斎藤幸平のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
100分de名著が本を紹介する番組であり、そのプロデューサーが、さらに一歩進めて「血肉となる読書」について、番組に出演した3人の講師に、自身の本との出会い方や血肉化の過程を紐解いた本です。
もともとEテレの100分de名著は大好きな番組で、3人の講師の方々が出演した番組も見ていたこともあり、こういう思いで本を紹介して下さっていたのだなぁ…と思いながら読んでいました。
プロデューサーの方が終わりにで、本を読むことが、戦争を防ぐために遠回りでも一番確実な方法だと信じています、という言葉が響きました。
知識や情報を得るための読書から自分へのメッセージとして自分ならどう考えるかという視点を教えられたり、自分は常々気になる言葉や文章に出会うと、メモやコメントを書きながら読むため進みが遅いのですが、励ましももらえた本でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「資本主義の限界」を、環境問題の観点から整理し直した本。
便利になっているはずなのに、なぜ人は豊かさを実感しにくいのか。なぜ経済成長を続けるほど環境破壊が進んでしまうのか――そうした問いを、「人新世」という概念を通して説明していた。
大量生産・大量消費によって生活は便利になった一方で、人間は常に競争や効率化に追われ、環境負荷も限界に近づいている。その構造自体に、現代資本主義の問題がある。
一方で、後半の「脱成長コミュニズム」については、正直まだ理想論にも感じた。国家規模・グローバル規模で本当に実現可能なのか、自分の中ではまだイメージし切れていない。
ただ、
* 消費や競争だけが豊かさなのか
* 本当に必要なものは何か
* 成長を前提としない社会は成立し得るのか
を疑問提起していることに意味がある。
また、資本主義だけでは格差や環境問題に対応できないからこそ、社会福祉のような仕組みが必要になっている。
とはいえ、現実には資本を持つ側がより有利になりやすい構造があるのも事実。r > g のように、資本収益率が経済成長率を上回る限り、資本を持つ人ほどさらに有利になる。
今後、我々はどのような社会構造を目指すべきなのか。その問いを考える上で、非常に重要な一冊。 -
Posted by ブクログ
「資本主義」がどういう仕組みなのか。どうして生み出されたのか。
完璧なシステムではないにも関わらず、他の「〜主義」になぜ移行できないのか。
様々な疑問があって、それなりに関連の書籍を読んでいるが、本当に難しい。
もちろん本丸のマルクスを読み込めばよいのかもしれないが、私のレベルでは理解するのは無理だろう。
そんな軟弱な気持ちのため、様々な解説本を読んでは、ほんの少しずつ理解を深めていくつもりだ。
資本主義の仕組みとは、誰かが意図的に作り込んだものではない。
大航海時代や産業革命を経て、当時の社会情勢の変化に伴い、金融の仕組みが整ってきて、徐々に構築されたと言ってよいと思う。
そういう意味では、自然発生的に出来たシステムということになるのだが、資本主義自体が完全完璧というシステムではないのは承知の通りだ。
その非常に特殊で、ある種の矛盾を抱えたシステムであることは昔から理解されており、それをどうにか補正しようと、コントロールしようと試みてきた人類の歴史がある。
人類は未だ資本主義以上に優れたシステムを生み出せていない。
現代でも資本主義のマイナス面を理解しつつ、何とか上手に使いこなそうと試行錯誤している最中である。
資本主義やお金の考え方が、今後どう変化していくのかは、非常に興味深い。
ユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)や、ユニバーサル・ハイ・インカム(UHI)の議論もされている中で、未来がどうなるのか。
今後も自然な流れで変化していく可能性もあるが、その状況に「我々人類がどう備えるか」という議論も必要だ。
これらを考えていくためには、やはり現状の資本主義を正しく理解することが大事だと思う。
本書を読み進める中で私が印象に残ったのは、「富」と「価値」の決定的な違いの部分。
我々は、お金(価値)が増えることが「豊か(富)」になることだと思い込んでしまっている。
しかし、マルクスの資本論はここを明確に分けて考えている。
「富(Wealth)」は、 空気、水、森、そして人々の技能や知識といった、人間が豊かに生きるために必要なものそのものとされている。
一方で、「価値(Value)」とは、 市場で交換される時に付けられる「値段」を指している。
つまり「価値とはただの値付けでしかない」と言い放っている訳であるが、これはよくよく考えてみると、深い意味を持っている話だ。
資本主義が目指しているのは、この「価値」を増やすことでしかない。
我々は世のため人のために、「価値を増やしている」と思い込んでいるが、実はただ「値段を高めているだけでしかない」ということなのだ。
つまりは「ただの幻想」と言っても過言ではない。
そして恐ろしいことに、「価値」を増やすために「富」が破壊されているという現実があるというのだ。
夢から覚めるような感覚だが、確かにこう言われてみれば、その通りと思えてくる。
我々は「価値」の本質を、本当の意味で理解できていなかった。
そこにマルクスが、明確に鋭く切り込んでくる訳なのだ。
これは、例え話の方が分かりやすい。
例えば、誰でも自由に飲める湧き水に「価値」を付けることを考えてみる。
湧き水そのものには大きな価値がありそうだが、それは明らかに「富」ではあるが「価値」ではない。
しかし、その場所を囲い込み、私有化して、人々が自由に使えないようにしたらどうなるか。
そして「もしその湧き水を飲みたければ金を払え」としたら、どうなるか。
今までは自然の中にあった普通の湧き水に対して、希少性を作り出すことで、初めてそこに「価値」が生まれる。
つまり、資本主義は人々の共有財産であった「富」を奪い、あえて欠乏を作り出すことで「価値」を生み出している。
この「価値を大きくするために、わざと不便にする」という構造を知ったとき、今までの物の見方が変わってくる。
私たちが日々必死に働いて生み出している「価値」の裏側で、本来そこにあったはずの「豊かな富」が失われているという現実。
我々はこのことを、もっと自覚するべきだ。
それでは、この状況をどうすれば打開できるのか。
本書で説いているのは「コモン(共有財産)の再生」だという。
コモンとは、前述の「富」のことで、具体的には、水や電気、教育、医療、知識といった、我々が生きていく上で必要不可欠なものだ。
これらを市場の論理(価値)に任せるのではなく、我々自らが主体的に管理する方向に持っていけないだろうか。
今の社会は、あまりにも多くのものが「商品」になり過ぎている。
かつてはご近所同士の助け合いで成立していたことが、今ではサービスとして「購入」するものになっている。
本来は分かち合えるはずの知識が、知的財産権という名の壁に守られ、高価なものになってしまっている。
すべてを市場に委ねるのではなく、自分たちの手に取り戻せないだろうか。
「独立自尊」の精神を持ちつつも、依存し合うのではなく、自立した個人が協力し合うことができないだろうか。
このコモンの考え方は、これからのAI時代を生き抜くための、大きなヒントになると感じている。
なぜなら、AIとロボットが全ての仕事を代替する中で、「人間はどう生きていくべきか?」が、益々問われていくからだ。
そして、そもそもAI自体が、コモンにならなければいけないものだからだ。
ある強大な組織が、優れたAIを囲い込んだら、どうなるのか。
そのことを想像してみれば、「コモン(共有財産)の再生」の意味が見えてくる。
我々は「経済は成長し続けなければならない」と信じ込まされている。
しかし、地球という有限の器の中で、無限に成長し続けることなど、物理的に不可能なはずなのだ。
マルクスは150年以上も前に、資本主義が地球の資源を使い果たし、人間と自然の代謝を破壊することを予見していた。
今の気候変動や環境破壊は、まさにその予言が現実のものとなっている姿だと言える。
著者は、これからの生き方として「脱成長」を提唱している。
これは、ただ単に貧しくなるということではない。
「もっともっと」という強迫観念から距離を置き、今すでに存在している豊かさをどう分かち合うのか、という視点への転換だ。
効率やスピードばかりを追い求めるのではなく、手触り感のある生活や人間関係を大切にする。 こうした「精神的な豊かさ」こそが、これからの成熟した社会に求められているものなのだと思う。
本書を読んで、自分の仕事の「目的」を問い直す必要性を感じている。
私が担っている仕事は、人々の「富」を増やしているだろうか。
単に「価値」を増殖させるための歯車になっていないだろうか。
AIにはできない、人間に残された最後の役割を追い求めなければいけない。
自分の周囲の小さなところから、「市場の論理ではない豊かさ」を見つける必要がある。
そんなことを考えながら、これからの人生を歩んでいきたいと思っている。
(2025/12/23月) -
Posted by ブクログ
100分de名著で講師を務めた3人の専門家たちが、
本を人生に役立てるための読み方、『血肉となる読書』を紹介している本です。
経済思想家の斎藤幸平、上智大学教授でケアについての著作が有名な小川公代、能楽師の安田登。
私は小川公代は馴染みがあるので共感できる部分が多いと感じました。一方、能楽師の安田登に関しては全く予備知識がなく、語られる内容が新鮮で…その上ご本人の軌跡がなんとおもしろいことか!驚きを持って楽しく読みました。古典は難しくて全く読めない私ですが、これを機にチャレンジしてみたいと思います。
読んだ内容をすぐ忘れてしまう人、なかなか読み進められない…など何かしら読み方に迷いがある人におすすめ。そんなのはないという人でも、それぞれの専門家の語りは、もうそれだけでおもしろいのでおすすめです。
100分de名著のプロデューサーであり、この本の編者でもある秋満吉彦の噛み砕いた解説(解説というよりは、研究者の内容を受けてさらに自身のエピソードや裏話を語る)がまたわかりやすくておもしろい。
たくさん刺激をもらえる一冊でした。 -
Posted by ブクログ
今の時代は先の見えない激動の時代、戦前と雰囲気が似ているとも言われているそうだ。
100年前の名著には、そんな時代を生き抜いてきた人類の知恵や経験がつまっていて、未知の危機に向き合うための“時代を超えた真理”を受け取ることができるのだという。
「読書とは、自分とは異なる他者の思考パターン、深層心理、喜びや苦しみを少し分けてもらう行為」
特に印象に残ったのは、1度読んで理解できるものは、実は自分の思考の枠の内側にある“予定調和”にすぎない、という話。
むしろ、違和感のある表現や理解できない価値観を、“異物”として飲み込み、持ち続けること。その蓄積が、後から自分の見える景色を変える可能性がある。
古典や名著と呼ばれる本で、未読のものはまだまだ沢山ある。
教養のため?後の作品に大きな影響を与えているから?何となく読まなきゃという感覚だけはあったが、取っ付きにくさを感じていた。
けれど、人々がずっと考え続けてきた、簡単には割り切れないテーマだからこそ読み継がれてきたもの。取っ付きにくくて当たり前だと腑に落ちた。
引っかかりながらも、“違和感のある一文を大切にする”ことを意識して読んでみたい。 -
Posted by ブクログ
★理念は分かる、が実践が遠い★気候変動という大問題に対して、資本主義の際限のない成長は地球を食い尽くすと指摘。マルクスが晩期に志向していたと新たに読み解いた脱成長コミュニズムを主張する。希少性という価値を求める資本主義に対し、潤沢なコモンとしてあらゆるものの使用価値を重視すると訴える。その方が実質的な生活が豊かになるという。
気持ちとしては納得できる部分も多い。ただ、誰かが稼ぎを求めコモンズの資源をしゃぶり尽くすとき、それを止める手段がやはり見当たらない。コモンズの悲劇をどう止めるのだろうか。
もちろん著者もそんなことは分かっていて、いろいろと反駁しているし、後書きでは「3.5%」が動けば社会は変わると訴える。それでも理屈と実践との距離をどう埋めるのだろうか。
「トレーディング・ゲーム」(は読んでないが)の著者ギャリー・スティーヴンソンがあるインタビューで話していたが、富豪への富の集約が進みそれを助けるビジネスをさせられてきたという切なさ抱え、いまはそんな社会に反論しつつ、個人としてはこの社会の経済成長に投資するという逃げ道を取っているという。社会の解決の個人の生活とを分けて考えるのもひとつの方法なのかもしれない。
ところでマルクスについては完全に疎いうえ、人文系の研究のルールが分からないが、こういう主張をするのに「晩期マルクスの分析」という枠組みが必要なのだろうか。自分の主張の背景のひとつとしてマルクスを援用してはいけないのか。 -
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インターネット、AIのテクノロジーの発展により、資本ではなくテクノロジーを有数るもの(プラットフォーマー)によるデジタル囲い込みによって、そこに仕えるクラウド農奴とに二分される新たな封建制が生まれている。
封建制度化のレントは、土地や資源など特権的な資産への独占的なアクセス権によって生じ、それが現在までも続いてきた。クラウドレントは、資本主義化の利潤追求活動とインターネットの融合により、プラットフォーマーが生まれ、そこが莫大な富と政治力を持つことによって誕生してきた。
産業革命後、労働者が団結したように、今回もプラットフォーマーが反対する中グローバルで団結ができるかどうか? -
Posted by ブクログ
話の出発点は2つある。ひとつはこの調子で経済活動が進めば地球環境が壊れるという状況。問題の先送りはもとより、グリーンエコノミーとかSDGsとか言い方を変えたところで経済活動を成長させ続けることを求める資本主義が前提ならば解決しないということをはっきり明示される。
もうひとつはいつまでも右肩上がりを目指す資本主義はゴールがないから、地球環境だけでなく人間の生活も壊す。経済成長のために子供増やせとか論外である。人口も永久に右肩上がりさせ続けないといけないのか。1970年代には1億人突破で日本は支えられない、人口を抑えろ!と社会が騒いでいたのに、今は1.2億人では足りないのだ。更に人手不足にAIやロボットによる完全オートメーションが進めばその製造と稼働が地球に与える負荷は大きすぎる。更に貧富の差は広がるばかりだ。
ということでマルクスの「資本論」から発展させた新しい経済システムを提案する。資本主義の限界が言われて久しいが、ポスト資本主義には今のところこの案が一番好きだ。
問題は人の意識をどのように変えていくかですね。金儲けのためだけの意味のない仕事を減らすのですが、金儲けに走りたがる奴はいるでしょう。でもそんなことがデメリットでしかないような社会が良いですね。自分も頭を切り替えないとね。幸せなことが一番ですからね。