吉田篤弘のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
耳元で心地いい音楽を聴いた後のような、すごく素敵な気持ちで読み終えた本でした。
全体的に落ち着いたトーンで、コーヒーの茶色から始まり、ニューヨークのグレイ、冬の吐息の白、と浮かび上がるシーンが美しくて、なんとも言えない不思議な世界に迷い込んだようです。
過去と現在、現実と空想が入り混じった世界は、映像がとにもかくにも美しい。古着屋とバー、世界の果てのような白い荒野、ダブル・ベース「エレファント」、1つ1つのシーンがにくいくらいに素敵で、とにかくうっとり。これは、映画化してほしい。
美しいシーンも然ることながら、本書に登場する音楽を聴いてみたい。
音楽には疎い私ですが、とある場面では鳥肌が立 -
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「ふたたび」の『圏外へ』
文庫本では初めましての『圏外へ』。
そうだ、そうだ、そうだったと確かめるような読書になった。
一度通っただけじゃ覚えられない道をもう一度確認しながら通るような。
そもそも一度で覚えられなかったのは、歩きながらきょろきょろし、通り過ぎた家のポストとかすれ違った人の髪型とか(すべて例えばの話)に意識を彷徨わせていたからで。
今回もそうだ、そうだ、そうだったと思い出すのはそういう本筋でない部分が多かったような気がする。
というより、この小説には本筋があるんだろうか?
全ての道が曲がりくねり、ある時はジェットコースターのようにアクロバティックな曲線を描き、道を覚えるどころか自 -
Posted by ブクログ
書いていてスゴク楽しかっただろうなぁ。この物語を書いているうちは、楽しくってしかたなかったろうなぁ。でもその反面、辛かったろうなぁ・・・と想像してしまいます。夢と現実と妄想が入り乱れ、創作に行き詰ると、登場人物たちが勝手気ままに語り出したり、語り手自身がいつの間にか表舞台に出てきてしまったり、ストーリーは激しく展開し、書きたいことが次々出てくるのに、作者自身それを書き記す手が追っつかなかったのではないでしょうか?場面転換や、人称、視点の変化が著しく、もしかすると、じれったさのあまり口述筆記してもらうことを考えたかもしれませんネ。しかしながら、意識的に多用した〝ひらかな〟表記や〝カタカナ〟表記、
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Posted by ブクログ
物語の始め、どうも景色が見え過ぎる気がしたのです。ピントがキチッと合って、人も世相もくっきり見える。ちょっと戸惑う。吉田さんの本を読む時のいつものテンポではなく、前へ前へと進もうとし過ぎる感じでした。
それが後半になると、いつもの吉田さんです。ピントが合わないのではなく、狙ってソフトフォーカスにした情景が浮かぶ。なんとも言えない暖かな感覚に包まれる。やっぱりこうでなくっちゃ。
しかし何なんでしょうね、この人の作品の魅力は。どうも分析できないのです。褒めたいのだけど、どう褒めれば良いのか。人にどう薦めれば良いのか。「良いよ」とか「良かったろ」とかしか言えないのが、何かもどかしいのです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「ほんとうにうまいものは、人間に反復運動を促します。ーー体が反復を覚えることが快楽なのだ」
これを読んだとき、確かにそうだよなと思った。
うまいから何度も同じものを食べる。たまに贅沢して違うものを食べるけど、結局いつもの料理を食べている自分がいる。そうして、いつもの料理を食べている自分が一番幸せを感じているかもしれない。
この本はそうした日常の小さな幸せを探して出してくれる。
「食べているあいだ、ずっと口が愉しいの」といったセリフもおもしろいなと思った。うまい、ではなく愉しいという表現がなんだかとてもいい感じがする。それはどんなにうまい料理を食べるよりも幸せなことなのではないか。
十時軒を探 -
Posted by ブクログ
ネタバレ余韻の残らない短編集で、なかなかハマれず
何話か少しだけ繋がりがある話があるだけで、全く関連のない短い短編集
短編なうえに外国人のような名前や聞きなれない響きの店名なこともあって個人的には読みにくかった。
あとタイトルに掛けて月やコーヒーが入ってくるものかと思いつつ読んでしまったせいで何か意味があるのか、繋がりがあるのかと無駄に考えてしまったのも個人的な反省点
何も考えず、気楽に読むのがおすすめ
何作か心に残るお話もあり、あとがきを読むと寝る前にさくっと読めることを考えられていたと知り納得
深く考えず、寝る前や少しの時間物語に浸りたい時にぜひ。