【感想・ネタバレ】ゼロからの『資本論』のレビュー

あらすじ

コミュニズムが不可能だなんて誰が言った?

『資本論』は誰もがその存在を知りながら、難解・長大なためにほとんど誰もが読み通せない。この状況を打破するのが斎藤幸平――新しい『資本論』解釈で世界を驚かせ、『人新世の「資本論」』で日本の読者を得た――、話題の俊英だ。マルクスの手稿研究で見出した「物質代謝」という観点から、世界史的な名著『資本論』のエッセンスを、その現代的な意義とともにていねいに解説する。大好評だった『NHK100分de名著 カール・マルクス『資本論』』に大量加筆し、新・マルクス=エンゲルス全集(MEGA)の編集経験を踏まえて、“資本主義後”のユートピアの構想者としてマルクスを描き出す。最新の解説書にして究極の『資本論』入門書!

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

改めて資本主義を理解したかったので読んでみた。資本主義は資本の増殖が基本にあり、私たちはいつの間にかその流れに組み込まれていると再認識。
労働力という商品を売り、再生産するために商品を買うという終わりのない一連の流れにどう立ち向かうかまで示してくれてるのはとても良かった。

また、資本主義社会における2つの自由が印象的だった。一つは強制労働といったことがないことの自由、もう一つは生産手段が持たないことによる自由。後者は自由によって、文句は言うけど結局会社の言いなりであり、リストラされないためにも労働者がより勤勉に働くという構造がとても皮肉だなと思った。むしろ働くほど効率化されて、自分の首を絞めるのだから。

上記に加え、構想と実行の分離という概念は目新しかった。分業により効率的に仕事ができるようになった反面、構想することはできなくなってしまった。ここでいう構想は状況に応じて自在に判断するなことであり、いわゆる経営者目線で働くみたいな小手先な話ではないと著者は批判している。例えば、店長がその日の天候等の状況に応じて売り場の商品を変えるとかそういう話ではなく、より大上段の原材料の仕入れ先、販路、営業時間など話です。それら大冗談の話は、より上層部によって決められているため、そもそも経営者目線で働くなんて耳障り良いレトリックになる。僕も毒されていたものの、これは痛烈だなと感じた。

入門書を読んだこともあり、原典の資本論に再び挑戦してみようと思う。大変良い本だった。

1
2025年01月13日

Posted by ブクログ

面白かった。
私の今の世の中に対するモヤモヤ感を表してくれている内容だった。
もう余力が無いのに経済発展と言うばかりの政治家や、ここ10年で増えた貧困、モノを売るために時間を費やしていた面白く無い仕事が多かった前職など。この本に一つの答えがある。
今の世の中に限界を感じている人は読んでみて欲しい。

0
2025年10月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

これは良書。読むべき一冊です。
以下引用
生活に必要な財(住居、公園)やサービス(教育、医療、公共交通機関)が無償でアクセスできるようになれば、なるほど、脱商品化は進んでいきます。これらの財やサービスは、必要とする人に対して、市場で貨幣を使うことなく、直接に医療や教育といった形で現物給付されるわけです。
現物給付の結果、私たちは、貨幣を手に入れるために働く必要が弱まります。福祉国家は、もちろん資本主義国家です。けれども、脱商品化によって、物象化の力にブレーキをかけているのがわかるでしょう。  

0
2025年02月17日

Posted by ブクログ

マルクスの資本論を読み直す、という企画の本です。

「なんだ社会主義化」「いくら資本主義が現代社会
に行き過ぎて格差や気候変動を引き起こしている
と言っても、社会主義は今さらないよ」

と、感じる人がほとんどでしょう。

しかし書籍として世に出ている資本論は非常に
難解であるし、マルクス自身もその後様々な
研究を続けていて、社会主義とは異なる理想の
社会を見出したことが近年判明しています。

その理想の社会をキーとして、資本論を学び直す
のが本書のキモです。

理想の社会の内容の是非は別として、資本論で
語られている資本主義の暴走は現代社会におい
ては全く違和感がないことは理解できると思います。

これを1867年、日本では大政奉還のあった年に
出版したわけだから、すごいぞマルクス。未来
が見えていたのか。

「なんか最近働いてばっかりで週末は単なる消費者
でしかないなあ」と思った人は読むべき一冊です。

腹落ち間違いなしです。

0
2024年10月06日

Posted by ブクログ

資本論おもしれーのかも!!!ってなった。
本書はまず、資本論中の富、商品、労働と労働力と言った言葉を丁寧に解説してくれる。
次に現在世界で起きている過労死や格差、環境破壊について、資本主義の仕組みから必然的に発生するものだとわかりやすく教えてくれる。
そして、最後は読者へマルクスの最晩年の思想である『脱成長コミュニズム』というポスト資本主義社会を思い描ける希望を与えてくれる。

はじめは脱成長なんて突飛な思想に感じるかもしれない。書中のあるアメリカ人文芸批評家も「資本主義の終わりを思い描くより、世界の終わりを思い描く方が簡単」と言っているくらいで、自分も完全に同意。
けれども、その発想の貧困さこそ我々が資本主義に魂まで取り込まれた結果かもしれないとも思った。
本書終盤には世界各地で興るポスト資本主義の芽が紹介される。その実践を読むうちに、自分の思考の柔軟さが蘇るような気持ちになれた。
100年以上前にこんなことを考えていた賢人がいるなんて、、、人間の思考力って本当に凄いんだ。

是非次の時代を担う若者にどんどん勧めたい本。

0
2024年09月03日

Posted by ブクログ

マルクス「資本論」の要諦を最新のMEGA研究も交えて読み解く良書。著者の「マルクス解体」は難しくてなかなか進まないが、この本で基礎を押さえてからなら読めそう。

0
2024年08月13日

Posted by ブクログ

面白かったー!現代社会の身近な出来事を例に引きつつ、「資本論」やマルクス思想の意義を問い直している本。難解な名著を噛み砕いて解説していて分かりやすかったー!
資本論=学生運動のバイブルというイメージでしたし、旧時代の象徴と思い込んでいましたが、まるで今の時代の処方箋のようにも読めるのですね。
(※私は「資本論」自体は未読です)

ただ、この資本論的ユートピアが、どこまで現実社会にコミットできるのかは分からない。
表層的な理解のまま共有されたり、時の政権に利用されるのは危うい。
それこそ歴史の例として、現実の社会主義国家の実態とか、
岡倉天心の「アジアは一つ」の言葉だけが一人歩きし、大東亜共栄圏の支えにされてしまったことを教訓にしないといけない。

本書で解説されている「使用価値を重視する社会」の本質は、マオリのマナ思想が近いのかなと思うのですが、
「コミュニティの貢献度」が、例えば「生産性」などという貧しい言葉に置き換えられて社会に浸透してしまったら、分断は進んでしまう。
カネからは脱却できても、共同体や社会が求める「能力」を贈与できない者は、尊厳や相互扶助といった関係性から排除されるのか?という問題が出てくる。

また、カネの介在しない贈与社会が実現したとしたら、モノや能力の価値が一定ではないわけで、交換には人と人との信頼が大前提になる。
それって、資本主義に慣らされた私たちにとって、個人の成熟度がすごく求められる気がする。
ご近所付き合いでの物々交換とはわけが違って、グローバル化が進み、多様な価値観が尊重される広いコミュニティ下での贈与行為は、高度な倫理観も鍛えていかなきゃいけない。

あとは、上昇志向に代わる価値観として、社会から承認されることがもっと重視されていく気がする。

…と言っても、SDGsの考えが自然と身についている若い世代の方々が、ボランティアや環境保護活動に積極的な様子を見ていると、
そう悲観することもないかな、世の中は時々立ち止まりながら、ゆっくりと良い方向に向かっていくのかな、とも思います。

0
2024年05月23日

Posted by ブクログ

生活への考え方が180度変わる。経済を回すことは人間の生活とは根本的に必要はないとわかった。おすすめです

0
2024年04月30日

Posted by ブクログ

これまでに読んだ『資本論』の解説本の中で最も分かりやすく、腑に落ちる部分が多かった。
基本的には『人新生の「資本論」』と共通する主張と情報だが、本書の主題通り、『資本論』、そして『資本論』には収録しきれなかったマルクスの思想の終端に至るまでが解説されていて、理解がさらに深まったように思う。

個人的には特に、
「物質代謝としての労働」、「富とはなにか」、「労働力と労働の違い」、「物象化」についての理解が深まった。
また、BIや福祉国家は「法学幻想」であるが故にポスト資本主義の社会体制とはなり得ないということも非常に興味深かった。

斎藤氏やマルクスの思想、そして共産主義を批判する論調は、決まって「ソ連や中国のようになりたいのか」「共産主義は結局独裁に陥る」という主張であるが、本書で「コミュニズムは前提として民主主義でなければならず、ソ連などは民主主義が欠落しているためそもそもコミュニズムですらない」という解説が丁寧になされていて納得がいった。

(一時的ではあるが)パリ・コミューンや、現代のスペインの例などのコモン的な実践例が紹介されている。
本書でも簡易的な紹介に留まっていたが、この辺りはもっと深堀して聞きたい。

各地域、コモンが可能な限り地産地消的に生活していくことには高いハードルが存在する。
今資本主義体制の中で得られている、グローバルな物流システムと購買の賜物である各種遠方の物資が、小規模自治体における地産地消では得るのが難しい。そのことからくる不便や不満や限界点がハードルである。

日本は水が豊かな海洋国家であるから、生活に必要な塩や真水は国内のどんな地域でも割と手に入る。
しかし、例えばエネルギー原料としての化石燃料は国内では全く必要量を賄えることが出来ず、また平らな農地が少ないこともあり可能な食糧生産高が低い。
これから人口が減っていくにしても、カロリーベースで約1/3、健康的な食生活のための栄養でいったらさらに極端に少ない人口しか食料を国産では賄えない。

地産地消でやっていくには、日本は人口が多すぎる。
というか、世界全体で人口が多すぎる。

これだけの人口の食料や、今や必需品でもあるスマートフォンやPCなどの原材料を平等にいきわたらせようとすると、どうしても地産地消モデルではうまくいくビジョンが見えない。

地産地消的なコモンがうまくやっていけるのは、元々物資が豊富で人口とその物資のバランスが取れている、環境的に優れたエリアに限られるのではなかろうか。

コモンが各種自治をうまくさばけたとして、コモン間でのヒト・モノ・カネ・情報をどのようにしてやり取りするかという問題。
加えて、コモンにおける独裁化や他国からの攻撃・侵略を防ぐための手立てとしてどのような現実的な解決策があるかという問題。
「人よりもっと上に立ちたい」「もっと欲しい」「もっと良いものを」といった人間の根源的な欲望をどのように取り扱うかという問題。

さらに、本書でもソ連のミールでは農村と都市の対立を防ぐために通信技術を西側から吸収する必要があった旨が説明されていたが、こういったイノベーションや技術が本当に競争や報酬といったテコ無しに充分に発展するかという懸念について、より深い思索、シミュレーションが必要だ。

環境を考えるとタイムリミットは極端に短く、待ったなしな状況であるが、現実的に労働者全体が行動を起こすには既に包摂が進みすぎており、頭数を揃えることすら難易度が高い。

成田悠輔氏のアルゴリズム民主主義の導入があればコモンの実現可能性はグッと高まるが、それ自体もまた資本のストライキや既得権のストライキに歯止めをかけられそうだ。

まずは市民自身が問題意識を持つための問題提起。
次いで行動に移すための強い動機。
そして行動によって現在の臨界点を突破するための、動ける人数。
さらに具体的なアクションを行うための、失われた「構想と実行」が統合したスキルを持つ人と持たせるための教育の場。
継続していくモチベーションが得られるくらいの実績。

ハードルは多いし高い。
マルクスは、未来の在り方は未来の当事者自身が考えて生み出していかなければならないと考えていたようだ。
我々現代人一人一人が、具体的な対応策を常に考えて手を動かして生み出していく必要がある。

0
2023年10月05日

Posted by ブクログ

マルクスの資本論がわかりやすく入ってくる。説明が丁寧でシンプル。前半は特に、あっという間に読み進めることができる。

0
2025年10月15日

Posted by ブクログ

資本主義は人工的に希少性を作り出し、社会を貧しくするというのは、同じ著者の別の本でも語られていた。貨幣が持つ力は恐ろしく、所有に限界がない。それが資本主義社会のアクセルとなっている。
商品を有用性ではなく、貨幣的な価値として見るようになり、私たちはその大きく変動しうる価値に踊らされるようになった。
資本主義というシステムが労働者を貧しくさせているが、そのシステムに参加しないという選択肢はまず取れない。この経済システム、詰んでるのでは。
斎藤さんのような左派論壇がもっと表舞台に出てこない限り、難しそうだ。

0
2025年09月14日

Posted by ブクログ

 「資本主義は永遠ではない」。斎藤幸平著『ゼロからの資本論』はマルクスを現代に蘇らせる。
 経済成長を追い求める社会の果てに環境破壊と格差拡大が待つという警鐘は決して空想ではない。私たちは便利さの裏にある搾取と浪費に無自覚だったのかもしれない。
 だが著者は言う。脱成長コミュニズムという新たな道がある、と。利益よりも人間と自然の調和を重んじる社会へ――資本論の眼で見れば未来の選択肢は意外にも豊かだ。

0
2025年06月16日

Posted by ブクログ

あとがきから
 本書は、『資本論』を使った、ひとつの問題提起です。
 だから、この本は入門書だけれども、資本主義批判としてではなく、コミュニズム論にもなっています。
 マルクスについての本は膨大な数があるのに、コミュニズムという視点から書かれた入門書がないことが、現在のマルクス主義や左派の低迷をもたらしていると思うからです。
 著者の動機はそういうことですが、近年、いままで世に出ていなかったマルクスの研究の中身、思考の変化などについて、1990年以降、各国からの研究者が参加し、マルクスが書いた草稿や、新聞記事、書簡、メモ書きなどから、新たなマルクス像を確立しようというプロジェクトが立ち上がっているのです。
 そのような世界的な動きに著者も巻き込まれているのですが、そういう立場でこの本の中身は展開されています。
中身ですが
第1章 「商品」に振り回される私たち
 「物質代謝」としての労働 人間の労働は何が特殊か 『資本論』は「富」から
  始まる 「商品」の正体 人間と自然の関係が変わる 目先の金儲けがやめられ
  ない モノに使われ、振り回される人間 「民営化」という名の囲い込み
  社会の「富」が危ない! 等
第2章 なぜ過労死はなくならないのか
 終わりのない価値増殖ゲーム 資本とは“運動”である 資本家が金儲けをやめら 
 れない理由 「労働力」と「労働」の違い 長時間労働が蔓延するカラクリ 
 労働力も「富」 繰り返される「過労死」という悲劇 「自由」が労働者を追い
 詰める 賃上げより「労働日」の短縮 等
第3章 イノベーションが「クソどうでもいい仕事」を生む
 ケインズの楽観と悲観的な現実 「より安く」と圧力をかける資本主義
 誰のためのイノベーションか 「分業」が労働者を無力化する
 人間らしさを奪うテイラー主義 無力な生産者は無力な消費者である
 生産力向上で仕事にあぶれる ブルジェット・ジョブ 等
第4章 緑の資本主義というおとぎ話
 資本の略奪欲は自然にも及ぶ 「資本新世」の理不尽な不平等 修復不可能な亀裂
 『資本論』に編まれなかった晩年の思想
第5章 グッバイ・レーニン!
 ソ連とコミュニズムは別物 民主主義の欠如 官僚が特権階級になる仕組み
 社会主義の皮をかぶった「政治的資本主義」 国有は「共有」とは限らない
 ベーシックインカムという「法学幻想」 ピケティとMMTの死角
 ボトムアップ型の社会変革 福祉国家の限界 等
第6章 コミュニズムが不可能だなんて誰が言った?
 なぜマルクスは将来社会像を具体的に描かなかったか
 『資本論』に収められなかったもの 原古的な共同体における「平等」
 「唯物史観」からの転向 「脱成長コミュニズム」へ
 「各人はその能力に応じて、各人にはその必要に応じて!」
 パリ・コミューンの経験 古くて新しい「コミューン」
 労働者協同組合のポテンシャル 「使用価値経済」への大転換のために
 民営化ならぬ「市民営化」へ 各地で動き始めた「アソシエーション」
 今こそマルクスみ学ぶ
 マルクスはユートピアの思想家である

読み終わって思うのだが、第6章で紹介された『各地で動き始めた「アソシエーション」』である。
資本主義という運動によって、長い人類の歴史で大事に守ってきた「コモンズ」が破壊されてしまった現代において、人類共通の「富」を取り戻す運動については、小さな点でしかない「アソシエーション」を如何に繋いでいくか、気の遠くなるような話しであるが、その明るい未来を想像しながら、資本主義という「運動」からの脱却をめざし、懸命な労働者・懸命な消費者でありたいものである。

0
2025年03月02日

Posted by ブクログ

読み進めた時はとても面白かったけど、結論からいうと限りある人が意識して始めるしかないかなと思った。でも資本主義はこのままいけば限界になり、新しいことが必要なことはよくわかった。斉藤さんは同世代でとても頭がいい。すごい。

0
2024年12月29日

Posted by ブクログ

資本主義の限界を感じる昨今、ポスト資本主義の展望として実に読み応えがあった。脱成長コミュニズムの実践としてのスペインの事例の続報を待ちつつ、この日本において何ができるかをボトムアップで構想・実行していきたい。

0
2024年12月18日

Posted by ブクログ

“マンガでわかる! 100分de名著 マルクス「資本論」に脱成長のヒントを学ぶ”を先に読んでしまったので、その捕捉として読むのにちょうど良かった。

0
2024年12月08日

Posted by ブクログ

社会主義というとソ連や中国などの共産主義をのことをイメージしがちである。しかし、晩年のマルクスによると市民が自分たちで自然などの財産(コモン)を管理し、共有していく、コミュニズムこそが資本主義にかわる社会主義だというのだ。世界は地球というコモンを共有している共同体だと言える。みんなでルールを決めて経済活動を制限しながら、人々が「豊かさ」を感じられる社会になってほしい。

0
2024年10月17日

Posted by ブクログ

マルクスの『資本論』産業革命とセットの歴史用語でしかなかったが現代の資本主義社会の閉塞感から再び脚光を浴びている。
労働にだけ縛られず、お金に縛られず、価値観変えるにはやはり自らが動いて社会に参加しないとならない。

0
2024年07月01日

Posted by ブクログ

このままの社会でいい訳がないと漠然とした不安や焦り感じながらも日々漫然と暮らしている身に、明確な灯台の灯りが。懐かしい「大洪水よ我が亡き後に来たれ」今さら資本論でも無かろうと手にしたが、明確な現代社会の処方箋に。ただ脳が弾力性失ってしまったのか、途中から字面追うだけに。社会の富を商品化しようとするグローバル企業に対抗する共同体社会、脱成長型社会。困難な道だけど、修復不可能な亀裂に広がろうとしている今がギリギリの分岐点か。注目していきたい論者。

0
2024年06月14日

Posted by ブクログ

世の中のあらゆるプロダクトやサービスは成熟化し、いや、それを通り越して衰退期にある。にも関わらず、終わりなきニーズ探求、商品開発。営業は報告、現場が大事、他社との差別化を捻り出せといつまでも繰り返す。または、顕示的欲求をくすぐるためにブランディングやコマーシャル合戦。スタートアップのみが本質的なイノベーションを齎すならば、老舗企業の無意味なマイナーチェンジによる目新しくない新商品競争やそれによる既得権益維持は、害悪ですらある。

ブルシットで作られたブルシットな「商品」、そんなモノのために過労死する社会。資本家のみが肥えていく構造的問題。斎藤幸平は、こうした社会制度について、疑問を投げかける。もっとマシな社会があるはずだと。

人間の欲には限界があるはずだが、誰もが、競争弱者を避ける為に、際限なく求め続けざるを得ない。リミットを設定しなければ、その恐怖感や承認欲求から、より上位へと、他者の視点による価値を意識して登ろうとするのだろう。

どこかで斎藤幸平は富豪の収入に制限をつければ良いと言っていた。更に、価値観を変革し、顕示的な価値の否定を組み込めないものだろうか。考えさせられた一冊である。

0
2024年06月09日

Posted by ブクログ

毎日毎日何でこんなに働いているのだろうと思って手に取った本。
資本主義が進みすぎた結果、私たちが生活していく上で物やサービスに対し当たり前のように金銭のやり取りが発生してしまっており、この生活を続けることにより更なる賃金が必要となり労働増えていくのだなと理解した。
金銭のやり取りが大量に発生しないと経済が回らなくなるのでは?と危惧していたが、そもそも資本主義の結果ブルジットジョブ(本書では広告業、コンサル業)が増え不必要な商品が世の中に溢れ環境も悪化しているし、日本では人口減も避けられないので、本当に必要な仕事に人材を回して無駄を省くような経済にしていかないと維持が難しいのでは?と思った。

0
2024年06月08日

Posted by ブクログ

難解なマルクスの資本論について齋藤氏なりの解釈で解説してくれる本。
前作の人新世の資本論の方が主張が超尖ってて、指摘が鋭くハッとするような本だったが、今作はけっこう解説よりなので目新しさはないかも。

0
2024年05月21日

Posted by ブクログ

マルクスや資本論に関するイメージが変わった。
正確にいうと、中国やソ連での社会主義とマルクスの掲げる社会像の違いを理解できた。
資本論自体は難解だが、本書は身近な事例を通じて説明しているため、大変読みやすかった。
構想と実行の分離が進んだ結果や、労働力を商品化した結果などの部分は全労働者が共感できる部分ではないかと思う。
ユートピア像として、納得できる部分もあれば、現実だとそうなったらやりたくない役割はやらずにどうなってしまうのかななどとも考えてたり、何かと現代人にとって考えさせられるところが多かった。

0
2024年05月19日

Posted by ブクログ

今まで資本論を読んだことがなく、ちょっとぐらい知っておきたいなと思いnhkの100分de名著を読もうと思ったら加筆された文庫版があると知って読んでみた!
資本論の概要というよりは、資本論を通じて現在の資本主義経済に対する投げかけという形で理解をしていくものでしたが、分かりやすく、想像してた資本論とは違っていて面白かったです!
とはいいつつ、他の本も読んでもう少し知見を広げたいなと思いました。同時にアダムスミスやトマピケティの本も読まなければと思ったので、少しずつ読んでいきたい!

0
2024年04月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

資本主義の本。さすがで、とてもわかりやすくて面白い。

メモ
・資本主義とはあらゆるものが商品となり富の対価とされるということ。
・商品にするために自然に働きかける行為が労働
・資本主義以前は人間の欲求を満たすために労働があった。資本主義以降は資本を増やすことが目的となった
・価値のためにものをつくる現在はものに振り回される形に。使用価値のためにものをつくっていた時代は人間がモノを使っていた
・資本とは金儲けの運動
・自己責任の感情を持って取り組む労働者は無理やり働かせられる奴隷よりもよく働くが、自分を追い詰めてしまう
・ギルドのようなモノが分解され個別化すること手間、搾取なども行われやすくなる。資本家に自由に差配されてしまうように
・構想と実行の分離
・社会主義は国家資本主義
・必要な財やサービスが無償でアクセスできるようになればなるほど、脱商品化は進んでいく。

0
2024年03月31日

Posted by ブクログ

マルクスの話は学生時代の授業で習ったくらい。どうしてもソ連、みたいにつながってしまい、あまりいい印象がなかったが、本書を読むとソ連がマルクスの思想そのものとも思えない。むしろ、いまの時代だからこそ、こうした考え方を理解した上で、どう振る舞うのかを考えてもいいのかなと思わされる。大量生産、大量消費。資本主義による成長ばかりを描く世の中。そこに対する疑問は感じてしまう。消費に消極的になれ、というわけではなく、消費の意味を考えるべき時代なのかな。それに合わせて作り手も考えるべき。それが脱成長と言えるかは??少なくとも右肩上がりな成長路線の資料が飛び交う企業の在り方は考えた方がいいように思われる。成長の先になにかあるのだろうか?

0
2024年03月20日

Posted by ブクログ

マルクス=社会主義=ソ連、北朝鮮とか中国で、ヤバいんじゃないの?という印象を変えてくれた。 これらの国々は、労働者が搾取されているという点では資本主義とは変わらないということ。 マルクスの想定したユートピアの実現には程遠いが、まずは現実と理想を知ることが大切。

0
2024年03月12日

Posted by ブクログ

マルコスの「資本主義」で見過ごされていた「ポスト資本主義」を再考すべきだと言う。それはパンデミック、戦争、気候危機などの慢性的緊急事態の時代から強い国家が要請される現代。これを放置すれば国家の力が強まってファシズムや全体主義となっていく、と予測。格差や搾取、戦争や暴力、植民地支配や奴隷制などの問題に向き合い、国家の暴走に抗いながら自由や平等の可能性を必死に考えるべきで、それから生まれる知恵と想像力から学ぶことが求められる、と言う。正に自国での政治不満が他国への侵略で国民の目を誤魔化し、暴走化し始めた。特にロシア、イスラエルなど自国強化主義・ファシズム化へと動き始めたことは、今後米国、中国などの大国への影響も大きく、世界不安を煽る動きは恐怖を抱えることになるかもしれない。

0
2025年09月15日

Posted by ブクログ

マルクスの資本論からスタート。資本主義の文脈で見た物象化。100年前のケインズの予想は外れ、資本主義が進んでも就労時間は減るばかりかあまつさえ増えている。別の著者の本でもあったが、この本でも資本主義であるかぎり労働者は搾取される構造になっている旨が説明されている。お金持ちは色々サービスを外注するが、本人は何もできない不自由な存在。

0
2024年11月22日

Posted by ブクログ

わかりやすい。わかりやすいゆえに、もっともらしいけど実は大多数の市民の感性からみて異形のプリズムを透過した虚像を、あたかも真実のように錯覚させてしまう。罪深い。

0
2024年05月21日

「ビジネス・経済」ランキング