あらすじ
《各界から絶賛の声、続々!》
世界はGAFAMの食い物にされる。
これは21世紀の『資本論』だ。
――斎藤幸平氏(経済思想家・東京大学准教授)
テクノロジーの発展がもたらす身分制社会。
その恐ろしさを教えてくれる名著。
――佐藤優氏(作家・元外務省主任分析官)
これは冗談でも比喩でもない!
資本主義はすでに死に、私たちは皆、農奴になっていた!
――大澤真幸氏(社会学者)
私たちがプレイしている「世界ゲーム」の仕組みを、
これほど明快に説明している本はない。
――山口周氏(独立研究者・著作家)
資本主義はすでに終焉を迎え、グーグルやアップルなどの巨大テック企業が人々を支配する「テクノ封建制」が始まっている! テック企業はデジタル空間の「領主」となり、「農奴」と化した私たちユーザーから「レント(地代・使用料)」を搾り取っているのだ。このあまりにも不公平なシステムを打ち破る鍵はどこにあるのか?
異端の経済学者が社会の変質を看破した、世界的大ベストセラー。
目次
第一章 ヘシオドスのぼやき
第二章 資本主義のメタモルフォーゼ
第三章 クラウド資本
第四章 クラウド領主の登場と利潤の終焉
第五章 ひとことで言い表すと?
第六章 新たな冷戦――テクノ封建制のグローバルなインパクト
第七章 テクノ封建制からの脱却
解説 日本はデジタル植民地になる(斎藤幸平)
著者略歴
ヤニス・バルファキス
経済学者。1961年アテネ生まれ。2015年のギリシャ経済危機の際に財務大臣に就任、EUから財政緊縮を迫られるなかで大幅な債務帳消しを主張し、世界的に話題となった。現在はアテネ大学で経済学教授を務める。主な著書にベストセラー『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』をはじめ、『黒い匣』『クソったれ資本主義が倒れたあとの、もう一つの世界』など。
斎藤幸平(さいとう・こうへい)
経済思想家。東京大学大学院総合文化研究科准教授。1987年生まれ。主な著作に17か国語に翻訳され、世界的ベストセラーとなった『人新世の「資本論」』など。
関美和(せき・みわ)
英語翻訳者、ベンチャー・キャピタリスト。主な訳書に『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』(上杉周作との共訳)『ゼロ・トゥ・ワン』『誰が音楽をタダにした?』など。
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Posted by ブクログ
搾取の主導的な形態を時代の変遷に沿って、《封建制/領地/農奴/地代(レント)として差し出さねばならない生産物》、《資本主義/生産手段/労働者/利潤として巻き上げられる価値》、《テクノ封建制/クラウド領地/クラウド農奴/クラウド地代(レント)として差し出さねばならない個人情報》と描いてみせる。そして、テクノ封建制においては、クラウド領主であるGAFAMなどのプラットフォーム企業が、従来型の企業(資本家)を封臣とし、彼らが労働者から搾取した利潤からクラウド地代を吸い上げる。また人々は、デジタル空間で興味関心欲望を操作され、クラウド領主に無償で個人情報やコンテンツを差し出し続け、そこから抜け出すことのできない、クラウド農奴と化している。今この世界で起きている経済構造の変化を、このように見通してみせる著者の力量に脱帽。巻末の斎藤幸平の解説もコンパクトかつ見事なまとめになっている。
Posted by ブクログ
著者が父親とのエピソードなどを入れたりしながら分かりやすく解説してくれて、ざっくりとではあるが分かったような気がした。
経済政策の歴史の説明も面白く読んだ
Posted by ブクログ
IT系の仕事をしていて海外のクラウド上にサービスを構築することが多いため、クラウド領主がテクノ封建制のトップに君臨しているというのは腑に落ちた。
Posted by ブクログ
『では、私の仮説とは? それは、資本主義はすでに死んでいる、というものだ。つまり資本主義の力学がもはや経済を動かしてはいない、という意味だ。資本主義が担ってきた役割はまったく別のなにかに置き換えられている。その別のなにかを私は「テクノ封建制」と名づけた』―『はじめに』
「クソったれ資本主義が倒れたあとの、もう一つの世界」はその年に読んだ本の中で一番印象的な本だった記憶があり、本書の書評を見てその本の作者の本業での語りを聞いてみたいと思い読んでみる。資本、利潤、封建、という概念の根本的な理解の仕方に膝を打つ思いがする。それは岩井克人の語る貨幣論のように人の営みに照らした理解。経済学的合理に基づく解釈とは少し異なるようにも読める。根本にあるのは農耕生活へ移行した(それはすなわち集約的役割分担のはっきりとした社会への移行を意味するが)人間の作り出した「知恵」である、という考え方だが、その知恵は時に(いや、しばしば、というべきか)利己的な「悪知恵」である事が多い。共産主義的な思想、民主主義的な思想はその個人に帰する悪知恵の対価を、できるだけ公平に広く共有するということを目的としている筈だが、ともするとそれを押し広げようとする制度によって歪みが生まれ、結局また異なる富の偏在が生じる。その語り口は判り易い。
『当然ながら、石油会社は自分たちの略奪を正当化するために、レントを資本主義的利益に見せかけている。彼らのリターンは賢い低コストの採掘技術に投資したことの見返りで、この技術がなければ、ここで採掘された原油はライバル会社の原油より安価にならなかったかもしれないと誇張する』―『第五章 ひとことで言い表すと?』
但し、集約的に行わなければ実現可能ではないものもある、という視点がどうもこの人には欠けているようにも思えてならない。コモンの共有、という視点は確かに美しい理想だが、かたや衆愚という言葉もある。直接民主主義がこの経済学者の信の芯にあるように思えるが、それでは恐らく月には行けないし、石油を採掘することもできない。石油会社を無垢な人々から材を搾取する社会悪のように描くのは勝手だが、その石油会社が取り出したもののほとんど全ては社会に還元され、原始人的生活をしている人を除く全ての人々に恩恵を授けている。更に言うなら、石油会社は地下資源の成功確率の低い探鉱に多大なリスク投資をしているという事実も無視されている。この経済学者が度々回顧する暮らし、キャッシュで支払い、スマートフォンではなく携帯電話で会話をする、という社会でさえ、その基盤を支えている電力、素材、物流の元となるエネルギーは石油会社の資する地下の資源なしには実現しない。しかもそれはこの経済学者が言う程に易々と手に入るものではない。
『この左派の変質の根底にあったのはもちろん、西側諸国の産業空洞化だった。空洞化によって労働者階級はばらばらになり、その流れはテクノ封建制によって今日も続いている。まだ労働者階級が同質的だった頃には、それなりにしっかりした階級意識によって、社会民主主義政府にある程度の圧力をかけることができていた。今では階級闘争は、いわゆる「アイデンティティ政治」に取って代わられてしまった。人種的、性的、民族的、宗教的マイノリティを守り、正義の回復を求める動きは、社会的にリベラルであることを示したい権力者にぴったりだ』―『第七章 テクノ封建制からの脱却』
ただし、そんなことはある程度この人も判っている。そしてそれら全ての問題を解決する方法が見つからないということも。そこで、昔ながらの直接民主主義的、社会主義的共産主義の徹底した社会をパラレルワールドとして描いてみた思考実験したという訳だ。なるほど、そうやってあの小説が生まれたのか、ということを知れた部分が、実は一番興味深い点だった。既に小説のエピローグが描いて見せたように、人間の「知恵」という奴はどこまで行っても「理想的社会」との折り合いが悪いもののようだ。恐らく、人と人との関係性が一定程度の濃い社会での「倫理観」というものに期待する仕組みは普遍的なものとはなり得ないのだろう。だとすると、人間はもっと小さな村社会で充足するような暮らしでのみ機能する正義という概念しか持ち得ないのかも知れない。あるいは「マトリックス」の描き出すような世界が理想的なのか、、、。
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「テクノ封建制」タイトルだけで、んー、そうかと納得してしまう。
私のような経済の知識のない人間にもとてもわかりやすく書かれている。ただ、あまりにもベースがなさすぎて、私には情報量が多すぎて、全体のどれくらい理解できたのか怪しい。
ただ大筋は掴めたと思う。クラウド農奴なんだ。領主様のためにせっせと毎日無償労働に明け暮れているのだ。搾取されていることにも気づかず。
それを阻止するための解決法もきちっと書いてくれている。まるで遠い遠い理想のようだ。完全に農奴になってしまっている私にはそう思えてしまう。農奴はこんなことだから農奴のままなんだと思う。
Posted by ブクログ
父が娘に語るーーの筆者ということで、装丁の割には語り口調で読みやすい。そもそもの封建制度への理解が、現代においてなおのこと縁遠いために、間接的に現代のデジタル搾取の構造がそれに似ているというアナロジーでの看取が捗った面もある。
とはいえ、構想的な提言がどれほど実現性があるのかには疑問符も残り、同時期によんだ 「デジタルの皇帝たち」のほうが、リアルな事情が垣間見れる点では残るものが多かった。再読したい。
Posted by ブクログ
寓話、森永卓郎よりも面倒臭いけど、意味はそれなりにわかるし、参考にもなる。
要は、もう資本うんぬんではない、ということになる。
分配でも互酬でもない世界に生きることになるからかな。
調整されているのに、こちらからは、調整が効かない、と。
それでいて調整の素材、情報は、こちらが提供している、と。
Posted by ブクログ
今の世界情勢を、背景の政治・経済の歴史を振り返りながら喝破する書。
「資本主義」「社会主義」の真の理解を深めながら、提示された「テクノ封建制」というワードの意図・意味を徐々に認識していく文章構成。
前半部は独特の言い回し・表現にとっつきにくさを感じたが、後半になり、巨大テック企業の真の姿が見えてきた。
我々は意図するしないに関わらず、クラウド領主の掌の上で踊らされるクラウドプロレタリアート・クラウド農奴となっている。。
なお巻末の斎藤幸平氏の解説は分かりやすかった。
Posted by ブクログ
ビックテックによるデジタル世界の独占によって現代はすでに資本主義ではなくテクノ封建制へと成れ果てている。その違いはモノの製造による利潤の追求から、ユーザーの関心を奪ってレントを徴収するという根本的な構造の違いである。現代の問題点を構造的に俯瞰して分析し、新たな形を模索する一冊。
Posted by ブクログ
●2025年3月1日、丸善 丸の内本店で再会。1階。入口はいってすぐ、1番目立つところにテーブル丸々ひとつ使って大量に平積みされてたので読ませようとしてるわ。
●2025年7月14日、東京大学・書籍部にあった。2回目のセッションで寄った日。
前に見たことあるなぁというインパクトある表紙。歴史ものだけど、読んだら頭よくなりそう。
●2025年8月30日、グラビティの「カワウソ投資家連合」にいる「Ted」さんがいつものようにサイゼリヤに行って「今日も始めますか」といって料理とこの本が写った画像を投稿してた。
Posted by ブクログ
2025.09.23 考え方としてはとても面白い。的確に言い表しているところと、ちょっと疑問に思うところが混在していたが、こういう大胆な指摘は刺激になるし、とても興味深い。
Posted by ブクログ
前作は娘のために書いた本だったが今回は無き父親との対話的な話。ギリシャ神話の例えとかよく出て読みにくい…
GAFAMに無償でデータを提供し続け、各 CEO達の莫大な富形成に知らずのうちに加担させられる現代の愚民達をクラウド農奴としかつての封建制に例えるのはまぁよくある話だけど、GAFAM批判し過ぎな気もする。それなりの恩恵を受けてるし…そう思う時点でテクノ封建制にやられているのかもしれないが…ちょっと思想が左よりすぎるかな。
自由を手に入れるために何を諦めるのか、本当の自由とは?とみんな思いつつこの資本主義社会の中でなんとか生きていく折り合いを見つけないといけない訳で…映画マトリックスの引用も出てくるが自分なら抵抗軍になるかどうか…
Posted by ブクログ
難しい。扱っている課題の解決が難しいという点もあれば、この本を読むための前提知識が必要であるという点もまた難しいと感じました。私には筆者の父の求めた社会民主主義についての理解が肌感覚としてないし、組合のない労働環境に違和感もなく、狂ったように暴走しているウォール街の話もつい最近まで全く縁のない、知る由もない世界でした。
ただ、社会人になった頃からインターネットが普及し、人類が新たな自由を得るような話がいくつも流行ったけれど、その結果がこんなにも息苦しい社会なのかという実感はあります。
Posted by ブクログ
少し実感とは異なっていたので、言い過ぎかなーというのが第1感であった。たしかにGAFAMのプラットフォームにのり、個人の様々な情報がデータ化され、アルゴリズムが全てを回していく事実はある。
でも一方で、それが分かっているからSNSに乗ってくる広告はまともに見たことないし、さらにいくらスマホが必需品とはいえ24時間のうち使ってるのは数時間だろう。本書に書いてある世界…クラウド農奴は一面から見れば存在するが、その農奴は全てをクラウド資本に捧げているわけではない。
ただ、いまのクラウド領主が本質的には何も生産していないというのはひたすら同意。ザッカーバーグもベゾスも最初は想いがあってビジネスを立ち上げたのだろうが、それが株式会社となり利益を追求するようになっておかしな方向に行ってしまったのだと思う。自分の仕事は金融系だが、正直社会に貢献しているとは思えず個人的な悩みはさらに深まるばかり。