに足が動かなくなって、眩暈がしてきた。
「どうしたんですか」
遠くでAの声がする。
「部屋に帰りたくない。多田くんに会うのがこわい、また不穏な空気になったらどうしよう。一人で孤独に耐えている方がよっぽど楽だよ」
シャワールームでは出なかった涙が、いまさら溢れ出してくる。
「多田くんを愛しく思う気持ちはあるよ。でも距離の取り方が分からない」
さっきの小競り合いだけが原因ではなかった。いくら恋人同士とはいえ、私には予想外のお泊まりなどという、恋愛ドラマみたいな展開はきついのだ。ずっと静かな一人の部屋で眠ってきた私は、間違いなく今夜一睡もできない。それはいいとしても、ツインの空きの部屋が無かったからしょうがないけど、ダブルベッドで寝なければならない。多田くんはベッドで迫ろうかどうか今思いあぐねているだろうけれど、私はそれどころじゃない。身体がこわばって、きっと寝返り一つ打てそうにない。
独り言が異常に多いと気づいていても、とめどなく口からこぼれ落ちてゆくように、受け止め先もないまま"私"がこぼれ落ちてゆく。いままではなんとか形を保てていた"私"が、頭からチャックを開けられて、中身が外へ溢れ出てしまう。
だれでもいい、だれか私をくいとめて。応急措置の包帯でも、下手くそな漆喰の塗り固めでもいい、とにかく、早く、なんとかして。
「落ち込んでいた気分は良くなりましたか」
「うん、ずいぶん楽になった」
「一体なにがそんなにショックだったんですか。多田さんとの距離がぐっと縮まる良い機会じゃないですか。抱きついてきた彼に幻滅したんですか」
「ううん、多田くんは何も悪くなくて。自分が根本的に人を必要としていないことがショックだったの。人と一緒にいるのは楽しい。気の合う人だったり、好きな人ならなおさら。でも私にとっての自然体は、あくまで独りで行動しているときで、なのに孤独に心はゆっくり蝕まれていって。その矛盾が情けなくて」
A、もう聞いてないかもしれないけど、話すね。私から呼びかけるのは、これで最後にします。迷っているとき、いつも相談相手になってくれてありがとう。私は、私自身にさえすがりつかなければ困難を乗り越えられないほど弱い人間だけど、Aがいたおかげで何度も乗り越えられたよ。いつも励ましてくれて、つねに私の味方でいてくれてありがとう。いつも言ってほしい言葉をかけてくれてありがとう。これからは自分とは別の人間と、向き合って、体当たりで、ぶつかり合って生きていくよ。でももし頑張っても上手くいかなくて、また孤独でピンチに陥ったら、どうぞよろしく。頼りにしてるよ。
私はラッキーだって今気づいた、本物の孤独なんて私には永久に存在しないね、だって常にAがそばにいるから。Aは私なんだから。そう思うと、すごく強くなれるよ。返事は聞こえないが、頭の中でAが微笑んだような、脳のシワのうちの一本がゆるんだ感覚があった。
孤独を感じた時に
孤独感に押しつぶされそうな時に読み返したい小説でした。主人公の一言一言に終始共感してしまいました!すごくイメージしやすくて読みやすかったです。私も食品サンプルを作ってテレビの前に飾ろうと思いました笑
Posted by ブクログ
金原ひとみさんのあとがきを頷きながら読んだ。
いまふうの人たちの話だった。
薄い嫌悪感はあるけど、そんなにいやなものじゃなくて、でもやっぱり自分とは違う種類の人を見ている感じ。
みつ子は割とぽやーっとした性格のように思えたけれど意外にも行動力があってよかった。
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ好き〜自尊心×自意識過剰×孤独→生み出されたAという存在。この人自尊心が損なわれる恐れがある行動は別人格でしかできないのよね。自分が起こした行動や思考なのに、「Aはすごいね、わたしにはできない」みたいなこと言ってるの不気味でしかないけど、彼女はそうしないと自分を保っていられないんだ。。恥ずかしい行動もちゃんと傷つくことも全てAに任せて、自分は高みの見物してるつもりになっているのがこわ面白かった。でもAも自分とちゃんと自認している上でのことなので、それもなんだか可愛い。
歯医者とどうにかなれるかも、と考えるところとか、短いスカートでアピールする痛い女を描くところが綿谷さん意地悪ですき。
ラストの海のシーンがとても印象深かった。他者と深く関わるのはおひとり様でいるよりことよりよっぽど怖かっただろうな。みんな心に自分の世界があって、一人の時間が長いほどそこにいる時間が長いんだよね。彼氏ができて、自分と対話するだけの世界から泳いでいくっていう可能性と恐ろしさを併せ持った海なんだろうなー。
映画も観たけど、原作へのリスペクトを感じつつ、皐月とみつこさんの関係性が深掘りされてて良かった。
Posted by ブクログ
久々の綿矢りさ!!おもしろかった~~~!!!一気読みしてしまった。
みつ子ちゃん、33歳、独身。自分に近い部分が多かったので読んでいてすごく楽しかった。でも私に近いのはオタクっぽくてイケメンに甘いノゾミさんかな。相手の顔が好きであれば多少のこと(カーターはだいぶめんどくさいが)には目を瞑れるというか、相手のナルシズムに付き合うのが大好きな感じ、分かる。楽しいよね。
でも多田くんみたいに害の無い人と付き合って、女性として見てもらって、その代わり軽く拒否っただけで拗ねられてめんどくさい、みたいなのが一番リアルよな~~~。みんなすごいなぁと思うよ。私ほんとしんどいんだそういうの。婚活して、何回かデートして告白されて、断る理由もないしいい人だと思ったから好きではないけどとりあえず付き合うじゃん。でも結局あれしんどくならない?みんなしんどくないの?自分で「付き合う」って決断したはずなのに、どうして好きになっていかなきゃならないんだろうって落ち込むことになるんだよね。そんな努力するくらいなら一人でいるよって思っちゃうの。
でもこの小説の中でAがさ
「根本的に必要じゃなくても、生活にあるとうれしい存在はたくさんあるんです。というか、私たちはそういうものばかりに取り囲まれて生きていますよ。根本的に、なんて思いつめなくていい」
「相手の心に自分の居場所を作るのは楽しいですよ」
って言ってたじゃん。
それはすごく心に響いた。そうかもしれないなって思った。
でもまあ私はノゾミさんのような人生を望む…。やっぱり好きでもない人には優しくできないよ。というか、付き合った途端、あるいは好きになろうと努力して相手に優しくした途端、「手に入った」と勘違いして調子に乗ってくる人たちが本当に苦手だよ。
そしたらカーターみたいに最初から調子に乗ってる方がいい。そしたら落差にイラつかないし。顔も好みだし。
そんな風に色々考えたけど、とにかくとてもおもしろい小説だった!綿矢りさの文章大好き。
映画も好評みたいだから観てみたいな。
Posted by ブクログ
ひとりが好きな私には共感することが本当に多かった。飛行機に乗っている時の描写がリアルで、読みながら私も飛行機に乗った時のことを思い出してひやりとした。
ひとりでいることは心地がいいし、ストレスもないし、最高だけれど、人と関わることでしか得られないこともある。たくさんじゃなくても色んな人と関係を築いて、なにより1番の味方である私自身のことも大切にしながら生きていきたいと思った。
映画も気になるので観てみよう。
Posted by ブクログ
映画も良かったけど、主人公と「A」との会話は活字で読む方が面白い
主人公の鋭すぎる洞察力は、見ていて小気味いい反面、生きにくさに繋がっているのが切ない
最後は自分自身と「きちんと折り合いがつきそう」な予感を感じさせて、スッキリする読後感でした
考えすぎて空回りしちゃう人に刺さる一冊です
Posted by ブクログ
「ストレスは目に見えない煙草の煙みたいだ。たくさんの言いたいことを毎日文句も言わず噛み潰してきたしかめ面を、灰色の煙が覆っている。」
「真夜中の沈黙に身を浸すのは危険です。漆黒が身体の芯に染み込んで、取れなくなります。夜にはっきり感じた孤独は忘れられません。孤独は、人生につきものです。誰かと居ても、癒されるものではありません。ふわふわと周りに漂っている時は、息をひそめて吸うのを避けるのです。」
Posted by ブクログ
Aとの会話が良かった。
なんだかこっちまで落ち着けるから不思議だ。
ノゾミさんいいのか!?カーターで!!と思ったけどなんだかんだ上手くいったので一安心。
多田くんとミツコもうまく行く感じでよかったー。
久しぶりの綿矢さんの作品面白かった。
Posted by ブクログ
面白かった。
綿矢先生の作品は「勝手にふるえてろ」くらいしか読んだことがなく、しかもそれも数年前に読んだものだから綿矢先生がどんな文章を書くのかわからなかった。
主人公の特殊能力が周りにバレて精神病扱いされるのかなと思ったけど、全く違った。とても暖かい話だった。
ノゾミさんがすごく好きになった。自分が面食いなことを一切隠さず、カーターに尽くすところ。それにまんざらでもないカーター。この2人の関係が1番面白かった。このまま2人は結婚しそうだなと思った。私もノゾミさんみたいにポジティブに生きたい。
Aが最終的に消えることは予想通りだった。でも主人公が本当に困っている時は出てきてくれる。なんて都合のいい特殊能力なんだ。
あまり気にすることじゃないのかもしれないが、Aの構造がすごく気になる。主人公はAは自分だと知っているが、本当にそうなのか?だけど、自分じゃないと辻褄が合わないところもある。
Posted by ブクログ
主観の客観性
Aのような存在がいたら、私ももっとマシな人間だったろうか
わからないけど、Aの母体は結局自分だった。だから信じられるのは、自分なのだろう最後には。
自在に操れるのなら、頭の中に平安貴族とゴリオネエがいてほしい
Posted by ブクログ
p120
山羊のにおい
p230
根本的に必要じゃなくても、生活にあるとうれしい存在はたくさんあるんです。というか、私たちはそういうものばかりに取り囲まれて生きていますよ。根本的に、なんて思いつめなくていい。
勝手に揺れてろ、
Posted by ブクログ
私はこの小説で面白いと思ったことは自分の中に存在していたAが最後に消えてしまったことです。最後まで主人公の中にいていつものように支えています。という終わり方だと思っていたので想像の逆をいって面白かったです。このラストで主人公がAがいなくても生活できるとAが判断したからだと気づくことが出来ました。aとの掛け合いも面白かったです。
Posted by ブクログ
以前に読んだもので、詳しく覚えていないけれど、なにはともあれ整体?に行くシーンが細かく描写されてて、気に入ってそこだけ何度も読んだ覚えがある。
Posted by ブクログ
友達でいることに居心地がよく、それ以上発展させようとしない主人公みつ子。周りから見ればどう考えても好きに思えるのに、本人からしたらそこまで好きではないと思い込んで、さらに踏み込もうとしない恋愛。
じれったく思いながらも、みつこの気持ちについつい感情移入してしまう自分もいた。
傷つくのが怖くて本音が言えない最近の人たちを描いているようだと解説を読んで理解できた。
Posted by ブクログ
脳内会話をしてしまう。わかる。
でも、ここまで自分と切り分けた人物としての会話はないかな。
共感できる部分もあるけれど、私とは違うなと思う。
みつ子のこと、嫌いではないけれど特に好きにもなれない。
Aとの別れは良かったのか?
まぁ、自然な流れでそうなるよね、としか。
心に響くわけでも、魅力的なキャラクターがいるわけでもないけど、惹かれる。やっぱり綿矢りさ好きだな、と思う。
Posted by ブクログ
久々に本を読んだ・・・
本当に、最近全然本を読んでいなかったので、感性がおかしくなっていたかもしれないけどそれでも
「いい本だったな」
と思えた。
少し前だったら、みつ子のこともノゾミさんのことも理解できなかったかもしれないけど、今の私にはものすごく理解できたし共感できた。
私もカーターみたいな人が好きかもなぁ。
やはり私は、綿矢りさと人生を歩みたい。
映画を先に観ていたので、情景がちゃんと映像で脳内再生できたのも良かった。
Posted by ブクログ
こじらせ女子は、外と内をはっきり線引きしてるところがあるから、どうしても人に介入される状況を拒んでしまう。そんな人間の繊細な心理を描いた作品だと思った。現状のままでいていいはずがないことはわかってるんだけど、なかなか人間は変われない。何がきっかけで自分を出せるようになるのか人それぞれだなぁと感じた。
Posted by ブクログ
タイトルに惹かれて買った。もうひとりの自分、誰しも持つのか否かわからない。自分にもいるようで、結句、諦めてる、慰める、叱る、勇気づける、安心させる、安心する、そして決める。性別に差があるのか、今回は女性が主人公であることが作品となっている。私をくいとめて、くいとめられないのか自分なんたな
Posted by ブクログ
途中から、Aが実際に動いているような描き方になっていて「?」が浮かんでくる場面も多かった。
しかし、Aの存在は大きく、私にもいるかな?いたらいいな?と思いつつ、ある友だちにも猛烈に勧めたい一冊になりました
Posted by ブクログ
黒田みつ子
脳内のAと会話する。
多田くん
取引先の営業マン。
ノゾミさん
会社の先輩。
カーター
片桐直貴。誰が見ても真性のイケメン。
中畑遼
スマイル歯科の院長。
皐月
大学時代の友達。ローマに住んでいる。
Posted by ブクログ
今までの綿谷作品とは一味違うように感じた本作。相変わらず自分の世界に閉じこもり気味な主人公ではあるものの、お一人様を満喫しながら、周りのみんながなんだか憎めず、毎週楽しみにしている30分ドラマを観ている感覚に陥った。
2020年の作品だし、何か心境の変化でもあったのかな。表紙センスは相変わらず素敵
Posted by ブクログ
頭の中に存在する「A」を心の支えとする30代OLみつ子の日常を描いた物語。みつ子の頭の中にしか存在しないはずのAとの生き生きとしたやり取りや、同僚のノゾミさんとの恋愛トーク、穏やかな多田君との関係性などの、描かれている事柄に妙にリアリティを感じます。物語自体はさらーっとしたみつ子の日常で決して派手ではないはずなのに、何故か彼女の過ごす日々が気になってしまいます。等身大の女性としてのみつ子の姿に自分を重ね合わせて共感するからこそ、引き込まれてしまうのかなと思いました。
Posted by ブクログ
どこにでも居そうな
「おひとり様」を満喫している
30代のOLのみつ子は
心の中のもうひとつの声
(冷静に物事を考えたり、時には
大胆になったり、悩んだ時は答えをくれたり)
に「A」という名前を付けている。
(性別は男性)
そんな心の声とのやりとりを中心に
久しぶりの恋心に戸惑ったり
苦手なものと向き合ったりしながら
自分の世界を広げて成長していく、
というお話…。
映画化もされていて、
主人公のみつ子は「のん」さんが、
心の声、「A」を中村倫也さんが
演じています。
私は、みつ子が慕う会社の先輩、
ノゾミさんの恋がユニークで新鮮でした。
ノゾミさんらしさ、貫いて欲しいです。
Posted by ブクログ
P.230 根本的に必要じゃなくても、生活にあるとうれしい存在はたくさんあるんです。というか、私たちはそういうものばかりに取り囲まれて生きていますよ。根本的に、なんて思いつめなくて良い。
恋人にすべてを求めすぎてしまうわたしは、この言葉を大切にした方がいいんだろうなと思った。
Posted by ブクログ
映画での、のんさんの迫真の演技に原作も読みたくなり購入。
独特の表現につまずきがちになりながら読みました。映画を観てなかったら、理解出来ないところが多かったかもしれません。
映画の方がクォーターライフクライシスに悩む主人公の葛藤が上手く表現されてたような。。
Posted by ブクログ
映画の予告を見て気になったので文庫を手に取りました。
1人行動が好きなのでみつ子に共感。会社の同僚も個性的で面白かった。
綿矢りささんの小説は久しぶりに読んだ。解説が金原ひとみさんで嬉しかった!
Posted by ブクログ
単行本の登録がなかったので文庫版で。
みつ子にきょうかんするところは多々あれど
自分が根本的に人を必要としていないことを
ショックに思えないあたりに私の敗因があると分析。
映画は番宣くらいしかみなかったけどキャスト
多田君もA(声の出演だけだった?)も良すぎない?
Posted by ブクログ
一人暮らしが長くなってくると、ふと仕事でないプライベートな部分に他人が入り込んでくると一刻も早く一人の空間を取り戻そうと内心必死、みたいなことってあるあるかもしれない。30代で独身のみつ子はそんな一人女子の典型で、ついには頭の中にもう一人に自分(この小説では“A”という名前がついているのだが)が住み着いてしまう始末。そして何かあればこの“A”との会話に逃げ込んでしまう。なんてことは現実にはないのかもしれないけど、一見してことさら社交性を欠いているような、いわゆる「変な人」の部類に入らずとも、自分の殻の中に閉じこもってしまっている人(つまりはこのお話のみつ子のような人)って結構いるのでは?
正直言って、この小説を最後の方まで読み進めるまでは、つまりみつ子が多田くんといい感じになる、社内でのちょっとした出来事、友人の住むイタリアに行く、といったところまでは「ちょっとつまらないかも…」と思ってしまったが、でも最後はよかった。彼氏となった多田くんが迫ってきたのを断るシーンの後の複雑な気持ちなんてすごくリアル(恋人の小さな傷つきに敏感になるのも、なられるのも苦手だ。相手の不機嫌に気づけば、ひっやっとして一分でも早く挽回したいのに、大体繕おうとすればするほど墓穴を掘り、逆に自分尾気持ちの変化に敏感な相手に顔色をうかがわれると、当惑する。)。本当になんということもない、でもちょっとこじらせた人の心情描写は一級品だなと思う。
(230608再読)
共感してしまった。ということは、ぼくも彼女と同類なのか…!?
性別は違うけど同年代で独身、1人を満喫してる。1人を満喫できる。1人でどこかに出かけるのだって抵抗がないし、なんならその方が気楽。
それにしても、相変わらず冒頭が秀逸。ロウでできた食品サンプルを作る体験に1人で出かけるという、1人で行く先が映画館でも焼肉でもなく、斜め上の目的地。そんな場所に1人で行く、というのがある意味でこの話の主人公、みつ子の人柄を端的に表していたのかもしれないなと思う。
みつ子は自分の中にAという別人物を住まわせていて、ことあるごとにAに相談を持ちかけるーといっても彼女の頭の中に住まわせている人物だから別人物だけど同一人物というなんだか矛盾をはらんでいるようだが、このAがみつ子とはまた違った視点でモノを言ってくる。今これを書きながら思ったのだが、もしかするもみつ子自身、今の彼女を決してよいとは思ってなくて、そんな潜在的な気持ちが別人格となって自分の中に現れていたのかもしれない。
話は多田くんという、みつ子の勤める会社に時折りやってくる営業マンー彼は出世はしなさそうな、悪くはないけどそんなにもパッともしない感じのようだがーとの関係性が一つの主軸となっている。たまたま近所に住んでいることがわかり、晩御飯のおかずを彼におすそわけする仲になり…そんな中で親友を訪ねてイタリア旅行に出かけ、飛行機で右往左往しながらも無事着いたイタリアで1人で孤軍奮闘する、それでいてイタリア人とも関係性を築く友人の姿を目の当たりにしたり、物語は様々な出来事を経ていく。
彼女は本当にぼっちを望んでいるのか?それが彼女の理想なのか?それはただ自分の殻に閉じこもって積極的に現実逃避をしているだけではないか?多田くんと付き合うことなり、そこで初めて自分は自分以外の人間を必要としていないということに気づくんだけど、だからといって再び自分の殻に閉じこもらず、人間には自分以外の人間が必要だって前に進んで行く、というのが希望があっていい。そのとき、みつ子はもはや頭の中のAに頼る必要もなくなるのだ。
希望のある終わり方だと書いたが、これを読んでるぼくが置いてかれてしまう…そんなことを感じてしまうくらい、この物語に没頭できたし、それくらい面白いテーマだった。間にちょくちょく入るシーンも印象的。たとえばたまに泊まるホテルは非日常が感じられていいけど、同じことを家でする、つまり自分のために掃除をしたり、家をきれいにするのって、この上なく贅沢だ、とか。細部も魅力的だ。