斎藤幸平のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
倫理と経済は再び同期できるというストーリー。最後に、
1企業はCPOという倫理責任者とともに倫理研究部門を設置し、利益と倫理の同時に達成すべき点を開発せよ
2子どもに参政権を与えよ
3欲望をコントロールせよ
4AIそれ自体はインテリジェンスにはならない
などの提言がある。
特に 子どもに参政権を は深く納得した。倫理セクターは今後少しずつ導入されると思うが、哲学が実学として教育されてから時が経てばと思わなくもないので5〜10年ほど変わるだろう。
フィロソフィーマーケティングなどとマーケティングオリエンティッドの安い理論に陥らないことを願う。 -
Posted by ブクログ
「哲学界のロックスター」と言われ、来日講演したりEテレの番組にも出演したりしたことのある新進気鋭の天才哲学者である著者が、初の日本書き下ろしを出版したということで2024年の夏休み図書として購入。
本書は3部構成となっており、第1部ではまず、「倫理」「資本主義」「社会」について、あえて経済的側面から定義するところから論考が展開される。そしてそれらの定義や概念に基づき、資本主義のインフラを使って道徳的に正しい行動から経済的利益を生み出し、社会を大きく改善することができる、またはそうすべきだと冒頭で筆者は述べている。
かつてミルトン・フリードマンが主張した「企業の目的は利益追求である」から、「企業の目的は善行(DOING GOOD)である」に今こそギアチェンジしすべきだというのが本書を貫く思想である。
とかく近年では、地球環境破壊とはじめとする諸々の社会問題の元凶として”行き過ぎた資本主義”が槍玉に挙げられるが、そもそも「資本主義」とは複雑化する現代社会の一側面にすぎず、「資本主義社会」などという単一の社会システムは存在しないと筆者は強調する。
つまり、行き過ぎた資本主義が原因とされる社会問題は、資本主義の運用の仕方が誤っているのであって、資本主義(生産手段の私有、自由契約、自由市場)そのものではないとする。
本書の核である第2部では、著者が提唱する倫理と資本主義を”リカップリング”した「倫理資本主義(Ethical Capitalism)」について解説される。そこでのキーワードは「道徳的事実」である。これは主観的意見や文化、社会的アイデンティティに左右されない普遍的な事実を指す。この道徳的事実を発見したり拡張したり拡大させたりすることなどを「道徳的進化」と呼び、これからの時代は資本主義のインフラを道徳的進化のエンジンとして活用することで、誰もが道徳的に正しいと認めることを推進させながら利益を得ていくことが肝要であると著者は説いている。
第3部では、倫理資本主義を包含する倫理的・政治的価値の枠組みとして著者が提唱している「エコ・ソーシャル・リベラリズム」について、それを実現するためのいくつかの思考実験に基づいた具体的提案(企業への倫理部門と最高哲学責任者(CPO)の設置の義務付けと、子どもへの選挙権付与)が述べられる。
最後に次世代のAI倫理について言及されているが、筆者はAIに対して経済を一段と加速させることによって未来を形づくる、真に未来志向の技術だと楽観的立場を取っている。そのためには、AIはそれ自体いかなる意味においてもインテリジェントではないという「ソシオテクノロジー(社会的技術)」であるということを前提に利用すべきであると主張する。つまり、AIはあくまでも人間(社会)が使ってこそインテリジェントになるとする。
AIが普及した未来社会については、AIによって多くの仕事が失われるといったようなネガティブな予想が多い中で、著者のような国際的に影響力のある哲学者がポジティブな思想を有しているのは、AI社会に対するひとつの希望であると感じる。
本書全体を通じて、著者が単に専門分野の哲学・倫理学的見地ではなく、経済学、生物学、IT(AI・SNS等)などの多様な観点から新たな主義・主張を述べており、広い視野と深い洞察力に感嘆を禁じ得ない。
第2部でも述べられているように、著者が提唱する「エコ・ソーシャル・リベラリズム」の枠組みで近年すっかりブームとなったSDGsを再考すると、この開発目標も単に「地球を守れ」とか「自然を保護せよ」といった中身のないメッセージではなく、あらゆる生物の中で唯一自由意志を持った人類の社会経済的生活形態にかかわるものであることが理解できる。そうして考えてみると、持続可能性(Sustainable)という言葉の深みと重みを再認識する。
本書は未来予測本というより啓蒙書に近い内容であるが、新書ではあるものの280ページほどのボリュームであり、これまでの著者の集大成ともいえる熱量を感じた。と同時に、金融・株主資本主義が根付いた現代社会に倫理資本主義を浸透させることの困難さも感じた次第である。
また個人的には、倫理資本主義のネガティブな側面の片鱗が、岡田斗司夫氏が提唱する「ホワイト社会」という形でもう世の中に立ち現れてきているのではないかとも感じた。ホワイト社会は善行を積み重ねた道徳的進化を志向した社会ではなく、行動や発言が清く美しく、汚れなき漂白された「見た目がきれいな社会」を指すが、この社会を目指すことが道徳的事実とされ、倫理資本主義が曲解されてしまうのではないかと危惧してしまう自分に気付いた。これが杞憂に終わってほしいと願うばかりである。
いずれにせよ、価値観の多様化は止められない社会で、どのようにブレない倫理観を持って生きていくのかが今後の最大の課題のひとつであると考えさせられる一冊であった。
日本を含めて先進国のトップが代わっていった何年後かに、また本書を読み直してみることで、その時の社会で倫理資本主義がどのように受け入れられているかを考えてみたい。
ちなみに、哲学者独特の言い回しが少々読みにくいということもあり、評価は星3とした。 -
Posted by ブクログ
学者は、もっと現場で学ばなければいけない、ということで、人新世の資本論で有名な著者が、全国の社会問題の現場を訪ねて、見たこと聞いたこと、時に体験したことを文章化したもの。
表題はかなりキャッチーなコピー、だから、本人は真剣に論じてるのだろうけど、リアクション芸人と化してるように思えてしまった。
とはいえ、著名人が人々の関心を惹いてくれて、知らしめてくれて、考えさせてくれるような本書の試みは大事。頑張れ!斎藤先生。
まるで人ごとな声援ですみません。
ウーバーイーツ、テレワーク、林業、五輪問題、男性メイク、性教育から、気候変動、外国人差別、水俣病、部落差別、被災地、アイヌと多岐にわたってのルポになってる。
ぜひ、一読してもらいたい一冊ではある。 -
Posted by ブクログ
「大義で見えなくなる物」
人新世の資本論を読んでいる頃、斎藤幸平先生が義母の友達のご子息であったと知り驚いた(つながり薄すぎ)
思想的にマジョリティーではないからSNSなどで叩かれることもある先生ではあるが、研究室に閉じこもらず矛盾の集中する現場に飛び出しで「実践」を行っていくのは個人的には好感を持っている。
入り口はyoutubeなんかと親和性が高そうだが(フードデリバリーしたり、虫食ったり)主題は深遠だった。
「共時者」の概念は響いた。虐げられた人たちの苦しみを「そんなこと知らない」と片付けてしまうのは簡単だけれど、あえてそうしない人が増えると、競争して勝つという「当たり前の」世界が変わりうるのかなと思った。 -
Posted by ブクログ
筆者がフィールドワークを通じて学び、感じ、時に新たな問題点を見つけては切ない思いをしたことを書いたレポート。そう、本と言うよりは、レポートです。とても軽快な言葉で綴られた、レポート。
とはいえ内容は軽くはなく、斎藤さんは案件ごとに真摯に向かい合われてますし、そこからご自身が感じたことを非常に平易な言葉で表現されている、という話で、◯◯論とか◯◯学とか専門的なことを知らなくても十分に学びのある一冊です。
ただし、平易であるがゆえにあまり深掘りはしておらず、さらっと読むとあまり印象に残らないかも。あまり身近ではない(日常生活とは関わってこない)件についても色々触れているので、読んで何かひっかかるものがあったら、自身で調べたり、深く考えたりすると、この本が生きるんじゃないかなと思います。
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Posted by ブクログ
本書は、脱成長の基本ビジョンが分かりやすく説明されるとともに、世界各地における実践例が紹介されており、入門書として適当な一冊だと思います。
ただ、「脱成長」について思うこと。
どうにかしなければならないことは理解できる。無駄なもの、ここまで必要ないだろうと思うモノやコトも多い。しかし、経済成長が良いことだ、パイを大きくしないと豊かになれないという考えが沁み込んでしまっている人間(自分だってその一人だ)が大勢の中で、政治を変え、脱成長の経済にしていくことを現実化していくのはとても難しいだろうと思う。
特に国際社会において対立の度が深まっている現在、これまで不平等を強いてきたから先進国がまずは脱成長に踏み出すべきだという議論は、国力を相対的に弱めることになりかねず、なかなかコンセンサスを得にくい状況ではないだろうか。
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成田さん
・不真面目に、遊びや趣味の延長線をフラフラと生きている人の方が、競争力を持つ社会になる?王道人生を歩む道からズレるように工夫した方がいいなと思った。
斉藤さん
・アメリカと日本の比較。格差の大きいアメリカ→資本主義は間違っているのでは。
・問題の外部化。時間・場所的軸において。先進国が利益追求、環境配慮するために、遠く離れた後進国から搾取している→商社で働く上で、そうなのか実際に自分の目で見て、それを改善する、そうしないで日本を豊かにできるようにしたい。忘れてはならない視点。
・更なる豊かさを求めることが目的になっている。資本主義に組み込まれている私たち。特に会社で働く上では気をつけないといけない。 -
Posted by ブクログ
前著「大洪水の前に」と重複するところも多い気はするが、よりマルクスのテクストに深い入り込みつつ、晩年のマルクスの思想を再構築していく。
そのプロセスに知的好奇心が動きつつも、なんで今更マルクスが著作にできなかったことを今あれこれと推論しなければいけないんだろうという気持ちがしばしば起きてしまう。
マルクスが本当に考えていたことはこうなんですと言って、20世紀に破綻したと思われるマルクス主義を環境、持続可能性という観点から再構築しなければいけないんだろう?(そういう意味では、タイトルの解体というより再構築という方が相応しいと思う)
それって、マルクスの神格化ではないか?
という批判は、当然、著者はわかっていて、そういう趣旨ではないのだというわけだけど、それでもそういう思いを禁じ得ないわけだ。
マルクスの資本主義理解は、今をもっても正しいところはたくさんあると思う。また、時代の変化を踏まえながら、理論的に発展したところも多い。
一方、環境問題や持続可能性を踏まえた理論もたくさんあるのだから、「現在」の資本主義理解と環境問題理解を組みああせて、新たな理論構築した方がいいんじゃない、と思ってしまう。
しかしながら、マルクス主義系の研究者にとって、まだまだマルクスの威光は効果的なようで、彼らにとってこうした「マルクスは実はこう思っていた」というのが意味があるわけかな?