吉田篤弘のレビュー一覧
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「ふたたび」の『圏外へ』
文庫本では初めましての『圏外へ』。
そうだ、そうだ、そうだったと確かめるような読書になった。
一度通っただけじゃ覚えられない道をもう一度確認しながら通るような。
そもそも一度で覚えられなかったのは、歩きながらきょろきょろし、通り過ぎた家のポストとかすれ違った人の髪型とか(すべて例えばの話)に意識を彷徨わせていたからで。
今回もそうだ、そうだ、そうだったと思い出すのはそういう本筋でない部分が多かったような気がする。
というより、この小説には本筋があるんだろうか?
全ての道が曲がりくねり、ある時はジェットコースターのようにアクロバティックな曲線を描き、道を覚えるどころか自 -
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書いていてスゴク楽しかっただろうなぁ。この物語を書いているうちは、楽しくってしかたなかったろうなぁ。でもその反面、辛かったろうなぁ・・・と想像してしまいます。夢と現実と妄想が入り乱れ、創作に行き詰ると、登場人物たちが勝手気ままに語り出したり、語り手自身がいつの間にか表舞台に出てきてしまったり、ストーリーは激しく展開し、書きたいことが次々出てくるのに、作者自身それを書き記す手が追っつかなかったのではないでしょうか?場面転換や、人称、視点の変化が著しく、もしかすると、じれったさのあまり口述筆記してもらうことを考えたかもしれませんネ。しかしながら、意識的に多用した〝ひらかな〟表記や〝カタカナ〟表記、
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物語の始め、どうも景色が見え過ぎる気がしたのです。ピントがキチッと合って、人も世相もくっきり見える。ちょっと戸惑う。吉田さんの本を読む時のいつものテンポではなく、前へ前へと進もうとし過ぎる感じでした。
それが後半になると、いつもの吉田さんです。ピントが合わないのではなく、狙ってソフトフォーカスにした情景が浮かぶ。なんとも言えない暖かな感覚に包まれる。やっぱりこうでなくっちゃ。
しかし何なんでしょうね、この人の作品の魅力は。どうも分析できないのです。褒めたいのだけど、どう褒めれば良いのか。人にどう薦めれば良いのか。「良いよ」とか「良かったろ」とかしか言えないのが、何かもどかしいのです。 -
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読書会のヒントを探している時に手に取ったのが、岸本佐知子さん、三浦しをんさん、吉田篤弘さん、吉田浩美さんによる『『罪と罰』を読まない』です。
ドストエフスキー『罪と罰』を「実は読んでいない」ことで意気投合した4人が、「読まないで読む会」を発案したことから始まる対談集。
この企画の素晴らしさは、マイナスを遊びに変える視点と、それを本気で遊ぶ大人たちの遊戯性に満ちているところ。
特に三浦しをんさんの活躍がすごい。小説家だけあって、深読みは鋭く、博識だし、勝手に物語をポンポン創作してしまう様子がとても爽快です。
テンポの良い知的な読書会を舞台袖からのぞくような面白さがあり、「こういう大人たち -
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ネタバレ〈螺旋プロジェクト〉の一冊。
〈螺旋プロジェクト〉とは
「共通のルールを決めて、原始から未来までの歴史物語をみんなでいっせいに書きませんか?」伊坂幸太郎の呼びかけで始まった8作家=朝井リョウ、伊坂幸太郎、大森兄弟、薬丸岳、吉田篤弘、天野純希、乾ルカ、澤田瞳子による前代未聞の競作企画である。
ルール1 「海族」vs.「山族」の対立を描く
ルール2 共通のキャラクターを登場させる
ルール3 共通シーンや象徴モチーフを出す
(中央公論新社HPより)
私はクラフトエヴィング商會も吉田篤弘も、その作品は大好きだということを先に明言したうえで、この作品には全くハマらなかったと言わねばならない。
細か