斎藤幸平のレビュー一覧

  • 撤退論

    Posted by ブクログ

    「まえがき」の内田樹の文章の衝撃たるや。
    21世紀末には、総務省の中位推定で、日本の人口は4700万人に。7000万人も減るという。
    そして、この事実を国は知ってはいるが、「このシナリオを国民に対して開示する気がない」にっちもさっちもいかなくなってから、我々に、さて、「日本は沈みつつありますが、生き延びる手立てはもうこれしかありませんと手の内を明かす」だろうと。
    その時には「強者にすべての資源を集中し、弱者は見捨てる」というシナリオは出来上がっている…。

    そうだろうと思う。そうなのだ。たぶんもう出来上がっているのだ。我々庶民はうかうかしてこれからだまされるのだ。

    この「まえがき」と白井聡と平田オリザの論考が、特に優れている。この三箇所だけで、この本は⭐️5つだ。

    白井聡はあまりにもハッキリとこの本で、誰もがそうではないか?と薄々気づいていたことを明らかにした。「われわれは根本問題の所在をはっきりと認める必要がある。日本の政治が見るも無惨な状態にあるのは、官僚機構が、あるいは政界が劣化しているからだというよりも、そうした堕落を許すどころか、腐敗堕落した勢力をわざわざ選択し、それに権力を与えている有権者の無知と堕落のためだ、という事実が正面から認められなければならない」

    とうとう言ってしまった(笑)
    ここを読んだ時間が寝る前だったので、その日は寝付くことができなかった…。白井さん!

    平田オリザの指摘も示唆に富む。
    西洋のリアリズムを情緒、感傷的に読み変える日本文化。
    この甘美な情緒が産むものは何か。

    せめてソフトランディングできたら、と願う。

    兪炳匡の「プランB 」が少しでも実現できたらと思うが、この国はできないだろうな…。
    兪さんの指摘、「著者が懸念するのは、現在の日本で生まれ育った人が、欧米諸国に留学ないし就職する際に、『基本的人権の尊重は建前であり、本音では揶揄・否定しても構わない』との言動をとりかねない」こと、さらに、「個人を評価する時に、日本では、仕事をする能力と倫理観・価値観を『足し算』によって評価」するが、「欧米での評価方法は、『掛け算』ですので、差別発言がある限り、高い研究実績を乗じても0以下になり」、「特定の大学だけでなく欧米の大学・政府組織・企業から永久に追放されます」は重く受け止めた。
    つい最近、映画人をはじめとする文化人のセクハラに関して、その作品までも追放するのか、という発言が、なんと新聞にまで登場したことが思い出される。
    言論人でさえ、足し算に疑問すら持たず、掛け算の発想すらない、その程度の知性が新聞をつくる国なのだなと思う。

    今回の「撤退」に関するアンソロジーは、しみじみ読んでよかったと思うが、しみじみ悲しくもなる。

    0
    2022年06月01日
  • 撤退論

    Posted by ブクログ

    涙あり、衝撃あり。15通りのメガネをかけさせてくれる、とても有意義な一冊。
    一人ひとりの論考をじっくり味わいたい、でも面白すぎるし文章の量も程良いのでもう1人読みたい、もしくはこの人の別の著書を早く読みたい、そんな気持ちになった。
    新しい時代がそこまで来ている、そんな予感がしてくる。

    0
    2022年05月30日
  • マンガでわかる! 100分de名著 マルクス「資本論」に脱成長のヒントを学ぶ

    Posted by ブクログ

    マンガは少なめ、読む部分はたっぷりあります。著者は各所で引っ張りだこのようですが、果たして脱成長で社会はまわっていくのでしょうか。考えるきっかけとして、よい本だと思います。

    0
    2022年02月08日
  • ポストコロナ期を生きるきみたちへ

    Posted by ブクログ

     内田樹さんんが呼びかけて「中高生向き」に書いてもらった,オムニバス本。わたしが知っていた人は6~7人だが,それぞれの呼びかけが面白かった。
     本書のメッセージは,30代~70代の年代別に分かれていて,70代なんて,中高生が大人になった頃はほとんど現役ではないわけで,だからこそ,なにを呼びかけているのかが,気になる。
     新型コロナによって暴き出された現代社会の矛盾は,コロナ禍が過ぎ去ったとしても,なんらかの修正を迫られるはずだ。会社に行かなくても仕事ができる…と分かったからには,満員電車に乗って会社へ行くこと自体が,すでに「必要なこと」ではなくなってしまった。密を避けることは,過疎地域では当たり前であり,過疎であるわたしの地域で影響を受けたのは「年に一番密になる地元のお祭」ぐらいだ。
     指導者たちは,巨大な経済システムの中で,無駄を省くことを第一条件として進めてきたことのツケが,あまりにも大きかったことにやっと気づいたのだろうか。もっとも,10年前の東日本大震災の津波による原発事故のときにも気づいたはずだったのだが…それが,いつのまにか,どっかへいってしまっていた。今回,また,違う形で自然が教えてくれたんだが。
     内田さんがいうように,今後の社会は決して楽観的に過ごせるわけではないだろう。高齢化率や出生率などを見ても,その大変さがよく分かる。
     じゃあ,今後はだれがどんな社会を作ってくれるのか…いや,君が作っていくんだよ,それは君がやりたいことを選んでやっていくんだよ…というメッセージが,少しだけ勇気を与えてくれる。
     60代のお爺ちゃんは,孫たちの世代に何を残せるのだろう。まだわたしにできることはたくさんありそうだ。

    0
    2022年01月10日
  • なぜ、脱成長なのか 分断・格差・気候変動を乗り越える

    Posted by ブクログ

    脱成長の定義の条件→お互いのケアとコミュニティの連帯

    脱成長とは? より少ない資源、資金、環境負荷で人間の豊かさを実現すること。

    資本主義社会での人間の常識→物質所有=幸福。経済成長=善、人間の本能

    脱成長主義社会で目指すもの定義→中庸や、分かち合い、自然との調和。ミニマリスト的な生き方

    ・人間の本質的な幸せとは何かを理解する必要がある
    ・人の生き方は社会システムに影響される
    ・資本主義は人が本質的に求めているシステムではない

    0
    2021年09月25日
  • なぜ、脱成長なのか 分断・格差・気候変動を乗り越える

    Posted by ブクログ

    読みやすい文章で、あっという間に読んでしまった。脱成長がなぜ必要か、どのように実現するか提案されている。
    有名なバルセロナの例も出ている。
    巻末には質問への回答があり、よくある質問に対して分かりやすく答えている。
    入門として、または勉強会のテキストとしてもちょうど良いと思う。
    欲を言えば、もう少したくさん具体例が欲しかったかもしれない。

    0
    2021年09月19日
  • なぜ、脱成長なのか 分断・格差・気候変動を乗り越える

    Posted by ブクログ

    成長によって、人種や国内国外への不平等、あるいはジェンダーにおける労働の固定化と不平等を招く、ということがやっと指摘されてきた。
     国連のSDGばかりが強調されて教育でも教えられているが実はそれが開発と強く結びついていることが指摘されている。
     教育でSDGを説明する場合にはこの本も合わせて説明する必要がある。

    0
    2021年08月27日
  • なぜ、脱成長なのか 分断・格差・気候変動を乗り越える

    Posted by ブクログ

    注目している(惹かれている)斎藤幸平が書いているので手に取った。脱成長こそが私たちの直面する危機を乗り越える手だというのは分かる。スローな社会をつくり人間らしい生き方をしてウェルビーイングを維持することを目指すのは大賛成だ。グリーンな経済成長とかSDGsとかのまやかしは警戒すべきだと思う。難しいことだが人間らしくやさしいところが気に入った。
    ただこの本がNHK絡みだというのが合点がいかん。

    0
    2021年06月30日
  • ポストコロナ期を生きるきみたちへ

    Posted by ブクログ

    高校3年生の私でも分かりやすい文章が多かった。新型コロナによって振り回される私たちの未来を前向きに考えていこうと思った。まずは正しい知識を得ること。そしてタテ、ヨコ、算数(本書より)の多角的視点から問題をみつめる。これから大学に進学する上で役立ちそうな知恵を得ることができた。

    0
    2021年02月19日
  • ポストコロナ期を生きるきみたちへ

    Posted by ブクログ

    色んな立場における識者の手による、今の時代ならではのアンソロジー。内田樹編ってところで、それなりのバイアスがかかっていることは間違いないけど、氏の慧眼に心酔している身としては、その選択には疑念の余地なし。通読した後も、その気持ちに変わりはなかった。いくら博覧強記でも、単著では、その言論にそれなりの限界があるものだと思うけど、その点本作は、根っこの部分でのブレをほとんど感じさせることなく、だけどそれぞれに違った見地からの論旨が展開されていて、感じ入ることしきりだった。

    0
    2020年12月14日
  • 人新世の「資本論」増補新版(集英社シリーズ・コモン)

    Posted by ブクログ

    主張は強すぎる気がするけど、それだけ地球環境への危機意識が高いということだろうし、実際そうなのかもしれない。
    資本主義では解決できないという点がよくわかる。

    0
    2026年10月30日
  • 人新世の「資本論」

    Posted by ブクログ

    めっちゃ面白かった!
    資本主義の在り方に疑問を持っていたところだったから、共感した部分もあったし、グローバルサウスへの影響は勉強になった。
    つまりは現代の生活でみんな本当に幸せなの?
    良く生きるってどういうこと?
    って話だと思う。

    0
    2026年10月28日
  • 寝ながらヘーゲル

    Posted by ブクログ

    アウフヘーベンでおなじみ、ヘーゲルの「精神現象学」(超難解なやつ)の入門書読んだ
    アウフヘーベンの解像度がとても上がったので、おもしろかった
    ■本書の主張

    アウフヘーベン is...
    自分の知が否定されるような矛盾に耐えて考え抜き、悪いところは捨て、良いところは残しつつ、より高次の知を生み出していく
    弁証法=そのための思考法
    しかし、一般社会では実現するのは容易ではない。お互いが正しさを主張して譲らないから
    今までの自分を否定するのは、暴力に感じられることもある。この恐怖感が勝ると「変わりたくない」となってしまう



    そこで必要なのが「相互承認」のスタンス。成立条件は...
    二者が対称的である=対等な関係
    相手を否定できる
    (相手を否定するためにも)自分も一部否定できる

    そのためには、「告白」+「赦し」が必要
    告白=実行者側の自己批判
    赦し=行為を評価する側の自己批判
    双方が相互批判しあい、偽善を反省して共通の目的に向かっていくこと


    ■感想

    とりあえずフィードバックもらいにいく・FBを認めるスタンス、間違っていないようで :yokatta:
    これは実は結構心がけている。ただ、へりくだる必要はゼロなのでそこを履き違えぬよう

    自分の正しいと信じていたことを一度自己批判して捨てる強さがあると、人は行動変容できる。
    行動変容できないケースは、大体ここなのではないかとも思った
    いつまでもそうできる自分でありたいものだとおもった(自分の思う正しさに固執しない強さ)
    つまり、強さの問題

    0
    2026年10月28日
  • 血肉となる読書 なぜ読むことだけが人生を変えるのか

    Posted by ブクログ

    題名で手に取った本なのだが、面白い!!
    中身は副題にもある『何故読むことだけが人生を変えるのか』を真剣に考えた本。
    100分 de名著のプロデューサーの秋満吉彦氏がナビゲート役を務める。
    同番組で指南役を務める3人の論者が本を「血肉」にしていくための読書術を紐解くのだが、3人とも切り口が違い、個性が光っていた。

    100分 de名著の番組名は知っており、気になってはいた。
    せっかくなので今度番組も見てみようかな。

    執筆陣は天才を揃えてきたおかげで、はるか高みにいる人たちの考えを、文字を通して覗いている気分になれる。
    経済思想家、大学教授、能楽師と普段会うことのないであろう面々だ。
    自分が逆立ちしたってなれない思考回路なので、彼らの読書論を取り入れるかと言われるともごもごとしてしまう。
    が、頭が良い人達の思考回路を知るのはとても勉強になったし、思わず食い入るように読んでしまう箇所も。
    各人の読書遍歴については、「こんな本あるんだ…」の連続で自分の無知さに思わず笑ってしまった。

    ぜひ様々な人がこの本を読んでその内容を伝えて欲しい。
    自分の思いを乗せて、感想を伝えて欲しい。
    秋満氏や執筆陣の熱い思いが存分に伝わった良書でした。

    0
    2026年10月27日
  • 寝ながらヘーゲル

    Posted by ブクログ

    SNS・ネットを見れば、レスバの嵐で窮屈さを感じてしまうが、ヘーゲルの相互承認をヒントにすれば、対話を重ね、互いに歩み寄ることが可能になる。相手から批判された際、行為した者が自らの過ちを告白すること、そして相手はそれを赦すこと。当たり前のことだが、その当たり前のことができない世の中。

    ふと思ったのが、確かヘーゲルとショーペンハウアーは相当仲が悪く(ショーペンハウアーが一方的に妬み嫌っていたらしいが)、これはヘーゲルの言う「主と奴」に陥ってしまっていないのかと。

    『精神現象学』は昔読もうとしたが、ムズすぎて1ミリも理解できずに挫折した。今は1ミリくらいは理解できるだろうか...再チャレンジしてみよう。

    0
    2026年10月26日
  • マスキズム 新たな独占の時代

    Posted by ブクログ

    イーロンマスクによる画期的なイノベーションの裏には、インフラを独占し、個人のみならず国家さえも従属させてしまう強大なネットワークの思想がある。

    GAFAのようなテック企業は、巨大なプラットフォームを敷き、膨大なデータを囲うことで富を独占していた。このようなデジタル資本主義は長年問題とされてきたが、AIが台頭し始めてからマスクやティールはさらにギアをあげてきており、公共財や資源までも独占し始め、国家とも結託することで、戦争などの国際情勢を動かすまでのアクターになりつつある。

    火星に行ったり、空飛ぶ車を発明したりなど人類の発展に寄与してくれる一方で、そうした技術が一部の特権にのみ独占され、悪用されるとしたら。国を超越する存在となれば、誰もコントロールすることができない。トリオネアの誕生は歓迎できるものではない。

    0
    2026年10月26日
  • 人新世の「黙示録」(集英社シリーズ・コモン)

    Posted by ブクログ

    破局は既に始まっている。まずはその認識に立つこと。政治や経済の有力者達はその認識のうえで意思決定をし始めている。
    破局を前提にしたとき、人新世の戦時体制として何が理想的なのかを考えなければならない。

    0
    2026年10月25日
  • 人新世の「黙示録」(集英社シリーズ・コモン)

    Posted by ブクログ

    重いなあ。戦時ぐらいの危機感が共有されるまで大きな変化が起こるとは思えず、その後に相当量の研究と実践が必要な社会を構築する、考えるだけで重く遠い。著者が呼ぶ暗黒社会主義の名前もそれを想起する。

    0
    2026年10月22日
  • 血肉となる読書 なぜ読むことだけが人生を変えるのか

    Posted by ブクログ

    お三方おそろいのトークイベントに参加した(ここ最近ブレイディみかこさん、上野千鶴子さん、角田光代さんとトークイベントに参加しては本を読んでいる。秋満さんもあとがきで書いておられるが、トークイベントはオススメ。頻繁に行けるのは東京在住のおかげかと思い、ラッキーだとは思う)。
    安田先生は何回も講座に出ているし、小川先生も初めてではない。斎藤幸平さん狙いだった。
    単純に、著者ご本人を見て、声を聞いたり話し方を知ると、著者の本を読む時、書かれていることがグッと体に入ってくる感じがする。
    頭が良く、知識も豊富なとんでもない非凡な方々なんだけど、少し身近に感じられ、難しい内容も(もともと素人にわかりやすく伝えようとしてくださっている方々なので)自分に入ってきやすくなる感じがする。

    全然本の感想になっていない…

    0
    2026年10月18日
  • 血肉となる読書 なぜ読むことだけが人生を変えるのか

    Posted by ブクログ

    血肉となる本には2パターンある
    漢方型と抗生物質型
    じわじわきくか速攻性があるか
    悩みを解決したり新たな視点をくれたりすることがる
    読書には決まりはない
    自分の好きな読み方、感じとり人生に活かしたり
    一息つければいい

    0
    2026年10月12日