斎藤幸平のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
まず、これまでの社会の仕組みの否定。
中央主導の計画経済は無知な中央の立てる無謀で実態と乖離した生産と消費ニーズがマッチせず、欠乏と余剰、ノルマ達成のための監視と全体主義をもたらす。=ソ連が実証済み。したがって中央主導の計画経済はダメ(ハイエク主義の主張)。
次に自由市場において価格を絶対の尺度として社会のリソース配分や製造量を資本家が決める資本主義は、価格が取りこぼす情報を反映できず、コモンズから勝手に簒奪して資源を浪費し環境を悪化させても責任がとられず、欠乏社会を招き成長は止まり、破綻する。また、資本家とそれ以外の格差を拡大させる。従って、資本主義も自由市場もダメ(=ハイエクの否定)。
ここまでは納得。
で、著者が提示する解決策は、「暗黒社会主義」。
民主的に労働者たちが独裁を敷く。気候変動や格差問題に対応した有効策を専門家の知見を取り入れつつ良くないものを禁止し打ち出した方針に基づき生産する。
それにより資本の専制から逃れ、価格と利潤だけが頼りのリソース配分問題を再定義するという。
確かに。
理想的ではある。要は、一つの企業の中ではリソース配分に価格メカニズムを用いるのではなく共有と協力によってこれを最適化しようとしているのだから、もはや企業すらもが利潤と価格メカニズムこそが理想的なリソース配分ソリューションというわけではないもとを認めているのだ。と。
そして、そのような取り組みや事例はすでに成功を修めつつある。市民と労働者が保有し決定権を支配するファンドが社会資産の許認可権を有するという。
本書を読んで、早くしないと、というメッセージは痛烈に感じたが、しかし、本書でそこまで厳密に検証されなかった、左派加速主義(技術革新により環境負荷軽減と成長は両立できると説く)の夢をまだ見てしまう。
核融合でエネルギーを産み出し、多くの人がメタバースで生活するため物質的欲求が大幅に減少し、AIと3Dプリンターでニーズに合わせた最適な生産がエッジで行われるよいになる、ではダメなのか? -
Posted by ブクログ
いよいよ無視しきれなくなってきた気候変動、生成AIの侵略にビッグテックの台頭、そして加速するポピュリズムといった世界のありさまに、もうだめなんじゃないかと思いながら、安易な終末論による意味づけは避けるべきだと踏みとどまる心もあり、結果として薄らと絶望しながら現実から目を背ける態度に落ち着いてしまっていたけれども、やっぱり(このままでは)もうだめなんだということをまずはしっかりと認識させてくれた。提示された具体策にはさまざまの吟味がいると思うけれども、われわれはハイエク的な二元論に縛られており、市場任せの自由経済か中央集権的な計画経済かの二者択一にとらわれる必要はないということ、そしてその解決策の例として市民参加型の計画経済という道がありうることを示してくれただけでも、すさまじい価値があると思う。世界がその必要性を認めるのにはもう行くところまで行くしかないのだろうが、それまでにできることをやっていくしかない。ブルシットジョブに従事する身として、このままではいけないぞという心持ちを取り戻した。
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Posted by ブクログ
この本は、さまざまな観点から興味深く読むことができた。
まず、イーロン・マスクという人物の面白さと恐ろしさである。子どものように無邪気で好奇心旺盛、全能感にあふれ、まるで「超合金ロボットの操縦席に座る少年」のように、ゲーム感覚で社会システムそのものを自分の考えにフィットするよう変えていこうとする。彼の企業であるテスラやスペースX、そして旧TwitterのXの従業員は、まるで疲れを知らない子どもが遊ぶように仕事に没頭する彼に振り回され、疲弊していく。
第二次トランプ政権では、政府効率化省(DOGE)の事実上のトップとして、政府を「巨大で愚鈍な機械」と見立て、官僚や職員をその機械の動きを阻害する「バグ」として扱い、容赦なく取り除いていく。そして、国家や国民に関するできる限り多くの情報を政府という機械に実装することで、国家を効率的に機能させようとする。無駄なものを最大限に取り除くという発想は、彼がテスラを立ち上げた頃からの基本的なコンセプトでもある。
しかし、バグとして解雇された職員は人間であり、それぞれに人生や生活がある。しかし、そのことに彼の想像力は及ばない。いや、及ばないのではなく、むしろ意図的に「共感力」を排除しているのではないか。彼にとって「共感力」は、人類社会の進化を阻害する要因でしかないのだろう。
次に、テック・リバタリアンに対する自分の認識を大いに改めさせられた。これまで私は、彼らの基本姿勢とは、巨大な力を持つ国家や政府による統制から、テクノロジーを用いていかに自由になるかという点にあると思っていた。
しかし、実際にはそうではない。国家の力を最大限に利用し、国家と共生し、やがては自分たちのテクノロジーを国家にとって不可欠なものにしていく。そのことをまさに実現していったのが、イーロン・マスクである。
9・11テロ以降の軍事戦略、地球温暖化に対するグリーン政策、そしてコロナウイルスのパンデミックによって露呈したグローバル経済の脆弱性などに対して、政府が必要とするテクノロジーの提供にいち早く応じていく。こうしたことを通じて、国家が彼のテクノロジーに依存する度合いを非常に大きなものにし、やがて国家と彼との力関係を逆転させていく。
「庇を貸して母屋を取られる」とは、まさにこのような状況を指すのではないだろうか。
個人的に最も考えさせられたのは、これまで私がテクノロジーを「中立的なもの」と思い込んできたことに対して、再認識を迫られたことである。
特に、AIが我々の問いに対して、中立的な立場から最適解を与えてくれると思い込むことへの警鐘である。大規模言語モデルのAIが常に中立を保つことは技術的にも困難であり、人間が残したデータを学習する限り、そこには必ず何らかの偏りが生じる。AIもまた、人間社会の写し鏡なのだ。
イーロン・マスクは、政治的な配慮を重視するWoke的な倫理観を敵視し、現在のAIは「無色の技術」ではなく、Woke的倫理観というウイルスに汚染されていると考える。そして、「人間社会には支配する者とされる者が存在するのが当然である」とする彼は、ヘイトや差別を防ぎ、社会的公正に配慮するAIではなく、彼自身の思想を反映した「最大限の真実を探求するAI」の実現を目指し、AI企業のxAIを立ち上げる。
彼はこのAIを「Grok」と名づけ、SNSのXに組み込むことで、ユーザーが投稿の中でタグ付けすれば、自動的に回答できるようにした。これによって、彼の倫理観や世界観がAIを媒介として社会に拡散されていく。
20世紀の資本主義が、フォーディズム、すなわち自動車王ヘンリー・フォードによる大量生産と、それを支える社会システムによって特徴づけられたように、21世紀はテック資本主義の王者、イーロン・マスクの思想とテクノロジーを中心に、社会そのものが大きく改変されていくのかもしれない。
それが、本書のいう「マスキズム」なのだろう。 -
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限りある資源の富裕層の独占
選民的な終末ファシズム
絶えざる進歩に変わる、生き残るための「適応」
資本主義的適応
社会主義的適応←筆者はこっちに可能性を感じている
2000年代以降、技術革新がおきても先進国では成長率は停滞している
テクノ封建制
インターネットのクソ化
使用価値すら生まなくなるGAFAM
ここが生産しないと社会は豊かにならない
大規模な構造的変化に対応するには市場の動きは遅すぎる
恒久戦時経済
マルクス
現実世界の多元性は価格だけでは測れない
市場は非市場的制度に守られた人工的秩序
本来、独裁は暴力や暴政の意味合いは必ずしも含まれておらず、一時的なものを指す
上からの社会主義
下からのコミュニズム
これまで思ってた資本主義対社会主義はハイエクに選択肢を狭められていた
民主的な社会主義
エコロジー独裁 -
Posted by ブクログ
今の世界に当然としてある資本主義を否定する本に始めて出会いました。自己啓発本をよく読みますが、その中は今の資本主義に対してどう生きるかが書かれていることが多かと感じます。(もちろん全ての本ではありませんけども)その大前提を覆す本は衝撃でした。
読み終わって感じたことはコモンを尊重する世界が人のありかただと感じます。いまの欠乏の根本は資本主義のシステムにあることは確かであり、理想とする世界であると感じました。
しかし、見えざる手で動いている閉ざされた回路で回っている今のシステムに対してどのように変えていくかが課題だと感じます。そう言う自分も、ぽんっとコモンの世の中に入れたらすごい幸せだと感じますが、今からコモンの世の中に変えることを考えると様々な葛藤が生まれることが想像に容易い。 -
Posted by ブクログ
星6つです。前著「人新世の資本論」よりもダークな世界観を醸し出していますが、更に深刻さを増す気候変動危機とテック覇権主義を前に、暗黒社会主義なる思想を提唱しています。
言葉こそインパクトはありますが、前著で提唱された脱成長コミュニズムの延長線上で、国家の役割期待も包含されていますが、そこまで荒唐無稽な発想ではないという印象です。ニューヨーク州始め、グローバルノースでも社会主義の萌芽は各所に見られる所ですし。
ちなみに、暗黒という言葉は、最近話題のカーティス・ヤーヴィンらの暗黒啓蒙思想のインスパイアだと思われますが、斎藤さんは民主主義を守ることをまず第一義に考えている事で彼らとは違います。
来るべき黙示録に備えて、富豪やテック大手の方々は選民思想や歪んだキリスト教的思想を抱いて、一部の人だけが生き残る、言わば方舟を作ろうとしている中で、暗黒社会主義が民主的な対抗策との事。
資本主義の徹底的な破壊も特徴の一つですね。スティグリッツらが提唱する、資本主義を単に修正するだけの発想では、ハイエクの呪縛から解き放たれる事は出来ず、ラディカルな民主的計画をボトムアップで推進すべきとの主張です。
日本では社会民主主義の議論はあまり見られないですが、本書の売れ行きを見ていると現状のシステムに問題意識を持っている日本人も多いのかもしれません。本書是非読んでもらいたいです。 -
Posted by ブクログ
資本主義は囲い込みによる「希少化」、負荷の「外部化」を駆動力として拡大している。故に、外部化の先を失った現代において、その限界を迎えているという指摘がおもしろい。
例えば、インドが人口増にも関わらず経済が思うように伸びないのは、外部化の先がないことを一つの要因としているのではないかと感じた。
読みながら、
「核融合が実現して、半無限で潤沢なエネルギーがコモン化した場合は、社会は野蛮に陥らずソフトランディングできるのではないか」
と考えていたが、
「資本主義を社会OSとする限り、必ず資本家による囲い込みが発生する。そのため、核融合もコモン化に至ることは困難」
という反論を受けそうだなぁと考えるなど。
先日、NHKスペシャルで核融合開発の国際プロジェクトの特集を観たが、そこでも各国の足並みを揃えることが難しい実態が見られていたし、人間社会というものは難しいなと。
おもしろい本だった、次巻も読むのが楽しみだ。