斎藤幸平のレビュー一覧
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いよいよ無視しきれなくなってきた気候変動、生成AIの侵略にビッグテックの台頭、そして加速するポピュリズムといった世界のありさまに、もうだめなんじゃないかと思いながら、安易な終末論による意味づけは避けるべきだと踏みとどまる心もあり、結果として薄らと絶望しながら現実から目を背ける態度に落ち着いてしまっていたけれども、やっぱり(このままでは)もうだめなんだということをまずはしっかりと認識させてくれた。提示された具体策にはさまざまの吟味がいると思うけれども、われわれはハイエク的な二元論に縛られており、市場任せの自由経済か中央集権的な計画経済かの二者択一にとらわれる必要はないということ、そしてその解決策の例として市民参加型の計画経済という道がありうることを示してくれただけでも、すさまじい価値があると思う。世界がその必要性を認めるのにはもう行くところまで行くしかないのだろうが、それまでにできることをやっていくしかない。ブルシットジョブに従事する身として、このままではいけないぞという心持ちを取り戻した。
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Posted by ブクログ
この本は、さまざまな観点から興味深く読むことができた。
まず、イーロン・マスクという人物の面白さと恐ろしさである。子どものように無邪気で好奇心旺盛、全能感にあふれ、まるで「超合金ロボットの操縦席に座る少年」のように、ゲーム感覚で社会システムそのものを自分の考えにフィットするよう変えていこうとする。彼の企業であるテスラやスペースX、そして旧TwitterのXの従業員は、まるで疲れを知らない子どもが遊ぶように仕事に没頭する彼に振り回され、疲弊していく。
第二次トランプ政権では、政府効率化省(DOGE)の事実上のトップとして、政府を「巨大で愚鈍な機械」と見立て、官僚や職員をその機械の動きを阻害する「バグ」として扱い、容赦なく取り除いていく。そして、国家や国民に関するできる限り多くの情報を政府という機械に実装することで、国家を効率的に機能させようとする。無駄なものを最大限に取り除くという発想は、彼がテスラを立ち上げた頃からの基本的なコンセプトでもある。
しかし、バグとして解雇された職員は人間であり、それぞれに人生や生活がある。しかし、そのことに彼の想像力は及ばない。いや、及ばないのではなく、むしろ意図的に「共感力」を排除しているのではないか。彼にとって「共感力」は、人類社会の進化を阻害する要因でしかないのだろう。
次に、テック・リバタリアンに対する自分の認識を大いに改めさせられた。これまで私は、彼らの基本姿勢とは、巨大な力を持つ国家や政府による統制から、テクノロジーを用いていかに自由になるかという点にあると思っていた。
しかし、実際にはそうではない。国家の力を最大限に利用し、国家と共生し、やがては自分たちのテクノロジーを国家にとって不可欠なものにしていく。そのことをまさに実現していったのが、イーロン・マスクである。
9・11テロ以降の軍事戦略、地球温暖化に対するグリーン政策、そしてコロナウイルスのパンデミックによって露呈したグローバル経済の脆弱性などに対して、政府が必要とするテクノロジーの提供にいち早く応じていく。こうしたことを通じて、国家が彼のテクノロジーに依存する度合いを非常に大きなものにし、やがて国家と彼との力関係を逆転させていく。
「庇を貸して母屋を取られる」とは、まさにこのような状況を指すのではないだろうか。
個人的に最も考えさせられたのは、これまで私がテクノロジーを「中立的なもの」と思い込んできたことに対して、再認識を迫られたことである。
特に、AIが我々の問いに対して、中立的な立場から最適解を与えてくれると思い込むことへの警鐘である。大規模言語モデルのAIが常に中立を保つことは技術的にも困難であり、人間が残したデータを学習する限り、そこには必ず何らかの偏りが生じる。AIもまた、人間社会の写し鏡なのだ。
イーロン・マスクは、政治的な配慮を重視するWoke的な倫理観を敵視し、現在のAIは「無色の技術」ではなく、Woke的倫理観というウイルスに汚染されていると考える。そして、「人間社会には支配する者とされる者が存在するのが当然である」とする彼は、ヘイトや差別を防ぎ、社会的公正に配慮するAIではなく、彼自身の思想を反映した「最大限の真実を探求するAI」の実現を目指し、AI企業のxAIを立ち上げる。
彼はこのAIを「Grok」と名づけ、SNSのXに組み込むことで、ユーザーが投稿の中でタグ付けすれば、自動的に回答できるようにした。これによって、彼の倫理観や世界観がAIを媒介として社会に拡散されていく。
20世紀の資本主義が、フォーディズム、すなわち自動車王ヘンリー・フォードによる大量生産と、それを支える社会システムによって特徴づけられたように、21世紀はテック資本主義の王者、イーロン・マスクの思想とテクノロジーを中心に、社会そのものが大きく改変されていくのかもしれない。
それが、本書のいう「マスキズム」なのだろう。 -
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限りある資源の富裕層の独占
選民的な終末ファシズム
絶えざる進歩に変わる、生き残るための「適応」
資本主義的適応
社会主義的適応←筆者はこっちに可能性を感じている
2000年代以降、技術革新がおきても先進国では成長率は停滞している
テクノ封建制
インターネットのクソ化
使用価値すら生まなくなるGAFAM
ここが生産しないと社会は豊かにならない
大規模な構造的変化に対応するには市場の動きは遅すぎる
恒久戦時経済
マルクス
現実世界の多元性は価格だけでは測れない
市場は非市場的制度に守られた人工的秩序
本来、独裁は暴力や暴政の意味合いは必ずしも含まれておらず、一時的なものを指す
上からの社会主義
下からのコミュニズム
これまで思ってた資本主義対社会主義はハイエクに選択肢を狭められていた
民主的な社会主義
エコロジー独裁 -
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今の世界に当然としてある資本主義を否定する本に始めて出会いました。自己啓発本をよく読みますが、その中は今の資本主義に対してどう生きるかが書かれていることが多かと感じます。(もちろん全ての本ではありませんけども)その大前提を覆す本は衝撃でした。
読み終わって感じたことはコモンを尊重する世界が人のありかただと感じます。いまの欠乏の根本は資本主義のシステムにあることは確かであり、理想とする世界であると感じました。
しかし、見えざる手で動いている閉ざされた回路で回っている今のシステムに対してどのように変えていくかが課題だと感じます。そう言う自分も、ぽんっとコモンの世の中に入れたらすごい幸せだと感じますが、今からコモンの世の中に変えることを考えると様々な葛藤が生まれることが想像に容易い。 -
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星6つです。前著「人新世の資本論」よりもダークな世界観を醸し出していますが、更に深刻さを増す気候変動危機とテック覇権主義を前に、暗黒社会主義なる思想を提唱しています。
言葉こそインパクトはありますが、前著で提唱された脱成長コミュニズムの延長線上で、国家の役割期待も包含されていますが、そこまで荒唐無稽な発想ではないという印象です。ニューヨーク州始め、グローバルノースでも社会主義の萌芽は各所に見られる所ですし。
ちなみに、暗黒という言葉は、最近話題のカーティス・ヤーヴィンらの暗黒啓蒙思想のインスパイアだと思われますが、斎藤さんは民主主義を守ることをまず第一義に考えている事で彼らとは違います。
来るべき黙示録に備えて、富豪やテック大手の方々は選民思想や歪んだキリスト教的思想を抱いて、一部の人だけが生き残る、言わば方舟を作ろうとしている中で、暗黒社会主義が民主的な対抗策との事。
資本主義の徹底的な破壊も特徴の一つですね。スティグリッツらが提唱する、資本主義を単に修正するだけの発想では、ハイエクの呪縛から解き放たれる事は出来ず、ラディカルな民主的計画をボトムアップで推進すべきとの主張です。
日本では社会民主主義の議論はあまり見られないですが、本書の売れ行きを見ていると現状のシステムに問題意識を持っている日本人も多いのかもしれません。本書是非読んでもらいたいです。 -
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資本主義は囲い込みによる「希少化」、負荷の「外部化」を駆動力として拡大している。故に、外部化の先を失った現代において、その限界を迎えているという指摘がおもしろい。
例えば、インドが人口増にも関わらず経済が思うように伸びないのは、外部化の先がないことを一つの要因としているのではないかと感じた。
読みながら、
「核融合が実現して、半無限で潤沢なエネルギーがコモン化した場合は、社会は野蛮に陥らずソフトランディングできるのではないか」
と考えていたが、
「資本主義を社会OSとする限り、必ず資本家による囲い込みが発生する。そのため、核融合もコモン化に至ることは困難」
という反論を受けそうだなぁと考えるなど。
先日、NHKスペシャルで核融合開発の国際プロジェクトの特集を観たが、そこでも各国の足並みを揃えることが難しい実態が見られていたし、人間社会というものは難しいなと。
おもしろい本だった、次巻も読むのが楽しみだ。 -
Posted by ブクログ
気候崩壊が起点。
テクノファシズム、GAFAM、MAGAと話は動き、
著者は暗黒社会主義を主張する。
この段階ではわけがわからない。
そこで著者は説明を始める。
計画経済は失敗するとハイエクは看破したと。
情報量が足りず、遅く、計画経済はうまくいかなと。
市場経済にかなわないと。
私もそう思ってる。
しかし、市場経済はブルジョアジー独裁を生む。
資本によって経済が牛耳られる。これも事実。
マルクスはそれを見て、プロレタリアート独裁がよい、という。
民主主義とは言ってない。
そこで出てくるのが「パリ・コミューン」1871年の市民革命自治体。
さらにコロンビアのペドロ大統領の取り組み。エクアドルの国家計画。
資本主義の問題点を、暗黒社会主義が克服できる、としている。
資本、商品ではなく、市民、環境を第一に考える経済。
いや確かにここ数日の酷暑を生きていると、
今の資本主義経済は地球崩壊へ一直線という思いが増してくる。
本来大嫌いだった「計画経済」で成長を制御しないといかん、と思う。
暗黒社会主義、、、 -
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読書について考え直せる、とってもいい本に出会えました。
本を読んだ後は、内容や感想を誰かに話したり、自分の言葉で整理したりすることがとても大切。ただ読むだけではなく、アウトプットすることで初めてその本が自分の「血肉」になっていくのだと感じた。
正直、本を一冊読み終えてもイマイチよく分からなかったという感想しか出てこない時もある。そんな時は、本書で取り上げられていた「ネガティヴ・ケイパビリティ」という考え方のように、すぐには理解できないことを受け入れ、それを考え続けることに意味があるのだと感じた。そうすれば、別の本を読んだ時やある経験をした時に、それまで分からなかったことがふと腑に落ちる瞬間が訪れる。
自分の興味がある分野の本ばかり読むのではなく、ときには本屋さんで直感で本を選ぶという体験を大切にしたい。思いがけない一冊との出会いが、新しい価値観や興味につながり、ウマゼインがもたらしてくれる。 -
Posted by ブクログ
本の読み方そのものを見つめ直すきっかけになった、お薦めの一冊です。
斎藤幸平さん、小川公代さん、安田登さんが、それぞれの本への向き合い方や人生の糧となった本を紹介しています。
特に印象に残ったのは「柱リーディング」という考え方。10年先の自分を育てるために、人生の柱となる本を時間をかけてじっくり読むという発想です。
これまでの私は「読み終えること」が目標でしたが、一冊を何カ月、あるいは一年かけて味わう読書もあっていいのだと気づかされました。
気軽に物語を楽しむ読書も大切にしながら、自分の思想や価値観を深める読書も取り入れていきたいと思います。
「冊数を積み重ねる読書」から「人生を積み重ねる読書」へ。そんな新しい読書の楽しみ方を教えてくれた一冊でした。 -
Posted by ブクログ
イーロンマスクが、AIやロボットの急速の進化を前にして、近い将来、お金が時代遅れになると宣言した。
もはや不足と言うものはなくなる。欲しいものは何でも手に入れられるようになるだろう。仕事をする事は任意になり、趣味でゲームをしたり、家庭菜園を楽しんだりするのと変わらなくなる。夢のような純白な世界である。
寒アルトマンの予測、多くの商品の価格は最終的に劇的に低下している。高級品や本質的に限られた資源、例えば土地の価格については劇的に高騰する可能性がある。土屋水、食料やエネルギーを意味する。
限られた資源を超富裕層たちが独占する未来がすぐそこに迫っている。未来は暗い、世界の終わりを前にしたファシズム、週末ファシズムが待ち受けている。
選民的な週末ファシズムを乗り越えるため、ソ連の全体主義の脅威、西欧社会の自由を守ろうとしたハイエクと退治する。マルクスに寄ってハイエクを乗り越える作業が不可欠。
1991年のソ連崩壊により、社会主義社会は全体主義社会になり、人々の幸せをもたらすものではなく、自由で民主主義の資本主義社会が勝利したと伝えられ、世界は冷戦を乗り越え、民主的な資本主義社会が到来すると期待されたか、その後の新自由主義、思想にもより、資本主義は理想の社会ではなく、1部の超富裕層が支配する末期的な社会であることが明らかになってきた。
この世界をマルクスが想定していたと言う。筆者の論考には納得できる部分と、できない部分が入り乱れている。今後の社会の進展について一緒に考えていきたい。